ボクの『個性』? 『無個性』だよ? ……ふふふっ、本当の事だよ。   作:黒月悠生

2 / 8


 作風とか雰囲気とか、似ててもどうかお気になさらず……




002P 力の証明......命の象徴

 ......どうやらボクはヒロアカの世界を舐め腐っていたらしい。

 

 

 ──ドジュッ!

 

 

 いや待って。

 

 言い訳させて欲しい。

 

 

 ──グヂャァッ!

 

 

 原作においてそんな描写は微塵もなかったし、堀越先生がそんな設定をボヤいた記憶なんてない。

 

 

 ──バンッ!

 

 

 だからボクはここ(・・)がどこなのかも知らないし。

 

 

 ──バヂュン!

 

 

 この状況(・・・・)を想定できなかったとしてもボクは悪くない!

 

 

 ──ィィイン!!

 

 

「──ぁ......」

 

 

 ──ドザッ

 

 

 ただ、強いて言うなら。

 

 

 ──グチ......メキャ......バギッ......

 

 

「ぅぁ......! くッ! ......ぁァ......!」

 

 

 運が悪かった。

 

 

 ──ゴクンッ

 

 

 

 

 

 ------------------- 

 

 

 

 

 別にボクが何か変わった事をしたとか、個性が発現したとか覚醒したとか、ヴィランに襲われたとか、そんな事ではない。

 ひっじょ〜に残念な事にね。

 

 というかね、記憶が戻った影響で高熱を出してるだけじゃなくて、頭痛とか全身の痛みとか痺れとか呼吸不全とか末端痙攣とかで死にかけて悶えてるボクに何かできるわけもなくてですね。

 足の小指の関節が二つある(・・・・)ボクには個性関連に縁はないし、両親に見守られながら寝就いたのを覚えてる以上ヴィラン襲撃とかもなくて。

 いや寝るっていうか気絶が近いけど。

 

 更にボクがいる場所は四方八方どこ向いたって真っ黒で空間認識バグりそうだし、歪な形した影を押し固めたような奴らとか、黒い靄の塊みたいな奴らが襲ってくるし。

 ボクが見上げた(・・・・)と認識する位置には、遥か遠くに幾つもの景色が映ったウィンドウみたいなモノがあるし。

 

 それに何より──

 

 ──死んでも死んでも復活するし。

 

 ふざけてんのかぁ......? 最初に死んでから今に至るまで全部覚えてるんだぞこっちはよぉ! 状況を把握する前にぶっ殺してから九回もリスキルすんな!! どんなクソゲーだっ!! 死亡十一回目は腰ぶった斬られて美味しく頂かれたよちくしょう!! 逃げ切れねぇ!! それとちゃんとどころじゃない痛みまで乗せてくんな!! これがほんとのナイトメアヘルモードってか!? 舐めてんのか精神崩壊なんてレベルじゃねぇぞ加減しろやぁ!! 廃人直行どころか肉人形になっちまうだろうがっ!! 魂砕けたら輪廻転生とか無理だろ絶対!! マジのガチで滅ぼそうとするんじゃねぇよイかれてんのか!? あぁお前らからは正気の欠片も感じ取れないが!? は!? 生物じゃねぇから生気なんかありはしないか!? アハッ! ──滅びろ。

 

 いやしかしそれはそれとして、どーするかな。

 死んでから復活するまでラグが殆どないっぽいし、ほぼ意識が連続してる影響か痛みもちゃんと残ってるのよね。

 

 だからって痛みで麻痺しっぱなしだと即座に殺されるから動かないわけにはいかないというね。

 例え初動に成功したとしても、あの──え〜と、名前後で決めるか。

 仮称『陰』共の身体能力クソ高いし、獣型・人型・異形型がいる上に特殊能力まで使ってくるんだよねぇ。

 

 なんでそんな殺意バリバリなわけ? てかなんで意思っぽいのがあるんだよ? お前ら生物じゃないだろうが。

 

 ボクのことを殺す意味はなんだ? お前らの目的は? どういった存在なんだ? 殺意の塊のくせに潰し合いをしないのは何故?

 

「ハァ......! ハッ......ッ! ──お前ら一体......! なんだ......ッ!」

 

 ──ドバァンッ!!

 

 爆破。

 爆散。

 復活。

 

 走る。

 

 十二秒か。

 幼い身体(・・・・)だが、手応えはある。

 

 それにしても、妙にスペック高いな? この身体。

 普通十二秒も逃げられないだろこんな状況。

 思考能力がどうかは知らないけど......いや、人間一人の一生分の記憶を一度に想起しておいて廃人にもなってない時点で高いか。

 

 しかもこれで未成熟。

 我が事ながら末恐ろしいね。

 

 ──ドズッ

 

「ぁ......! カッ──!」

 

 ──ズジャァ!

 

 咲き誇るは歪な花。

 紅い赫い大きな花。

 太陽になれない花。

 

 誰にも挿せない花......とかいうと怒られるな。

 てかボクがキレる。

 刺されてんのボクだろって? アハハ!

 

「まともに......っ。思考回せないなぁ......!」

 

 あ、首斬られた。

 滅茶苦茶に痛いんですけど〜? というかせめて音立ててくれませんかねぇ!? 無音で不可視の斬撃とか気配無さすぎるんだが!? どう対処しろと!

 視界が回る〜! ぐるぐるする〜! ──即死できないのキッツ。

 

 死んでいく感覚はあるのに意識が明瞭で思考が鮮明なのどうにかならないかな......これで十三回とはいえ、辛いモノは辛いし苦しい。

 『絶体絶命の艱難辛苦』とか鼻で嗤っちまうぜ。

 

 こういう時こそ『Puls Ultra』だろぉ!? は? 喧嘩なら割り増しで買うけど? 値言ってみろよ金の亡者サマ。

 

 しかし、発狂とか精神崩壊とか起きてる自覚ないけどコレボク壊れてるだろ。

 

 何故? 幾ら精神や思考、意識が肉体に依存していないとはいえ、この状況で精神や自我に不調が生じないのは違和感がある。

 黄金の精神......というにはあまりに痛々しく歪じゃないか? 覚悟も何もなく、今在り続けるとは......生まれながらの怪物(ナチュラルボーンモンスター)か? 既に狂い壊れていたのか?

 

 さて......どうだろう。

 

 でも正直言って、こっち(・・・)で死ぬ感覚って初めて死んだ時と違う感覚なんだよな。

 その点でもオカシイと言えばオカシイな。

 

「一度死をっ、経験してる──」

 

 ──影響か?

 

 ──キイィンッ!

 

 十四回目凍結。

 氷像が子供の形とか、イイ趣味だな。

 

 まだ対応しきれねぇなぁ......

 

「──はぁ......フフッ」

 

 ......なんか、唐突にプツッとキたな。

 

 ボクが何をしたからこの状況に閉じ込められる羽目になってるんですかねぇ? なぁオイ。

 いつまでも逃げては殺され続けるだけの獲物だと思ってんじゃねぇぞ......贄に毒を混ぜるのは古来よりの手法だぜ......? そんなにバカスカ喰って......どうなっても知らんぞ。

 

「子供でもっ! 命一つ壊すくらい余裕なんだぞ──!」

 

 脇目も振らずボクに迫って来た命なき『陰』に、ほぼ反射で右の拳を叩き込んだ。

 

 いってぇ......何なんだコイツ......固めた影みたいで実体の有無も判然としないくせに、クッソ硬いんですけど? 全力で殴ったから右手の骨折れたんですけど。

 

 肩まで痛めつつも、左手側から迫ってきた靄の様な『陰』に今度はボクから近づく。

 

 動きは四肢を着いた獣型。

 輪郭が揺れている上に形が大きく崩れたりするから断言はできないけど、それでもボクに跳び掛かってくる様は大型の獣を連想させる。

 今のボクよりでかい犬とか、イメージ近いかも。

 超大型といっても現実的な範疇な辺り、物凄く嫌な予感がするんですけど......?

 

 圧力すら錯覚する程の迫力がある『陰』に向かって、更に踏み込む。

 

 行けるか? いや、ただの試行、情報収集だ。

 しくじってもいい。

 ただ、無抵抗な供物であるつもりはない......!

 

 『陰』の首と思われる部分に左手を伸ばす。

 柔らかさと硬さを同時に伝えてくる左手に力を込めた。

 

 後ろになっている右足を軸に、反時計回りに左足で半円を描く。

 前に出た左足に軸を入れ替え、回転の力を左手まで伝える。

 

「──フッ!」

 

 そのまま『陰』の進行方向を少しでも変えるつもりで、全力(・・)で『陰』を投げる。

 

 よしっ。

 正直言って殆ど成功するとは思っていなかっただけに行幸! 靄でも触れたのが大きい点だね。

 

 ボクが投げた『陰』が、ボクの後を追ってきていた『陰』と激突する。

 双方にダメージが入ったらしく動きが止まった。

 

 避けるついでの嫌がらせ程度だったけど、上々の成果だね! かといって無邪気に喜んでいられないのが現在の状況っ。

 

「多対一とかっ! 素人には厳しいんっ、ですけどっ......!?」

 

 投げた後の左足を軸に更に回転。

 方向転換ついでに事故ってる『陰』二体から距離を取れる位置に、身体を投げ出す様に走り出す。

 直後、背後から無音の衝撃に襲われて吹っ飛んだ。

 

 あーもー......

 

「ウザ──」

 

 ──ドジャッ!

 

 

 

 

 ------------------- 

 

 

 

 

 水中から水面に顔を出す様な、身体の重さを感じる浮遊感と共に意識が浮上した。

 

 発熱している事を自覚できる身体は、悪寒によるものか何か違う要因があるのか震えている。

 頭も含めた全身の痛みが、幻痛なのかどうかも判断できない。

 

 というか寒いんですけど? 二重に布団被ってて汗掻いてるのに震え止まらないんですけど......吐きそう......キモイ......

 

 なんとか重たい瞼を持ち上げると、霞んだ視界に人の顔が映り込んだ。

 

「どうしたの? 典祈(てんき)......寝れない......?」

 

 不自然なリズムで行われる呼吸は、全くもって酸素を取り入れている気がしない。

 ボクの身体を覆う機械が、ボクの身体の代わりに生命維持を担ってくれている。

 

 どれか一つでもイカれたら今の危ういバランスが崩れかねないとか......瀕死ですが何か? むしろなんでコレで生きてんだよ?

 

「典祈......?」

 

 あぁ、申し訳ない。

 今ちょっと、体動かなくて上手く返事できないんだよね......五感の機能だって落ちてるんだよ? 反応返せる方が凄くない?

 

 いや返事するんだけどね。

 

「......ぁ............ぅ......」

 

 うわぁ......声出ないんですけどぉ? 頭を傾けるのも至極困難なんですが? あ、でも目が合った。

 ぼやけて見えずらいけど、ちゃんと真っ直ぐ顔を見つめて。

 

 力の入りにくい顔の筋肉を動かして。

 

 緩やかに。

 

 笑う。

 

「......大丈夫。今だけだよ......苦しいのも......辛いのも......すぐ、治るから......」

 

 あぁいいなぁ......! 出来た人だなぁ......! 泣きそうなのが分かるよ! 苦しんでいるのが分かるよっ! その無力感が分かるよ!! その絶望が伝わってるよっ!! それでも苦手な笑顔を作るんだね! ボクの為に!!

 

「......だから......だから......! 生きることっ......諦めないで......ッ!」

 

 勿論だよ!! 当然でしょ!? ここで死んだら生まれてきた意味ほとんどないじゃん!! 何!? たった二人の消えない傷になるだけで満足すると思ってんの!? するわけないじゃん!! 化けるぞっ!!

 

 それにしてもいいねぇ......! その声もその言葉も......っ! トラウマでも刺激されたのかな......? この世界トラウマの要因に事欠かないからねっ! 何が引っ掛かったのか知りたいなぁ......そうすればもっと深く! もっと鮮烈に! 刻み込んであげられるから......!! 

 

 だからとりあえずさぁ......この身体の治し方、誰か教えてくれませんかぁ?

 

 なんでこうなってるか分からないと対処するの非常に難しいんですけど......? やっぱり精神的脳筋理論しかない? Puls Ultra? 選ばれたのは......! Puls Ultraですか......!? いやここが漫画の世界なら割とあり得るけどね。

 

 まぁ、想い願い祈り、その果てに奇跡を望むのが古来よりの人の在り方だしね。

 事実は小説よりも奇なり、なんて言葉もあるんだし、存外ボクが後遺症もなく復帰することだってあるかもね? は? 死なないのは確定ですけど? 舐めんな。

 

 これはボクがこの世界で生きる為の通過儀礼(イニシエーション)だったりするのかな? それなんて悪魔教? この負荷は絶対に邪教の類でしょうよ......血と苦痛と絶望を捧げる事で認められるんですかぁ? 呪っていい? ねぇ、呪うよ? そんな宗教潰してやる。

 

 目を開けているのも辛いので目を閉じた。

 

 このままだともう一度意識が落ちるのも時間の問題だろうけど、その前に考えるべき事が一つ。

 

 あの場所(・・・・)にまた行く事になるのでしょうか。

 

 いやね、九割九分九厘以上は確信持ってるけどね? それはそれとして普通に寝る事ができるとすごく嬉しいな! 一厘未満の可能性を望んだっていいだろう!? ちゃんと寝たいんだよぉ......! ボクさっき最終的に二百五十三回死んだんだよ!? いいだろ!? ちょっとくらい夢見たってさぁ!!

 

 うぅ......下手したら睡眠障害になりそう。

 寝る事がトラウマとか最悪じゃん......死ぬじゃん......

 

 は? 死ぬわけないだろふざけんな。

 この程度トラウマになってたまるかよ! よ〜しいいだろうすぐに蹂躙できるようになってやるっ! そもそもボクだって火が点いてるんだぞ? 寝れないくらいなんだってんだぁ! 諦めてなんかやんねぇぞ!

 

 だけど......寝たらあの場所(・・・・)へ移動するってどうなってるんだ......? これもいつか調べなきゃなぁ......夢ってわけでもなさそうなのが難しいよね。

 ......ふと思ったけど......あの場所(・・・・)って自分から行けるのかな? 自発的に戻る(・・・・・・)事は出来たんだし、やってみよ。

 

 起きた時と逆の手順を踏む。

 肉体の感覚を切り離す。

 

 重力を感じないふわふわとした感覚を捉える。

 そのまま水中に潜っていくような、あるいは深く沈んでいくようなイメージを。

 

 ──あ。

 

 成功したらしい。

 何かスイッチでも切り替わったみたいに急速に落下する感覚が生じた。

 まるであるべき場所へ戻るような、違和感のない安心感を覚える。

 

 微妙に不愉快だし納得いかないんですけど。

 そうか......! これが反抗期というやつか......! ...... ──疾く、去ね。

 

 ムカつく安堵を抱えながら落ちた(・・・)感覚は十秒となかった。

 身体の感覚が生まれると同時に飛び出す様にその場から動く。

 

「殺意高すぎじゃない?」

 

 見なくても分かるよね。

 ボクが出現した場所に飛び込んできた『陰』に、でも八つ当たりすら殆ど出来ずに逃げるしかないというね......フィジカル低いなぁ......反骨心刺激されるなぁ......ボクさぁ、半分以上個人で完結してる事柄に限るんだけど──

 

「っ!」

 

 どこからか飛んで来た見えない『何か』を避けながら笑う。

 まずは今の感覚をより鮮明にしようか。

 

 

 

 

 ------------------- 

 

 

 

 

 ──限界挑戦主義、とでも言えばこの世界っぽいかな?

 

 例えばだけど、ゲームだと『オン』なら享楽的というか悦楽的というか......スコアとか度外視で楽しむんだよ。

 対して『オフ』の場合なら、それはもう色々気になるし、やる。

 全クリとか完クリとかはまあ当たり前だろうけど、RTAだって記録せずにやるし無駄な技術磨くしロマンしかない事するし強くありたいし。

 

 知識なら気になった事は調べ続ける(・・・)方だし技術は磨き続ける方だし。

 

 ............分かるかなぁ? 語彙力死んじゃってて説明難しいんだけどさぁ......分かって? 分かれ。

 

 自分が何をどこまで出来るのか興味は尽きないし、『今以上』を求め続ける事が凄く楽しいんだ。

 悦楽的探求者とか言うとカッコいいんじゃない?

 

「......ハッ......! 危ねぇ......!」

 

 だから。

 

 正直言って現状って凄くボクと相性イイんだよね。

 おかげで定期的にタガが外れてハイになっちゃうワケだし。

 

 あ、負けず嫌いが入ってる事は否定しないよ。

 

 二度目の挑戦の死亡回数は既に九十九回は逝ってるワケだけども、ずぅっと笑ってる自覚あるもんね! 殺され続けながら笑ってるって何? 狂気じゃん。

 ウケる。

 

 直接襲ってくる『陰』共は避ける。

 触れる奴は逸らしたり流したり投げたり弾いたり。

 遠距離は基本回避一択だけど、場合によっては近くの『陰』を盾にしたり別の遠距離攻撃を誘導してぶつけたり。

 

 試せば試す程に出来る事が増えていく。

 出来る事が増えればやりたい事も増えていく。

 だけど出来ない事も少しずつ増えていく。

 

「ぁは......っ!」

 

 死んで。

 

 生きて。

 

 殺されて。

 

 生き足掻いて。

 

 繰り返される終わりの見えない輪廻は巡る度に変化する。

 小さな変化が積み重なりやがて大きく変容する。

 

「── ......ッ! ......ふふっ...... ──ッ!」

 

 歪な踊り。

 

 穢れた舞。

 

 詠う心に祈りを捧ぐ。

 

 ──もっと。

 

 

 ──もっと。

 

 

 

 ──もっと。

 

 

 

 

 ──もっと。

 

 

 

 

 

 ──まだ。

 

 

 

 

 

 

 ──まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ──まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──足りない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 輪廻転生。
 魂のみで世界を超え、人格と記憶を保持し続ける……どうして、『そう』ならないと断言出来るのでしょうか……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。