理由はデジモンカードの世界大会の1次予選で優勝してたからです。
2次予選に向けて来月まで忙しいので更新頻度落ちますが悪しからず。
今後の打ち合わせを事務所で終え、帰り道電車に揺られていると睦がハッとした表情でカバンの口を開けて中身を確認する。
「……事務所に忘れ物したかも」
「え、何を? モノによっては明日でもいいだろうけど」
「明日提出の学校の課題」
「クリアファイルに入ってるやつ?」
「うん」
睦のうっかりに湊音があちゃーと顔に手のひらを当てリアクションを取る。
ちょうど次の停車駅は家の最寄駅と事務所の最寄駅の中間の駅であるため、そこで折り返せば問題はない。
「仕方ない……取ってくるか。睦は先帰っていいよ」
「でも……」
湊音の記憶が正しければ、今日はバラエティ番組でゲストで睦が好きではあるものの、滅多にメディアに出てこないギタリストが登場するとかしないとかで彼女が楽しみにしていた筈である。
今から事務所に戻っていては、その番組の放映時間に間に合わない。
録画の設定はしてはいても、リアルタイムで視聴したいというのがファンとしての
「んー、俺が家に帰った時に冷凍庫にストックしてたバニラのアイスバーが補充されてたら嬉しいかな」
「……わかった」
それくらいなら多少家に着く時間がズレても放映開始には間に合う。
そして、自分の頼みを聞くという形で睦の罪悪感を打ち消そうという湊音の算段だった。
「よし、素直で可愛い。じゃ、行ってくる」
程なくして駅に着くとドアが開き、湊音が電車から下車し、すぐに反対車線の電車に乗り換えて走らない程度に急いで事務所に戻る。
スタッフ用のカードを使ってAve mujicaの部屋に入ると、今日は睦以外のメンバーも用が終わったら帰宅している筈なのだが、照明がつけっぱなしにされていた。
(誰かつけっぱなしで出ていった? クリアファイルは無事見つかったし帰るか)
長机の上に起きっぱなしにされた睦のクリアファイルを回収しようとすると机の下にある何かが足にぶつかった。
「いて、いたくねぇけど……なーにが落ち、て……」
一応、誰かの落とし物である可能性を考慮して屈んで長机の下を確認すると、野生の海鈴が体育座りをしていた。
若干目元が腫れているような気がしたが、正直反応に困り、数秒の間だけ沈黙が続いた。
「何してるんですか?」
「俺の台詞な?」
海鈴の言葉に思わず反射でツッコミを入れてしまったが、機会も理由もなかったせいで彼女と湊音が一対一で話すのは始めてだったことを思い出して、少し馴れ馴れしかったかと自省する。
「打ち合わせ後にそれっぽい雰囲気だったので、合わせをするのかと思ってスタンバっていたのですが……」
「あー……」
湊音はキャスト側の打ち合わせではなく、スタッフ側の打ち合わせに参加し、お互いの打ち合わせが終わったら合流という流れで帰っていたため、その時の詳しい会話内容は知らないが、ふんわりとそれっぽい雰囲気になったのだろう。
確認のために湊音が睦にメールを送ってみると、ノータイムで『そんな話してない』とだけ返事が来た。
「私って信用されてないんでしょうか?」
「えっ、信用?」
「予定をドタキャンはしたこともありませんし、皆さんに迷惑を掛けた覚えもありません。それなのに何故……!」
そもそも、合わせをするなどという話はなくて、何となく面倒臭い話の気配はするのだが、湊音的にはここで放っておくのは可愛くない。
だが、しかし、海鈴のこともこれといって仲が良いわけでもなければ、知らないことの方が多いくらいの関係値であることを考えると何処まで踏み込んで良いものかもわかり難い。
「そもそも、睦から合わせの話なんて聞いてないし、今日じゃなかっただけじゃない?」
とりあえず、理由は知らないまでも誤解を解くことに舵を切る。
湊音の部屋のカレンダーに書かれている睦のスケジュールを思い出すに元々合わせの練習もなく、次回の合わせについて触れただけなのだろうと推測する。
「ですが……」
「直接メンバーに聞いたら良いじゃん」
この手のトラブルは大体はコミュニケーション不足からくるもので、そもそもの話、ただの一人のスタッフにしか過ぎない湊音に相談するよりも遥かに確実で手っ取り早い手段である。
「ま、どっちだって良いけどさ……俺は荷物取りに来ただけだし」
睦から無言のアイスバー購入報告メールが届いたことを確認した湊音は海鈴をおいて事務所を出ていき、再び電車に乗り込んだ。
通勤通学時間に重なってしまったせいか、満員電車に乗る羽目になってしまった。
「……何してんのさ」
すし詰め状態の車内をどうにか進んだ先に居た祥子の顔を見て、湊音は思わず言葉が漏れ出てしまった。
「何って。家に帰るだけですわ」
「そりゃそうだろうけど……」
祥子が先回りして待ち伏せして改めてAve mujicaに勧誘してくるようなことはあったが、こうして偶然顔を合わせてしまうのは想定外で、それ以上にお互いに言葉が出てこない。
(わざわざわたくしに会いに……なんてこと、今はないでしょうし……それにしても──)
(どうしよう。いい加減、さっちゃんとギクシャクしたままなのは嫌だけど、今のさっちゃんになんて言えば良いかわかんないな……でも、mujicaのさっちゃんは嫌だし……それにしたって──)
(近いですわね)
(近い……)
電車が強めに揺れると、ドアを背にしている祥子の顔の横に湊音の手がドアに着く。所謂、壁ドンのような構図になってしまい、気まずそうに彼が目を逸らす。
「……ごめん」
「いえ……仕方ないですわ」
以前なら、湊音の態度を可愛いとからかっていたが、未だ仲違いしている状態ではそんなこともできない。
オブリビオニスという仮面さえ外してしまえば、互いに心を晒し合えるのだが、もうその過去さえ忘れ去ると決めたのは他でない祥子自身だった。
「では、ここで降りますので」
「わかった……」
車内で無言のまま気まずい空気が流れるまま経つこと十数分。祥子の住むアパートの最寄り駅に着き、下車する彼女と共に湊音も下車していた。
「……わざわざ、送ってくださらなくて結構ですわ」
「流石にもう暗いし、女の子があの辺りを一人で歩いてるのは危ないというか……」
「見た目で言えば、湊音も変わりませんわ。折り返す時のことを考えればなおのこと」
日が落ちてきて暗くなった時間に、あのアパートの付近を女子高生が一人で歩くには無用心に思えた湊音は送ろうと思ったのだが、祥子の言う通りでもあった。
「確かにそうかもだけど。そういうの関係なく、前提というか、当たり前にというか……さ」
押し倒して襲おうとした人間と夜道を歩こうという方が危ないのではないか。と指摘しそうになったが、それを抜きにしてでも送ってくれようとしたのだと考えると、祥子は何とも言えない気持ちにさせられる。
「本当に、そういうところですわよ」
「それ、どういう意味?」
「どうもこうも、そのままの意味ですのよ……」
マイムジの合同ライブのお陰で日間ランキング30位だったり高評価増えててウレシイ……ウレシイ……オデ、カンソウトコウショウカ、スキ……(被験体番号Z666)