ミレニアムのサイボーグ 作:サイボーグじゃがいも
cv調月リオのオペレーターが脳内再生余裕だったので書きました
と思ってたら実装されました、いぇい!
一つの始まり
超巨大学園都市キヴォトス。
数千の学園がそれぞれ運営されており、どんな場所でも銃撃戦が日常的に存在しながら、それでいて死人が出ることが無い平和な世界。
そんな世界では生徒は銃器で武装するのが常識である。
世紀末な常識が蔓延るキヴォトスの中でも最大勢力の内の1つのある学園に通う、ある学生の話。
その学園の名は、ミレニアムサイエンススクール。
美しい桜が咲き、大地を染めていた。
新たな風が吹く季節であり、どの学園も新入生を迎えていた。
ミレニアム校内。
入学式を終えた新一年生が各自教室でホームルームを受けている。
簡単な連絡がなされた後、ロボットの先生が退出し生徒たちも各々活動し始めた。
昼食を食べに食堂へ向かったり、次の授業の準備をしたり、友人を作るために会話をし始めたりなど。
ざわざわと休み時間特有の緩い雰囲気が教室内に満たされている。
そして教室内では早くもいくつかのグループに分かれ始めていた。
その争いに属さず、無関心、無干渉を決めこんでいる二人の内一人が隣の席に座っていたもう一人に話しかける。
片方は目に入っても痛くなさそうな淡い金髪であり、片方は艶のある美しい黒髪だ。
二人の胸は同じくらい豊満であった。
「ねぇ、ちょうど席が隣だし、自己紹介しましょう? 私は甲賀アズマ、今は生物学に興味があるわ」
甲賀アズマと名乗ったその生徒は明るく笑顔で、それでいて静かに自己紹介をした。
それに対し話しかけられた生徒は沈黙……していたが、じっと向けられた目線に居心地が悪そうに体を揺らして答える。
「……調月リオ。満遍なく学ぶつもりよ」
答えてくれたが、その言葉からは面倒くさいという気持ちが裏にあるように感じることだろう。
だが、甲賀アズマは気がついていないのか、それとも無視しているのかは分からないがそのまま話を続ける。
「あら、満遍なくなんて凄いわね。……ぜひあなたと意見を交換したいわ、一緒に昼食を食べない?」
「用事があるの。他を当たって」
即答。
調月リオは手元の教科書を整理しながら断る。
「そう……なら、もし気分が変わったら一緒に食べましょう」
それに対して甲賀アズマは今回は大人しく引き下がるようだが、諦めている様子はない。
調月リオは今知り合ったばかりの生徒と共に昼食へ向かうことの利点、断った際に起きる不利益や代わりに生まれる利益を一瞬のうちに計算。
彼女の頭の中で出された結果は申し出を断って自身の目的の為の研究資料を資料室で探す方が利益が大きいと出ていた。
不利益に関してもつい先程出会ったばかりの仲なので、今後の活動にも全く影響ないと彼女は考えたのだ。
そんな考えから生み出されたあまりにも冷たい一刀両断だが、本人に悪気はない。
だが断られた事実は変わらず、悲しい気持ちになる甲賀アズマ。
しかし、断られるのも予想の範囲内なのか、内心を表に出すことなく甲賀アズマは一言残して教室から離れていった。
「……それで一緒に昼食を食べない?」
「今日も用事があるわ」
「良ければ一緒にどうかしら?」
「残念だけど用事よ」
「今日はどう?」
「……」
最初に甲賀アズマと会話を交わし、それからも度々誘われては断る日々を過ごす。
そうしているうちにクラスは派閥によって完全に分断された。
派閥に属していない者は大抵何か問題があったりした生徒であり、調月リオもまた、その生徒の一人である。
とはいえ調月リオの場合、徹底した合理主義、感情の見えない鉄面皮、成績上位を常に維持しているなど、近寄りづらい要素のてんこもりによって自然と周囲から避けられ孤立していた。
また、入学したばかりの一年生であるのにも関わらず上級生と真っ向から意見の対立して喧嘩を起こした、という噂も原因の一つだろう。
まだ一年生、三年になる頃にはより合理主義が極まり“全てを統制するビッグシスター”と呼ばれるようになる下地が既に出来ていた。
そんな中でも、調月リオに話しかけ続ける者がいる。
「どう?」
そう、毎日昼食を共に食べないか誘う甲賀アズマだ。
いつも同じことの繰り返しで、略されてついには二文字のみになってしまったが、今回も昼食を一緒に食べようという打診である。
毎回冷たく断られているのにも関わらず、昼食に誘ってくる甲賀アズマ。
調月リオには彼女のことが理解出来ない。
彼女には調月リオの関わりたくないオーラが見えないのだろうか?
「今日も予定が……」
いつもと同じように断ろうとしたが、調月リオはふと考えた。
毎回断っているこの時間がどちらにとっても無駄なのでは?
今回断ってもまた明日も同じようにやってくるのでは?
なら了承した方が無駄が少ないのでは?
面倒くさくなっていたのかもしれない。
とにかく、調月リオは彼女と共に昼食をとる選択をした。
「……特に無いから行きましょうか」
「あら、本当に? やった!」
心から嬉しそうな表情と無表情の生徒がその日以降、毎日食堂に出没するようになる。
対象的な表情の二人だが、ちょっとした雑談や高度な議論を交わしたりなどそこまで仲が悪い様子は無い、とその二人を見た生徒は感想を述べた。
「我々セミナーは校内での研究や発明にあらゆる支援を行っているという訳さ」
セミナー。
ミレニアムサイエンススクール生徒会の呼称。
ミレニアムタワーの最上階を専用スペースとして使用しているため外の景色はとても良い。
「……当然ながらセミナー資金は無限ではないが、生徒たちはそんなことを考慮したりしない。だから会計は常に資金繰りが大変で……」
生徒会長が入部届けを出した一年生にセミナーの苦労を語っている。
律儀に聞いている一年生の名前は甲賀アズマ。
どうやら彼女はセミナーに所属するようだ。
「それで……君はどこの役職に就きたい? 君の能力ならどこでも行けると思うよ。一番大切なのはやる気だとは思うけどね」
「では、保安部に入ります」
彼女が選んだのは保安部。
セミナーの内部部門であり、主に防諜を目的として戦闘や諜報活動を行っている部門だ。
ミレニアム唯一の暴力装置と言っても良いかもしれない。
「保安部? 外で活動することも多いから研究があまり出来ないと思うけど……」
「かまいませんわ」
彼女にはある目的が出来ていた。
そして保安部に入ったのは目的を達成するための第一歩である。
この一歩が無駄になる可能性もあるが、あって損は無いだろう。
スムーズに話は進んでいき、無事所属手続きも完了。
明日から彼女は保安部として働くことになるだろう。
だが、今日は特にすることはないのでそのまま退出してエレベーターで下へ降りる。
来た道を戻っていると彼女のよく知る生徒が歩いていた。
「こんにちは、調月さん」
甲賀アズマは爽やかな笑顔で挨拶を送る。
「……ええ、こんにちは」
相変わらず感情の見えない顔だが、挨拶を返してくれたので少なくとも嫌悪されていることはないだろう。
エレベーターから出てきた所とばったり出会して目が合ったというのもあるかもしれないが。
「つい先程、保安部に入りましたの」
「そう……」
「だから、その手の方面で何か困ったことや手伝って欲しいことがあれば言ってくださいね」
その言葉に調月リオは思考を回転させる。
言葉の意味、保安部の有用性、利用手段やその価値……そして甲賀アズマについて。
それは他人が気付けない僅かな一瞬であり、どんな結論を出したのかは本人以外には分からない。
「……分かったわ」
その後に一言二言、廊下で会話を交わすと二人はその場で別れた。
一人はミレニアムタワーの最上階、ミレニアムの中で太陽に最も近い場所。
もう一人は地下に存在する研究室、光の届かぬ太陽から最も遠い場所へと向かった。