リーフにTS転生しちゃったけどせっかくなので楽しみたいと思います   作:七色レインボー

12 / 23
実力を測るらしい

 誠心誠意のおもてなし(なでなで)をすることでピカチュウに満足してもらい、どうにか機嫌を直してもらってバトルをすることになった俺たち。

 とはいえ目的はピカチュウの実力を測ることなので、感覚的にはトレーニングに近い。適当なところでバトルを切り上げるつもりだ。

 もちろんそのことはレッピカコンビにも伝えてあるのでガチバトルにはならないだろう。

 図鑑で技も確認して準備万端。と、いうわけで。

 

「…………いくよ、ピカチュウ」

 

「ピカピカ!」

 

「フシギダネ、お願いね」

 

「だね!」

 

 バトルスタート。

 さあ、お手並み拝見といこうか。

 

「先手はどうぞ」

 

「…………じゃあ──“でんきショック"!」

 

「ピカ! ピーカチュウ!」

 

 ピカチュウの体から小さな電撃が放たれた。

 こういった『でんき』タイプの技は弾速に優れる傾向にあるというが、これは予想以上だ。基本技であるはずの“でんきショック"でもなかなかのスピードがある。

 

「わっ、早い!?」

 

「だねっ!?」

 

 結果、俺とフシギダネも反応が遅れて電撃に被弾してしまった。

 とはいえ元の威力が低い上にタイプ相性で半減しているので大きなダメージは無い。フシギダネはまだまだ余裕そうだ。

 

「いけるよね、フシギダネ?」

 

「だねだね!」

 

「よし、それじゃあ“つるのムチ"!」

 

「だね! だーねぇ!」

 

 反撃にいつの間にか覚えていた“つるのムチ"を指示すると、フシギダネが背負っている球根のような種の辺りからつるが伸びていき、ピカチュウを打ち据えようと振るわれた。

 さあ、これにはどう対処する? 

 

「…………“でんこうせっか"で避けて!」

 

「ピッカァ!」

 

「おっ」

 

 ムチが届く前にレッドの指示が飛び、その場から飛び退いて見事に回避するピカチュウ。アニポケでは割とよくあった“でんこうせっか"回避だ。

 基本的には攻撃技として使用するものだが、技の発動中は速度が上がることを利用してこんなふうに回避に使うこともできる。

 ここら辺はただのエフェクトに過ぎないゲームとは違って、実際に動きがあるからこその発想だ。かつてグリーンがそうしたように。

 そうしてピカチュウはその勢いのままフシギダネに向かって突進してきた。こうやってみると“でんこうせっか"は攻撃と防御を両立した使いやすい技なんだろうなと思う。

 だが。

 

「フシギダネ、手前から薙ぎ払って!」

 

「だね!」

 

「ピカ!? ピカァッ!」

 

「…………っ!?」

 

 直接狙うのではなく、ピカチュウの通りそうなルートに技を()()。するとピカチュウは自らのスピードを抑えきれず、自らムチに被弾しに来て吹き飛ばされていった。

 確かに“でんこうせっか"は優秀な技だが、動きが直線的になるという欠点がある。故にスピードこそあれど先読みしやすく、置き技での対処が可能なのだ。

 尤も、初見であれをされると流石に対応できなかっただろう。以前にトキワシティで出会ったコラッタが使っていて、技の性質を事前に把握できていたからこそ対策を知っていた。

 それに俺個人の感覚でいえば、スピードこそピカチュウの方が上のようだが、コラッタの方が技のキレはあったように感じる。こう、緩急があったというか。

 そう考えるとあのコラッタはとんでもない逸材だった可能性があるが……それは今考えても仕方の無いことだ。

 それよりピカチュウは大丈夫だろうか。勢いも相まってかなり強く打ち付けたみたいだが……いや、大丈夫そうだな。全然立ち上がってきた。

 

「…………ピカチュウ、大丈夫?」

 

「ピカピッカ!」

 

「…………よし、それじゃあ──“でんじは"!」

 

「ピカ!」

 

 今度は先程のような直線的な電撃ではなく、放射状に広がるような撃ち方をしてきた。あれに触れると『まひ』状態になってしまうが、それは面倒なので避けたい。

 普通に避けることもできそうだが……そうだな、こうしてみよう。

 

「フシギダネ、砂を巻き上げて!」

 

「だね!」

 

 フシギダネがムチを使って砂を巻き上げ、それを壁のようにして“でんじは"を相殺する。

 これなら大きく動かずとも電撃から身を守れる。前にグリーンがやってた環境利用──の真似事だけど、なかなか上手くいったのではないだろうか。

 

「…………! 今だ!」

 

「ピッカァ!」

 

「あっ」

 

 なんて密かに自画自賛していると、砂に紛れてピカチュウが“でんこうせっか"でフシギダネの目の前まで迫ってきていた。それを認識した時にはもう遅く、クリーンヒットを許してしまう。

 しまった、砂のせいで視界が悪くなったところを狙われた。素直に避けるのが正解だったか。あるいはその場からすぐに離れていれば向こうも狙いを付けにくかったかもしれない。

 しかしレッドの反応も早かったな。あの視界の中で的確にフシギダネを狙ってくるとは。こういう咄嗟の場面で機転が利くのはレッドの強みといっていいだろう。

 

「……よし。そろそろ終わりにしようか」

 

「…………!」

 

 一応ピカチュウの残る技に“しっぽをふる"があるが、そっちは確認しなくてもいいだろう。それ以外の技は全部見れたし、ここらが潮時だ。

 

「フシギダネ、“つるのムチ"!」

 

「ピカチュウ、“でんきショック"!」

 

「だーねぇ!」

 

「ピーカチュウ!」

 

 最後は技同士の単純なぶつかり合い。どちらが押し勝つかの勝負だ。

 電撃と草のムチが激しく衝突し、数秒の拮抗。そしてタイプ相性の影響か“つるのムチ"が“でんきショック"を打ち破った。

 そのままムチがピカチュウに振り下ろされようとして──。

 

「外して!」

 

「だねぇっ!」

 

 ギリギリのところで軌道を変える。

 果たして、ムチはピカチュウのすぐ隣を強かに叩いたものの、ピカチュウを攻撃せずに済んだ。

 ふう、危ない危ない。ただの練習試合で怪我させたくないからな。

 

「ピカチュウ、大丈夫だった?」

 

「だねだぁね」

 

「ピカピカ」

 

 一応怪我の確認のためにフシギダネと一緒にピカチュウの方へ駆け寄ったが、手を振って大丈夫だとアピールしてくれた。うん、無事でよかった。

 

「…………どうだった?」

 

「うん、じゃあそれも含めてご飯食べながら話そっか。もうお昼の時間だよ」

 

「…………うん」

 

 昼食はポケモンセンターで食べてもいいが、今日は天気もいいしせっかくなので外でピクニック気分でも味わいたいところだ。

 出費が気になるところではあるが、大切なのは今を楽しむことなので一旦忘れておく。一応それなりの額を博士から貰ってはいるしな。

 

 というわけで感想戦の時間だ。

 適当な昼食を買ってきたあと、広場にビニールシートを引いて場所を確保し、そこにレッドやポケモンたちと一緒に座る。

 ポケモンたちにはポケモンフーズ(お徳用サイズ)を、俺とレッドはタマゴサンドを手に持って。

 

「「いただきまーす」」

 

 さっそくタマゴサンドを一口パクリ。ごろっとしたタマゴとマヨネーズの相性が最高だ。まさに効果抜群。とても美味しい。

 

「…………で、どうだった?」

 

「もぐもぐ……うん、いい感じだったと思うよ。動きもよかったしね」

 

 レッドの問い掛けに軽く答える。

 スピアーの一件でバトルに苦手意識を持っていたり動きが硬かったりするかも、と少し心配していたのだが、それは無さそうで一安心だ。

 ともあれ『いい感じ』だけでは抽象的過ぎて何の参考にもならないので、少しだけ言語化しておく。

 

「このピカチュウの武器はスピードだね。小さな体も相まって、高速で動き回れば相手に狙いを付けさせにくくできる。しっかり鍛えれば大抵の攻撃は避けられるようになると思うよ」

 

 ピカチュウという種族は『すばやさ』が高めのポケモンであり、小柄で身軽な体を活かして素早く動くことができる。

 その分ポケモンが忙しなく動き回ることになるのでトレーナーの技量が問われることにはなるが、上手く利用できれば強力な武器になるだろう。

 レッドは大変な思いをするかもしれないが、頑張って適応してもらいたいところだ。尤も、俺が言うまでもなくレッドならしっかり努力するだろうけど。

 

 ただまあ……それだけといえばそれだけだ。

 

 バトルを通して見た感じだと、このピカチュウは多少『とくこう』と『すばやさ』が高い気がするものの、それ以外は至って普通の平均的なピカチュウだ。

 俺が『レッドのピカチュウ』というものに対して幻想を抱いているのもあって、てっきりLPLE(レッツゴーピカチュウ・イーブイ)に出てくる相棒個体並に強かったりするものだと勝手に思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。

 まあここら辺は努力次第でそれに匹敵するかもしれないので、今後に期待するとしよう。

 

「レッドはどうだった? ピカチュウと上手くやれそう?」

 

「…………うん。大丈夫だと思う」

 

 さっきのバトルではピカチュウの能力を測る他にも、レッドとピカチュウの相性を見る目的もあった。

 ゲームでは一度捕まえてしまえばギャラドスだろうがオコリザルだろうが、果ては伝説のポケモンだろうが完全に調伏下にあったが、現実ではそうもいかない。ポケモンがトレーナーを気に入らないと思えば指示を無視するし、酷ければ攻撃する場合もある。

 実際にそれでトレーナーが大怪我をしたという事例も存在するので少し心配していた部分もあったのだが、ピカチュウは素直にレッドの言うことを聞いていたし、指示の内容も理解して行動に移せていたので問題無いと見ていいだろう。

 

「それならよかった。ならちゃんとブラッシングも勉強しないとね?」

 

「…………頑張る」

 

 少しだけ意地悪を言ってやると、レッドが渋そうな顔をしたのが面白くてつい笑ってしまった。

 まあブラッシング云々はあくまでもポケモンと仲良くなるための一手段であって必須技能ではない。世の中にはポケモン専門のマッサージ屋もあるのだから、どうしても苦手ならそちらに頼んでしまえばいいのだ。

 それこそグリーンの姉のナナミがそういうのを得意としていたし、お願いすればやってくれるだろう。

 ……と、そうだ。グリーンといえば。

 

「それにしてもグリーンも運が無いよね。もう少し行くのが遅かったらグリーンのポケモンにもポケルスが感染したかもしれないのに」

 

 つくづく運が無いというか、間の悪い男だと思う。

 グリーンならポケルスのことを知っていても不思議は無いし、このことを知れば喜んで感染させていただろう。

 早く強くなりたいと言っていたが、急がば回れだな。まああの才能にポケルスがプラスされたらレッドでも勝てなくなるかもしれないが。

 もしそうなったら……そうだな。

 

「『でんきだま』は必須になるかもなぁ……」

 

「…………『でんきだま』?」

 

 不思議そうにレッドが首を傾げた。おっと、どうやら口に出ていたらしい。

 まあこれは誤魔化さなくてもいいか。素直に話すとする。

 

「ピカチュウの力を高めてくれる道具だよ。持たせると技の威力が上がるんだって。レッドもピカチュウで戦うなら探してみてもいいかもね」

 

「…………へぇ」

 

 あくまでも誰かから聞いた、もしくは本からの知識という(てい)で説明しておく。

 正確には『こうげき』と『とくこう』を二倍にするのだが、わかりやすく説明するならこちらの方がいいだろう。実際に与えるダメージはほとんど同じだし。

 ちなみに『でんきだま』を持ったピカチュウは火力だけなら進化系であるライチュウを凌駕する。補正値二倍は伊達ではない。

 

「…………凄いね、リーフは」

 

「え? と、突然何……?」

 

「…………ううん、なんでもない」

 

 そんな話をしていると、何故か急に褒められた。何か言いかけていたみたいだったが……レッドがいいならいいか。

 

「グリーン、今頃勝ってるのかなぁ。あれだけ大口叩いて負けてたらお笑いだけど」

 

「…………さあ。どうだろうね」

 

 改めてグリーンの話題に戻る。

 まあこんなふうに言っているが、実際のところグリーンが負けるとは思っていない。

 何せゼニガメがニビジムに対して特攻過ぎる。最序盤なら最適解とすら言えるんじゃないだろうか。

 タケシが繰り出すポケモンは『とくぼう』が低い傾向にあるので、“あわ"が『とくこう』依存の攻撃なので刺さりまくるし、そうでなくても四倍弱点の攻撃だ。グリーンのバトルセンスならまず落とさない試合だろう。

 俺のフシギダネもタイプ相性でいえばガン有利なので正直負ける気はしていないのだが、この世界ではどうなるか。実際にバトルすることになったら油断しないようにしよう。

 

 といってもそれはまだ先の話。しばらくはニビシティを観光して楽しむつもりだし、できればポケルスを感染させてから挑みたい。

 というわけで。

 

「ま、それはほっといて博物館行こう。レッドも楽しみにしてたしね」

 

「…………!」

 

 レッドの目の色が変わる。よほど楽しみにしていたのだろう。

 ニビシティのキャッチコピーは石の町。そんな町にある名物博物館には当然ポケモンの化石が展示されている。

 タケシもオススメだと言っていたし、見に行く以外の選択肢は存在しない。

 

「それじゃあ食べ終わったら準備して──あっ、こら! そんなに急いで食べたら喉に……ああもう言わんこっちゃない!」

 

 胸をどんどんと叩くレッドに『おいしいみず』を差し出しながら、今後の予定を考えるのだった。

 

 

 ◓

 

 

 そして、ニビシティ滞在から三日が経った朝。

 この間は四六時中レッドと共に行動しており、ニビを観光したりバトルしたりして過ごしていたのだが。

 

「うーん……どうやら感染しなかったようですね」

 

「なんでぇ……?」

 

 ここ最近は毎日の終わりにポケルス感染の有無を確認してもらっていたのだが、残念ながら全てハズレ。結局誰にも感染することなくポケルスの反応は消えてしまったらしい。

 

 ずっと一緒にいたのにこの結果だ。運が悪いでは片付けられないだろう。

 

 もしかするとこの世界のポケルスは感染力が弱いのかもしれない。そう考えればあまり広まっていない理由にも説明が付く。

 あるいは他に何かしらの感染条件があったのかもしれないが、今となってはそれを考えても仕方ないし、答えも出ない。諦める他ないだろう。

 まあ元より棚からぼたもちではあったのだ。最初から無かったものとして考えれば何も問題は無い。そう、何も。

 

「…………残念そうだね」

 

「……ソンナコトナイヨ?」

 

 ショックは隠しきれないらしい。

 

「ま、まあポケルスなんてなくても全然勝てるし? ちょっと有利になるだけだし? 別にいいかなーって」

 

 レッドが生温かい目でこちらを見てくる。やめろ。そんな目で俺を見るな。

 とはいえ、この言葉もまるっきり強がりというわけではない。

 実際改めて考えたところ、ポケルスの感染の有無は多少育成が楽になる程度の変化であり、勝敗に直結するほどのものではないと思ったからだ。

 それだけの影響力があるとすればもっと有名になっているだろうし、バトルを生業とする者なら知っていて当然の知識になっていないとおかしい。それこそ血眼で探し出すようなレベルの話だろう。

 

 だがジョーイさんや博士の話を聞く限りでは、それほど多くの人間が知っている知識のようには思えなかった。それはつまり『あった方がいいが、無くてもポケモンに与える影響はそこまで大きくない』という証左ではないだろうか。

 だからまあ、無いなら無いで仕方ないと諦められる。諦められるが、感染させたかった……っ! 

 

「……はぁ……まあ仕方ないか。切り替え切り替え。くよくよタイムなんて五秒で十分ってね」

 

 どこかで聞いたようなフレーズを口にして気持ちを切り替える。落ち込んだ時にはこの言葉がよく効くのだ。

 

「それじゃ、行こうか」

 

「…………」

 

 レッドが頷く。

 目指すはニビジム。いよいよジム戦に挑む時だ。




あと2、3話くらいで一章終了かなーと思ってますのでできればそこまでお付き合いください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。