リーフにTS転生しちゃったけどせっかくなので楽しみたいと思います   作:七色レインボー

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ニビシティに着いたらしい

 タケシの先導の元、ニビシティへ到着するなり急いでポケモンセンターへと駆け込んで、傷付いたピカチュウの治療をお願いする。

 ここでピカチュウの治療を優先してくれたのは、俺たちが必死に訴えたのもあるだろうが、タケシの口添えがあったのが大きかっただろう。あの時、あの場でタケシと出会えたのは本当に幸運だった。

 どうやらタケシは森の噂について調べていたようで、サカキと交代でパトロールを行なっていたらしく、その時に尋常ではない様子の子どもの声が聞こえたとのことで、急いで駆け付けてくれたようだ。

 息が上がっていたのはそのせいだったのだろう。少しでも遅れていれば俺は今頃スピアーの餌食になっていただろうし、感謝してもしきれない。

 

 念の為にと俺たちも検査を受けさせられたが、結果は特に問題無し。やはり問題はピカチュウの容態だったが、これについてもすぐに治療を行えたことで命に別状は無いとのこと。色々と検査は必要らしいが、とにかく助かるようでよかった。

 これで全ての問題が解決し万々歳。めでたしめでたしで終わりを迎えた──はずだったのだが。

 

「……おい、リーフ」

 

「…………!」

 

 ゴゴゴゴゴ、と効果音が付きそうな迫力で対面に座ったグリーンとレッドが睨み付けてくる。それだけではなく、フシギダネとオニスズメまでもがあちら側に付いていた。

 明らかに怒っている。それも『リーフ』が経験したことの無いレベルで。

 

「ま、まあまあ二人とも落ち着け。気持ちはわかるが、全員無事だったんだからいいじゃないか」

 

「タケシ、あんたには感謝してるが引っ込んでてくれ。これはオレたちの問題だ」

 

「…………!」

 

「あ、ああ……わかった……」

 

 タケシが仲裁に入るも、二人の迫力に圧されてすぐに引き下がってしまう。

 どうしてそこで引き下がるんだ。男二人に女の子が責められてる状況だぞ。もっと粘れ。

 

「なあリーフ。お前、あの時何する気だったんだ?」

 

「え、えーっと……みんなが逃げれるように時間を稼ぐつもりでした……」

 

「へえ、どうやって? 当然その後自分も逃げ切れる作戦があったんだよな?」

 

「………………」

 

 ダメだ。目を直視できない。

 

「どうした。言ってみろ」

 

 言ってみろ、だなんて言っておきながら明らかに答えを期待していない顔だ。

 もうこうなったら俺の言えることは一つだけだ。

 

「……み」

 

「み?」

 

「──みんな助かってよかったねっ!」

 

「やれ、お前ら」

 

「だねぇーっ!」

 

「くえぇーっ!」

 

「ちょ、待っ──いたたた痛い痛い! つつくのやめて! スネもダメだって痛い痛い痛いからぁ!」

 

 瞬間、グリーンの指示でフシギダネとオニスズメが攻撃を開始した。痛い! めちゃくちゃ痛い! 主に対して容赦が無さすぎる! 

 

「わかってんのか? スピアーにやられてたらそんなもんで済んでないんだからな」

 

「わかってる! わかってますからやめさせてください! お願いします!」

 

「それはそいつらの機嫌次第だ」

 

「そんな──痛い痛いごめん! ごめんってば! 許してぇ!」

 

 我ながら情けない声で必死に懇願し、もう何度か攻撃を食らったところでようやく折檻が止まった。

 や、やっと終わった……。これでこの二匹の怒りも収まって……ないなこれ。まだ全然怒ってる。ブチ切れだ。

 

「だねぇっ!」

 

「くえぇっ!」

 

「ごふっ!?」

 

 二匹の友情ダブルアタックが鳩尾に突き刺さる。本当に容赦が無い。まだまだお仕置は終わらないようだ。

 とりあえず次に来る衝撃に備えて心の準備をしておく。しかしいつまで待ってもそれは来ず、一体どうしたのかと腹に刺さったままの二匹を見ると。

 

「だねぇ……」

 

「くえぇ……」

 

「──!」

 

 ──泣いていた。

 その光景に言葉を失ってしまう。そして同時に、自分が何をしでかそうとしていたのかをはっきりと理解した。

 

「お前がオレにボールを投げ渡した時、そいつらずっと外に出ようとガタガタ揺れっぱなしだったんだぞ。お陰で抑えるのも一苦労だったぜ」

 

「……うん」

 

 もし俺とこの中の誰かの立場が逆だったらどうだっただろうか。

 きっとその判断には反対しただろうし、ふざけるなと言いながら鉄拳の一つでもかましたかもしれない。

 だって納得できるわけがないのだ。この中の誰かが犠牲になることを許容できるわけがない。その気持ちはポケモン含めて全員同じだったわけだ。

 

「ごめん、みんな。ちょっと自分を軽く見すぎてた。これからはちゃんと考えてから動くよ」

 

 (リーフ)がいなくなると悲しむ人やポケモンがいる。それを本当の意味で理解した今、軽率な行動は控えなければならないだろう。俺がやりたいのは後から思い返した時にふっと笑えるような楽しい旅であって、誰かの心に傷を残すような悲しい旅ではないのだから。

 それに折檻を受けるのはもう懲り懲りだしな。

 

「……話は纏まったか? それなら少し聞きたいことがあるんだが」

 

 と、話が一区切り着いたところでタケシの発言。

 そうだった、まだいたんだった。……なんか他人が聞いてるところでこういう話してたって考えるとちょっと恥ずかしいな。

 

「なんだ、まだいたのか。別に帰ってもよかったんだぜ」

 

「はは、手厳しいな。だがおれも仕事なんだ。悪いが少し付き合ってくれないか?」

 

 照れ隠しなのかグリーンが嫌味を言うが、それにも笑って対応するタケシ。

 お、大人だ……いや、でも確かタケシって設定的にはまだ子どもと言える年齢だったような気が。実際いくつなんだろうか。見た感じは十五歳とかそこらだけど。

 それにしても……。

 

「仕事……ですか?」

 

「…………?」

 

 気になるワードがタケシから飛び出す。

 タケシの仕事といえば、やはりジムリーダー関連のことだろうか。

 

「ああ。きみたちも知っているかもしれないが、最近トキワの森の様子がおかしくてな。おれがあそこにいたのも、調査のためにサカキさんと交代でパトロールをしていたからなんだが、本来あんなところでスピアーに出くわすなんてそうそう無いんだ。だから何があったのか話を聞きたくてな」

 

「……」

 

 タケシがそう説明する。

 なるほど。どうしてニビを拠点にしているはずのタケシが森にいたのか気になっていたが、そういうことだったのか。

 偶然タケシがパトロールしている時間帯で、たまたま駆け付けられる距離にいたから助かった。本当に奇跡みたいな話である。

 タケシの息が上がっていたのもそのせいだろう。少しでも遅れていれば俺は今頃スピアーの餌食になっていただろうし、これは感謝してもし切れないな。

 まあそういうことなら協力に是非は無い。

 

「助けてもらったお礼ってわけじゃないですけど、わたしたちに答えられることならなんでも答えますよ。ね、レッド」

 

「…………」

 

 レッドが頷く。

 何を聞かれるかはわからないが、命の恩人の頼みなら大抵のことは聞き入れよう。質問に答えるくらいなら安いものだ。

 

「ありがとう。では早速だが、どうしてあんなところで襲われてたんだ? スピアーの巣を攻撃でもしたのか?」

 

「まさか! しませんよそんなこと!」

 

「…………!」

 

 俺もレッドも全力で否定する。

 何を間違えばそんなことをしようと思えるのか。自殺行為に等しいじゃないか。

 

「ふむ、違うのか。では道を外れて森の奥深くに行ったとかか?」

 

「いいえ。ちゃんと立て札に沿って歩いて来ました」

 

「…………」

 

 トキワの森には至る所に立て札が刺さっており、それに従って歩けば森の中を迷わず歩けるようになっている。

 さらに言うならそういう場所は人が歩きやすいよう道が整備されているので、新米トレーナーでも比較的安全に移動することができるのだ。

 少なくとも道中その道を外れた覚えは無い。

 

「なるほど。話を聞く限りではきみたちがスピアーを怒らせたわけではなさそうだ。なら一体なぜ襲われていたのか……」

 

「なんで襲われたのかなんてオレたちの方が聞きてーぜ。スピアーたちはあのピカチュウを追ってたみたいだけどな」

 

「何? あのピカチュウはきみたちの手持ちじゃなかったのか?」

 

 少し意外そうに言うタケシ。

 そういえばタケシが来たのはピカチュウをボールに入れた後だったっけ。それなら勘違いしていても不思議は無い。

 

「一応保護のためにレッドのボールに入れたが、ついさっきまでは野生だったぜ。怒らせるってんなら、あのピカチュウが巣にちょっかい出したんじゃねえの?」

 

 グリーンが続ける。

 確かに思いあたるのはそれくらいだし、ピカチュウの傷を見てもその可能性が高そうだけど。

 それにしても、なんかグリーン苛立ってる……? 

 

「そうだったのか……。だが、そうだとしても……」

 

 タケシはタケシでどこか納得がいっていないらしく、何かぶつぶつと呟き始めた。どこか気になる点でもあったのだろうか。

 

「あの、タケシさん?」

 

「ん? ああすまない、話を続けよう。確認だが、きみたちがスピアーを刺激したわけじゃないんだな?」

 

「もちろんです。でもそれが何か?」

 

「そうか……いや、ありがとう。他に何か気になったことは無いか?」

 

 他に……と言われてもなぁ。

 襲われたこと自体が突然で何がなんだかわからなかったし、気になったことと言われても特には──。

 

「……あっ」

 

 あった。気になったこと。

 でもあんな幻覚同然の話をしていいのだろうか。

 

「なんだ? 何かあるのか?」

 

「いや、でもわたしの気のせいかもですし……」

 

「それでもいい。とにかく情報が欲しいんだ。きみさえよければ話してくれないか?」

 

 タケシが真剣な表情で言う。

 追われてた時のことだし、自分でも見間違いだと思うけどタケシがそこまで言うなら話すことにしよう。

 先に気のせいかもしれない、と念押しだけしておいて。

 

「その、スピアーの目がなんだかおかしい気がしたんです。赤いのはそうなんですけど、血の色みたいだったというか……。あと変なモヤみたいなものも見えた気がします」

 

「目の色? モヤ? 詳しく聞かせてくれ」

 

「く、詳しくと言われても……あの時は必死だったし、怖かったからそんなふうに見えただけかもなので……」

 

 タケシが詳細を求めてくるが、俺にもあれがなんだったのか全くわからないので説明しようがないのだ。

 恐怖が作り出した幻覚と言われればそうだったんだろうなと納得できるような状況だったし。

 

「そうか……わかった。なら質問させてくれ。そのモヤとやらはあの場にいたスピアー全員に見えたのか?」

 

「ほとんどはそうだったと思います。もしかしたら数匹は違ったかもですけど」

 

 逐一全てを確認して覚えているわけじゃないが、少なくともぱっと見える範囲ではそうだったように思う。本当にあれはなんだったんだろうか。

 

「なるほど。二人もこの子の言っているものを見たのかい?」

 

「いいや、オレは見てねえ」

 

「…………」

 

 グリーンとレッドが否定する。

 そうなのだ。この二人が見てないと言うから、余計に自分を信じられないでいるのだ。そもそも見る余裕が無かったというのもあるけれど。

 

「ふむ……わかった、ありがとう。とにかく怪我が無くてよかった。おれはジムに戻るが、きみたちはゆっくり体を休めてくれ。ニビの観光もしていってほしいしな」

 

「あ、ありがとうございます、タケシさ──」

 

「待てよ」

 

 そうしてタケシが立ち上がって別れを済ませようとした時、グリーンが制止の声を上げた。

 その瞳には剣呑な色が宿っている。グリーン、何を……? 

 

「何かな?」

 

「何かな、じゃねーよ。あんたから謝罪の言葉を聞いてねえ」

 

「ちょっとグリーン!?」

 

「…………!?」

 

 何を言い出すのかと思えば、次に続いたのは信じられない言葉。

 その場の空気が凍る。こいつマジで何言ってんだ!? 

 

「タケシさんはわたしたちを助けてくれたんだよ!? 命の恩人に何言ってるの!?」

 

「…………!」

 

「恩人? はっ、何言ってんだ。タケシは異変のことを知ってたんだぜ。だったらジムリーダー権限でも使ってゲートを封鎖してりゃ、オレたちがこんな目に遭うことも無かったんだ」

 

「グリーン!」

 

 本っ当にこいつは……! いっぺん殴って性根叩き直さなきゃダメか!? 

 

「……いや、そうだな。その少年の言う通りだ」

 

「タケシさん!?」

 

 拳を固めて本気で殴るか考えていると、今度はタケシの方から衝撃発言が飛んできた。なんでタケシが謝るんだ!? そんな必要どこにも無かったよな!? 

 動揺している間にもタケシは独白する。

 

「今までにも似たようなことはあったんだ。だがその時は野生ポケモンが表道にまで出てくることはほとんど無かった。ニビとトキワを繋ぐ通り道には『むしよけスプレー』を撒いているからな。最近は報告を受けて『ゴールドスプレー』にグレードアップさせているが」

 

 タケシが言っている『むしよけスプレー』及び『ゴールドスプレー』とはポケモンが嫌う臭いや成分が含まれている道具であり、それを吹き掛けておくとポケモンに近寄られにくくなるという代物だ。

 もちろん絶対の効果を保証するものではないが、それでもわざわざ嫌いな匂いがするところへ近付こうとする生物は少ないだろう。

 さっきタケシが『スピアーと出くわすような場所じゃない』と言っていたのも、おそらくはそれが要因だ。

 

「これらの効果を突破してくる野生ポケモンはそう多くない。それこそ我を忘れるくらい怒り狂っていたり、よほど興奮しているとかでもない限りな」

 

「……あれ? でもそれだとピカチュウも入ってこれなかったはずなんじゃ……」

 

「…………」

 

 俺の疑問にレッドが頷いた。

 あのピカチュウと出会った時は怒り狂うどころか弱りきっていたし、どう考えてもタケシの言うスプレー突破の条件を満たしていたとは思えない。

 そんな疑問に答えるようにタケシは口を開いた。

 

「おそらくはスピアーから逃げるために安全な場所を探した結果、嫌な臭いが漂う方へ行けば追って来ないと考えたんだろう。ポケモンが本能的に忌避する匂いではあるが、命には代えらなかっただろうしな」

 

 それだけ必死だったんだろうとタケシは言う。

 そうか、確かにそう考えればピカチュウに関しては納得だ。けれど疑問はもう一つある。

 

「じゃあピカチュウやスピアーはそうだとしても、キャタピーまで襲ってきたのはどうしてなんでしょうか。タケシさんの話通りなら、あの道にキャタピーが近付くことは無いはずなのに」

 

「何? キャタピーにまで襲われたのか? それは妙だな……」

 

 スピアーに関してはピカチュウがちょっかいをかけた結果、スプレーの効果を凌駕するほどの怒りを抱いたと仮定してもいい。けれど道中で何度か襲撃してきたキャタピーに関しては本当に身に覚えが無いのだ。

 

「別にわたしたちから何かしたわけじゃないんです。なのに会った時から興奮状態だったからおかしいなって。そう考えると、もしかしたらあのスピアーもピカチュウに何かされたからじゃなくて、最初からおかしかったのかもしれません」

 

「ふむ……やはりこれまでの異変とは違うようだな。まさかキャタピーまでそんなことになっているとは。封鎖までは必要無いと判断したが、どうやらおれたちの見通しが甘かったようだ。本当にすまなかった」

 

「ちょっ……!? 頭上げてくださいタケシさん! そんなの全然気にしてないですから!」

 

「…………!」

 

 深々と頭を下げるタケシ。

 だいたい見通しの甘さというのなら俺たちだってそうだ。森に入る前に忠告を受けていたのだから、そこでやめておけばよかったのだ。

 それでも森に入る判断をしたのは俺たちなのだから、責任の所在は全て俺たちにある。タケシが謝る必要はどこにも無い。

 ……そりゃまあ、ゲートが封鎖されてるのが一番安全だったかもしれないけど、いくらジムリーダーとはいえタケシの一任で町間を繋ぐ道を封鎖するのも難しいだろう。少なくともトキワ側の認可──つまりはサカキの判断も仰ぐ必要があるはずだ。

 まして似たような前例では大丈夫だったらしいのから、今回同じ判断が下されたとしても何も不思議は無い。

 

「ほら、グリーンも! これで満足した!? トゲトゲしいのは頭だけにしてよね!」

 

「チッ……だいたいなんでお前は怒んねーんだよ。一番危なかったのはお前なんだぞ」

 

「生きてるからいいの! それにタケシさんは悪くないんだからそんなのただの八つ当たりでしょ!」

 

 俺がそう言うと、グリーンは不満げに鼻を鳴らしながらもそれ以上の追求をやめた。グリーンにも八つ当たりの自覚はあったのだろう。

 全くの見当外れとは言わないが、今回に関しては不幸な事故が重なったと見るべきだ。誰が悪いというわけでもない。

 

「全くもう……。まあ一応言うとするなら、もう少しパトロールを強化してほしいってくらいですかね。また今回みたいなことが起こらないとも限らないですし」

 

「ああ、それはもちろんだ。加えてトキワへ移動する者にはジムトレーナーの警護も付けるようにする。森の封鎖も考慮に入れよう。思っていたよりも危険な状態のようだしな」

 

 タケシの方も現状維持ではなく、より安全になるよう新しい案を考えていたようだ。これならグリーンも文句無いだろう。

 

「それにしても凶暴化、か。もしかしたらきみが見たモヤとやらが関係しているのかもしれないし、もっと詳しく調査しないといけないな。サカキさんにも連絡して、パトロールの時間を増やしてもらうとしよう」

 

「うーん……それはどうなんでしょう……」

 

 やはりというか、タケシもサカキをかなり信頼しているようだが、俺にしてみれば不安材料の一つでしかない。

 なんなら異変の原因ってサカキじゃないのか。ポケモンが凶暴化する薬でも使ってるとか……そんなこと言ったら怒られそうだけど。

 それにモヤ云々もあまり真に受けないでほしい。それを見た俺自身が未だに幻覚を疑っているのだから。

 

「まあ実情がどうであれ、ここからはおれたちジムリーダーの仕事だ。なるべく早く解決すると約束する。それで今日のところは許してくれないか?」

 

「許すも何もわたしは怒ってませんし……レッドとグリーンもそうだよね?」

 

「…………」

 

「……ああ、それで構わねーよ」

 

 全然構わなくなさそうだが、これ以上問答を続けたところで何にもならないので良しとする。

 

「ありがとう。そうだ、詫びと言ってはなんだが、ニビ科学博物館を無料で見物できるよう話を通しておこう。この町の名物なんだ。是非見ていってくれ」

 

「え、いいんですか?」

 

「…………!」

 

「もちろんだ。存分に楽しんだらその後ジムに来るといい。いつでも受けて立とう」

 

 レッドの瞳が輝いている。

 ニビ科学博物館といえば化石が展示されていることで有名であり、男ならばロマンを感じざるを得ないだろう。

 レッドもその例に漏れず、ワクワクを抑えきれていないのが見てわかった。

 

「よかったね、レッド。グリーンも来るでしょ?」

 

「悪いがオレはパスだ。なあタケシ、この後すぐにでもジム戦は申し込めるんだよな?」

 

「それは構わないが……休まなくていいのか?」

 

「いらねーよ。んなことよりオレは早く強くなんなきゃいけねーんだ」

 

 そんなレッドとは対照的に、グリーンは効率重視のようだ。せっかく無料にしてもらったんだから、どうせなら楽しんでいけばいいのに。

 それともタケシからの施しは受けたくないとか、そういうプライドの問題だろうか。グリーンらしいといえばグリーンらしいが。

 まあグリーンとゼニガメなら問題なく突破できるだろう。ジム戦の心配はしなくてもよさそうだ。

 

「それじゃ、ここからは別行動だね。ジム戦頑張ってね、グリーン」

 

「…………!」

 

「はっ。オレ様を誰だと思ってんだ? 余裕に決まってんだろ」

 

「ふっ、威勢がいいな。ではその実力、見せてもらおうじゃないか」

 

 言いながらグリーンとタケシがポケモンセンターから出て行った。

 俺はピカチュウの様子が気になるし、回復するまではレッドと一緒にここで待つつもりだ。命に別状が無いとは聞いたが、心配なものは心配だしな。

 

「……さて、じゃあただ待ってるのも暇だし『ニビあられ』でも買ってこようかな。レッドも食べるでしょ?」

 

「…………」

 

「うん。じゃあ買ってくるからちょっと待ってて」

 

 実は食べてみたいと思ってたんだよな、『ニビあられ』。どんな味がするのか楽しみだ。

 そんなわけで、俺はポケモンセンターを後にして近くの土産屋に向かうのだった。

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