『スダ・ドアカ・ワールド』
そこは人間とモビルスーツ族が暮らす剣と魔法と精霊の世界。数百年前、伝説の英雄『騎士ガンダム』によって平和がもたらされ、スダ・ドアカは長い平穏の時代にあった。しかし、魔界より魔王『グレイト・ジオン』の手先が現れ、世界は再び争乱を迎えつつあった……。そしてズダ・ドアカの辺境の国、『ペガサス王国』の片隅にある村、『ボウル』から物語は始まる。
◇ ◇ ◇
朝、窓から入ってきた陽の光を浴びて俺は目覚めた。
「ふあぁ……」
あくびをしながらベッドから出る。そして、身支度を済ませて自室から出た。
「おはようオジキ!」
俺は先に起きていた俺の育ての親、リーオーのオジキに挨拶する。簡素な朝飯を作っているオジキは、おはよう、と返事をした。
「今日でとうとうお前もペガサス城の衛兵か。あの小さな赤ん坊が立派になったもんだぜ」
「へへっ、ありがとうオジキ!」
俺は今日からペガサス城で衛兵として働く。このボウルの村で生まれ育った俺は、子供の頃からペガサス城に遊びに行ったり、城で働く人を遠くから見て憧れを抱いていた。ついにこの時が来たんだな。おっと、そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名はベースガンダム。このボウルで育ったモビルスーツ族だ。
俺は数週間前、ペガサス王国の衛兵の採用試験を受けてこの間合格通知が届いた。オジキを初めとする村の皆は、自分の事の様に喜んで祝ってくれた。そして今日、俺はついに念願のペガサス城で働く事になった。
「オジキ、俺行ってくるよ!」
「おう、行ってこい!」
オジキに見送られながら俺は家を出た。そして通りがかる村の皆から見送られ、ペガサス城へ通じる街道を進むのだった。そうして街道を進み1時間後、道の向こうから何かがやって来る。目を凝らして見てみると、スダ・ドアカでも最も多いモビルスーツ族であるとされているジムがモンスターに追われていた。
「ひええっ!」
ジムを追っているモンスターはモックスライム。このペガサス王国でもポピュラーなモンスターだ。放っては置けない。俺はジムを助けるべく、モックスライムに向かって駆け出した。
「待て!」
俺はモンスターに呼びかけるが、モックスライムは聞く耳を持たず、そのまま俺に向かって体当たりをしてきた。しかし俺はそれをひらりとかわす。そして間髪入れずに右ストレートを繰り出した。ドゴォ!と鈍い音がし、モックスライムは吹っ飛んだ。
「大丈夫か?」
「あ……ありがとうございます!」
俺が助けたジムは礼を言い立ち上がった。
「礼には及ばないよ」
俺はそう返す。ジムは
「私はしがない行商人です。貴方は?」
そう尋ねてくるので俺は、行商人ジムに
「俺の名はベースガンダム。ボウルの村からペガサス城に向かっている所なんだ」
と答える。
「そうでしたか、本当にありがとうございます」
そう言って行商人ジムは、再び俺に礼を言う。俺は気にしていないよと答えた。
「それで貴方は、何処へ行くんだ?」
「私もペガサス城の城下町へと向かっている所でしたが、モンスターに襲われて今貴方に助けられたと言う事ですよ」
「そうか、じゃあ一緒に城下町まで行くか?旅は道連れ……って言葉もあるし」
「そうですね!いやあ、最近は何処もモンスターの動きが活発になっているという話を聞きます。悪いことの前触れでなければいいのですが……」
「大丈夫だ。もし何かあったら俺が守るから」
そう言って俺達は共に街道を進み始めた。
それから数十分後、俺達の前にモンスターが数匹現れた。先ほどのモックスライムの様に小型のモンスターではなく、それよりも大きく、黒い翼を持ったモンスターだった。ん?見慣れないモンスターだな……
「あれは確かブラストレイヴン!こんな平地に生息しているモンスターではない筈ですが……」
行商人ジムがそう言う。俺はブラストレイヴン達に対して腰に差していた木剣を抜いて構える。
「下がっててくれ」
「は……はい!」
行商人ジムを下がらせ、ブラストレイヴン達と対峙する。俺はブラストレイヴン達に対して木剣を振るう。しかしブラストレイヴン達はそれをひらりとかわし、1匹が俺に向かって爪での攻撃を仕掛けてくる。俺はその攻撃を木剣でガードした。そしてもう1匹のブラストレイヴンも俺に攻撃を仕掛ける。俺はその攻撃をかわして反撃をする。だが2匹目の攻撃をかわせず、俺はダメージを受けた。
「うわあっ!」
「ベースガンダムさん!」
行商人ジムは心配そうな目で俺を見る。だが俺は大丈夫だと返し、ブラストレイヴン達に再び木剣を振るった。しかし2匹目のブラストレイヴンが俺に攻撃を仕掛けてくる。俺はそれをガードしたが、その攻撃で木剣が折れてしまった。
「しまった……!」
俺の武器は無くなり、丸腰になってしまった。それを見たブラストレイヴン達はチャンスとばかりに一斉に飛びかかってくる。万事休すか……。その時、行商人ジムが、
「家の商品です!使ってください!」
と青銅の剣を投げ渡して来た。よし!これで戦える。俺は上空から襲い掛かってきた1匹目のブラストレイヴンにカウンター気味に剣で一閃する。
「!!」
1匹目のブラストレイヴンはその身を切り裂かれて倒れた。そしてもう1匹のブラストレイヴンが俺に襲い掛かってきた。しかし俺はその攻撃を難なくかわし、カウンターで剣を振るう。
「!!」
2匹目のブラストレイヴンもその身を切り裂かれて倒れた。最後の1匹は逃げようと空高くへ舞い上がる。逃がしてはならじと俺は飛び上がり、上空から敵に向かって剣を振り下ろす。
「ハアアッ!」
俺の一撃を受けたブラストレイヴンは地上へと墜落していった。
「やった……!」
「やりましたねベースガンダムさん!」
俺達は手を取り合って喜ぶ。それから数分後、とうとう俺達はペガサス城とその城下町が見える場所までやって来た。
「この辺りならモンスターも出ないだろう。そうだ、この青銅の剣を返すよ。元々貴方の商品だし、城に行けば衛兵の装備も使えるしな」
俺は青銅の剣を行商人ジムに返す。
「そうですか?私は別に貴方に預けたままでも良かったのですが……。そうだ!代わりに薬草をタダで渡しましょう。ベースガンダムさんもさっきの戦闘で手傷を負ったでしょう?」
そう言って行商人ジムは懐から薬草を取り出す。確かにさっきの戦闘で俺はダメージを受けた。回復の手段が無いに越したことはないな。俺はその申し出を受け入れる事にした。
「じゃあお言葉に甘えて……」
こうして、俺と行商人ジムの2人は共にペガサス城へと向かうのだった。
やがて俺達は城下町の入り口である城門までやって来た。門には衛兵が立っており、身分証を見せないと入れない様になっているようだ。……そういえば、村を出発する前にオジキに聞いた事があるな。俺は身分証と採用試験の合格通知を出し、行商人ジムも身分証を出した。それを確認した衛兵は俺達2人に
「どうぞお通りください」
と言って門を開けた。俺と行商人ジムは無事に城門を通る事が出来たのだった。
そのまま中に入ると、目の前には美しく壮大な城の外観が飛び込んできた。しかし感動している暇はない。まずは衛兵の詰所へ行かないとな……と俺が思っていると、
「じゃあ、此処でお別れですね。今日は本当にありがとうございました!」
そう行商人ジムが言う。うん、短い間だったが彼には助けられた。
「いや、こちらこそ。じゃあまたな!」
俺はそう言って行商人ジムと別れた。さてと、まずは詰所に行って手続きを済ませるか……。俺は城下町内を進んで詰所へと足を踏み入れた。
「今日入隊する事になったベースガンダムです!よろしくお願いします!」
そう挨拶すると、詰所に居たペガサス王国の衛兵ガードフレームが
「お前が今年の新人か!私はガードフレームの23号機だ。よろしくな!」
と、俺に握手を求めてきた。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
俺もそう言ってガードフレームに握手を返す。そしてガードフレームは
「よし!じゃあ早速手続きといこうか」
と言って俺を案内するのだった。それから数分後……。
「これで手続きは終わりだ。これから頑張ってくれよな!」
ガードフレームはそう言って俺の肩を軽く叩く。
「はい、ありがとうございます!」
俺は礼を言い、詰所を後にして城の城下町を進む。……それにしても、どんな仕事をするんだろう?オジキに話を聞いた時は衛兵の仕事はモンスター退治や、城の警備をすると言っていたけど……。
まあ、城に入ったらわかるか!俺はそう思い城の入り口へと向かったのだった。そして数分後、俺は城門の前までやって来た。
「さてと……これからどうすれば……」
俺がそう呟くと、詰所に居た者とは別のガードフレームが現れた。そのガードフレームは、
「ん?お前はもしかして新人か?」
と、俺の鎧についている先ほど詰所で貰ったペガサス王国衛兵の証を見てそう言った。
「はい!ベースガンダムです!」
俺はそう答える。するとガードフレームは、
「そうか、お前が今年の新人か。俺は衛兵の10号機だ」
と、俺に握手を求めてきた。俺もそれに応じてその手を握るのだった。そしてガードフレームは
「そうだな……。じゃあ今日は俺と城下町の見回りだな」
「見回りですか?」
「ああ、これから城下町を回って異変が起きていないか、困っている人はいないかなどを確認するんだ。まあ今日は俺が案内するから、お前は俺について来ればいい」
「わかりました!」
俺はガードフレームにそう答える。そして俺とガードフレームは城下町を歩き始めたのだった。城を出てすぐの所にある広場には露店が並び、買い物客で賑わっている。また、その近くには噴水があり、子供達の遊び場にもなっている様だ。まあ、俺も子供の頃に何回か城下町に来た事があるし、その時と大体変わってはいないようだな。
「あの先輩」
俺はガードフレームに話し掛ける。
「ん?どうした?」
「そう言えば西の広場にある星の剣ってどうなりましたか?」
確か城下町西エリアの広場には、嘗てあの騎士ガンダムと同じ時代に活躍した英雄の1人、ザ・ガンダムがこの地に残して行ったと言われる星の剣と呼ばれる剣が刺さっていた筈だ。広場の中央の台座に刺さっている剣は、何時かまた勇者の力が必要になった時にふさわしい者の手によって抜かれるという伝説があった。
俺が子供の頃にも、星の剣のある広場は人で賑わっていて、何人もの人物が剣を引き抜こうと挑戦していたが、誰も抜けていなかった。
「ああ、あの剣か……。あれは確か5年くらい前に城の学者が台座に刺さりっぱなしの星の剣について調べたんだが、結局何もわからなかったんだ」
とガードフレームは言う。そうなのか?
「それで?」
俺は続きを促す。
「まあ、昔と同じように広場の中央に刺さったままだよ」
とガードフレームは話を締めくくる。
「そうですか……」
「じゃあ次はあっちの店を見て回るぞ」
そう言ってガードフレームは次の目的地へと歩き出すのだった。それから数分後、俺とガードフレームは広場から少し離れた場所にある商店街を歩いていた。此処には武器や防具などを扱う店が軒を連ねている様だ。
「此処も人で賑わってますね」
「最近はこのペガサス王国周辺もモンスターが活発化しているからな。皆武器防具を求めているのさ」
とガードフレームは話す。
「そうなんですか?」
「ああ、まあ城下町は城壁で囲まれているし、街や村の周辺は兵士がモンスター退治をしているから、街から離れた街道に比べればまだマシな方だ」
とガードフレームは言う。確かに言われてみればそうだ。ボウル村でも兵士や腕に覚えある村人がモンスター退治をしていた。かく言う俺もモックスライム等の弱いモンスターを追い払っていた。その後も見回りは続きそうこうしているうちに日が暮れてくる。
「よし、後は夜間の巡回係に任せよう。今日の仕事はこれで終わりだ」
「後は自由時間ですか?」
「まあ、そうなるな。しかしだからと言って羽目を外し過ぎるなよ。後、門限までには兵舎に戻ってこい」
「はい!わかりました!」
俺はガードフレームにそう返事をする。そして俺は城下町を探索する事にした
「おーいベースガンダムさーん」
「ん?」
俺を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、行商人の格好をした少年がこちらに向かって手を振っている。あれは確か……行商人ジムだ!
「あ、行商人の……!」
「どうも!また会いましたね!」
そう言ってジムは俺の所に駆け寄ってくる。
「今日は本当にありがとうございました!お陰で命拾いしましたよ」
「いや、俺はただ通りがかっただけだよ」
と俺は返す。
「でも貴方がいなければ私はモンスターに襲われて死んでいたでしょうし……」
そう言ってジムは俺に頭を下げる。まあ確かにそうかもしれないな……。俺と行商人ジムは話をしながら、星の剣の広場に向かう。子供の頃は遠くで見ているだけだったが、俺も1回星の剣に触って見たかったのだ。
「星の剣ってあの伝説の奴ですか?単に台座と一体化して固まっているだけでは?」
そう行商人ジムが夢の無い事を言うが、俺は気にしなかった。そして俺達は星の剣のある広場にやって来た。
「お~、これが伝説の剣かぁ」
と行商人ジムは目を輝かせながら星の剣に近づく。俺もそれに続いた。行商人ジムが星の剣の柄を握り引っ張ってみるが、やはりと言うか抜けない。
「うわあ、これ本物の剣みたいですけど錆びたりした形跡がありませんね。精霊の加護でも宿ってるんでしょうか?」
そう言って行商人ジムは星の剣を調べ始める。しかし幾ら調べても剣は抜けなかった。まあ、そりゃそうだろうな……と俺は思う。そして俺も剣の柄を握り引っ張ってみる。まあ、抜けないだろうがいい思い出にはなるだろう。そう思っていたが、
「?」
「え」
星の剣はするりと、抜けた。
「う、嘘……!」
行商人ジムは愕然とする。まさか本当に抜けてしまうとは思っていなかった様だ。俺も剣が抜けた事に驚いた。しかしその直後、俺は激しい眩暈に襲われてそのまま倒れてしまったのだった……。
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