ミレニアムのサイボーグ   作:サイボーグじゃがいも

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透明な存在に気づいたり
違和感を持つシーンが書きたかったので





近づく足音

 

 普段と変わらぬ毎日を送っていたゲーム開発部。

 部員達はいつものようにテレビゲームを遊んでいた。

 

 そこに来客を伝えるノックの音。

 

「誰かが扉をノックしています。話の途中で入るイベントです!」

 

 ノックの音は控えめで、もし才羽姉妹が騒いでいたら聞こえなかっただろう。

 音を聞き逃さなかったのは、どちらにとっても幸運であった。

 

 だが、疑問がひとつある。

 

「お姉ちゃん、今日誰か呼んだ?」

 

 一体誰がノックをしたのかという疑問。

 

 首を横に振るモモイ。

 

「ううん。特に呼んでないはず……」

 

 何か忘れていないか思い出させるため、さらに質問するミドリ。

 

「訪問予定とかは? この前の部活会議に出てたよね?」

 

「ないない、なんにもなかったよ」

 

 部活会議とは、その名の通り部に関する会議。

 ミレニアムの部活が一堂に会し、変更される規則や情報などを共有する場。

 本来はゲーム開発部の部長である花岡ユズが出席するのだが、この部ではモモイが代わりに出席している。

 

 首を激しく横に振るモモイ。

 本当に心当たりがなさそうな表情だ。

 

「じゃあ誰だろう?」

 

 みんな揃って首を傾げる。

 

 まず、先生であれば何かしらモモトークに連絡が来るはずだ。

 送っていなかったとしても声を扉の向こうからかけるはず、なので先生ではない。

 

 次にヴェリタス。

 自身の趣味にのめり込んでいるので出てこないだろう。

 エンジニア部も同じだ。

 

 美甘ネルはドアを蹴破ってくるので違う。

 

 冷酷な算術使いは大抵ノックしないし、そもそも最近は悪いことをしていない。

 

「うーん……」

 

 全く予想が出来ない。

 思考が煮詰まってきた。

 

 そんな状況を打破する一人の勇者。

 

「アリスがエンカウントしてみます!」

 

 扉を開ける。

 すると、そこに居たのは……

 

「メイドです!」

 

「……どうも、初めまして。メイドです」

 

 メイド服を着た生徒。

 しかし、今まで見たことの無い顔だ。

 

「だ、誰?」

 

 その疑問に答えること無く、正体不明のメイドは喋る。

 

「会長があなた達ゲーム開発部をお呼びです。代表者を一名決めていただけますか?」

 

「だ、代表者? 会長?」

 

「な、なんで私たちが呼ばれたの?」

 

 疑問はさらに増える。

 

 会長……間違いなく生徒会長のことであり、この学園のトップ。

 冷酷な算術使いの比じゃない怖い噂も耳にするあの会長が、なんの変哲もないこのゲーム開発部を呼んでいる。

 

 なぜ呼ばれたのか想像がつかない……

 湧き上がった感情は未知に対する恐怖だ。

 

 だが、その感情が広がるより先に謎のメイドは口を開く。

 

「詳しいことは知りませんが、事情説明……だそうです。それと、代表者とは別に天童アリスという生徒は必ず来るように」

 

 

 

 

 

 ミレニアムタワー最上階にある生徒会長室。

 普通の生徒はここに来る用事は無く、故に新鮮で珍しい光景ばかりだ。

 

「凄いです! アリス、ここまで高い場所は初めてです!」

 

 エレベーターの外を眺めたり、廊下の窓から景色を見てはしゃぐ生徒。

 

「うーん。何か参考になりそうな物は……」

 

 飾られている美術品を鑑賞したりしてアイデアに活かそうとする生徒。

 

「う、うう……」

 

 勇気を出してついてきた生徒。

 

「……」

 

 珍しく真剣な表情で考え事をしている生徒と混沌としていた。

 代表者を一名、と言ったが全員で行きたいと駄々を捏ねたのでみんなで行くこととなったのだ。

 

「到着いたしました。では、お先にどうぞ」

 

 道中で名前を訊いても答えてくれなかった正体不明のメイドが扉を開けて入室を促す。

 

 その言葉通り目的地に到着したのだ。

 ここ以外に扉は無い。

 

 ゲーム開発部達は勇気を出して一歩を踏み出した。

 

 部屋には黒色の生徒が一人。

 窓際から中央のデスクへ移動する。

 

「……」

 

 代表者とアリスだけが来るはずだったのに、全員で来たことに驚きの表情を見せた。

 だがそれも一瞬、すぐにいつもの無表情に戻る。

 

「……呼び出しに応じてくれて感謝するわ」

 

 会長の斜め後ろに正体不明のメイド……飛鳥馬トキが控える。

 

「今回、あなた達を呼んだのは天童アリス。あなたについて──「待ってくださいっ!」

 

 大きな声で遮ったのは、ムードメーカー的存在の才羽モモイ。

 その表情は焦っているように見えるし、怒っているようにも感じる。

 

 対して他のゲーム開発部の生徒は?を浮かべていて、何か認識に大きな差がある。

 

 

「お願いです! アリスを退部にしないでください!」

 

 

 それはモモイの心の叫び。

 もし、前後の文脈を知らぬ人が聞けば感動してしまうだろう。

 

「……?」

 

「?」

 

「……ふっ」

 

 だが、ここに居るのは通行人では無い。

 

 会長やトキでさえも宇宙を頭に浮かべている。

 理解不能すぎて何も無い空間から失笑の声が漏れた気がした。

 

「ええと、別に退部させる気はないのだけど……?」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

 

 

 モモイは勘違いをしていた。

 アリスの不正入学がバレ、退部させられると危惧していたのだ。

 そういう訳ではないということで気を張っていたのか脱力するモモイ。

 

 まあ普通に不正入学はバレているが。

 

「……勘違いも解けたようだし、本題に入らせてもらうわね」

 

 気を取り直して話し始める。

 

 呼び出した目的。

 それは天童アリスの情報を得ること。

 そして警告をすることである。

 

 もちろん、そのまま正直にいう訳では無い。

 

「アリス、あなたには……危険な病があるの。放置しておけばみんなを危険に晒す。そんな病よ」

 

 いや……たいして変わらないかもしれない。

 

「……!」

 

 言われたことは衝撃的だった。

 突然言われて信じられる人はいるだろうか。

 

「当然対策もある。これからこちらが用意する定期的な診断を受けてちょうだい」

 

 しかし、話はそこで終わる。

 

「病ってなんですか!」

 

「これ以上詳細なことは言えないわ。でも、少なくとも感染したりはしない。安心しなさい」

 

 他の質問をしても曖昧な返答は変わらず、そのまま部屋を出るように促される。

 さらに多くの疑問を残し、ゲーム開発部は日常に戻ることになるだろう。

 

 変化としては定期的な検査が出来たことぐらいか。

 

「……?」

 

 去り際に花岡ユズは視線を感じて背後を振り向く。

 しかし、そこには会長とメイドの二人しかいない。

 

 どちらも振り向いた自分を不思議そうに見るだけだ。

 

 なにか奇妙な感覚を覚えながらもユズは既に退出したゲーム開発部の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、どう思う?」

 

 完全に姿が見えなくなった頃。

 リオが書類を見ながら誰かに語りかける。

 

「かなり高度な知能を持っているように見えたわ……少なくとも生徒と同じくらいか、それ以上は確実」

 

 何も無い空間から銀色の実体が現れる。

 その両手にはショットガンが握られており、いざという時には戦闘を行うつもりだったようだ。

 

「トキはなにかある?」

 

 その人物は側にいたトキにも話題を振る。

 

「あの赤髪の生徒、アズマ先輩に気づいていませんでしたか?」

 

「……流石に偶然じゃない? まあ、一応頭の片隅に入れておくわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パンパカパーン! アリスはクエストを受注しました! さあ先生! アリスと一緒に冒険に出ましょう!」

 

 ゲーム開発部に呼ばれた先生。

 最終的にアリスとミレニアムを歩く旅を始めた。

 

 そんな中、ふと先生は疑問に思う。

 

 このミレニアムは異様に監視カメラが多い事に。

 そして、偶然かもしれないが監視カメラの視線は全てアリスの姿を追ってる。

 

 気に留めておくべきだろうか……?

 

 

 

 アリスとの冒険の途中。

 

「……」

 

 つい先程まで笑顔だったアリス。

 しかし、今は何も話さない。

 

 話すべきか、話さないべきか迷っている。

 そんな雰囲気を先生は感じとった。

 

 話しやすいように助け舟を出す先生。

 

 “アリス、何か困った事でもあるの?”

 

「……アリスは迷っています。アリスには秘密があるんです。それを先生にも話すべきか、どうか」

 

 秘密は誰しもが持っている物。

 無理に共有したり、話す必要はないだろう。

 

 それこそ気持ちの整理がついて、それでも話したいと思ってからでも遅くはない。

 

 “話すべきか迷っているのなら、一旦時間を置いて考えるのも一つの手だよ”

 

「……分かりました。アリスは、まだこの秘密は教えませんが……気持ちの整理がついたら、いつか先生に、最初に話します!」

 

 “わかった。いつでも待ってるよ”

 

 影を感じさせぬ明るく良い笑顔に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日付が変わり、ヴェリタスから珍しい物を見つけたと連絡があった。

 先生はヴェリタスの部室に向かう途中でインスピレーションを求めるゲーム開発部と合流。

 

 ゲーム開発部のゲームのアイデアについて議論する様子を聞きながら目的地に到着した。

 

「はーい! どうぞー!」

 

「やっほー! お邪魔します!」

 

 扉を叩くと歓迎の声。

 そしてモモイを筆頭に元気な声で入室した。

 

 ヴェリタスのメンバーは、部長と副部長以外は全員揃っているようだ。

 

「それで、これ」

 

 ハレの指さす場所には件の珍しい物。

 球体で、そこから触手のようなコード……らしき物が生えている奇妙な形のロボットがあった。

 それはどこか生物的なデザインだが、機械と一目で分かる構造や材質も見て取れる。

 

 また、色合いも合わさってどこか不気味な雰囲気。

 それがなんと五体もある。

 

「うわっ! 想像してたのと全然違う! 急なホラーなんだけど!」

 

「ミレニアムで作ったロボットでは、無さそう……」

 

 それを見たゲーム開発部は思い思いの感想を述べる。

 

「不思議な見た目ですね……ハレ先輩、これ起動できたりって……?」

 

「それがねー、スイッチとか何も無くてよく分かんないんだよね」

 

 謎のロボットについて分かっている事や現在の状態など、どれも不明だと言う。

 

「先生はこれ何か分かる?」

 

 “うーん……ごめんね、ちょっと分からないかな”

 

「そっかぁ……」

 

 頼れる大人である先生に生徒達は助けを求める。

 残念ながら、これが何か先生も知らない。

 

 先生すら知らないのなら、いよいよ何も分からないだろう。

 秘密の解明が大好きなヴェリタスメンバーは肩を落とした。

 

「ところで、後ろのドローンは……?」

 

 指摘されて初めて気づく。

 円形のミレニアム製ドローンが飛んでいる事に。

 

 “一体いつの間に……”

 

 発見されたドローンは即座にUターン。

 部室から立ち去ろうと試みる。

 

「あっ! 待て!」

 

 しかし、ドローンはヴェリタス総動員で捕獲され、しばらく逃れようと抵抗していたが諦めたのか動きを止めた。

 

「部長かな? でも部長だったら見つかった時点で例の自己紹介とかするよね」

 

「そうだね。それに逃げようとしてたのも怪しい……どれ、分解してみようか」

 

 

 

 ヴェリタスは謎のドローンに注意を取られていた。

 

 

 突然の出来事に先生も意識はそちらに向いていた。

 

 

 ゲーム開発部は不思議なロボットとドローン両方に意識が割かれていた。

 

 

 アリスの様子に気づく者は居ない。

 

 

 アリスは、その機械に触れなければならない。

 

 あらゆる感覚……

 五感が訴えかけている。

 それに抗うことはできない。

 

 誘蛾灯のように吸い寄せられるアリス。

 

「……アリス?」

 

 謎のロボットとアリスが接触を果たす。

 

「待って、アリス!」

 

 

 

 止められぬ悲劇。

 

 

 

 

 事件は起こる。

 

 

 

 

 コードネーム AL-1S 起動完了.

 

 プロトコル ATRAHASIS を実行します.

 

 

 

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