ミレニアムのサイボーグ 作:サイボーグじゃがいも
再結成って良いよね
と思ったので書きました
「私が幽閉されてなお際立つ魅力を持った病弱美少女ハッカーだとしても、本当に幽閉するのは流石に許されませんよ?」
声を荒げていないのにも関わらず、怒っているというのが分かる声色で非難するヒマリ。
強化ガラス越しにリオが、収容されているヒマリと顔を合わせている。
「……」
リオは何処かばつが悪そうにその場に佇んでいるだけで、一言も喋らない。
暫く無音の時間が続いたが、ヒマリの表情がころりと変わる。
怒り眉から困り眉へ。
「冗談です……別に、このくらい私は気にしません。少し愚痴りたかっただけなので気にしないでください」
「……」
その言葉を聞きリオは目を伏せる。
「……と言ってもあなたは気にするのでしょうね。まあ、いいです」
ヒマリの顔が今度は呆れた顔に変わった。
だが、これ以上この話題を広げることはないようだ。
「なぜここに来たのか気になりますが、それより先にあなたの後ろにいる……“リオの友人”について、紹介していただけますよね?」
ヒマリが疑問に思っていたこと。
先程からずっとリオの後ろに仁王立ちしている不審人物。
逃走した際に自分を捕らえに来た、リオの友人を名乗る生徒。
顔はヘルメットで、身体は布で覆い隠されている。
布の間から僅かに覗く四肢は光を反射する光沢を持っており、ヒマリには何か金属製の鎧をつけているように見えた。
その人物は声を受け、ヘルメットを外す。
「んん! では改めて自己紹介を、私は甲賀アズマ。呼び方はなんでも構いませんよ?」
ヘルメットを小脇に抱えながら、明るく笑顔で、見惚れるような挨拶をした。
私に後ろ暗い部分は何もない。
まるで、そう言わんばかりの態度だ。
「おや、良い挨拶、礼儀として私もするべきですね」
当然、それを聞いたヒマリも自己紹介を返す。
「すでにご存知のようですが──(略)の明星ヒマリです。ですが、気軽にヒマリと呼んでいただければ、アズマさん」
過去最長の自己賛美。
すでにご存知であるため省略。
「ええ、では、これからよろしくお願いしますね、ヒマリさん」
両者とも良い笑顔で、握手を交わす……
ことはガラスに阻まれて出来なかった。
耳を赤くしながらわたわたとする二人。
それを複雑な表情で見つめるリオ。
奇妙な空間がそこにはあった。
「……それで、ただ友人の紹介をしに来たわけではないのでしょう? リオ」
さっきとは打って変わって真剣な表情でヒマリは問いかける。
リオは意見が違うとわかった際に拘束することを選んだのだ。
わざわざ意見の違う者の元へ向かう必要性は思いつかない。
それこそ何か目的が無ければ。
「……ええ、単刀直入に言うわ。キヴォトスを救うために協力して欲しいの」
「……とりあえず話を聞きますので、続きを」
だが、話は続かない。
二人は目を合わせたまま何も喋らない。
リオは続きを促されて困惑する。
ここに来た目的はヒマリの勧誘だったから。
そして、協力関係にならなければ詳細な計画は話せない。
なのでこれ以上話す事はないのだ。
ヒマリは話が途切れて困惑している。
ただ一言だけ聞いても判断は出来ない。
おそらくアリスのことだと予想がつくが、それだけだ。
なので、より詳細な内容について話を聞こうとした。
しかし返事は来ない。
気まずい沈黙。
無音の時間が続くかと思われたが、幸運なことに関係者がもう一人ここにいる。
「えっと、私が話そうか?」
側で聞いていた甲賀アズマ。
リオをよく知っているが故に、なぜ話が止まったのか予想することが出来た。
彼女が居なければ話は進まなかっただろう。
「ええ、お願い」
リオは友人に任せることにした。
コミュニケーション能力に関してはアズマを信頼している。
自身は計画や機械の設計。
アズマは戦闘と対話。
まさに適材適所と言えるだろう。
特にすることが無くなったが、立ち去る訳にもいかない。
暇になったリオは過去に思いを馳せる。
なぜ、協力を求めることにしたのか。
ヒマリを勧誘することは元々アズマの案であったから。
もし提案されなければ自分とアズマ、そしてトキの三人で計画を進めるつもりだった。
だが、ヒマリを捕らえた時。
『ねぇリオ?』
アズマから捕える理由を問われた。
今までのヒマリの行動から予測したことを話す。
「対象の情報を拡散し、学園に混乱を起こす可能性があったからよ」
続いて、ヒマリの人柄について聞かれた。
私はアズマ以外の生徒と深く関わるつもりはない。
関わっては、いけない。
だから、ヒマリのことは情報でしか知らないとしか答えれない。
「……データ以上のことは知らないわ」
最後に自分が役立てているか、そして備えは万全かと問われた。
失うことを考えられないほど大切な存在であり、失わないための対策もしている。
だから、きっと問題はない。
「……ええ、心配いらないわ」
だが、アズマは万全ではないと言う。
武力担当は自身とトキが居る。
しかし、頭脳担当はリオ一人。
まだ備えられる。
まだ対策が出来る。
だからヒマリを、
「それで、今のアリスは爆弾を抱えてる。病みたいなものだと私は考えてるの」
「なるほど……では今は潜伏期間だと?」
過去を思い返しているうちに、トントン拍子で会話が進んでいた。
アリスについてどう認識しているか互いに把握。
最終手段については話さずに、現状実現可能な対処方法を述べる。
そして計画で不安な部分を少しだけ見せ、その部分をヒマリに補ってもらえないか打診する。
「情報を得るために経過観察と定期的な検診が必要だと思うのだけれど、検診の際、分析に協力してくれないかしら?」
「……分かりました。危険だと感じたら止めますからね」
隠された情報もあると感じつつ、ヒマリはそれを承諾した。
可愛い後輩を守るためにも、関わらねばならないと考えたからだ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。
ヒマリ、リオ、そしてアズマの邂逅。
それは一度破綻した協力関係を再度構築することになった。
リオとヒマリ、その間にアズマが入ることで会話の余地が生まれたのだ。