ミレニアムのサイボーグ 作:サイボーグじゃがいも
人によっては蛇足ですが
性能が段々と強化されるキャラを
書きたくなったので書きました
キヴォトスの脅威
甲賀アズマは力を得るために四肢を機械に置き換え、調月リオはキヴォトスを救う覚悟を決めた。
それからアズマは戦闘経験と戦闘データを得るためにミレニアム周辺で戦闘。
ある程度のデータが集まったら次は行動範囲を拡大。
リオの支援を受けながらゲヘナやトリニティ、他様々な他自治区でもキヴォトスの危機に繋がる物について情報収集しつつ戦闘と身体の改良を繰り返した。
キヴォトスの実力者に喧嘩を吹っ掛け、時に負け、時に勝ち、着実に成長しながらアズマたちは最高学年へと進級。
当然、他自治区へ向かう際にミレニアムの勢力であることがバレないよう偽装も行ったので、ミレニアム忍者が他の自治区に出現したという噂は出ていない。
代わりにスケバン忍者の噂が流れている事だろう。
まあ、その噂も連邦生徒会長失踪の話題に流されたのだが。
それもその筈。
連邦生徒会長失踪により戦車やヘリコプター、さらには出所の分からない武器の不法流通は2000%以上増加。
手に入らない武器は無いと言っていい。
さらに、連邦矯正局で停学中の凶悪な生徒たちの一部が脱走。
それを抑えることのできたSRT特殊学園は廃校になり、囚人たちは堂々と大通りを歩く世の中に。
不良たちが暴れる事件の頻度も急激に増加し、殆どの学園では治安の維持が難しくなっている。
ただゲヘナは元々治安など無に等しかったのであまり関係なかったり……
とにかく、キヴォトス全土が混沌としていた。
DU地区、何処かのビルの屋上。
冷たい風を浴びながら一人の生徒が地上を見下ろす。
驚くべきことにその生徒の背後が透けて見える。
生徒の名は甲賀アズマ。
ミレニアムの一般的な生徒……だと本人は思っている。
「そろそろかしら……?」
彼女は所謂、透明マントと呼ばれる物を身につけていた。
揺れる布の隙間から見える金属の四肢。
背中に背負う静かに唸る四角い機械。
胴体には沢山の弾薬ポーチや手榴弾などを装備しており、かなりの重武装だ。
今はまだ、四角い機械と特殊な材質のマントが無ければ透明化することが出来ない。
対生徒用の不意打ち奇襲装備として日々改良が進められている。
『……対象を確認したわ。その位置からでも見れる筈』
無線からアズマをオペレートする調月リオの声。
「了解」
愛用しているスナイパーライフルのスコープを覗く。
引き金には指は掛けていない。
そのスコープの先には、四人の生徒。
そして一人の大人。
「あれが連邦生徒会長とっておきの“先生”……?」
『……』
ここに来た目的は任命された先生とやらを見ること。
いわゆる偵察だが、わざわざアズマ自身が行く必要は無く、ドローンで事足りる。
言葉を飾らずに言ってしまえば、これは単なる野次馬だ。
しかし先生に対する好奇心は止められなかった。
先生たちは移動を開始。
アズマは気づかれぬようにビルの上を渡り歩いて観察を続ける。
何処かに移動する先生一行は不良の群れに遭遇。
先生は大人であり、ヘイローを持たない。
仮に銃弾一発でも当たれば死んでしまうだろう。
脆い先生は生徒たちの後方に下がる……と思いきや弾丸飛び交う前線で指揮を取り始めたではないか。
指揮される生徒たちの動きが目に見えて良くなり、不良たちをあっという間に撃破。
乱入してきた七囚人の一人を撃退し、その七囚人が逃げていったシャーレビルへ先生一人で入っていった。
「先生とやらは命知らずなの……?」
『……ふむ』
心の底から疑問に思うアズマ。
無線からは何かを思考する声。
『一応、あの指揮能力は考慮すべきね。もう充分よ、帰って来なさい』
リオは先生の指揮能力について考えていたようだ。
七囚人に先生が撃たれる心配をしていた訳ではなかった。
「七囚人と二人きりに、……大丈夫でしょうか?」
『……流石に殺されることはない、と思うわ』
シャーレに突入して先生を助けるという案を暗に示すアズマ。
それに対してリオはやや怪しくはあるが否定。
「……まあ、そうね。了解です」
先生に特に面識もなければ思い入れもないアズマは、問題を放置して帰還することにしたようだ。
彼女がここに来ていたことに気づくものはいない。
喧騒の空気に、溶けるように消えた。
「発見したわ」
主語のない言葉が部屋に転がる。
発言者は調月リオ。
秘密の都市に存在する秘密の部屋にて、大量のモニターに表示される情報を見ていた彼女は何かを見つけたらしい。
いや、正確にはそれは既に発見しており、今なんらかの確証を得たので友人に話すことにしたのだろう。
同じ部屋で脚部の簡易点検をしていたアズマは、手にしていたドライバーを置く。
展開されていた加速スラスターが心地良い音を立てながらふくらはぎに収納された。
「場所は……?」
「ミレニアムよ」
リオが即座に答え、それを聞いてアズマの表情が真剣なものに変わる。
「なら、対処しないと。前線は私に任せて」
傍に置いてあったライフルを手に取り、すぐにでも出撃できると示す。
僅か数秒のやり取り。
「いいえ。まだ、その時ではないわ」
それに対して待ったをかけるリオ。
「?」
リオが発見したもの、それはキヴォトスを滅ぼす可能性。
キヴォトス救済を掲げる以上、必ず対象を排除しなければならない。
アズマはそう考えていた。
しかし今回はすぐ行動する訳ではないようだ。
珍しいが、ない訳でもない。
「……ひとまず、これを見てちょうだい」
「ん……」
モニターに大きく分けて二つのデータが表示される。
どちらのデータも簡潔に必要なことが纏められていて分かりやすい。
「無名の神々の王女……ふむ?」
ただ片方のデータに記載された情報はかなり少なく、この情報だけではなんの役にも立たない。
解ることは確実に対象がキヴォトスにとって危険な存在であることぐらいだ。
それでも、ここまで情報を集めるのはリオ以外には難しかっただろう。
もう片方の情報も閲覧する。
「なぜ生徒の情報が?」
そこには天童アリスという生徒について記載されていた。
ゲーム開発部所属の一年生……
他にも身長や誕生日など様々なことが記載されているが、特にこれと言って危険そうなことは書かれていない。
「……巧妙に隠されてはいたけれど、データに偽装の跡があった。この生徒は不正入学よ」
続く言葉は、どこか歯切れが悪かった。
「……そして、私たちが対処すべきものでもある」
「この生徒が……?」
そのひと言には驚きと動揺、そして困惑が含まれていた。
キヴォトスを、そしてミレニアムを救うために行動していたのに、不正入学ではあるが……守るべき生徒の中に、その対処すべき存在がいたのだ。
常人ならすぐには信じることはできない。
しかし、これは紛れもない事実。
「……」
リオは何処か不安げな表情で、唯一の友人を見つめる。
リオも、アズマも一言も発さない。
経過した時間はわずか数分。
けれど永遠にも思える静寂。
あまりの静けさに上下さえも分からない。
その時、アズマが言葉を紡ぐ。
「それで……どう対処するのかしら?」
時間が動き出す。
「そう、そうね。少しだけ時間をちょうだい」
呼吸を忘れていたかのように、乱れた息を整える。
心を落ち着かせる。
少しだけ、目元が熱い気がした。
「今回も、今までと同じように、終了させるつもりよ」
数分ほどの時間を空けてリオが話し始めた。
その姿に、先ほどまでの不安は見られない。
リオは決して自分一人ではないことに改めて感動を覚えながら対処方法を提示する。
一番大きな壁。
対象が生徒であるため、対象を終了させるにはヘイローを壊さねばならない。
ヘイローを壊す手段として完成間際の防衛都市に、新たに処刑機能をつける必要があるだろう。
それ以外は今までと同じで問題ない。
調月リオはそう考えた。
静かに聞いていた友人は眉間に皺を寄せながら答える。
「……今までと同じでは、難しいと思うわ」
「え」
てっきり、賛成してもらえると思っていたリオは驚く。
だがアズマはヘイローを破壊することに反対した訳ではない。
「対象を終了させるのは最後の手段。なぜ、対象が生徒の姿なのか、考えるべきだと思うわ」
まずアズマは天童アリスのことを擬態型の兵器だと、本当に思っている。
そして、実際に目にしてもその認識が変わることはないだろう。
それに対して、リオはなぜ対象が生徒の姿なのかは分からない。
だが世界を終焉に導く兵器だと
兵器だと思い込んでいるだけで、兵器ではなく、生徒であると心のどこかで感じている。
実際にアリスの姿を見てしまったら二度と兵器だとは思えないだろう。
その両者の違いは小さいようでかなり大きい。
「生徒の姿をしているなら懐柔して他の世界の危機にぶつけるとか? いや……それを狙っている?」
アズマは一人でぶつぶつと考え始めた。
ミレニアムの生徒ならばよく見る光景だ。
一人の世界に入ってしまった友人の姿を見ながら、リオは自身の考えに改善点があることに気づいた。
「……うん、情報が足りない。だから、まずは様子見、それで良い案が浮かぶまでは対象の封印が最善かしら?」
リオは物事を単純化して考える癖がある。
トロッコ問題のように二つに一つ、必ずどちらかをを選ぶ形に整える。
それは莫大な物事を合理的に考えるために自然とそうなっていったのだ。
そして今回も、キヴォトスを救うために生徒一人を殺さなければならないと、思い込んでいた。
「……そうね。まずは情報を集めないといけないわね」
「リオ……はやることが沢山あるし、私が実際に見てこようか?」
二者択一は零れ落ちる物が必ずある。
全てを救うには何かを切り捨てなければならない。
だが、解決策はそれ以外にもあると考えた。
収容して封印する。
懐柔して利用する。
忘却して放置する。
封印を破る可能性、裏切りの可能性、暴走の可能性。
どれも問題の後回しであり、解決ではない。
だが、それでもキヴォトスを救うことのできる道なのだと。
時間があれば対処できるようになるかもしれないと。
「いいえ、私にいい考えがあるわ」
調月リオは未来の可能性を少しだけ、信じてみることにした。
それは唯一の友人が出来てから生まれた変化の一つだ。