夜空を燃えながら堕ちる星   作:XA-26483

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作者は転生未経験なので、転生に関するあれこれは想像になります。ご注意ください。


経験者の方は経験談を教えてくださるとありがたいです。


第1話:転生

 

 

 私が転生者である事を自覚したのは、もうずっと昔のこと。まだ言葉も喋れない、赤ん坊の頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(痛っっっっってえええええ!!?)」

 

 

 突然感じた痛みによって、俺は目が覚めた。

 

 背中を中心として、体の全てが痛かった。特に酷いのは後頭部。まるで鉄パイプで思い切り殴られたみたいな……いや、鉄パイプで殴られた経験はないけど。多分、それくらい痛かった、という例えだ。

 

 

「(痛い痛い痛い!!なになに!?なんなのこれ!?)」

 

 

 もうほんと、転げ回りたいくらい痛かった。でもそんなことをしたらベッドから転げ落ちてしまう。仕方ないので、両手を頭の後ろに回して痛みの原因を探ろうとする。が、どうにも腕が思うように動かない。

 

 仕方ないので、ぎゅっと目を瞑り、体全体に力を入れて、強張らせることで痛みに耐えた。

 

 

「───!?───っ──!」

 

 

 しばらくそうしていると、少しずつ痛みが引いていく。

 それと同時に、俺の耳に誰かの声が聞こえて来た。柔らかい声……女性の声だ。

 

 

「──ど、どう───死ん──たの!?」

 

 

 途切れ途切れだったが、どうやら俺が死んだと思ったようだ。いや、生きてるから。経緯はわからんが負傷しただけだから。後頭部の怪我は怖いから、早く救急車を呼んでくれないだろうか。

 

 ……というか、なんで俺は頭が痛いんだ?何が起きて、どうしてこうなったんだ。最後の記憶は確か、いつも通り仕事を終えて、アパートに帰って来て、着替えて風呂に入って飯食って、薬を飲んで寝たはず……だよな?少し、曖昧になっているかもしれないが。

 

 背中の感触が固いし、もしかしたらベッドから落ちて頭でも打ったのだろうか?いや、それにしては痛すぎる。床からベッドまでの高さを考えれば、落ちたとしてもこれほどの痛みがあるとは思えない。

 

 そもそもこの女は誰だ。俺は一人暮らしだし、この階には女性は住んでいなかったはずだ。大家さんは年配のおばさんだし、この女とは年齢が違いすぎる。声の若さが違う。

 

 必死に痛みをこらえながら、状況を把握するために頭を回していると、両腕に柔らかいものが触れ、背中にも感触があった。背中には腕を通されたっぽい……こ、これはまさか、お姫様抱っこか?声の主である女に抱きかかえられた、と仮定すると……おいおいおい、成人男性である俺を抱え上げるなんて、随分とパワフルだな。

 

 驚きと興味により、俺は反射的に目を開く。

 するとちょうど、俺を抱え上げている女性……の、ような顔をした怪物と目が合った。

 

 

「あ……だ、大丈夫?生きてるわよね?あぁもう、びっくりした!」

 

 

 不安と心配が入り混じった声。髪は金髪だが、染めているのか地毛なのかわからない。喋っているのは日本語で、声は成人した女性のものだ。腕もあるし、視界には映らないがきっと足もあるのだろう。

 

 ではなぜ、俺がこの女性を怪物だと思ったのか。

 

 

「(か、顔が……ない!?)」

 

 

 ───そう、この女には顔がなかったのだ。

 

 恐怖と困惑で手足をばたつかせる俺だったが、この顔なしの怪物は恐ろしく力が強く、そしてデカかった。手足はほとんど動かず、拘束を抜け出すことは出来そうにない。助けを呼ぼうと口を開くも、思うように舌が回らず、「あぅあぅ」だの「うあー」だの、意味をなさない言葉しか出てこない。

 

 もしや、先ほど頭を打った時に言語機能に障害が出たのか!?

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと!暴れないでよもう!また落としたらどうすんの!?」

 

 

 そう言って怪物は、強い力で俺の体を締め付ける。怪物の胸と腕に挟まれたせいで、俺の両腕はしびれるように痛んだ。おまけに深く抱え込まれたから、怪物の顔がより間近に見えてしまう。

 

 く、喰われる!?

 

 

「(お、俺の傍に近づくなああああああああ!!!)」

 

 

 痛む頭。締め付けられた体。間近に迫った怪物の顔。

 極限まで達した恐怖によって、俺はあらん限りの悲鳴を上げることになった。

 

 

「おぎゃああああああああ!!あああああああああ!!あああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 ★・ー・★・ー・★・ー・★

 

 

 

 

 

「あ、あの先生、娘は大丈夫なんでしょうか?」

「……そうですねぇ」

 

 

 向かい合った二人の男女。

 その内、白衣を着た壮年の男性が、女性の声に反応して顔を上げた。

 

 

「検査の結果としては、特に問題はないと思います」

「ほ、本当ですか?よかったぁ……もう、信じられないくらい泣いてたので、何かあったんじゃないかと思って心配で心配で「ですが」」

 

 

 ホッと胸をなでおろす女性の言葉を遮り、男性は少し険しい声で語る。

 

 

「……頭を打った、というのが少し気になります。抱き上げる際に手が滑って落とした結果、近くのテーブルの角に、後頭部を打ってしまったんですよね?」

「う……それは、その……はい。多分、そうです……」

 

 

 男性の言葉から責めるような意思を感じたのか、女性は怯んだようだった。

 

 

「そうですか……もしかしたら、脳に何らかのダメージがあった可能性が考えられます。今回の検査の結果では異常は見受けられませんでしたが、後々になって容態が急変する可能性は十分にあり得ます。紹介状を書くので、脳外科のある病院で検査して貰ってください。その方が確実です」

「は、はい。わかりました」

 

 

 ……その後も今後の対応について話し合っている二人を余所に、俺は近くのベッドの上でぼけーっと天井を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言ってしまうが、どうやら俺は転生したらしい。

 

 

 転生なんてフィクションでしかあり得ないと思っていたが、まさか自分がその対象になるとは思わなかった。あるいは、実はこの事象は特に珍しいものではなく、俺が知らないだけで世の中には転生者がたくさんいるのだろうか?

 

 そもそも、俺は死んだのか?死んだ記憶がないし、死んでしまうような状況にあった記憶もない。もしかしたら本物の俺は生きていて、ここにいる俺はコピーだったり……なんてな。いやまさかそんなはずは……ない、とは言い切れないのが恐ろしい所だ。

 

 ひとまず、わかった情報を整理しよう。

 

 今生の俺の名前はホシノアイ。ピッチピチの生後数か月の赤ちゃんだ。ホシノが苗字で、アイが名前だが、漢字はわからない。該当する字が多すぎる。

 

 ちなみに、話し合っている男女の内、男性はこの小児科の医者であり、怪物もとい女性の方は俺の母親、ということになる。看護師に呼ばれた際にわかったが、母親の名前はホシノアユミ。こっちも該当する字が多すぎてどれかわからん。

 

 生まれた場所は日本。

 話している言語が日本語だし、ここに来る道中の景色も日本の町並みだったから、恐らくはそうなのだろう。

 

 時代はわからないが、病院に電話する際に母親は家の電話を使っていた。スマホは見当たらなかったし、かと言って昔懐かしきガラケーもない様子。推測だが、平成初期って感じだろうか。

 

 あと、俺が母親の顔を認識出来なかった理由が判明した。

 恐らくだが、まだ赤ちゃんであるがゆえに視力が発達していないのだ。色は判別出来るものの、視界全体がぼやけていてよく見えない。眼鏡が欲しい所だ。

 

 それと、母親の言葉に「娘」とあったように、俺は女として生まれたらしい。まだ下の方は確認出来ていないものの、母親の言動と俺の名前がアイであることから、女であることは確定とみていいだろう。「アイ」って男に付ける名前じゃないだろうし。

 

 

「(……女かぁ。昨今の情勢を鑑みれば勝ち組、って思わなくもないけど)」

 

 

 性別に拘りはないし、何が何でも男として生きたい、ってわけじゃない。だから、将来的に性転換手術を受けようとか、そういうのは今のところ考えていない。クッソ安くて、100%成功する手術だったら受けてみたいと思わなくもないけど。

 

 まぁ、そんな都合の良いことはないだろうし、仮にあったとしても、手術をしてはい終わり、ってわけでもないだろう。術後の経過とか、ホルモンバランスとか、薬の服用とか、副作用とか、世間の目とか。色々と憂慮すべき点が多すぎる。ビビりの俺にはちょっと厳しい。

 

 だから、女として生きることは受け入れよう。

 というかむしろ、女として生きることにちょっと興味がある。男と肉体的な関係を持つとか、ましてや結婚とかは絶対に嫌だけど。そういうことを抜きにすれば、女の世界で生きていくことに、ほんのりとした期待があるのは事実だ。

 

 前世では、華やかな世界とはとんと縁がなかった。

 

 苦しい家庭の経済事情。高校卒業と同時に家を出て、隣町の工場に就職してからは、職場と自宅を往復する毎日。楽しみと言えば、ネットサーフィンやゲーム、漫画と言ったインドアな趣味くらい。

 

 一人で生きる分にはそれなりに豊かだったし、安定した生活ではある。が、非常に地味な人生でもあった。

 

 だからこそ、今生ではもっと明るい人生を送りたい。

 具体的に言うなら、都会で生きたい。人と関わる、賑やかな仕事をして、華やかな人生を送ってみたい……これは具体的じゃないな。まだ曖昧な願望だ。

 

 しかし幸い、母の言を聞く限りはここは東京らしい。東京なんて、高校の時の修学旅行でしか来たことがないが、都会であることは間違いないだろう。

 

 母はスタイルが良い。顔はまだよくわからないが、何となく美人さんっぽい雰囲気がある。服装もおしゃれだし。その血を俺が受け継いでいるとしたら、容姿にも期待が持てる。幼少期から努力をすれば、美人になれる可能性はあるはずだ。少なくとも体型は努力で何とかなると信じる。

 

 あと、母はなんか高そうな服とかバッグとか持ってるし、金には困ってなさそうだ。これなら、前世の時のように金銭面で苦労することはないだろう。赤ん坊の扱いに関しては少々雑だが、でも病院には連れて行ってくれるし、悪い人ではない……多分。

 

 性別、容姿、出身地、環境。

 まだ確定していない要素もあるが、それでも前世に比べたら大分マシだ。これだけ好条件が揃っているならば、きっと前よりも幸福に生きていくことが出来るだろう。

 

 前世持ちのアドバンテージを生かそう。

 強くてニューゲームの始まりだ。

 

 

 

 

 




詳しい年表がわからないので、生まれた年はボカシておきます。
多分1990年半ばくらいが妥当だと思うんですけど、どうなんでしょうね?
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