ボクの『個性』? 『無個性』だよ? ……ふふふっ、本当の事だよ。   作:黒月悠生

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 お疲れ様です。
 十ヶ月間の話をすると思いましたか......? 残念ですが、それはナシです。

 それにしても......情景描写......? 風景描写? ......雑......ですねぇ......心情に寄っているといえば寄っていますが......

 まだまだ、ですねぇ。


008P 雄英実技試験!

「──さて。今回の件に対する諸君の考えを、ぜひとも聞かせて欲しい」

 

 雄英(ゆうえい)高校、本校舎会議室にて。

 

 雄英高校の主要ヒーロー教員が席を並べて、重く鋭い空気を作り出していた。

 

 筆頭たるは国立雄英高等学校校長、根津(ねづ)

 身長八十五センチの白い毛並みを持つ動物である。

 即座に連想するのは(ねずみ)の様な動物──しかし二足歩行であり、人間を基準にしても平均を優に上回る知能を誇る。

 

 根津が用意した資料が各人の手元にあり、そこに記された情報が今会議を設ける要因だ。

 

 詳細な説明を終えた根津の言葉に、しかし浮いた顔をする者はいない。

 

「......こいつ入学する意味(・・・・・・)あんのか?」

 

 プレゼント・マイク。

 トサカの様に逆立てた金髪とサングラスが特徴的な男性。

 

 どこか投げやりに呆れた調子で呟いた。

 

 しかしそれはこの場に居並ぶ者全員が大なり小なり胸中に懐いた感情だった。

 

「まさか、学生だったとはね......」

 

 ミッドナイト。

 ボリュームのある長い黒髪と眼鏡、何よりもそのコスチュームが特徴的な女性。

 

『......』

 

 13号。

 宇宙服を模したコスチュームで己を覆う人物。

 

「......合理的ではあるな」

 

 イレイザー・ヘッド。

 黒ずくめのコスチュームに首元の布、伸ばしっぱなしの髪と無精髭が特徴的な男性。

 

「学生でありながら既にヒーローか......」

 

 ブラドキング。

 頬の十字傷と下顎から伸びた二本の牙が特徴的な筋肉質の男性。

 

『コノ実績ハ並ミノヒーローデハ相手ニナランナ』

 

 エクトプラズム。

 耳元まで裂けた口に禍々しいフェイスマスクが特徴的な男性。

 

「僕たちがこの子に教えられる事はあるんでしょうか......」

 

 セメントス。

 直方体で構成された様な体と灰色の肌が特徴的な男性。

 

「くけけ......経営科でもサポート科でも問題無さそうだな」

 

 パワーローダー。

 重機の様なヘルメット型マスクと小柄な体、発達した両手が特徴的な男性。

 

「ルルウウッ、俺たちで守り切れるのか......?」

 

 ハウンドドッグ。

 二足歩行の犬の様な体が特徴的な男性。

 

「もう教師側で受け入れた方がいいんじゃないか......?」

 

 スナイプ。

 ガスマスクの様なマスクにドレッドヘア、ガンマンの様なコスチュームが特徴的な男性。

 

 更に口を噤む二人のヒーロー。

 老年の小柄な女性であるリカバリーガールとオールマイト。

 

 総勢十三人のプロヒーローが一堂に会し、尚も言葉を失う光景は滅多に起こる事ではない。

 

 だからこそというべきか。

 リカバリーガールは分かりやすく溜息を吐いた。

 

「──この子は私らの手に負える子じゃない。それは分かっているんだろう? 根津」

 

 リカバリーガールが言葉と共に視線を投げれば、根津は慎重に頷いて見せた。

 

「ならもういっそ、特例扱いしちまうのが早いと思うがね、私は」

「......分かっているのさ。だけど、だからこそ慎重にならなければならない」

 

 固く断言した根津は、その視線を資料の上に落とす。

 

供捧(くほう)典祈(てんき)。この子が雄英に所属しようとする意味を、我々は正しく受け止める必要がある」

 

 資料に刻まれた情報は、供捧典祈の生きた踏跡と言ってもいい程に細かい。

 

 ヒーローとしての活動記録、個人としてどの様に生きてきたのか。

 

「......私には、全てが偶然だとは思えないんだ」

 

 根津の視線が持ち上がり、オールマイトを射抜く。

 室内の視線もまた、オールマイトに集中した。

 

「嫌な予感がする──......これを杞憂と切って捨てる事ができないのさ」

 

 オールマイトの顔色は、悪い。

 

 

 

 

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 おっはよーございますみなさん!! 朝です!! 早朝です!! まだ陽も昇っておりません!!

 陽が昇る前ってこれなんか前もあった様な......? いやボクが暗い内から活動してるのはいつもの事なんだけど。

 

 いやいやそんな事は重要じゃないしどーでもいーんだよっ! ねぇっ! 今日っ! 入試日だっ!

 

 ──は?

 

 なんでですかー? なんでもう入試日なんですかー? おかしくない? オカシイだろふざけんな......! 色々あったんだぞこの十ヶ月間よォ! 出久(いずく)君にも爆豪(ばくごう)君にも会わずに動いてた時あったってのに......!!

 なんなら救護所にまた爆発特攻する馬鹿だっていたよ!! 家族で団欒した時もあったよ!! 記憶の八割九割『深裡世界』だよ舐めてんのか!? 未だに殺されるんだぞ滅ぼすぞ!!

 

 八木(やぎ)さん土下座騒動とか興味ない? 無い? あそう。

 あとミルコさんは海外にまで着いてこようとしないでください。

 

 精神的な癒しも兼ねて今日も今日とて出久君観察するね!

 

 今誰かストーカーって言った? やってる事その通り過ぎて肯定しか出来ないから止めてもらっていい? ──止めろ。

 正直言って偏執具合ではAFOと大差ないと思うんだ! ──死ね。

 

 さて。

 十ヶ月前の『市営多古場(たこば)海浜公園』といえば、不法投棄すら罷り通る程のゴミ山だった訳だけども。

 当然近隣住民なんか寄り付く事も無かった場所が、今ではなんとデートスポットとして話題に上がっておりますね!

 

 ──なんで出久君の話題がネットにも地元の噂程度にもなってないんだ......? 出久君が掃除してる傍に人がいる事もあったし、見てる人もいたのに。

 いや別に手伝わないのはいいんだよ? 問題はそこじゃなくてさ、出久君の存在が認知されてない可能性が高いんだよねぇ。

 出久君ってヒーロー志望ってだけで一般人の学生だぜ? アホみたいな範囲のゴミ掃除ボランティアとか表彰モンだろ。

 

 不快だ。

 不愉快だ。

 あぁ......! とてつもなく気持ちが悪い......!! 揃いも揃って出久君を虚飾扱いか!? なぜか気がついたら整備されていた不思議な場所だとでも思ってるのっ? 十ヶ月もあったのに......? 人知れずヒーローが手を加えたとでも? 観客のくせに節穴とは救えないなぁ!? ちゃんと目ぇ開けて前を見やがれ!! ──抉るぞ。

 

 入試当日にも関わらず、今日も今日とて早朝からゴミ掃除に精を出す出久君。

 残り僅かになったゴミを集めて汗を流して。

 

 水も滴る良い男って事!? 十ヶ月前とは比べ物にならないくらいしっかりした身体になったね出久君! 気合いを入れる為に上の服を脱いでるから尚更分かりやすいよ!! この十ヶ月で全身をバランス良く鍛えた結果の身体だもんねっ! 個人的にはちょっとだけ食事を変えて欲しいなぁと思わなくもないところではあるんだけどさ? でも出久君ここまで凄く頑張ってるから! あともう少しで『始まり』の始まりだよッ! あともう一息!! 油断しないで気を付けて!!

 

 いや〜、やっぱり有象無象なんて気にする必要ないよね......! 出久君を始めとしたボクが好きな人達を見てればいいんだから!

 

 そんなこんなで太陽も顔を見せ始める朝六時!

 

「わああああああ──!!」

 

 集めたゴミ山の頂点で、一心不乱に雄叫びを上げる。

 祝福する様な太陽の光を浴びながら。

 

 ねぇ見て! ねぇねぇ見て見て!! 八木さん八木さんっ!! ほら見てよ! 出久君やったよ! やりきったよ!?

 

「オーマイ......! オーマイ......!! ──グッネス!!」

 

 当初の予定以上の成果を叩き出したんだよ!? 凄いっ!! 凄いよねっ!? 本当にお疲れ様だよ出久君!! この後の試験ではボクが協力出来る事は殆ど無いんだけどさぁ!! リカバリーガールさんにお願いして出久君の回復してあげるからねっ!! よく頑張ったね出久君!! お疲れ様......!! 今度カツ丼作ってあげるね!! ほら八木さんもちゃんと褒めてあげてねっ!? 憧れの人からのお褒めの言葉とかっ! 出久君には最大のご褒美だから!!

 

 ふらっと力が抜けて落ちちゃった出久君を、オールマイトさんが横抱きに受け止めた。

 

「オールマイト......!! 僕......出来た......! 出来ました......ッ!」

「ああ驚かされた! このエンターテイナーめ! 十代って素晴らしい!!」

 

 ......出久君が可愛い......!! あっ違ったカァイイです!! そんなにボロボロと泣いちゃってさぁ......! 

 

「──オールマイトにここまでして貰えて......恵まれ過ぎてる......!」

 

 出久君の努力の成果だよ? キミの行動力が運を掴んだんだよ? そんなに卑屈になる必要ないからね......!! 大丈夫!! これは紛れもない現実の奇跡なんだから!!

 

「──食え」

「──へぁ!?」

「別にDNAを取り込められるなら何でも良いんだけどさ! さァ時間ないって!」

「思ってたのと違いすぎる......!!」

 

 ん〜ッ!! もうさほんとさ二人で漫才するのやめてもらっていいかな!? なんで二人揃ってそう可愛くなるの!? ねぇ!! 出久君! ファンタジーっぽい力の譲渡はボクの担当なんだ!! それともグラスに血を注ぐ方がお好み!? あとさぁ!! 個性の発動方法について感覚理論が過ぎるよオールマイトさん!! 天才肌っていうと聞こえはいいけど!! 自分の感覚をうまく言語化出来ないんでしょ!? 極端な話、理論派も感覚派も一緒だからね!? 言語化できるかできないか、詳細まで意識してるかしてないかの差でしかないぞ!?

 

 あ〜......出久君と八木さん行っちゃった......

 

 仕方ない。

 試験開始までまだまだ時間余ってるんだよ? ボクはボクでやる事済ませますね。

 

 ん? 勉強? ボクの記憶力舐めてるの? 伊達に『深裡世界』で頭吹っ飛ばされてないから。

 痛いし気持ち悪いのでやめてもらっていいですか? だからって喰えと言っているわけではありませんやめろ。

 

 お家に帰りまして〜、色々と準備しまして〜。

 

 ハイ! 雄英高校前です!

 

「おはよう出久君!」

 

 おや、シャワー浴びて来たんだね? そりゃそっか。

 朝ご飯はしっかり食べた? 大丈夫そ? 体力尽きたとか疲労が原因でしょうもないミスしたとかやめてよ?

 

「あっ! ててて典祈(てんき)くん!? おはよう!? ぼぼっ僕女の子と喋っちゃった......!!」

「え〜? 出久君が? ホントにぃ?」

「ほっ、ほ......ほんとだよ!! さっき転びそうになったところを助けてくれて......!!」

「そっか。良かったじゃん! 幸先良いね。転ばずに新しい縁も結べたとか、それこそ縁起もいい。それじゃ、二人で雄英合格しよっか」

「......!! うんっ!! もちろん!!」

 

 見てたよ! 麗日(うららか)お茶子(おちゃこ)君に声掛けられてたところ! それ会話って言わないよ? 大丈夫? 女の子に免疫無いにも程があるでしょ......悪い人に騙されないでよ......?

 

 ところで、雄英高校所属のプロヒーローって原作で出て来た人達以外にもいる事知ってる? 名前出てないんだけどね。

 ここテストに出るよ? 覚えておくように!

 

 なんでそんな話をしたのかって? お察しの通り、出久君の解説、小声バージョンが始まったからだよ。

 『緊張』が殆ど無いねキミ、どしたの? そんなお目目キラキラさせないで......!

 

 うんうんそれで? あっ、ならあの人は? ──

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!』

 

 ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』こと『山田(やまだ)ひざし』さん。

 毎週金曜日に深夜一時から早朝五時まで、『HERO FM』にて『PresentMICのぷちゃへんざレディオ』というラジオをノンストップで放送している。

 

 ボクは真面(まとも)に聞いた事無いんだけど、出久君は毎週聞いてるらしいよ! 案外余裕だね? 出久君。

 そのくらいじゃなきゃ潰れてただろうけどね! むしろ潰れた後だったかも。

 

『エビバディセイヘイ!! ............──こいつぁシヴィー!!』

 

 プレゼント・マイクさんって滑った感じでシーンとしてるのって嫌いじゃなかったっけ? ......ん? コレ記憶違いかな............音量上げろ! 生前葬だ!! とかやる?

 

『それじゃあ実技試験の内容をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? ──YEAHH(イェアア)!!』

 

 それにしてもよく分からない入試内容だよねぇ......相手機械だし、(ヴィラン)制圧を目的としてる割には直接戦闘能力しか見てないし......ん〜、欲しいのはヒーローの卵じゃなくて即席の兵士だったりするんじゃないかな?

 

 幻を魅せるとか洗脳するとか、対人戦が主なこの世界だと重宝すると思うんだけどなぁ......この世界の認識では『地味』だけど。

 戦地にでも投げたら......? 学校毎に特色を持たせるとか、戦闘教育で細分化するでもアリ。

 ただ最大の問題点はヒーローが飽和している事なんですけどね! 数が多過ぎます! 減らしてください! ──人類半減させるか......?

 

 『深裡世界』の陰共みたいな奴等がいれば少しはマシになったかな? いや対消滅(・・・)して終わりだな。

 

 ──おっと。

 試験内容のおさらいしようか。

 

 受験者は七つある『模擬市街地』に分けられて演習を行う。

 

 道具の持ち込みは自由。

 

 出身校が同じ場合は会場が分けられる。

 

 四種類の仮想(ヴィラン)、内三種類が多数配置されていて攻略難易度に応じたポイントが設定されている。

 

 一種類、各会場に一体だけポイントを持たない『ギミック』が存在する。

 

 アンチヒーローな行いは御法度。

 

 ポイントを稼げ。

 

 ──以上。

 

 ──疑問! アンチヒーローな行いとは?

 

 確かに同業者を直接害する様な行為は御法度だろうね! でもそれ以外では何があるんだよ? 罵詈雑言? アレかなり有効な手段だとボクは思うな! ねぇ爆豪君っ! 君もそう思うよね!?

 あ、『心操(しんそう)』君や『物間(ものま)』君、『ロックロック』さんや『ホークス』さんとかも同意してくれそう。

 心操君は積極的に肯定するかはビミョーかな?

 

 ヴィランと手を組むヒーローとか珍しく無いぜ? ますますヒーローらしさって何かわかんなくなるよな! とりあえずオールマイトさんエミュる? えー? どーしよっかなぁ!

 

 説明が終わって各自移動を始めた中、また緊張でカチカチになり始めた出久君を見る。

 

 うーん──反応無し!

 

「出久君」

「うぇ......!? あっ! そうだ移動しないとだよね典祈君っ!」

 

 あはっ! 緊張しすぎだよ出久君! 肩を軽く叩かないと反応しないなんて視野が狭まりすぎてるから気をつけなよ? 思考の回転は速いけど柔軟性は落ちてるのかな? ......ぇえ? これ大丈夫なの......?

 

 しょーがないなーもー!

 

 出久君の目の前に手を差し出して──

 

 

 

 

 ------------------- 

 

 

 

 

 ──パチンッ

 

「......」

 

 よく聞く音が、いつもより小さく響きやがった。

 横目に見てみりゃデクと()がなんかしてやがる。

 

 (かんざし)が指を鳴らせば、デクのヤローはそう(・・)なる様に躾けられてる。

 まんまパブロフの犬だ。

 

 下らねぇ。

 

「ふふっ、大丈夫っ」

 

 頭めでてぇヤツみたいに笑いやがって......

 

 いつもいつも鬱陶しいくらいに、デクと一緒に笑いやがる。

 

「緊張し過ぎな出久君に、ボクが断言してあげよう」

 

 今更クソナードに何をしようが結果は変わらねぇだろーがっ。

 

「受かるよ」

 

 ──あ......?

 

「君は雄英に受かる」

 

 ......ハッ。

 運で受かったとして何が嬉しいってんだよ、あぁ? すぐに退場する事くらい目に見えてんだろーが。

 無駄な事してねーで自分から失せろ変態。

 わざわざ絶望しに来やがって。

 

「だから後は、最高のヒーロー目指して突っ走るだけだよっ」

 

 ふッ......! ふざっけんなよ......! アァ!? 『無個性』の端役(モブ)が『没個性』の端役(モブ)に励まされた程度で受かってりゃ世話ねェんだよ! 何もできねェ小石が寄って集ってなんになるってんだ!?

 

 最強(・・)のヒーローになるのは俺だッ! オールマイトを超えて俺がナンバーワンになンだよ......!!

 

 これは!! その為の道だッ!!

 

 道端の石風情がッ......!! 俺の踏み台にすらなれると思ってんじゃねェぞクソがァ!!

 

 ──チッ......いちいち視界に入ってきてんじゃねェよカスが。

 

「......っ」

 

 ──一瞬、簪が俺と目を合わせてきやがった。

 

 その金色を柔らかく細めて──

 

 鬱陶しい......ッ! 気色(わり)ィ目ェ向けてンじゃねェぞクソが死ね......ッ!!

 

 周りの雑魚共も失せてきた。

 これでさっさと会場まで行ける。

 

 デクと簪はもうどうだっていい。

 受かろうが落ちようが関係ねー。

 

「クソが......っ」

 

 案内の通りに更衣室まで移動して。

 

 着替えて。

 

 会場のスタート地点へ移動した。

 

「ふー......ッ」

 

 この期に及んでくっちゃべるだけの雑魚共は無視だ。

 この俺の邪魔さえしなけりゃ好きに動きゃぁいい。

 

 ──どうせ結果は変わらねぇ。

 

 掌から煙が立ち上る。

 

「全部......俺の獲物だ......!」

 

 ──『──ボクが断言してあげよう』

 

 おもちゃのポイントなんて関係ねー。

 とにかくぶっ壊しゃいいだけだ。

 

 ──『君が......っ! 救けを求める顔してた......!!』

 

 細く息を吐く。

 

『ハイスタートー!!』

 

 演習試験の概要を説明してたうるっせえ声が、唐突に響きやがった。

 

 ──ハッ! そーこなくっちゃなぁ!!

 

 一拍遅れちまったが問題ねえ!

 雑魚共がっ! ここで戸惑って動きを止めっからテメェらは端役(モブ)なんだよ! そのまますっこんでろっ!

 

 市街地を模した演習場にトップで突っ込む。

 邪魔がなくていいぜ、走りやすい。

 

『標的確認!』

 

 目先の左角からおもちゃが飛び出してきやがった。

 (のろ)クセェ、足を止める必要もねえな。

 

『ブッ殺──』

「邪魔だ死ねッ!」

 

 ──ボゥンッ!

 

 こっちから飛び掛かり掌を叩きつけて爆破。

 それだけでぶっ壊れた。

 

 今のが一ポイントか。

 脆いガラクタじゃねぇかっ!

 

『オイオイどーした!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れぇ!!』

 

 しっかしあのガラクタ、飛び出して(・・・・・)来やがったな。

 何基準にこっち見つけやがった? センサー......いや、非戦闘系の『個性』がいる以上、無秩序に群がったりはしねえはずだ。

 

 それにコレは個人演習。

 協力前提の攻略は意図が(ちげ)ぇだろ。

 

(さい)は投げられてんぞ!?』

 

 つーことは──

 

()か......!」

 

 スタート地点から離れて暴れりゃぁ、獲物が向こうから集まってくるワケか......! ヌルいなァオイ!!

 

 この分なら余裕が残んな......

 

「......っし」

 

 少し速度を上げて道を突っ走る。

 まずは奥まで移動だ。

 

 今っ更動き出してるヤツらに邪魔されんのも、鬱陶しい上にめんどくせえ。

 俺が一番に突っ込んで総取りしたる......!

 

 ──ドガァンッ!

 

 突然左の壁がぶっ壊された。

 

「ぁ?」

『標的! 死ネ!』

 

 四脚二尾のサソリみてえなヤツか。

 小回りが効いて駆動音が小せえが、攻撃力は低いってところか?

 

 迫ってくるガラクタから目は離さねぇ。

 

 ──左手を前に出して爆破。

 反動で走る勢いを殺し、すぐにもう一発爆破してバックステップ。

 

 突っ込んできたガラクタが目の前を滑った。

 

 右手から小刻みに、二度の爆破でステップを重ねて脚部の間に滑り込む。

 

 んで──

 

「てめえが死ね......!」

 

 ──ボゥンッ! バァアンッ!

 

 左手を叩きつけて二連続の爆破で木っ端微塵だ。

 雑魚が、奇襲なんざ誰がくらうかよっ。

 

「わざわざハデに爆破してやったんだ......! さっさと集まれやガラクタどもっ......!!」

 

 まだ奥にゃ進むが、途中のヤツらもぶっ潰してえ。

 

 残骸はほっといて更に走る。

 

 まっすぐ道の先に、一層トロいガラクタがこっち向かって来てやがる。

 

「ハッ......! なんだぁそりゃあ......!」

 

 二門あンのは、ガトリングか? くだらねえ! 戦車(タンク)のつもりか!?

 正面からぶっ殺すっ!

 

 まっすぐ進む俺に対して、向こうは動きを止めやがった。

 

「当てられると思ってんじゃねえぞクソがあ!」

 

 一門に五つの砲口。

 十の射線で俺を捕捉してるつもりかっ。

 

 走る速度を上げる。

 

『蜂ノ巣ニシテヤル!』

 

 ──ドドドドドドドドドド──ッ!

 

 ゴム弾が撒き散らされた。

 精度は(あめ)えが射速がそれなりにありやがる。

 下手すりゃ弾幕に呑まれンな。

 

 ──まァ俺にゃァ関係ねえがなァ!!

 

 右手を後ろに。

 んで──

 

 ──ボォンッ!

 

 爆破の反動を使って左前へ出る。

 これで射線から外れた。

 

 若干左回りに、デケェだけのガラクタに突っ込んでく。

 

 弾の射出をやめねぇまま俺を追って旋回を始めたが──クソ(おせ)えんだよ雑魚が!

 

 あっさりとウスノロの足元まで到達した。

 コイツはこの位置への対処はできねえ。

 

 頭部に当たる部分に飛び乗って、両手を押し付けた。

 

「くたばれや!!」

 

 ──パパンッ──パチッ! バァンッ! ボオォンッ!!

 

 離脱。

 左右の脇道から次の獲物が来てやがる。

 

「ハッ! 雑魚がッ!」

 

 着地して──次ッ。

 

 残骸(ガラクタ)を背にして、まずは一ポイント(より脆い方)へ迫る。

 数は二体。

 

 三種類の中で一番(はえ)ンだろーが......足ンねえんだよッ!

 

「ハッハァ!」

 

 ──ボゥンッ! バァンッ!

 

 両腕の装甲を盾にさせる事も、装甲の裏にあるガトリングを使わせる事もなく爆破。

 

 振り返る。

 

 壁にした残骸(ガラクタ)を越えて来やがるのは、二ポイントが三体。

 

 爆破の反動使って即座に突っ込んだ。

 

「──足りねえ!!」

 

 もっと集まれやガラクタ共がっ! アァ!? こんなンじゃあ準備運動にもなんねえだろーが!

 

 ──ボンッ! ボボォン! バァンッ!

 

 走り出す。

 

 ──どこにいやがるガラクタ共......! 全部見つけて爆破し殺したる......!!

 

 ......つっても、そろそろ本格的に集まり始めンだろ。

 一々こっちから出向いてやる必要なんかねえ。

 

 端役(モブ)共がいンのは俺の後ろ。

 ンで、散らばるにしたって限度がある。

 つまり、この演習場に散らばってるガラクタ共は一点に向かって集まってくる。

 

 どう狙ってくンのかは分かんねえが、市街地を模した演習場(ここ)には中央を貫く大通りがある。

 端役(モブ)共目掛けて集まって来ンなら、前に出ンのはなおさら都合がイイ......!

 

 俺が先頭(トップ)だ......! 俺こそが一番(トップ)だっ!

 

「さっさと来いやガラクタ共......! 全っ部爆殺し尽くしてやるからよォ......!!」

 

 走る。

 

 左右の道から出て来やがったガラクタ共を、わざわざ派手に爆破してやって。

 

 更に前へ。

 

 まだまだ余裕だぞ雑魚共ォ!

 

 ──『──受かるよ』。

 

「──足ンねえんだよ雑魚がァ!!」

 

 乗り越えざまに爆破。

 

 回避のついでに爆破。

 

 前へ出るために爆破。

 

 もっと集めるために爆破。

 

 爆破、爆破、爆破、爆破、爆破。

 

「──どこ行こうってンだ!? アァ!? テメェらの相手はここにいンだろーがよクソがァ!!」

 

 テメェらは俺がナンバーワンになる為の踏み台なんだよ!

 

 ──俺を見ろ!

 

 雑魚共ントコに行こうとしてンじゃねえッ!

 

 ──俺だけを見やがれッ!

 

 ビビってんじゃねえぞガラクタがァ! テメェらまとめて俺様の糧になりゃァいいンだよッ!!

 

「──最強のヒーロー(ナンバーワン)になンのは俺だァ!!」

 

 ──ドォンッ!

 

 残骸(ガラクタ)を踏み越える。

 

 

 ──ドドォン!

 

 集まってくるヤツらをひったすらに爆破し続ける。

 

 ポイントなんざ一々数える必要ねえ!

 

 

 

 ──ドガァンッ!

 

 ただ前へ進みゃぁいい。

 ただそれだけで全部(しま)いだ。

 

 後ろ(・・)なんざ気にするだけ無駄だ。

 雑魚共のお遊びに気取られてる暇があンなら、一体でも多くブッ殺す......!

 

 

 ──息が上がる。

 

 動きから無駄が抜ける。

 

 

 ──鼓動が上がる。

 

 思考から無駄が抜ける。

 

 

 ──『熱』が上がっていく。

 

 

 

 






 ああ......! ほんっとうに可愛いなぁ爆豪君ってばさぁ! ──でもまだ君は素敵になれるよっ。


 ......もっと描ける様になりたいですねぇ......エミュが難しいんですよねぇ......特に口調と語彙。
 これ、登場頻度の少ない子なら、殆どオリジナルでもいいと思うんですけどね......
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