賭ケグルイ 狂気の中の正気も狂気   作:ロイ1世

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最近になって賭ケグルイを見てPON☆とネタが湧いたから投稿。ちな現時点でアニメ最終話まで見てない。だからおかしなところとかあるかも。


鉄仮面という男

 賭博。金品を賭けて争う遊戯。古代から人類の営みとして存在し、現在もなお中毒患者を生み出してしまう魔の遊び。だがしかし、そんな闇をこの世に生きる者たちは意識する瞬間は少ない。

 

 競馬やパチンコといった公営ギャンブルについて、潔癖な人は眉を顰める。しかしそんな彼らであっても、ゲームセンターで親子がクレーンゲームで遊んでいる様子を微笑ましく思い、縁日で射的をするカップルを妬む。どちらも賞品が獲れなければ金がただ毟られるだけのギャンブルでありながら。

 

 しかし賭博とは運と力。それがなくては勝つことのできない遊び。真の強者が誰なのかがはっきりとする競技。上流階級、政財界の子女が通う私立百花王学園では、その運と力がギャンブルを通して生徒たちに求められ、そして試されていた。

 

「聞いた? あの噂」

「なんでも生徒会長とギャンブルをして勝ったそうよ、あの男」

「鉄仮面…」

 

 その私立百花王学園で、一年生でありながら三年生からも一目置かれている男がいた。

 

「やめてください、助けてください」

「うるさい!! 家畜は黙って人間の言うことに従っていればいいんだ!!」

「放して!!」

 

 学園の裏手、校舎からは距離があり、周囲を彩る自然によって滅多に人も来ず、視界に入らない場所で、一人の髪の長い小柄な女子生徒が強面の男子生徒とその取り巻きに虐められていた。理由は単純、女子生徒がギャンブルで負け、生徒会に借金をして上納金の額が少ない下位百位以内の非協力傾向生徒、家畜であったからだ。それを証明するように、その女子生徒の胸元には番号とミケと書かれた名札がぶら下げられている。

 

「この家畜風情が!! 人間様に歯向かうとどういう目に遭うか、その身に刻み付けてやる。しっかり押さえていろよ!!」

「助けて!! 誰か助けて!!」

 

 強面の男子学生は取り巻き達に女子生徒を取り押さえさせ、膝を着かせて身動きが取れないようにする。それに女子生徒は抵抗するが、人数差、男と女の生物学的な能力差によって敗北し、ただ大声で助けを呼ぶことしかできなくなってしまう。しかし強面の男子学生はそれを意に介せず鋏を取り出すと、喜色の笑みを浮かべて女子生徒の髪を掴む。

 

「ここではどんなに大声出して助けを求めても無駄だ、誰もお前の声に気付きはしない」

「あ…あ…」

「それよりもさ、俺は一遍長い髪を切ってみたかったんだよ」

 

 何度か鋏の切れ味を試すように空を切り、そして女子生徒の髪を刃の間に挟んだ時だった。

 

「とまれ!!」

 

 声のする方向…物置の屋根を見上げると何者かが立っていた。逆光によってシルエットしか分からない人物は大きく跳び上がり、空中で二回転した後に鋏を持つ男子学生の腕を警棒で殴り飛ばしたのち、流れるように取り巻き共にも一撃して女子生徒を解放する。

 

「ギャンブルの賭けの対象で無ければ肉体的傷害を負わせてはいけない。これは非協力傾向生徒であってもそうだ」

「てめえは、生徒会治安維持委員長、鉄仮面の世南(よな)!!」

「先ほど行おうとしていた他者の髪を同意なく切断することは肉体的傷害に値する」

 

 鉄仮面と呼ばれた男、世南 琉偉(よな るい)は、警棒の先端を強面の男子学生に向ける。

 

「ただし、今はまだ未遂。ここで下がれば規定に則った処罰は下さず、不問とする」

「黙れ!! なにが治安維持委員会だ、なにが鉄仮面だ、なにが会長に勝った男だ!! お前だって元は家畜、人間様に逆らおうなんて百年早いわ!!」

 

 向けられた警棒を払いのけた男子学生が世南に殴りかかろうとした瞬間、世南は跳び上がって男子学生の顔面に膝蹴りをする。それを鼻の下から無防備に受けてしまったため、男子学生は前歯が欠け鼻の骨を折って出血するほどのケガを負った挙句に気絶する。

 

 それを見た取り巻き達は殴られた腕を抑えながら逃げようとするが、気付けば草むらや建物の影から次々と純白のコートと手に持った先端の赤い警棒、そして金縁の純白の帽子と何よりも特徴的な正義と大きく書かれた金属のマスクで目以外を全て隠した者たちに取り囲まれる。

 

「こいつら、治安維持委員会か!!」

「取調室に連行しろ。抵抗する素振りを見せるなら気絶させろ」

『了!!』

 

 取り巻き達を包囲する治安維持委員会の生徒たちが警棒の赤い先端部から空中放電させながら距離を詰めると、取り巻き達は両腕を前に突き出す。それを見た委員会の一人が警戒したまま取り巻き達に手錠をはめると、手錠が見えないよう白い布で覆い隠す。そこに至ってようやく鼻血を流したまま気絶している男子生徒の肩を二人掛で持ち上げると、何人かが屈んで飛んで行った男子生徒の前歯を探し始め、10秒と掛からないうちに見つけると小さなジップロックの中に入れた後に立ち去る。

 

「あ、あの、ありがとうございました」

 

 地面に落ちた鼻血、赤く染まってしまった部分を掘って痕跡を消す世南に対し、女子生徒は地面に髪が着いてしまうことを承知で深々と頭を下げる。

 

「礼を言われるほどのことではない。僕は与えられた権限とやるべき職務を全うしただけのこと。それよりも君、非協力傾向生徒ということだが、返済の目途はあるのか?」

「い、いえ…まだ…」

「そうか。治安維持委員会は督促の際に暴力が用いられてもギャンブルの賭けの対象の一環と見なして対応しない。取り立ての際に会うことがないよう祈る。それでは失礼する」

 

 上辺にあった土を深くに埋め終えた世南は現れた時のように一度物置の上に飛び乗ると、再び大きく跳躍して校舎のある方向へと消えていく。

 

「おい!!」

 

 世南が跳び去っていった方向をぼんやりと眺めていた女子生徒を現実に引き戻す強い声、声のする方を向いてみれば眼帯に三白眼、舌ピアスに紫の唇。両手首より下の辺りに包帯を巻く女子生徒がいた。

 

「こっちの方向から治安維持委員会の奴らが来たんだ。世南…鉄仮面の奴はいないか⁉」

「世南さんなら、既にもう…」

「なんだよーもう!! 行っちまったのかよッ!!」

 

 子供の癇癪のように何度も物置の扉を叩くその女子生徒を、世南に救われた女子生徒は知っていた。

 

「生志摩…妄…?」

「あ゛ッ⁉ なんだ、私に用でもあんのか?」

「いえ、し、失礼しました!!」

 

 生志摩の気迫か、あるいはその顔の持つ威圧感か、それとも生志摩にまつわる噂話からか、小柄な女子生徒はまるで小動物が大型の肉食動物に見つかったかのように一目散に逃げていく。

 

「チッ、美化委員としての仕事を奪われた上に、世南の奴とギャンブルするチャンスも失っちまった。あーあ、本当にやってらんねぇぜ。本当に。…ィヒ、イヒヒヒヒ」

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