ツインズ・リーフ   作:効果音

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前回の『告白してないだけで付き合ってる関係』思いの外自分に刺さってて満足。
それはそれとして今回分割回なのでちょっと短め。


どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!!

 RiNGの近くのドーナツ屋に呼び出された湊音は髪のアレンジをハーフツインにして、赤を基調にしたゴシックロリータという場所が池袋であることを踏まえて、ギリギリ許されそうなコーデをしていた。

 呼び出した本人が来るまで、猫舌なせいでホットが飲めないという情けない理由で緑茶をちびちびと飲んでいた。

 

「本当に睦ちゃんそっくりなんだね」

 

 本来は愛音と待ち合わせをしていた筈なのだが、呼び出した本人ではないそよがやってきて湊音の対面に座る。

 

「あ、ごめんね。長崎そよです。って、多分睦ちゃんか祥ちゃんから聞いてるよね? 私も湊音くんの事、聞いてるから自己紹介とかはなしで良いよ?」

「なるほど……」

 

 可愛くない。

 そよとは初めて話すはずの湊音は不思議とステージの上に居る時の彼女には特に思うことはなかったが、今こうして目の前に居る彼女には即座にそういう感想を抱いた。

 

「それはそれとして、初めまして。何か用かな?」

「愛音ちゃんが急用ができたから代わりに来たの。

 ついでに祥ちゃんどうしてるのか。聞いても良い?」

 

 元CRYCHICのメンバーとして、音信不通になってしまった祥子の消息が気になるのは当然の話だ。

 

「本人から話さないことを俺が話すと思う? そういうの、可愛くない」

 

 だけど、直感的に可愛くないと感じた相手にぺらぺらと喋ってしまうほど信用もできなかった。

 

「話せないようなことになってるってことで良いのかな?」

「……想像にお任せするよ」

 

 多分きっと話してしまえば楽なのだろう。

 でも、祥子の方に踏み込まれたくない理由があるのであれば、湊音は彼女の秘密を守ることしかできない。

 

「……ふーん。そっかー……また来るね」

「機会があったら、また今度」

 

 情報がもう引っ張り出せないと判断するや否や、そよは踵を返してその場を離れていった。

 

「いや、チケット……」

 

 本来は愛音とまたチケットの取引をする予定だったのだが、代理で来たはずのそよも何処かに行ってしまったため、チケットは手に入らなかった。

 

(ただ見に行く分には当日分のチケットで良いか……)

 

 一回のライブでどれだけ反響があったかはわからないが、最悪ノルマ分のチケットは愛音がどうにかするだろう。

 

(っと、そろそろ時間か……)

 

 次の予定の時刻が迫ってきた。

 湊音は冷めた緑茶を一気に飲み干して、ドーナツ屋から出ていく。

 

「あ、ようやく来た。おっそーい」

 

 少し歩いた先にある地下にある大型の複合商業施設へ続く長いエスカレーター入口前で集合だったのだが、湊音を待っていたのは睦ではあったが、睦ではない方の睦だった。

 服装も紺色のベレー帽、白のブラウス、ロングのプリーツスカートで湊音お気に入りのブーツでコーデを決めていたが、少し前に彼が睦とデートの時にしていたモノだった。

 

「頭からつま先まで、この前俺が着てたやつじゃん……まぁ、可愛いから良いけど」

「だって、湊音くんが一番可愛いなら、同じ格好した方が良いに決まってるでしょ?

 というかさぁ。折角この服着てきたんだから、そっちも合わせてよ。髪型なんて祥子ちゃんっぽくしちゃってさぁ」

「さっちゃんは関係ない。服に合わせて髪型のアレンジしただけ」

 

 実際、服選び自体は場所的に問題無さそうと判断して普段はあまり着ないゴスロリにして、それに合わせた髪型にした結果がそうなっただけである。

 一番見慣れた髪型がそうだったことはさておくとして。

 

「ふーーーん、どうだかね……まぁいいや、行こ」

「そういえば、名前が同じ睦だと不便だよな? 呼び分けるためにもあった方が良いと思うんだけど、何か希望とかある?」

 

 睦が湊音の手を掴んでエスカレーターに乗って地下に降りるまでに聞いておかなければいけないことの一つを今のうちに聞いておく。

 もし、本当に産まれるはずだった姉であるのであれば、『睦』と呼ぶのは嫌がるだろうと思い、どうせなら本人の名乗りたい名前があるか聞いてみた。

 

「……あおい。からっぽの空と書いて、(あおい)

 

 この世に産まれ落ちる前に母の胎内で聞いた気がする名前を湊音に告げる。

 それが本当に自分の名前だったのか、数ある候補の一つだったのかわからない。

 睦の中で名前も与えられず、都合の悪い時に引っ張り出される姉代わりの名前としては、皮肉だけれどこれ以上に相応しい名前もない。

 

「じゃ、(あおい)で」

「……アイス屋さんあるじゃん。お腹空いたし、何か食べようよ」

 

 呼び名も決まってエスカレーターが終着点に着くと、すぐ目の前にあるクレープ屋を空が指差す。

 

「良いけど、味は?」

 

 今回のルート構成的に、ここで少しくらい食べても問題ないと判断して財布を取り出す。

 

「イチゴとクッキークリーム、あ、ダブルね。コーン付いてるやつ」

「結構欲張るじゃん」

 

 別にそれでも買ってしまう辺り、我ながら甘いなぁと思いながら会計を済ませて空に渡す。

 

「わぁ……! わぁ……!」

「溶ける前に食べなよ。歩き食いとかして服汚れても嫌だし」

 

 受け取った途端に空の表情が先程までの不機嫌そうな表情から一変して、二段重ねのアイスに目をキラキラと輝かせていた。

 あまりにも睦らしくない姿が空の自己申告の姉というには相応しくない言動に微笑ましさを感じながらも、本当は末っ子だったのでは。という疑問を抱く。

 

「食べ終わった! これは湊音くんにあげる!」

 

 人の迷惑にならない道の端の方でチロチロと舐めたりスプーンで掬って食べたりして、アイスを食べ終わった空がほんの少しだけアイスが残っているものの、ほぼコーンだけと化した残骸を湊音に押し付ける。

 

「コーンは?」

「……だって、これあんまり好きじゃないんだもん!」

 

 店から貰ったナプキンで口回りを拭い、それをゴミ箱に捨てた空が湊音に渡したコーンを忌々しげに見つめる。

 

「あのさぁ……じゃあ、カップで良かったよね?」

「コーンじゃないとアイスぽくないじゃん!」

 

 コーンよりカップの方が金額的にも安い上に、食べ滓が出ることもなく、それが服に付着することもない。

 

「ワガママ娘め……」

 

 如何に睦が手の掛からない良い子だったか。

 こんな形で実感することになるとは思わなかった湊音は何とも言えない表情で残ったコーンをバリバリと音を鳴らしながら口の中に放り込む。




ムジカが無い→モーティスという名を与えられない→うーん、なら、湊音の没案だった名前を渡そう。
そういう理由で(あおい)という名前になりました。
睦が二話使ってデートしたならほなら空も二話使うか……。
感想とか高評価あると執筆速度が上がります(承認欲求のケモノ)
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