リーフにTS転生しちゃったけどせっかくなので楽しみたいと思います 作:七色レインボー
家を飛び出して十数分後。
走り出したのはいいが体力の無さが災いし、レッドは息も絶え絶えになっていた。
「もー、しょうがないなぁ……ほら、肩貸すから頑張って」
見るに見兼ねてレッドに肩を貸す。楽しみだったのはわかるが自分の体力くらい把握しておいてほしい。研究所までまだ半分以上も距離があるのだが。
レッドがこの体たらくな反面、『リーフ』の体はまだまだ余裕といった感じだ。明らかに体力があるし、この有り余る元気で駆け回っていたのがお転婆娘と呼ばれていた所以だったのかもしれない。
そんなこんなで疲れ果てたレッドを連れて、ようやく研究所まで辿り着いて中に入ると。
「お、やっと来たか。おせーぞお前ら──って、何やってんだ?」
「いや、ちょっとテンション上げすぎたというか……」
呆れ顔で俺たちを出迎えたのはグリーンだった。主人公のライバルポジである。
こちらももちろん『FRLG』の姿であり、茶髪のツンツン頭で、黒の半袖に紫のズボンと同色のリストバンドを付けており、首からはペンダントを下げていた。
「はっ、情けねえなレッド。妹におんぶにだっこで恥ずかしくねえのか?」
「…………! …………!」
「レッド、伝わってないと思う」
何か抗議の意を向けているのはわかるが、どれだけ睨み付けたところでぜえぜえと肩で息をしているその様では全く効果は無いだろう。事実、グリーンはレッドを見て鼻で笑っている。さもありなん。
「……リーフ、今日のお前なんか変だぞ」
「えっ?」
その言葉にドキリと心臓が跳ねる。
な、なんで? まさか俺が『リーフ』じゃないって気付かれた? でもここに来てまだほとんど喋ってないのに……。
「な、なんでそんなこと聞くの?」
「だってお前、このお荷物と一緒に来たんだろ? いつものお前なら愚痴の一つでも言ってそうだと思ってな」
レッドを指差しながらグリーンが言う。
た、確かに記憶の中の『リーフ』なら『全くよ、大変だったんだから』とか言ってるかも……。
と、とにかくなんとか誤魔化さないと!
「えーっと……そう! せっかく旅に出るんだし、これを機にお淑やかなレディを目指そうかなと思って!」
「は? お前マジで言ってんの? ギャラドスがミロカロスの真似事かよ」
「表出なさい。お望み通り暴れてあげるから」
「おっと、リーフお得意の威嚇か? 化けの皮が剥がれんのも早いな」
グリーンのあんまりな物言いに怒気を放って親指を外に向ける。
いくら幼馴染とはいえ、乙女に何を言ってくれてるんだこのノンデリ男は。その腐った性根叩き治してやる。
「ま、アホ兄妹はほっとくとして──おーいじいさん! 全員揃ったぞ!」
しかしグリーンはそんな俺を見ても飄々とした態度を崩さず、どこ吹く風とばかりに受け流して研究所の奥に呼び声をかけると、奥の方から白衣を着た初老の男性が現れた。
この人こそがポケモン界の権威にして第一人者。ポケモンという生き物についての研究を体系化した偉大な人物であり、俺にとってはポケモンという新しい世界への扉の鍵をくれた案内人でもある、その博士の名は。
「おお、揃ったか。よく来たのう、レッドにリーフよ」
──オーキド博士である。
この人が行った研究や出した功績の数々はポケモン学に非常に大きな影響を与えており、それこそ偉人と呼ぶべき人物なのだが……ぱっと見だととてもそうは思えない。
何せこの人、見た目は完全に人が良さそうなただのおじいちゃんなのだ。
「そして……えーと? お前の名前はなんていったかな?」
「グリーンだよ! ボケたフリすんな!」
「ほっほっほ。冗談じゃよ、冗談」
……ほら、好々爺にしか見えない。
「それでは──おほん! わしの名前はオーキド! みんなからはポケモン博士と慕われて──」
「じいさん、もうそういうのいいから早くポケモンくれよ」
「……なんじゃつまらん。せっかく雰囲気を作ろうとしたのに」
ポケモンを初めて起動した時のあのセリフが聞けるのかと思えば、グリーンによってキャンセルされてしまい、口をへの字に曲げるオーキド博士。
とはいえ待ちきれないのも事実なので、ここはグリーングッジョブと言わせてもらおう。
「やれやれ、全く誰に似たのやら。最近の若いもんはせっかちでいかんのう。ほれ」
言いながらオーキド博士が赤白のボール──かの有名なモンスターボールを取り出して宙に投げると、中から光が溢れて三匹のポケモンが現れた。
緑の球根のようなものを背負ったポケモン。茶色の甲羅で胴体を覆われた青いポケモン。そして尻尾の先に小さな炎を灯した赤いポケモン。
これが、この三匹が初代御三家……!
「…………!」
「へっ。やっとこの時が来たぜ」
「かっ、可愛い……!」
動いてる……! ポケモンが目の前にいる……! これが夢にまで見たポケモンの世界か……!
「うむうむ、いいリアクションじゃな。そこまで喜んでくれると博士冥利に尽きるわい」
「あの、博士っ! 本当にこの子たち貰っていいんですよねっ!?」
「もちろんじゃよ。左からフシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲじゃ。さあ一人一匹、好きなポケモンを選びなさい」
「わぁ……! どの子にしようかな……!」
ぽてっとしたフォルムが愛おしいフシギダネ? 丸っこい体にくるんと巻いた尻尾で誘惑してくるゼニガメ? それとも炎が灯った尻尾をぶんぶん振って元気いっぱいにアピールしてくるヒトカゲ?
「だね?」
「ぜにぜに♪」
「かげぇ!」
「くうぅ……、みんな可愛い……!」
なんという破壊力……! これがリアルポケモンか……! ……あっ、今っ! フシギダネと目が合った気がする!
「まあ落ち着けよリーフ。お前の気持ちもわかるが、ここはじいさんの孫であるこのオレ様が一番に選ぶのがスジってもんだろ?」
「は? そんな筋合いどこにも無いんですけど? 何? 拳で決める?」
「ちょ、待てって! 話を最後まで聞け!」
グッと握り締めた拳を見せるとグリーンが慌て始めたので、仕方なく話を聞いてやることにする。
「ったく……いいか? さっきも言った通り、本来ならオレ様が一番最初にポケモンを選ぶべきだ」
「だからそんな筋合い無いって言ってるでしょうが」
「だがオレ様は寛大だ。レッドかリーフ、どっちか先に選ばせてやるよ。代わりに二番目は貰うがな」
俺の言葉を無視してグリーンがそう言った。
つまり俺かレッドに先に選ばせる代わりに、二番目に選ぶ権利を寄越せってことか?
「そんなことしなくても、今ここでグリーンを殴り倒せばわたしが二匹貰えるんだけど?」
「おいコイツ前より酷くなってねえか!? しかもさらっと二匹持ってく宣言しやがったぞ!?」
流石にレッドの分まで奪うような真似はしない。最初のポケモンを貰う権利は平等にあるべきだ。
尤も、残されるポケモンが可哀想なので俺が二匹貰うのもやぶさかではない。
「バカやっとらんで早く選ばんか。このままでは日が暮れてしまうぞ」
と、ここで博士の仲裁が入る。チッ、命拾いしたな。
「それで、わたしたちが先に選んでいいって本当なの、グリーン?」
「ああ。だがどっちか一人だけだ。その次はオレに選ばせてもらう」
「ふーん……」
まあグリーンの考えてることはだいたいわかる。原作での関係性やこの世界での記憶から鑑みて、おそらくはレッドが選んだポケモンに対して有利なポケモンを選ぶつもりなのだろう。
例えばレッドが先にヒトカゲを選んだ場合はそのままゼニガメを選べばいいし、俺が先にヒトカゲを選んだ場合はフシギダネを選べば、レッドは残りのゼニガメを選ぶことになるので条件を満たせる。
知恵が回るというかずる賢いというか。まあ俺はそれでいいけど。
「レッドはどうする? それでいい?」
「…………」
問い掛けにこくりと頷くレッド。彼もまた不満は無さそうだ。グリーンの計略に気付いているかはわからないけど。
「よし、それじゃじゃんけんで──」
と、手を出したところで、ある考えに思い至って動きを止める。
「……やっぱやめる。レッド、先に選んでいいよ」
「…………?」
「ん? いいのかよリーフ。一番最初ならどれでも選び放題なんだぜ?」
不思議そうにするレッドとグリーン。
彼らの疑問も尤もだ。俺だってさっきの俺みたいな反応をするやつを見たら、一番最初を希望するだろうと思うだろうから。現に今さっきまでは悩みに悩み抜いて相棒を選ぼうと思っていたし。
けど、それだとちょっとだけ不都合が出てくる。
「いいの。だって一番最初のパートナーに、ちょっとでも悲しい思いをさせたくないから」
「ん? そりゃどういうことだ?」
「ほら、順に選ぶってことは誰かが最後まで残るってことでしょ? わたしはそれを『選ばれなかった』とか『残りものから妥協で選んだ』とか思ってほしくないの。だからわたしはわたしの意思で、胸を張って最後の一匹を選ぶんだ」
考えすぎだろうとは俺も思う。だけどほんの少しでもその可能性があって、それを消せるなら俺は喜んで最後に回る。
単純な能力で選ぶのなら最終的に空を飛べるようになるヒトカゲや、海を渡れるようになるゼニガメがいいかもしれない。
だけど現実にポケモンたちを見てしまえば、そんなことどうでも良くなってしまった。きっと誰を選んでも楽しい旅になる。不思議とその確信が俺の中にあった。
誰を選んでも大当たり。ならば最後でも何も不都合は無い。……それに俺が最初に選んじゃうと、それこそいつまでかかるかわからないしな。
「……うむ。では順にレッド、グリーン、リーフでよいな?」
「ああ、オレはそれでいいぜ」
「はい、大丈夫です」
「ではレッド、この中から好きなポケモンを選ぶのじゃ!」
相変わらずの無口で頷くレッド。しかしポケモンを見る目には確かな熱が籠っている。
真剣な表情で三匹を見回し、時間をかけてようやく選ばれたその一匹は。
「──ほう。炎のポケモン、ヒトカゲでいいんじゃな?」
「…………!」
「うむ! では決まりじゃな!」
炎の力をその身に宿すヒトカゲだった。まあこれは予想通りといえば予想通りだ。レッドと言えばリザードンのイメージだしな。
となるとグリーンが選ぶポケモンは──。
「じゃ、オレはこいつだ」
もちろん『ほのお』タイプに強い『みず』のポケモン、ゼニガメだ。これもまた予想通りである。
二人が選び終えたので最後のポケモンの元へ歩み寄り、その姿を抱き上げると仄かな草の香りが鼻腔をくすぐった。
期待に満ちた瞳と目が合う。さっきこの子と目が合ったのも、こうなる運命だったからかもしれない。
この子が、俺の初めてのポケモン。
「──よろしくね、フシギダネ」
「だねぇ♪」
挨拶するとにっこりと笑い返してくれるフシギダネ。その愛らしさに思わず頬が緩んで抱き締めてしまう。
ああ、なんて可愛いのだろう。この子を選ばなかった二人はバカなんじゃないだろうか。
いや、きっとバカに違いない。バカなんだからその二匹も俺に渡してほしい。立派に育ててみせるから。
「……おいリーフ、目がこえーぞ」
「…………っ!」
本当にどうにかして奪い取れないだろうか。
「ま、まあこれでようやく全員ポケモンが手に入ったわけだ。だったらやることなんて一つしかねーよな?」
「…………!」
「……それって……」
「やろうぜ、ポケモン勝負」
◓
グリーンの提案で初めてのポケモン勝負をするため、一度ポケモンを戻して研究所の外に出た俺たち。博士も俺たちのバトルを見たいようで、審判を務めてくれるみたいだ。
そうしてグリーンに先導され、案内された広場はバトルするにはうってつけの場所だった。
おそらくはこうなることを見越して、最初からアタリをつけていたのだろう。本当に抜け目のないやつだ。
「やっぱトレーナーつったらポケモン勝負だよな。さて、記念すべき初勝利をオレ様にプレゼントしてくれるのはどっちだ?」
グリーンは自信満々だし、自分もバトルなんてしたことないくせに勝利をまるで疑っていないようだ。
これは意地でも敗北を叩きつけてやりたいが、果たして実際のバトルはどんな感じになるのやら。ゲームの対戦なら何度もやってきたけどなぁ……。
「うーん、どうしよう……」
「…………ぼくが行く」
「ん? あれ、今のレッド!? もしかして喋った!?」
「…………」
聞き間違いかと思ったが、すぐ側で聞こえてきた声は間違いなくレッドのものだった。
滅多に喋らないのに珍しい。それだけレッドもやる気に満ちているということだろうか。
でもそういうことなら俺としても否は無い。初戦はグリーンの相手はレッドで決まりだ。
「決まったかの? ではほれ、ボールじゃ」
博士が二人にそれぞれの相棒が入ったボールを渡すと、二人は反対方向へ歩いていき、おおよそ二十メートル程度の距離で向かい合った。
二人の間に緊張感が走る。その緊張が俺にも伝播し、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
少しの間を置き、博士が片手を挙げて。
「二人とも、準備はいいな? では──始め!」
「いけ、ゼニガメ!」
「…………ヒトカゲ!」
宣言と同時、ボールからポケモンが飛び出す。ついにバトルが始まった。
見逃せない一戦だ。この目にしっかりと焼き付けよう。
さて、タイプ相性で言えばヒトカゲの弱点を突けるゼニガメが圧倒的に有利だ。
だけど博士に事前に教えてもらっている技はゼニガメが“たいあたり"と“しっぽをふる"、ヒトカゲが“ひっかく"と“なきごえ"なので、レベルの低さも相まってポケモン自体の差はほぼ無いと言っていい。
つまり勝敗を分けるのは──。
「…………ヒトカゲ、“ひっかく"!」
「ゼニガメ、避けて“たいあたり"だ!」
トレーナーの指示!
「ぜにっ!」
「かげっ!?」
ゼニガメがヒトカゲの爪を避け、反撃の“たいあたり"を決めた。
これはお見事。ファーストアタックはグリーンのゼニガメが取ったか。
「休ませるな! 続けて“たいあたり"だ!」
「ぜにぃ!」
「…………くっ、避けてヒトカゲ!」
「かげぇ!」
体勢を整え直す隙を与えず、連続攻撃を仕掛けるよう指示するグリーン。レッドはその作戦に見事に嵌って防戦一方となった。
この世界では当然ターン制なんて概念は存在しない。だからこんな風に一方的に攻撃を仕掛け続けることもできるし、逆に相手の攻撃中に行動を割り込ませることだって可能だろう。
これがポケモンバトル。本当の、ポケモンバトル……!
「おいおい、逃げてばっかかよ。それじゃいつまで経ってもオレのゼニガメは倒せねーぞ!」
「…………」
「だんまりか。だったらこれで終わらせてやるよ! トドメだゼニガメ!」
「ぜにぃ!」
狙いを定めてゼニガメの“たいあたり"。これが決まるとグリーンの勝利がかなり近付く。
しかしレッドは何も指示を出さず、ヒトカゲも動かない。このままだとクリーンヒットするぞ!?
……いや、あれは、何か狙ってる!?
「…………っ! ヒトカゲ!」
「かげぇ!」
攻撃がヒットする直前でレッドが声を張り上げた。その声に答えるようにヒトカゲが動き出し、ゼニガメの“たいあたり"をギリギリで避ける。
そうか、レッドの狙いは攻撃をギリギリまで引き付けてからのカウンター攻撃だったんだ!
「いけっ! “ひっかく"!」
「かーげぇ!」
ヒトカゲが腕を振り上げる。このタイミングならゼニガメの回避行動も間に合わないだろう。
これで勝負はわからなく──。
「“しっぽをふる"」
ふりふり、とゼニガメの尻尾が揺れる。
「か、げ?」
一見意味の無いように見えるその動きにヒトカゲが気を取られた。
まだまだ幼い故に、動くものを目で追ってしまう反射行動。そしてそこで生まれた時間がゼニガメに選択肢を与えた。
「か、げぇっ!」
「ぜにっ……!」
はっとしたヒトカゲはすぐに攻撃を再開したが、しかしもう少しのところで直撃を避けられてしまった。
決定的なチャンスをものにできなかったレッドが歯噛みする。
「今のって……」
ヒトカゲの攻撃が当たる前、グリーンはゼニガメに“しっぽをふる"を指示した。
あれはゲーム的には相手の『ぼうぎょ』を一段階下げる技なのだが、正直なところ使う場面はあまりない技だと言える。
しかしグリーンはあれを相手の注意を逸らすものとして使用して、技の直撃を避けたのだ。まさかあんな使い方があるなんて……。
「いやはや、やるのう。初めの内は攻撃一辺倒になって補助技にまで気が回らんもんじゃが、グリーンはその辺上手くやっとるようじゃな」
「……まさか博士、グリーンにだけ戦い方を教えたんじゃ……」
「まさか。そんな公平性を欠くようなことはせんよ。これはグリーン自らが考えてやったことじゃ」
あくまでもあれはグリーンのバトルセンスによる賜物だ、と博士は言う。
そこからレッドは流れを掴めず、ずっとグリーンのペースで試合は続き。
「これで終わりだ! “たいあたり"!」
「ぜにぃ!」
「…………っ!」
「かげぇ! か……げ……」
ゼニガメの攻撃がヒットし、ついにヒトカゲが目を回して倒れてしまった。
「──戦闘不能、じゃな。グリーンの勝ちじゃ」
「やりぃ!」
グリーンが勝鬨を上げる。
……流石、と言わざるを得ない。初めてのバトルにしてこの試合運び。
これがレッドのライバル、グリーンの実力。
「ま、気を落とすなよレッド。途中のカウンター狙いは中々のもんだったぜ? ただオレが天才だったってだけだ」
「…………っ!」
レッドが体を震わせ、拳を握り締める。
レッドの動きだってそんなに悪いものには見えなかったが、どうやら現時点ではトレーナーとしての完成度はグリーンの方が圧倒的に上らしい。今のレッドでは勝てないだろう。
でもこれはあくまでも序章に過ぎない。これから旅をして、色んなものを見て成長していけばいつかグリーンに追いつき、そして勝つことだってできるはずだ。
頑張れレッド。今はその悔しさを抱いてバネにするんだ。
「さ、これでオレは華麗な初勝利を飾ったわけだが……お前はどうする、リーフ?」
「え?」
そんなことを考えていると、突然こっちに話が向いた。
「どうするって……何が?」
「バトルだよ、バトル。お前もオレに勝利をくれるってんならやってやらないこともないぜ?」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるグリーン。うわぁ、わかりやすく調子に乗ってる。ムカつくなぁ。
叩きのめしたいのは山々だが、さっきのバトルを見る限りだと俺も勝てるかどうかはかなり怪しい。
怪しい、が──。
「──やる。せっかくだし」
「へっ、そうこなくっちゃな。おーいじいさん、ゼニガメ回復させたいから『キズぐすり』くれよ」
グリーンが博士の方へ歩いていくのを見送りながら、俺は先にボールを受け取ってレッドが立っていた場所に移動しておく。
別にこれは
それにさっきの“しっぽをふる"の応用といい、自由度の高さから戦術の幅は相当広そうだし、ゲームとは何もかもが違う体験ができるだろう。まずはその違いを楽しみたい。
勝ち負け云々はその後だ。ここはグリーンの胸を借りるつもりでいこう。
……まあそれはそれとして、いけそうならぶちのめすけど。
「……一緒に頑張ろうね、フシギダネ」
ボールの中の相棒にひっそり告げた。