ツインズ・リーフ   作:効果音

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シニスター・シスター

(やっぱり、この歌声は好きだなぁ)

 

 一人で『MyGO!!!!!』のライブを見にRiNGに来ていた湊音は燈の歌に耳を傾けていた。

 曲や演奏のクオリティはプロレベルとは言えないものの、アマチュアバンドなんてそんなものであると割り切ってしまえば気にはならない。

 

(睦に連絡入れて帰ろう……かと思ったけどお腹空いたな)

 

 ライブが終わり、帰路につく前に一旦睦にメールを飛ばした途端に腹の虫がなってしまう。

 

(いいや、ぱぱっと帰ってご飯食べるか)

 

 帰り際に小腹を満たすくらいならば、夕飯も平気で入るのだが、みなみが長期ロケから帰ってきていても、睦は湊音が帰ってくるまで何も食べないため、いたたまれない気持ちになってしまう。

 

 流石にそれは可愛くない。

 

(あ、そういやコンビニ)

 

 すぐに地元駅まで戻ってきて、お気に入りのアイスバーが切れていたことを思い出してコンビニに立ち寄る。

 飲み物と目当てのアイスバーの箱を籠に入れて他に何か必要な物がないかを確認しておく。

 

(そういえば、空って何が好きなんだろう。ちゃんとそういうのも聞いてあげた方がいいのかな)

 

 睦の好みは把握してはいるものの、空のことはまだわからないことだらけである。

 気になった湊音は適当にお菓子を籠に詰めて、レジに向かって会計を済ませてコンビニを出る。

 すると、何処かで見たことがあるような金髪のロングヘアーの同い年くらいの少女が訝しげにスマホを見ていた。

 

(何かスマホとにらめっこしてんな。人と待ち合わせとかか?)

「む……」

 

 一瞬視線を向けた瞬間に少女と目が合ってしまい、彼女の方から近付いてきた。

 

「あ、ごめん。目立ったからつい。すぐ帰──」

「ちょっとここら辺の道教えてもらっていいですか!? あとあと! 若葉の双子(ツインズ・リーフ)の湊音くんですよね! テレビ見てました! サインください! あっ! えー、スマホのカバーに! ペン買ってくるんで!」

「……えぇー」

 

 言葉の洪水を浴びせて湊音が溺れている間に少女はコンビニの中に入っていってしまった。

 彼女のスマホを手渡されていたせいで、放置して帰る訳にも行かず、コンビニの前で立ち往生するしかなかった。

 

「お待たせしました! これでどうぞ!!」

「サインなんて書いたことないけど」

 

 すぐに戻ってきた少女から油性ペンを渡され、期待の眼差しが凄く、プレッシャーのせいでハードルが上がっていたせいで、渋々湊音は即興でサインを考えて、それっぽいモノをスマホのカバーに書く。

 

「名前も書いておこうか?」

「無くていいです……自分の名前、好きじゃなくて……」

「それは、ごめん」

 

 名前を聞くついでにサインに書きたそうかと思ったが、先程のテンションが嘘のように下がってしまい、反射的に湊音も謝罪を口にしてしまう。

 

「あっ、いや、良いんです! 私の都合なんで! それでそう! 最近こっちの方に越してきたんですけど、道を聞きたくて……! スマホの充電も残り二桁も無くて焦っちゃってて!」

「サインよりそっちの方が問題だろ……で、どこまで行きたいの?」

「あ、ここら辺の──」

 

 地図アプリを起動して、少女の目的地を聞くと、名前が紛らわしい故に起きた勘違いによって、最寄りの反対側の出口からここまで来てしまったらしい。

 

「なるほど……ありがとうございます! 大体の道は覚えたので私行きますね」

「駅まで送ってく。時間も時間だしね」

「じゃあお言葉に甘えて……」

 

 曲がりなりにもファンだと言う少女に、夜道を一人で歩かせるのは気が引けた。

 睦には少しだけ寄り道をするとだけ連絡をして駅の方へと二人で歩き出す。

 

「そういえば、さっきの話聞いてからだと聞きにくいんだけど、名前は?」

「……ハツネです」

 

 俯きながらそう名乗ったハツネから、ずっと既視感が拭えない。

 確実に何処かで見たことがあるような気がするのに、どこか絶妙にそうではないような。そんな感覚に襲われる。

 

「ハツネ。ね。よろしく」

「ほんの数分だけの付き合いですけどね。ところで、ちょっと聞いてみたいことがあったんですけど……」

「聞きたいこと?」

 

 昔から、若葉湊音という存在を知ってから、ハツネは気になることがあった。

 初対面の彼女に聞きたいことと言われても、見当がつかない。

 

 それは湊音も一度は感じたことがあるという確信がハツネにはある。

 同じ()を持つ人間が居る世界で生きていく上での答えが欲しかった。

 

「睦ちゃんのこと。嫌いじゃなかった?」

 

 昔、テレビに映っていた湊音を見たハツネは、彼がそういう風に考えているような気がした。

 ある時期からそんな風には見えなかったが、それを乗り越えた彼が輝いて見えていた。

 

「何でそんなこと」

「私、アイドルになりたかったんです。キラキラしてて可愛くて楽しそうで。私の知らない世界に存在してるみたいで……そこで私も生きたいなって」

 

 何処か諦めたような表情の彼女を見て、湊音はようやく既視感に気づく。

 それが事実かどうかの確認を今する気は起きず、あの言葉を思い出しながら、懐かしさに浸る。

 

「昔は好きじゃなかったと思う。

 だけど、自分の顔を好きにしてくれる子が居たから今は好きになれた。と思う」

 

 問題は、その人とは絶賛仲違い中で告白するタイミングを逃し続けている。とは言えず。湊音はイエスともノーとも言えない半端な表情をしていた。

 

「恋! 恋ですか!? 恋ですよね!?」

「食いつきエグ……」

 

 恋バナの香りを嗅ぎ付けて目を輝かせるハツネの食いつきに湊音が引き気味になる。

 が、そのタイミングで駅前に着いてしまった。

 

「着いたし、俺はここで──」

「えぇ!? 聞かせてくださいよ! 気になるじゃないですかぁ!」

 

 余程気になるのか、踵を返した湊音の肩を掴んだハツネが駄々を捏ねる。

 通行人の何名からか視線を向けられるが、女子高生同士のじゃれ合いにしか見えなかったのか、すぐに興味を失って視線が外れる。

 

「お腹空いてるし帰らせてもらって良いかな!?」

 

 五分ほど粘られたものの、何とかハツネを振りほどいて家に帰ると、湊音はソファーの上で睦にマウントポジションを取られてポコポコと叩かれていた。

 

「睦ー! 痛くないけど怒ってるならなんか言ってほしいんだけど?」

「あなた達、相変わらず仲良いわね」

「みなみちゃんもできれば助けてほしいんだけど?」

 

 みなみが呆れた様子で双子を眺めて自分で淹れた珈琲を啜る。

 双子が喧嘩するところを見たことないというのもあるが、高校生にもなってベッタリな異性の双子も珍しい。

 

「わからない。わからないけど、なんか嫌な感じする」

「えぇー……」

「それは湊音が悪いわ。アイスは冷凍庫入れとくわね」

「ホントか!? ホントにこれ俺悪いか!? アイスはしまってくれてありがとうだけど……お腹空いたから早く退いてほしい」

 

 睦にどれだけ叩かれても大したダメージはないのだが、空腹に耐えるにも限度がある。

 

「私もお腹空いた」

「じゃあ退いてよ」

「ん」

 

 五分ほど叩かれ続けて、睦から解放された湊音はようやく夕食を口にできた。




先月一回しか更新できなかったので今月は何回か更新したいので頑張ります。
感想あると喜んだりするのであると嬉しいです(承認欲求モンスターハンターワイルズ)
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