リーフにTS転生しちゃったけどせっかくなので楽しみたいと思います   作:七色レインボー

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『みず』ポケモンの神秘を学ぶらしい

 昼食を食べ終わり、プール全体を覆うように張られた半透明のバトルフィールドにて。

 

「フシギダネ、“はっぱカッター"!」

 

「だねぇっ!」

 

「ぱうっ!?」

 

「ああっ、パウワウ!」

 

 フシギダネが放った“はっぱカッター(硬化した葉の刃)"が、頭部に角が生えた白い体表のあしかポケモン──パウワウに見事に命中し、その動きを沈黙させた。

 

「パウワウ、戦闘不能! 勝者フシギダネ!」

 

「よし! やったねフシギダネ!」

 

「だねぇ!」

 

 審判トレーナーの宣言が響き渡って試合終了が告げられると、フシギダネがこちらに駆け寄って来たのでそれを受け止めて頭を撫でてやる。

 お月見山での道中で新たに習得した“はっぱカッター"は非常に使い勝手のいい遠距離攻撃技だ。これからも重宝することだろう。

 フシギダネの能力傾向的にはできれば特殊技の“マジカルリーフ"とかを習得してほしいところだが、まあ贅沢は言うまい。何故かレベル技の習得傾向が物理に寄ってるんだよな、フシギダネって……。

 

「あーあ、負けちゃった。強いのね、リーフちゃん」

 

「ありがとうございます、サクラさん」

 

 バトルの後に挟まるインターバル中に、対戦相手であったカスミの姉、サクラがパウワウをボールに戻してこちらへ歩きながらそう言った。

 褒めてくれるのは嬉しいのだが、少なくともハナダジムでの戦いに限っては単純な強さというより、タイプ相性の差が大きいように思える。

 何せこちらの『くさ』タイプの攻撃は効果抜群(二倍ダメージ)で通るのに、相手の『みず』タイプの攻撃は半減で受けられるのだから。

 

 ニビジムでも相性の上では有利であったが、ハナダジムではそれ以上だ。よほどポケモン、あるいはトレーナーの能力に差が無い限りこの有利が覆ることは中々無いだろう。

 ともあれこれで戦績は先程戦ったヨウヘイ、コズエ戦を含めて三戦三勝。いずれも危なげなく勝利しているので、この調子で勝ちを重ねていきたいところだ。

 

「お疲れ様、二人とも。いいバトルだったわよ」

 

「あ、カスミ。姉さん負けちゃったわ〜」

 

「きゃっ。もう、急にくっつかないでよサクラ姉さん」

 

 労いの言葉と共にこちらにやって来たカスミによよよ、と悲しげな声を出しつつもどこか楽しそうにしながら抱き着くサクラ。カスミも呆れた様子ではあるものの、邪険にはしていないようで姉妹仲の良さが窺える。

 美女二人の絡みは非常に尊いものではあるのだが、やはり目のやり場に困る光景だ。なんだかいたたまれない気分になった俺は、それとなくそこから目線を逸らす。

 

「それにしてもやるじゃないリーフ。まさかうちのジム生相手に三連勝するなんてね。こんなこというのもなんだけど、ちょっと意外だったわ」

 

「あはは……これでも一応バッジ持ちだからね。それなりのバトルはできるつもりだよ」

 

「そう……そうよね。ごめんなさいリーフ。わたし、あなたを少し見くびっていたようだわ」

 

 カスミは申し訳なさそうに言うが、実際その気持ちもわからないでもない。

 これまで俺の手持ちはコイキングしか見せていなかったし、俺自身もカスミの世話になりまくっていたため、カスミから見れば俺は超初心者トレーナーにしか見えなかったのだろう。

 別にそれも間違ってはいないし訂正する気も無いが、タケシ戦を乗り越えた今なら自分にもある程度の力は備わっていると思ってもいいはず。

 それに相手が勝手に侮ってくれる分には困らないしな。その隙を突いてイージーウィンしやすくなるだけだ。

 

「そんなの気にしなくていいよ。わたしも気にしないし」

 

「でも……」

 

 しかしカスミは尚も言い募ろうとする。

 こういう誠実さには好感が持てるが、本当に俺はなんとも思っていないので縮こまられてもむしろ困ってしまう。さて、どうしたものか……あ、そうだ。

 

「わかった。ならもしよかったらでいいんだけど、サクラさんのパウワウを触らせてくれないかな?」

 

 こういう時は交換条件を提示してやるのが一番いい形に落ち着くものだ。それにこれは方便というわけではなく、俺が本心から望んでいることでもある。

 実は先程バトルをしていた時からその触り心地が気になっていたのだ。先程倒してしまった手前で言いにくかったが、叶うのならば是非触らせてもらいたい。

 

「そんなことでいいの? なら……いいわよね、サクラ姉さん?」

 

「もちろん。パウワウ、出てらっしゃい」

 

「ぱうっ」

 

 そうして交換条件が成立し、サクラがパウワウをボールから出した。戦う体力は残っていないだろうが、少し触れ合うくらいなら大丈夫だろう。

 腰を落としてパウワウと目線を合わせ、できる限り表情を柔らかくして語りかける。

 

「こんにちは、パウワウ。わたしはリーフ。少しあなたを触らせてもらいたいんだけどいいかな?」

 

「ぱうぱう」

 

 その返事は肯定……と捉えていいのだろうか。ともあれ嫌がってはいなさそうなので、怖がらせないようにゆっくりと白い頭に手を伸ばす。そうして毛並みに触れると、ふわふわとした感触が伝わってきた。

 

「おお……」

 

 思わず感嘆の声が漏れ出る。もっとツルッとした感触なのかと思っていたから意外だった。犬猫を触っているのに近い感触かもしれない。

 毛並みに沿って頭を撫でていると、気持ちよさそうにパウワウが目を細めた。

 めちゃくちゃ可愛い。抱き締めたい。しかし急にそんなことをすれば驚かせてしまうかもしれない。ここは我慢だ。

 そう自分を律していると。

 

「ぱうっ♪」

 

「っ!?」

 

 パウワウがごろんと転がってお腹を見せてきた。

 動物が腹を見せるというのはリラックスしている時か、相手に甘える時にするポーズだ。つまりそれを目の前で行ったこのパウワウはこう言っている。

 

 ──撫でろ、と。

 

「……い、いいの?」

 

「ぱうぱう♪」

 

 相変わらず言葉の意味はわからないが肯定と受け取る。だが頭だけでもあの感触。お腹なんて一体どれほどの威力を持つのか、想像するだに恐ろしい。

 しかしせっかく許可をもらったのだ。ここで行かなきゃ男じゃない。……いや、実際に今は男ではないのだがそれはそれとして、恐る恐る手を伸ばしてそこに触れる。

 瞬間、脳に電撃が走ったかのような感覚。

 柔らかい。そして温かい。今すぐここに顔を埋めたい。圧倒的なリラクゼーション効果がそこにはあった。

 ああ、パウワウってこういうポケモンなんだ……このポケモンを抱き枕にして寝たら最高だろうなぁ……。

 

「はぁぁ……! 可愛いぃ……!」

 

「うふふ、本当に可愛い。ねえカスミ?」

 

「そうね。こんな純粋な子なかなかいないわよ」

 

 カスミとサクラが何か言っているようだが、会話の内容はあまり耳に入ってこなかった。それよりも何よりも、今はこの感触を全力で堪能する。

 パウワウもバトルの後で疲れているはずだし、いつまでも俺の都合で拘束するわけにもいかない。

 いつまでも撫で続けていたいと、そう強く思わせてくる魅惑の毛並みだったが、適度なところで名残惜しみながらその手を離す。

 

「あら、もういいの?」

 

「はい。このままだと永遠に撫で続けちゃいそうなので……綺麗なパウワウですね」

 

「あら、わかる? そうなの。普段から見た目には凄く気を遣ってる子なのよ。自慢のパウワウだから褒めてくれて嬉しいわ」

 

 柔和に微笑みながらサクラがパウワウをボールに戻す。

 正直に言えば他のパウワウを見たことが無いのでどんな差があるのかまではわからないが、それでも本当に綺麗なパウワウだった。大切に育てられているのがよくわかる。

 

「ところでリーフちゃんは『みず』ポケモンが好きなの? 随分夢中だったみたいだけど」

 

「あ、いえ、特別『みず』ポケモンがってわけじゃないですけど、ポケモンはみんな好きですよ。あ、でも『むし』ポケモンはあんまり……」

 

「あらそう。ふふ、そういうところもそっくりなのね」

 

「はい?」

 

 質問に答えると、サクラが意味深な笑みを浮かべる。そっくりって、何と何が? 

 

「さっきパウワウを見てた時のキラキラしたあなたの顔が昔のカスミと同じだったのよ。なんだか懐かしかったわ」

 

「え……そ、そんな顔してましたか?」

 

 確かに多少にやけていた自覚はあるが、そんな風に観察されていたかと思うと少し恥ずかしい。

 キラキラした顔って、そんなに浮かれて見えていたのだろうか。でもそれだけパウワウが可愛かったわけだし、俺は悪くない。

 

「も、もう、サクラ姉さん。わたしまで恥ずかしくなってくるから昔の話は──」

 

「おまけに『むし』ポケモンが苦手なところまで一緒だなんて、本当にカスミとそっくり。この前もカスミったら──」

 

「わーっ!? ちょっと、変なこと言わないで! もうあっち行って! しっしっ!」

 

「あらあら、怒られちゃった。それじゃカスミをよろしくね、リーフちゃん」

 

 そうやってサクラが思い出話をし始めたかと思うと、カスミに怒鳴られて退場していった。カスミがあそこまで怒るなんて、一体サクラは何を言おうとしたんだ。

 

「はぁ……もう、全くサクラ姉さんったら……。ごめんねリーフ、気にしなくていいから。というか今の話全部忘れていいわよ」

 

「う、うん……」

 

 そう言ったカスミからはえも言われぬ圧を感じた。まあ文脈からして暴露話をしようとしたのだろうし、カスミにしてみればあまり聞かれたくないことだったのだろう。

 俺も同じ立場ならそういう話は聞かれたくないし、ここは聞かなかったことにして話題を変えるとする。

 

「にしても、カスミとお姉さんって仲が良いんだね。ちょっと羨ましいかも」

 

「そう? でも確かに姉妹仲は良い方かもね。そういうリーフには兄弟とかいないの?」

 

「一応兄がいるんだけど双子だからね。だからああいう感じの兄や姉には少し憧れがあるかな」

 

 この世界に来る前においては一人っ子だったし、元より兄弟というものには憧れがあった。

 ならば実際に兄がいる『リーフ』の記憶を辿れば、気分だけでも体験できるのではと思ったこともあったが、『リーフ』はレッドのことをあまり兄だとは認識していなかったようだし、残念ながらその案は失敗に終わっている。

 まあ実際に兄弟がいる友人には度々『そんなにいいもんじゃない』と聞かされていたが、隣の芝は青く見えるというやつだ。

 

「へえ……リーフって妹だったのね……道理で……」

 

 そんな話をしていると、カスミが何か言いたげにこちらを見てそわそわしているのに気付いた。どうしたのだろう。

 

「ん? どうかした、カスミ?」

 

「いや、その……ほら、わたしって四姉妹の末っ子じゃない? だからわたしも妹ってものにちょっと憧れてるのよね」

 

「へえ。ならわたしと逆だけど同じだね」

 

「……そうね、お揃いね……。はぁ……」

 

 何故か力無く溜息を吐くカスミ。

 結局何が言いたかったのだろうか。いまいち言葉の真意が掴めなかった。

 

「あ、そうだ。ねえカスミ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「ん? 何かしら」

 

 それは先程の連戦中に抱いた疑問。

 さも当然のように()()なっていたが、俺の常識でそれは有り得ならざることだった。

 

「あの……タッツーとかトサキントって浮けるの?」

 

 タッツーは水色のタツノオトシゴのような姿で、トサキントは白い体色に独特の赤い模様がある金魚のようなポケモンなのだが、その見た目からわかる通り水棲の生物だ。

 にも関わらずヨウヘイとコズエは何の躊躇いもなくそれらを陸上へと繰り出し、その上で当然のように普通に宙に浮いて戦っていた。

 

 再度確認するが先程戦っていたのはプールの中ではなく、それを覆うように張られた半透明のアクリル板のようなフィールドの上である。

 ゲームでは表現の関係上、草原だろうが砂漠だろうが関係無しに平然と浮いていたがここは現実。これは一体どういうことなのか。

 

「ああ、そのこと? そうね、詳しい理屈はわたしも説明できないんだけど、『みず』ポケモンって訓練次第では自分の周囲に『みず』エネルギーを放出できるようになるのよ。だから浮いてるんじゃなく、正確には『みず』エネルギーの中を泳いでるって感じね」

 

「へ、へえ……」

 

「まあ余計なエネルギーを使ってる分消耗も早くなるから、最初に『みず』ポケモンを選ぶならコダックとかヒトデマンとか、それこそゼニガメみたいな陸地でも戦えるようなポケモンをオススメするけどね」

 

 カスミがそう締めくくる。

 つまりあのトサキントもそういう理屈で浮いて──いや、泳いでいたというわけか。

 ちょっと理解が追いつかないが、考えてみればそういう理屈でも無いと魚型ポケモンがバトルにおいて不利すぎるし、『ポケモンバトル』に特化させるとそういうこともできるようになる、という感じなのだろう。そういうことで納得しておく。

 

「……あれ? ということはコイキングも頑張ればそれができたりするってこと?」

 

「そうね……と言いたいところだけど、残念ながら無理ね。エネルギーを扱う器官が貧弱すぎてコイキングにはそれができないのよ」

 

「ああ……」

 

 残念。世界一弱いと言われるポケモンの名は伊達ではないということか。伊達であれよ。

 

「それにコイキングは育てるのもだけど、育てた後も大変だからね。……ねえリーフ。一応聞いておくけど、コイキングを──ギャラドスを育てる覚悟はちゃんと持っているのよね?」

 

「覚悟?」

 

 そうして俺が心の中でコイキングの貧弱さに嘆いていると、真剣な声色でカスミが問うてきた。

 

「そう。コイキングの進化形のギャラドスはとても……とても強いポケモンよ。その強さは頼りになるけど、接し方を間違えればトレーナーにも牙を剥くわ。それで大怪我をしたトレーナーをわたしは何人も知ってる。育てるには覚悟のいるポケモンなの。あなたにその覚悟はある?」

 

 ギャラドスは分類のきょうあくポケモンの名の通り、非常に恐ろしいポケモンとして知られている。

 一度怒り出すと全てを破壊し尽くすまで鎮まらず、一ヶ月も暴れたという記録も残っており、ある地域では破壊の神と恐れられているのだとか。

 

 つまるところ、コイキングとは育てるまでは弱すぎて、育った後は強すぎてトレーナーの手を焼く極端なポケモンなのだ。

 

 そんなポケモンを従えようと言うのなら、カスミの言う通り生半可な覚悟ではいけないのだろう。

 だからカスミはジムリーダーとして、一人のポケモントレーナーとして問うたのだ。お前に責任を背負う覚悟があるのかと。

 

 目を閉じ、カスミの言葉を反芻する。そうして改めて自分に問いかけた。

 本当に自分にその覚悟があるのか。ゲーム感覚で、面白半分に育てるつもりだったのではないかと。

 何度も自問自答を繰り返し、そして。

 

「──大丈夫。全部わかってるし覚悟もできてる……つもり。少なくとも無責任なことは絶対にしないよ。約束する」

 

 真っ直ぐカスミを見つめ返して、そう答えた。

 確かに俺はまだまだ未熟だ。本当にコイキングを育て切れるかもわからない。だがそんなことは最初から承知の上でコイキングを手持ちに加えたのだ。

 生き物を育てるのに責任が付き纏うなんてのは当然のこと。一度決めた以上、途中で投げ出すつもりはこれっぽっちも無い。そうならないためにカスミを頼ったのだから。

 

 最初から他人頼り……と言えば聞こえは悪いかもしれないが、一人で間違ったやり方を実践して壊滅的な被害を出すより何倍もマシだろう。

 恥や外聞など知ったことか。頼れるものはなんでも頼る。それが俺のやり方だ。

 

「……うん、そうよね。リーフならそう言うわよね。ごめんね、試すようなこと聞いて」

 

 真剣な表情を解き、少し申し訳なさそうに話すカスミの顔を見て、俺も緊張の糸を緩めて返す。

 

「ううん、当然のことだと思う。心配してくれたんだよね。わたしのことも……コイキングのことも」

 

「まあ、ね。実のところ、リーフをジム内に引き入れたのもそのコイキングが一番の理由なのよ。ううん、リーフに限らずコイキングを連れたトレーナーが訪ねて来た時は、一度ジム内で様子を見させてもらってるわ。どんなトレーナーなのかを見極めるためにね」

 

 その言葉を聞いて、ようやくずっと引っかかっていた疑問が一つ解けた。やけに親切だと思っていたが、そういう裏があったのか。

 仮にコイキングと真剣に向き合っていないトレーナーがいたならば、カスミは先程のような忠告をするだろうし、もしかしたら育成そのものをやめるように言うかもしれない。

 他にも万が一の事態が起こった場合に、目の届く範囲に置いておけばカスミ(ジムリーダー)が迅速に対処に当たれるという事情もありそうだ。

 どうあれ、町やそこに住む人たちを守る義務があるジムリーダーとして、カスミの判断は正しいと言える。

 

「でも、リーフならきっと大丈夫ね。ポケモンを大切にしているのがわかったもの。その気持ちを忘れないようにするのよ」

 

「カスミ……うん、ありがとう」

 

 お礼を言いながらコイキングの入ったボールを撫でる。

 元々この世界の人間ではない俺だが、ポケモンを想う心ならチャンピオンにだって負けないつもりだ。

 だって俺はポケモンが大好きなのだから。

 

「後は……そうね、気を付けることといったら進化した時かしら。まだリーフは手持ちの進化経験が無いのよね?」

 

「うん。フシギダネはそろそろ進化してもいい頃だと思ってるんだけど……」

 

 フシギダネのボールに目を落とす。

 フシギダネのレベルは既に20を超えており、本来であれば進化が始まっていてもおかしくないはずなのだが、今のところその様子は無い。特別進化を拒んでいるようには見えないのだが……。

 

「うーん……わたしは『くさ』タイプは専門外だからね……。エリカならわかるかもしれないけど、それは一旦置いておいて一般論から話すわね」

 

 そう前置きしてカスミは続けた。

 

「一般的にポケモンの進化っていうのは、体内に溜め込んだエネルギーが一気に解放されることで行われるんだけど、もう一つ要因があってね。それが感情の大きな動きなの」

 

「感情の動き……?」

 

「ええ。例えばもっと強くなりたいだとか、何かを守りたいだとか、とにかく何か大きな気持ちの揺れ動きがあった時に、秘められたエネルギーが解放されて進化が始まる──ってオーキド博士が発表してたわ」

 

 ふむふむ、と頷きながら続きを促す。

 

「で、本題なんだけど、コイキングって進化できる状態になったら割とちょっとした刺激でも進化するのよ。それはいいんだけど、問題なのがギャラドスになった時に抱いていた感情に支配されるところなのよね。きっと脳構造が組み変わるせいで感情の制御ができなくなるんでしょうね」

 

「え?」

 

 待て。今サラッととんでもないことを言わなかったか? 

 

「だからバトルの最中に進化したら闘争心が昂って暴れるし、トレーニングの最中に進化したらアドレナリンで興奮して暴れるし、『ふしぎなアメ』で進化しても嬉しさで歓喜しながら暴れるわ」

 

「ぜ、全部ダメじゃん! 暴れないルートって無いの!?」

 

「あんまり聞かないわねー。だからまあ、適度に暴れさせて落ち着くのを待つのが一番なのよ。そのために他の手持ちでギャラドスを抑え込めるようにしないといけないけどね」

 

「て、手のかかる……!」

 

 衝撃の事実に思わず頭を抱えてしまう。

 ギャラドスを手持ちにしている人間がいるのだから、コイキングから育てて愛情を持って接すれば比較的温厚なギャラドスになると思っていたのに……! 

 え? じゃあ何? もし万が一にも今コイキングが進化したらフシギダネとオニスズメで抑え込めってこと? そんなの無理に決まってる! 

 

「まあまあ。暴れると言っても一時的なものだし、手持ちならリターンレーザー*1を当てればボールに戻せるから大丈夫よ。それに本当にどうしようもないと思ったらわたしに相談しに来てくれればいいから」

 

「うう……そうする……」

 

 覚悟はしたつもりだったがとんだ落とし穴だ。先に話を聞いておいて本当に良かった。

 しかしこうなるとどうやって育てようか……流石にギャラドスに進化するまでハナダにいるわけにもいかないし、先にフシギダネやオニスズメを進化させる必要があるかもしれない。

 だがこの程度じゃ諦めないぞ。いつまでかかっても絶対にギャラドスまで進化させてやるからな。

*1
モンスターボールから出る赤い光。




偶然だろうけどこの話の投稿日付近にギャラドスが出てくるポケ二次多くてちょっと不思議だった
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