ミレニアムのサイボーグ   作:サイボーグじゃがいも

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パヴァーヌ一章飛ばして二章冒頭です
良い感じのハッピーエンドが書きたい





初めまして

 

 今話題の出来事としては犬猿の仲であったトリニティとゲヘナがエデン条約を締結したことだろう。

 

 だがミレニアムに影響は無い。

 

 そんなことよりもキヴォトスを脅かす可能性のある存在について、リオたちは対策を取るべく動いていた。

 

 AL-1S……通称アリス。

 

 一つの部活動に入部したひとつの存在によって、再びミレニアムは動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニアムタワーの最上階に存在する生徒会長室。

 窓の外は文明の光に溢れている。

 

 以前は所狭しとモニターが配置されていたが、今は一つのモニターのみで他に何も無い。

 新居のような殺風景な部屋。

 

 そんな場所に二人の生徒。

 

「はぁ……こんな暗い場所で、モニターを見たまま、この私、超天才清楚系病弱美少女が来訪したというのに」

 

 全体的に白色の生徒が長い愚痴を垂れ流す。

 いや、半分は自画自賛だった。

 

「出迎えるどころか一瞥すらしないなんて、私は悲しいです」

 

 彼女は両手を使って悲しみの表情を表現。

 ついでに「よよよ……」と声に出している。

 

「そう……」

 

 暗闇の中、モニターの光に照らされる全体的に黒色の生徒は呟く。

 

「先に言っておくけれど、この会談はデータベースに残らない。だから、これから話す内容が外部に漏れることはないわ」

 

 白色の生徒、ヒマリの不満(おそらく)に対して黒色の生徒、リオは冷たい返事をした。

 続く言葉を話している間もモニターから目を離すこと無い。

 

「はぁ……超天才清楚系病弱美少女の抗議の言葉を雑に扱うとは、私の心が広くなければ許されませんよ?」

 

「……」

 

 特に反応を示さないリオ。

 

「はぁ、つまらないですね。あなたは少しくらい会話を弾ませようと努力すべきでは?」

 

「……そろそろ本題に入ってもいいかしら」

 

「ええ、構いませんよ、構いませんとも。あなたはそういう人でしたね」

 

 性格がどう変わろうとも二人はまさに水と油。

 このまま放置していては永遠と似た事を繰り返し、本来ここに集まった目的も達成されないだろう。

 

 それは流石に困ると両者共に理解しているので、本題に入ることにしたようだ。

 

「まず、認識のすり合わせから」

 

 リオが初めてモニターから目を離す。

 

「“鏡”を巡る一連の騒動、それは私たちが共に仕掛けたこと」

 

「そうです。私が“鏡”という手段を、リオが“C&C”という危機を提供しました」

 

 “鏡”の部分だけ何故か自慢の表情。

 

「珍しく、同じ目標のためにあなたと私で協力した事でしたね」

 

 そして心底驚いた表情を作りつつ苦々しい声色で語るヒマリ。

 無駄に器用な事をしながら、さらに続きを話す。

 

「その目的は、アリス(AL-1S)の正体を明かすために」

 

 

 

 

 

 

 

「それで、解釈の結論は出たかしら?」

 

 赤く、冷酷で、合理主義の瞳がヒマリを貫く。

 

 “鏡”を巡る騒動からかなりの日数が経過している。

 それは考えを纏めるのに充分な時間。

 

 リオを忌み嫌いながらも、リオを見ていた視線が返される。

 

「もちろんです」

 

 両者は既に結論を出した。

 

 次はその答え合わせだ。

 

無名の司祭が崇拝する(遥か昔の記録に存在する) ──」

 

 しかし、全てが予定調和。

 

「──“名もなき神々の王女(オーパーツ)”」

 

 変わらない選択。

 同じ答え。

 

「同じ解釈になったようね。そしてあの存在(AL-1S)の本質は──」

 

「ええ。あの(アリス)は──」

 

 

 世界を終焉に導く兵器調月リオが出した結論

 

 可愛い後輩♪明星ヒマリが出した結論

 

 

「……本当に同じものを見ていたのかしら? そうはならない筈だけど」

 

「あなたこそ、何を見ていたのですか……?」

 

 どちらも驚愕した表情。

 意見が食い違うなど、まるで予想していなかったのだ。

 

 本来のリオより性格が多少変わっているものの、方向性は変わらない。

 ヒマリもリオが多少変わっている程度で変化することもない。

 

 故に、この結果は必然であり、その後の選択も同じだ。

 

「そう。じゃあ私たちの同盟はここで終わりね」

 

「同盟では無く、休戦と言った方が正しいかと」

 

 何処からともなく大量の一輪駆動のロボが出てくる。

 ロボの名はAMAS。

 

 リオが作り上げた替えのきく存在。

 

 数の暴力をコンセプトに、大量生産しやすいよう徹底的に合理を極めた兵器。

 さらに一体一体がサブマシンガンを二丁搭載しており、弾幕を張ることが可能だ。

 

「ああ、これが噂の、最近あなたが作っているおもちゃですね」

 

「同盟関係ではない以上、私と真逆の考えのあなたを、このまま無事に帰すことは出来ないわ」

 

 ヒマリは車椅子に乗っており機敏な動きは出来ない。

 当然戦闘も得意では無いのでこの数の暴力に、ヒマリが為す術は無い。

 

 ……と思われた。

 

「はぁ……まあ、意見が違ったら次は独裁ですか、あなたならそうするのでしょうね」

 

「ッ……! オフィスがハッキングされた……!?」

 

 突然部屋の明かりが消える。

 ヒマリが照明をハッキングしたのだ。

 

「ふふ、“ビッグシスター”は最強の称号ではありませんよ? それとも……“ミレニアムのサイボーグ”と呼んだ方が?」

 

 照明の光がなくなり、窓からの夜景の光だけが部屋に差し込むが、それだけでは部屋の暗闇を照らすことは出来ない。

 

「ッ! AMAS! ヒマリを捕えなさい……!」

 

「おや、このあだ名はあまり好きではないようですね?」

 

 機械ならば暗闇でも関係ないので、AMASに命令を出すリオ。

 

 しかし、今度はヒマリを捕える筈のAMASが一斉にダウンする。

 照明が消灯した際にヒマリは全てのAMASをハッキングしたのだ。

 

「……!」

 

 電子機器に関してヒマリはリオの一歩先をいく存在。

 

 だが、リオもやられたままではない。

 即座にドローン制御権を復旧させようとすると……

 

「なぜ照明システムが……?」

 

 消された筈の照明が点灯と消灯を繰り返す。

 

 

 

 

 閃光。

 

 

 

 

「うっ……!」

 

 照明は強い光となり、リオの視界を一時的に奪う。

 

 視界が回復する頃にはヒマリの姿はそこに無く、部屋にはリオ一人が残された。

 完全に逃げられたのだ。

 

「……そう、やはりこうなるのね」

 

 さらに生徒会長室の扉に電子ロックがかけられている。

 リオがその足で追いかける場合はこの電子ロックを解かなければならない。

 

 ロックを解くのに数分も掛からないが、数分もあればヒマリはリオの目から姿を隠すことが可能。

 一度隠れられてしまったら捕まえることは難航することだろう。

 

 だが、リオに焦りは無い。

 少しの後悔があるだけだ。

 

「出来れば、知られたくはなかったのだけれど──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会長室からかなり離れた場所。

 車椅子で廊下を爆走する生徒がいた。

 

「はぁ……あまりにも対応が冷た過ぎます」

 

 もちろん、その生徒の名は明星ヒマリ。

 独り言を呟きながら逃走していた。

 

 思い出すのは先程の会話。

 

「最初に出会ったぐらいの頃は、もっと違ったのですが……」

 

 どんどんと生徒会長室から距離が離れていく。

 それはまるでリオに対する理解度のように。

 

 見ていると思っていたが、思ったよりもリオについて知らなかったヒマリ。

 

 その間も独り言は止まらない。

 

「リオと話すと毎回ため息が出ている気がします。このままでは、いつか老若男女全てが思わず振り返る幸薄病弱美少女になって……ん?」

 

 ヒマリは何かに気づいた。

 廊下を爆走することを咎める者がいた、という訳ではない。

 

 廊下の先の空間が一瞬だが歪んで見えたのだ。

 

 夜、そして室内の光の屈折。

 まさに怪奇現象。

 

 彼女が特異現象捜査部部長に任命されたこともあり、そういった不思議現象には目敏い。

 

 疑問に思った矢先。

 突然、何も無い筈の廊下で車椅子が倒れる。

 

「ぐうっ……! なっ! 一体何が!?」

 

 衝撃に驚きながらも、上体を起こして状況を把握しようと周りを見渡す。

 

 何も無い空間から謎の人影。

 逆光で姿が見づらい。

 

「っ……あなたは一体……?」

 

 ようやくその姿を視認できたが、顔はマスクで覆っていて分からない。

 ヘイローがあることから生徒ではあるのだろう。

 

 背丈や服装、さらには装備品を見ても既知の存在ではない。

 

「……初めまして、私はリオの友人」

 

「友人……?」

 

 変声機を通した簡潔な自己紹介。

 思わず言葉を反芻する。

  

 

 あのリオに友人が居たのか、という驚き。

 

 今まで自身がそれを知らなかった、という事への驚き。

 

 

 黒く、冷たい銃口が額に向けられる。

 

「そして、おやすみなさい。全知の明星ヒマリさん」

 

 様々な疑問を問う間もなく、轟音を最後に彼女は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リオの友人であると自己紹介?した者の名は甲賀アズマ。

 彼女は義肢の表面とヘルメットに光学迷彩機能を搭載し、外部装置を背負わずとも透明になれるようになったのだ。

 足元には気絶した明星ヒマリが倒れている。

 

「無事、確保しました」

 

 無線による淡々とした報告。

 

 同じように感情が感じられない返答が無線から聞こえる。

 

『建造中の都市に収容するから連れてきてちょうだい』

 

 なぜリオがヒマリを捕えようとしたのか。

 

 ヒマリは常に情報の独占を嫌っていた。

 それはセミナーの対抗組織としてハッカー集団ヴェリタスを立ち上げるほどで、どれだけ嫌っていたかが解るだろう。

 

 そしてアリスが危険な存在であるという情報も学園中にばら撒き、要らぬ混乱を起こす可能性がある。

 そのため、ヒマリはこの件に関してリオからは要注意人物とされていたのだ。

 

 ヒマリはアリスのことを可愛い後輩だと思っているし、そんなことは起こさないと断言できるが、断言できるほどヒマリとリオは関わっていないので残念ながらそのことを今理解する術はない。

 

「……ねぇリオ?」

 

『?』

 

 ふとアズマは、疑問に思ったことを聞いてみることにした。

 

 

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