表裏一体物語-妖刀と少女を繋ぐ-   作:ニャンクル

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24.夜市の屋台

 

 

 

妖花達は出口を目指して歩いていた。その間、一つ目小僧にこの世界の物を教えてもらっていた。

 

「いろいろあるんですね」

 

「うん、ここは夜市だからね。なんでも売ってるよ」

 

屋台が並ぶ。目を奪われるほど、知らない物が所狭しと置いてある。

 

「悪いね、少し寄ってもいいかな?」

 

一つ目小僧はそう言うと、近くの屋台の店主に声をかける。

 

「おーい、ちょっといいかい?」

 

「かまわんさ、かまわんさ」

 

屋台の店主はそう告げる。

 

「じゃあ遠慮なく。3人とも、来てみて」

 

そう言われて屋台に行くと何やら水晶玉がたくさん置いてある。

そして一つ目小僧は水晶玉のような丸い玉を指差す。

 

「これは記憶の玉。少し覗いてみてよ」

 

3人は互いを見合った後、妖花が手を挙げる。

 

「じゃあ私が見てみる」

 

妖花は片目を閉じてその記憶の玉と呼ばれる玉を覗き込む。

すると玉に映像が流れる。誰かの記憶だろうか、何やら妖怪が佇んでいる。

 

「何か見えたかい?」

 

「えっと…妖怪が見えます」

 

「うんうん、これはね。玉に記憶を詰める道具なんだよ。どんな記憶でも詰むことができるんだ」

 

記憶を詰めるものか…これは私たちの世界で言う動画のようなものなのかな。記憶の玉に見える妖怪はただ佇むのみでこちらを見ることは無い。黒い服に身を包み、背を向けている。

 

「俺たちは君たちの持っている携帯やらは持ち合わせていないから、こういう物を扱うんだよ」

 

「携帯を知ってるんですか!?」

 

3人は驚いた声を上げる。

携帯を知っているということは他の人間世界にある物も知っているのだろうか。

 

「驚くことじゃないさ、みんなも俺たちのことを知っているだろ?それと同じさ、俺たちもたまに人間の世界に行くことがあるのさ」

 

「そうなんですか。じゃあ人間の文化も知ってるんですね」

 

「もちろんさ。妖怪の中には人間の作るものを持ち帰ってくる者もいるくらいさ」

 

そんなこともしているのか。たしかに人間も妖怪のことを知っている。多分それはこの世界に人間が来たことがあるから、そして妖怪が私達の世界に訪れているからだろう。

そんなことを考えていると、妖花を呼ぶ声がする。

 

「おーい、次行くってさー」

 

柳に呼ばれてその屋台を後にする。妖花がその屋台から離れた後、屋台の店主が不敵な笑みを見せていた。それに妖花は気付くことはなかった。

 

「次はここさ」

 

次にやってきたのは食べ物を売っている店だった。

湯気がでており、何か温かいものを売っている店ということはひと目で分かった。

屋台の看板には"んでお熟鬼"と書いてある。これは昔の日本の読み方だろう。

だから実際は"鬼熟おでん"と書いてある。

 

「おやっさん。鬼熟おでんを一つくれ」

 

その声に店主の妖怪が反応した。

 

「あいよ」

 

店主は木でできたお玉で何かをすくい上げてお椀に入れると「へい、おまちどう」と言って一つ目小僧に渡した。

 

「どうも、ありがとね」

 

お礼を言ったあと小走りでやってきた一つ目小僧は二つお椀を持って現れた。

 

「あの、これは…?」

 

神楽がそう聞くと一つ目小僧は笑顔で答える。

 

「これは鬼熟おでんさ。ここでしか食べられないよ、妖怪たちはこれが大好物さ」

 

そう言ってお椀をこちらへと渡してきた。それを受け取り、中を見るとそこには見たこともないような具材が入っていた。ほろほろとした何かの肉や緑色のこんにゃくのようなものなど5種類の具材が入っていた。

 

「さあさあ、食べな、食べな。冷めないうちにさ」

 

「え、じゃあ3人で分けよっか」

 

神楽の提案でとりあえず妖花が最初に食べることになったので、神楽からお椀を手に取ろうとした時…

 

「きゃっ!」

 

「おいおい、大丈夫かい?」

 

「ありがとう。でも大丈夫です、すみません落としちゃって」

 

妖花は誤って鬼熟おでんを落としてしまった。美味しそうだったおでんは見る影なく砂塗れになってしまっている。

 

「本当にすみません。落としてしまって」

 

「悪いのは私だよ、本当にごめんなさい」

 

2人で謝ると一つ目小僧は笑顔で答える。

 

「いいよ、いいよこれぐらい。たしかにもったいないかもしれないけどね。2人に怪我はない?火傷とかしてない?」

 

「だ、大丈夫です。ありがとうございます」

 

「じゃあ俺のほうはさっさと食べるから次にいこうかね」

 

3人はまた並んでついていく。一つ目小僧は笑顔を変えずに接していた。

 

「いやー、本当になんでも売ってるんですね」

 

柳が興奮気味でふんふんとしている。妖花はそんな柳の姿にちょっと笑いが込み上げる。

でも、柳の言う通りこの夜市という場所にはなんでも売っている。『なんでも』というのは文字通りなんでもだ。私が見た中だと一応、人の姿がないことから人身売買が行われてはいなさそうだ。

妖怪は恐ろしいイメージがあったけれど、こうやって迷い込んだ人間を助けてくれる人…妖怪もいる。

 

「私も最初はどうなるかと思ったけど、今は楽しいです」

 

神楽は自然と笑みが戻っていた。

 

「そうだね、それが夜市なのさ。夜市はそこがいいところなんだ」

 

誇らしげに言う一つ目小僧はドヤ顔を見せている。

 

「よしよし、ここもいいところなんだよね」

 

そう言って入った店には人形やら玩具が所狭しに並んでいる店だった。某テーマパークの人形から気味の悪い人形まである。

 

「ここは様々な玩具やらが売ってるんだ。例えばこれ」

 

一つ目小僧が手に取ったのは何やら駄菓子屋にでも売っていそうなコマだった。

 

「これはね、よっと!」

 

一つ目小僧がそのコマを投げるとコマは浮き、そして一つ目小僧の人差し指の上に乗っかった。

 

「おぉ!すごーい!」

 

「これはコマはコマでも自分の意思で動くコマなんだ。こんなの人間の世界にはないだろう?」

 

「はい!こんなの見たことないです」

 

「意思でって言うと脳で動かすってことですよね?」

 

「そうそう。驚いてもらえてよかった、よかった」

 

皆の反応を見て一つ目小僧も嬉しそうだった。

 

「これは何ですか?」

 

神楽が指を指したのは何やら桃色の固形の物だった。

一つ目小僧に聞くとそれに店主が答える。

 

「これは紙吹雪さ」

 

神楽は首を傾げる。

 

「紙吹雪?それってよく私たちの世界で言う祝い事とかに使われる物のことですか?」

 

「いやいや、違うよ。まぁわからないのも無理はないだろうねー」

 

「何してるの?」

 

柳が神楽が話していたところに割り込んできた。

 

「いや、これが紙吹雪っていうものらしくてね」

 

「へー、これがね…」

 

2人の話を妖花は他のものを見ながら聞いていた。

 

「これはね、こうやって使うんだよ」

 

店主が店の前に出てきてその紙吹雪と呼ばれる物を手に取って上に投げた。

 

「おぉ」「何?」

 

2人は何が起こるのかと店主に注目する。

 

「こうなるのさ」

 

上に投げた紙吹雪と呼ばれる物は「ポン」と音を立てて小さい爆発音が聞こえた。すると店主の姿が見えなくなった。

 

「あれ?さっきまでいたのにどこに…?」

 

柳がそう言いながらあたりをみわたすも店主の姿はない。

すると店の中から「ポン」と音がして振り返るとそこに店主が立っていた。

 

「あれ!?さっきまでそこにいたはずなのに」

 

「これがこの世界での紙吹雪。瞬間移動できるんだよ、すごいだろ」

 

「はい!すごいです!」

 

目をキラキラさせながら夢中な柳を見て少し笑みが溢れた妖花だった。

 

「じゃあそろそろ行こうか」

 

一つ目小僧からそう言われて3人はその店を後にした。

 

そんなことをしながら私たちは門を目指した。

 

「あの、その門はまだなんですか?」

 

神楽がそう聞くともうそろそろだと言っている。

たしかに大きな門が目の前に見えている。

 

「あれが門だよ」

 

私達はようやく門の前に訪れていた。

 

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