ミレニアムのサイボーグ   作:サイボーグじゃがいも

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体育座りいいよね
と思ったので書きました




正義を為す力

 

 甲賀アズマは悩んでいた。

 己の弱さに。

 

 それは保安部門として日々業務にもまれ、保安部門のエースとまで言われるほどになった頃。

 いつものように、C&Cが出るまでもない治安維持の業務に駆り出されていた時のことだ。

 

「こちら甲賀アズマ、校則違反者を鎮圧しました。数が多いので回収チームを一つ派遣してくださいますか?」

 

 支給されたインコムでセミナーの保安部門に回収部隊を要求する。

 

 甲賀アズマの周囲には大量の弾痕が激戦を物語り、校則違反をした生徒が気絶していた。

 それをこのまま放置するのは校則的にも景観的にも良くないので、一般生徒用の反省室へ収容するのだ。

 

 また、この後に弾薬費や修繕費などの諸々を報告書に書いて提出しなければならない。

 にも関わらずまだ数ヶ所向かわねばならない場所が残っている。

 

「ええ、はい。場所は──ッ!」

 

 これから増えるであろう書類仕事に憂鬱な気分になりながらも、回収部隊を派遣してもらうために現在地の情報を送ろうする。

 

 突如大きな爆発音が鳴り響く。

 それもかなり近くだ。

 

『今の爆発は!? ……』

 

 無線の向こうにも音が聞こえたらしい。

 そして無線の向こうが慌ただしくなり、アズマは無線を繋いだまま爆発音のした方向へ走る。

 

 走った先には、巨大な人型兵器が周囲を見境無く攻撃していた。

 

『アズマさん! もしかして向かってる? ええと……エンジニア部が……』

 

 一部の勇敢な生徒がその巨大兵器を止めようと射撃を加える。

 しかし、その攻撃は全て装甲に弾かれ、逆にミサイルの雨を撃ち込まれた。

 

『はぁ!? なんで全自動おにぎり製造機にそんな機能をつける訳!?』

 

 勇敢な生徒が爆発で吹っ飛び、それを見た他の生徒が我先に逃げ始める。

 その逃げる後ろ姿をビーム砲で追撃する巨大兵器。

 

『……ああ! もう! アズマさん! 多分そこに居るんだろうけど、今応援を送ったから! とにかく足止めして被害の拡大を抑えて!』

 

 現場と本部、両方が、まさしく混沌としていた。

 

 保安部門に所属している限りよく見る風景。

 とりあえず、指令通り暴れるデカブツを止めなければ。

 

「了解です」

 

 

 

 だが、アズマは苦悩していた。

 最強との距離に。

 

 その後、彼女は巨大兵器を止めるべく戦闘を開始したのだが……

 自身の攻撃はどれも通らず、相手の攻撃はこちらに通るが全て避けれるので意味がない。

 まさに千日手。

 

 五分はその場に抑えることが出来た。

 

 しかし、疲れを知る生身と疲れを知らぬ機械で長期戦は厳しい。

 

「……ッ!」

 

 攻撃を避けるうちに疲労が蓄積。

 そして注意が散漫となり、一瞬の隙に巨体から繰り出された打撃を受けて呆気なくダウン。

 

 トドメを刺そうとするかのように、青く光るビーム砲が向けられた。

 

 応援が来るまで足止めするという指令は失敗し、巨大兵器による被害は拡大していく……と思われた。

 

「コッチを見やがれガラクタ! ぶっ壊してやるよ!!」

 

 約束された勝利の象徴(コールサイン:ダブルオー)の乱入。

 両手に持つサブマシンガン・ツインドラゴンの連続射撃が横から叩きつけられ、巨大兵器は体勢を崩す。

 

 要請された応援が間に合い、C&Cエースの美甘ネルが来たことでこの問題は解決したと言っていいだろう。

 

 その小柄な体格からは想像も出来ない速度でミサイルの雨を躱しながら急接近。

 先の奇襲攻撃が効いている様子が無かったので、巨大兵器の攻撃を避けながらも同じ箇所を集中して銃撃。

 いくら丈夫な装甲でも無限に耐えることは出来ず、美甘ネルの攻撃が貫通。

 

 ちょうど貫通した部分が動力部だったのもあって爆散。

 

 一方的な戦闘、一瞬にして巨大兵器は動かぬ鉄屑となった。

 

「お、アズマじゃねぇか」

 

 戦闘が終了し、軽い準備運動をした後のような様子でこちらに向かってくる。

 任務やパトロールの際によく顔を合わせるので、覚えていたのだろう。

 

「大丈夫か? ほれ。……アズマは壊したあれ、何か知ってるか?」

 

 ネルは瓦礫に半分埋まっていたアズマに手を差し出す。

 そして先程の巨大兵器が気になるようだ。

 

 アズマは手を借りながら起き上がり、最初にお礼を言う。

 

「ありがとう。あれはたしか……おにぎり製造機、だったかしら」

 

「別に礼を貰うほどじゃねえよ。それで……おにぎりぃ? もしかしてまたエンジニア部か? これで今月八回目だぞ……」

 

 最初は笑顔だったが、後半にいくにつれて心底めんどくさそうな表情で頭を抱える。

 ここ最近、ネルはエンジニア部関係の問題の対処をしてばかりなのだ。

 そのうち美甘ネルの怒りの限界を超えてエンジニア部に殴り込むことだろう。

 

「んじゃな」

 

 今後も悩まされることを知らないネルは手を背後で組みながらその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 甲賀アズマはナノテクノロジー、生物工学、生体工学、情報技術、認知科学など様々な分野を学んだ。

 全ては脅威を滅ぼせる強さを得るために。

 

 元々はこれらを活かしてパワードスーツのようなものを作る予定だったが、ミレニアム最強と名高い美甘ネルが巨大兵器と一方的な戦いをした所を見たのもあり、多少小さくなった所でパワードスーツが役にたつとは思えない。

 

 では人間サイズはどうか? 

 少なくとも巨大兵器のように懐に入り込まれて一方的にやられることはないだろう。

 

 しかし人型のロボットでは耐久性に不安があるし、ピッタリとしたスーツだとしても壊れてしまうと一気に機能を失ってしまう。

 

 どんなに強固に作ってもいずれ壊れてしまうが、生徒は壊れない。

 機械は壊れるが、生身の生徒は壊れることがない……

 

 そこでアズマは自身の手足をサイボーグに置き換えることを思いつく。

 全ての生徒が持つ理不尽な耐久性と機械の自由度を掛け合わせるのだ。

 

 だが、その場合は学んだことだけでは技術も無く知識も足りない。

 

 何故ならキヴォトスでは生死に関わる研究や義手義足の研究が全くといって良いほど進んでいないからだ。

 普通、生徒は四肢欠損をするような事態にまず陥らず、死ぬことも無く、死そのものが忌避されている節もある。

 故に機械と肉体の融合、サイボーグ化は未知の技術といって良いだろう。

 

 そんな状況では学ぶだけではなく、実践することが理解への一番の近道と言える。

 義肢の参考として主にカイザー系列のオートマタを拉致し、四肢をバラバラに分解したり組み立て直して実際に学びを得た。

 

 そして生身と機械を融合するサイボーグ化は未知の問題が多い。

 

 なので最初はネズミなどの小さい動物から始め、だんだんと大きい生物のサイボーグ化を行う。

 

 サイボーグ化の技術は自身が最初でありながら最先端ということもあり、手術が失敗して動物が死んだり、成功しても副作用を発症したりなど、簡単には行かなかった。

 それでも数えきれないほどの実験と動物の屍を乗り越え、ついに完璧なサイボーグ化に成功。

 

 キヴォトス史で名前が残る偉業を、甲賀アズマは誰に知られることなく成し遂げた。

 

 

 

 既に自身をサイボーグにする準備は整った。

 だが、万全を期して信頼できる人物にサイボーグ化手術を手伝ってもらう。

 

 健常な手足を切り落とすという異常な行為をする以上、その辺の生徒に手伝わせることは出来ない。

 

 間違いなく大量の血が出ることが予想できるので、その光景を見ても動揺しない人物。

 

 また、理想としてはサイボーグ技術に明るい人物に手伝って貰えるとより良い。

 

 ちょうど全てを当てはめれる人物が居る。

 そう、調月リオだ。

 

 己の意思を貫き通す強靭な精神、目的のためには手段を選ばない覚悟(生徒のヘイローを壊す)、そして本人の高い頭脳。

 サイボーグ化の研究結果を見せればその技術について有用性と価値を理解してくれることだろう。

 

「────それで、手伝ってくださらない?」

 

「…………」

 

 そう思い、アズマは協力をお願いしたのだが思ってたよりもリオの反応が悪い。

 

 そこで甲賀アズマは合理性、キヴォトスを救うには暴力が必要であり、これは強くなる為の手段であること。

 そして、調月リオの友人であり、リオにしか出来ないことを全面に押し出して説得。

 

 珍しく驚きの表情を顔に出していたが、調月リオはそれを承諾。

 

 リオが密かに建造し始めている防衛都市。

 その地下深くの秘密の部屋でサイボーグ手術を始める。

 

 

 

 

 

 調月リオは後悔していた。

 

 目線の先、ガラスを挟んだ向こうは無菌の手術室だ。

 部屋の中央、手術台の上にはただ一人の友人が照明器具に照らされており、その周囲をサイボーグ化の為に造られた手術ロボが囲んでいる。

 

 友人は全身麻酔を打たれていて、次に目覚める時はきっとサイボーグ手術が終わった後。

 

「…………」

 

 目の前のボタンを押せば直ぐに、その手術が開始されるだろう。

 

 確かに彼女は戦力としてはあまり優秀では無かった。

 しかし、それでも彼女は私についてきてくれた同志であり、大切な友人だ。

 

 その友人が強くなって私の役に、隣に立とうとしていると聞いた時は嬉しかった。

 

 だとしても手足を切り落とす、さらにその手伝いなどするべきではない。

 だが、合理性を説かれた時に僅かながら利点を私は考えてしまった。

 

 

 最悪だ。

 

 

 彼女はきっと自身の力不足に悩み、解決策を考えたのだろう。

 

 そして彼女をそう考えさせた原因は私の所為だ。

 

「…………」

 

 私が彼女に話したキヴォトスを覆う災厄に関する情報。

 

 その情報を聞いてしまったが為にキヴォトスを救う為に力を求め、悩んでいたのではないか?

 

 それに対して、私は友人が既に決めたことに、ここまで来て今更悩み始めている。

 

 彼女は先に進もうとしているのに、私は立ち止まろうとしている。

 

「…………ッ」

 

 思わず拳を強く握り締める。

 怒りが、悲しみが、後悔が、自分でも理解出来ぬ感情が、心の中に渦巻いていく。

 

 一度歩き始めればもう後戻りは出来ない。

 

 これは私が蒔いた種なのだ。

 

 キヴォトスを救う為に、どのような道であろうと歩き続けなければ。

 

 赤いボタンが押され、手術が開始される。

 手術ロボのアームが手術台の上に運ばれ、隙間から鮮血がこぼれ落ちた。

 

 その光景を見て、吐き気が込み上げてくる。

 後悔がより強くなる。

 

 しかし、一度始まった手術は止まることは無い。

 止めることは、出来ない。

 

 如何なる犠牲を出したとしても、歩みを止めるわけにはいかない。

 

 

「…………ごめん……なさい」

 

 

 全ては私が始めたのだから。

 

 

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