表裏一体物語-妖刀と少女を繋ぐ-   作:ニャンクル

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37.死を視る力

 嘘なの…

 

 その言葉に耳を疑う。

 

「それってどう言うことでしょう」

 

「うん。小説のネタっていう話…ごめんね!妖花ちゃん必死になって私にダメだよって伝えてくれたのに」

 

「い、いえ…全然大丈夫です…」

 

 それを聞いて妖花は天を仰ぐ。

 うん、なんだかすごく恥ずかしい気分だ。

 亜美先輩が嘘をついていたからこそ、恥ずかしい。

 

 顔が林檎のように赤くなってしまった妖花は新道に向けて手をふりふりしながら大丈夫ですと伝える。

 それを受け取ったのか新道は笑顔でうなづいてくれた。

 

「まぁ、妖花ちゃんが良い子っていうのは元々わかってるけどもっと良い子だなって思えて良かったよ」

 

 妖花は新道の笑みを見てまた顔が赤くなる。

 

「い、いえ。私ったらその…」

 

 妖花は少し引っかかったことがあった。

 

 何故わざわざ嘘をつく理由があったのか。

 わざわざ嘘を付かなくても良いのではないかと思う。

 

「それよりも何故嘘なんて付いたんですか?」

 

「え?いや、えっと…その…」

 

 新道は黙った。

 

「言いたくなければ別に言う必要はないです。私もこれ以上詮索はしませんし、先輩が良い人なら何も言いません」

 

「そ、そう…」

 

 何かあるのは明白だ。

 慌てて嘘だと言ったのには訳があるはず。

 しかし新道が答えないのであれば聞く必要はない。人の嫌ということをするのは人としてダメだと思うから。

 

「じゃあそろそろ帰りますか。また何かあれば伝えてくれれば良いので」

 

 そう言って立ち去ろうとすると新道が妖花の肩を掴んだ。

 

「待って!妖花ちゃん。私の話聞いてくれるかな」

 

 新道は真剣な眼差しで妖花を見つめていた。

 

「わ、分かりました…」

 

 2人は場所を変えていた。その場所は近くの公園。まだ午前6時半頃なので子供は誰もいないし人もいない。

 何故こんな場所に連れてこられたのか、それは今から新道が話す内容が内容だからなのだろう。

 2人は肩を並べてベンチに腰掛けていた。

 

「ここなら大丈夫かな?」

 

 周りを見渡しながら新道が言うので妖花も周りを見渡して誰もいないことを確認する。

 

「はい、大丈夫そうです」

 

「それで話っていうのは…?」

 

 妖花が率直に聞くと新道は真っ直ぐな瞳で見つめながら妖花の手を握った。

 

「このことは誰にも言わないで欲しいの」

 

「はい、わかってますよ」

 

 勿体ぶっている新道だがそれだけ新道にとっては大切なことなのだろう。妖花はそう思いながら新道を見てうなずいた。

 

「それじゃあ聞いて欲しかったことを言うね」

 

 心臓の鼓動が増していく。彼女が何を言うのか、それが気になって仕方がなかったからだ。

 

「はい…」

 

 新道は妖花の耳元まで顔を持ってきて小声で呟いた。

 

「私、他の人にはない力があるの」

 

 それを聞いて妖花の頭にはクエスチョンマークが浮かんだ。

 

「え?今なんて…?」

 

「言った通りだよ。信じられないと思うけど」

 

 もう一度聞き返してようやく妖花は理解した。そして信じることにした。

 

「驚きましたけど信じます。だって新道先輩のこと信じてますから」

 

 と言うよりも信じれる理由はある。それは自分の体験だ。妖怪の存在。そして怪者払いの存在がそうさせる。非日常の体験をしてきた妖花だからこそ他人に普通の人がもっていない力を持つものがいようとも信じられる。

 

「私ね。亡くなった方がどのように亡くなったかを客観的に見ることができるの」

 

「客観的に?」

 

 そう言うと新道が分かりやすく教えてくれる。

 

「うん。人が亡くなった場所で手をかざすとふと見えてくるの」

 

「見えるっていうのはその現場がですか?」

 

「えぇ。自由に見渡せるってわけじゃないけれどね。ある視点から目が離せなくなるって感じかな。目を瞑ろうと思っても瞑れないから」

 

 そんなことが実際に体験できるのだろうかと不思議に思う妖花は新道の話を詳しく聞いていく。

 

「それであのノートにあった天狗の話っていうのは…」

 

「うん。前に話した天狗の話よね。あの話はその吾妻柊子さんが体験したことなの。ここで起きた事件、いや事件とも言えない。あれはただの殺戮…」

 

 新道の顔色が悪くなり深く俯いた。

 それを見て妖花は新道の体を支え大丈夫ですかと心配する。

 

「ご、ごめんね…思い出したら少し気持ち悪くなってしまって…」

 

「いえ、私の方こそすみません。確かに人の死に際を何度も見る経験なんて嫌ですよね」

 

「ううん。別に良いの。真実を知れるっていう利点があるから。それにこのことは私しか知らなくて良い気がするから」

 

 顔を上げて新道は妖花の方を向いた。

 

「今まで信じてくれる人なんて誰もいなかった

 の。だから信じるって言ってくれて嬉しかったよ」

 

「そうだったんですか…」

 

 おそらく新道は子供の頃からそう言ったものが見えていたのだろう。子供のそういった話など大人が信じるわけもない。

 不思議な子と思われるかそれとも拒絶されるか。この年齢になると信じてくれる人なんていなかったのだろう。

 

「あと先輩。私ひとつ気になったことがあるんです」

 

 妖花はひとつ気になったことがあった。気になること、それはあること。

 

「何かあるんじゃないんですか?なんというか先輩さっきからいつもとは違ってぎこちない感じがすごくて」

 

「やっぱりそう思うよね…」

 

 妖花がぎこちないと感じたのは単純にいつもの彼女を見ていたからだった。

 

「うん…その本当は夏海ちゃんにも言おうかなって思ってたんだけど」

 

 少しだけ息を詰まらせて新道は妖花に伝えた。

 

「実はね、私なごみちゃんをこの前見かけたんだ」

 

「え?本当ですか!?」

 

 正直驚いた。あの時以来、私に学校を休学するということを伝えてくれたあの日。あれからもう1ヶ月は経つ。誰かが見たよなどの話は全く聞かなかった。だからこそ久しぶりに顔を見たい、そう思う。

 

「どこで見たんですか!」

 

 食い気味に聴くと新道は慌てた様子で答える。

 

「わ、私は見ただけなの。だから詳しい場所とかは分からないけど…」

 

 そういったあと新道の顔が暗く曇った。

 

「だから、私はこの話をしたの」

 

「え?どういうことですか?」

 

 妖花はよく分からなかった。

 

「私の力はね。彼女、吾妻柊子さんの遺体がどこに行ったかも見ているってこと。その遺体を天狗が持っていった場所…」

 

「ま、まさか…!」

 

「えぇ、そのまさか。なごみちゃんが行った場所もその天狗と同じ場所ってこと。残念ながら私の力で見れたのは入っていくところまで、そこで力が途切れちゃったから」

 

「で、でも。その事件は何十年も前じゃないですか」

 

「も、もちろん何十年も前の話だから本当に今いるとは思ってないよ。ただあの天狗となごみちゃんが向かった場所は山奥だからどうとかは分からないけれど…」

 

「もし、天狗が生きているならなごみちゃんと鉢合わせしてもおかしくないってこと!天狗のことなんて本当によくわかってないけれどその可能性があるの。だから危ないんじゃないかなって」

 

「た、確かに…いないとは言い切れないです。もしいたならなごみが危ない」

 

「なごみちゃんがどういう理由であそこを出入りしているのかは分からないけど、何かあると思わない?」

 

「え、はい。」

 

 なごみは修行とはいっていたけれど…

 

「女の子1人で山奥に入るのはおかしいよ!それに危ないし…休学の理由もあまり話されてないみたいだから何かあるんじゃないのかなって」

 

 熱くなった新道を止めるのも気が起きないが一応なごみの件を伝えておくとした。

 

「実は先輩、なごみのことなんですけど」

 

「何か知ってるの!?」

 

「はい、なごみは修行?をしているらしくて」

 

「修行?それ本当に?」

 

「はい、本人が言っていたので」

 

「修行か…修行で山奥にってどこぞのアニメみたいだけど」

 

「わ、私に言われても困ります!でも…」

 

 妖花はそこで思い出した。

 

「わ、私…」

 

「ど、どうかした?」

 

 妖花はあることを思う。

 

 私…なごみのことをほとんど知らない。

 なごみから家が厳しい家系だということは知っていた。だから現代のもの、携帯や電車などの今の人間なら当たり前に知っていることも彼女は知らない。

 なぜそこまで情報を制限されているのか今まで考えたこともなかった。私にとっての当たり前はなごみにとっては当たり前では無いことを。

 本当に修行なのか、もっと他の何か変なことに巻き込まれているのではないか。そう心配してしまう。

 

「わ、私。なごみのこと全然分かってなかった。分かった気でいた…何も知らないのに…」

 

「だ、大丈夫?」

 

「は、はい。先輩そこでなごみをみたんですよね?」

 

「うん、何度か見たよ」

 

「分かりました。なら、私はその場所に行ってみます。なごみに伝えたいことがあるので。それに天狗の件について調べたいですから」

 

 もちろん、厳しい家系であるなごみに迷惑がかかるかもしれない。でも友達なのに、親友なのに何も分かってなかった自分が嫌になる。今まであの子がどれだけのことを我慢していたのかは分からない。

 彼女がどう思っているのかもわからない、けれど彼女には笑顔でいてほしい。あの時のなごみ、私から立ち去る時のなごみはなんだか悲しい顔をしていた気がするから。

 もし、嫌々修行をやらされているならなごみの両親と話したい。迷惑だってことは分かっているけれど何か力になれるかもしれないから。

 

「じゃあ妖花ちゃん。いつにする?」

 

「先輩も来てくれるんですか?」

 

「もちろん、私の力で知ったことだもの。吾妻さんのこともそうだけど、何があるのか知っておきたいからね」

 

 妖花達はすぐにその場所へ向かう準備をしに家に帰宅した。

 帰宅してからすぐに汗をシャワーで洗い落としまた動きやすい服装に着替える。するとそれを見ていた母が声をかけてきた。

 

「妖花、またどこか行くの?」

 

「うん!」

 

「遅くなるの?」

 

「分からないけど夜までには帰るつもりだよ」

 

「そう、気をつけてね」

 

 母からそう言われて大きく頷く。妖花は朝食を勢いよく食べてすぐに二階はあがり新道と連絡を取った。

 携帯で電話をするとすぐに繋がった。

 

「先輩、聞きたいことあって電話したんですけど」

 

「うん、良いよ。なんでも聞いて」

 

 優しい口調で電話越しから声が聞こえた。

 それを聞いて妖花は新道と今日のことについて話し合う。

 

「集合場所と時間どうします?」

 

「いつでもどこでも大丈夫だよ」

 

 そう言われて妖花は悩んで結果2人ともが場所がわかる学校に集合しようということになった。集合時間は今の時刻が7時すぎなので2人の移動距離も混みして8時ごろということになった。

 

「そういえば山奥って言ってましたけど結構斜面とかきついんですか?」

 

「そうね。きついところもあるかもしれないし長袖長ズボンで来たほうがいいかな」

 

「分かりました」

 

 とりあえずその助言もありまた服を着替えた妖花は鏡でどんな感じかを確かめる。

 

「うーん、良い感じかな」

 

 電話をビデオ電話に変更して、新道へもう一度服装を診てもらうことにして、伝えることだけ伝える。

 

「先輩、もしなごみとは出会わなくて天狗と出会ったなら逃げましょう。人がたくさんいるところなら奴らも…妖怪達もそうそう手が出せない気がするので」

 

「うん、わかった。妖花ちゃんも気をつけてね」

 

「はい!」

 

 その後妖花は予定通りの時間に学校の校門で待っていた。

 

「早くきすぎたかな」

 

 まだ8時にはなっていない。けれど新道は思い他すぐに現れた。

 

「妖花ちゃん待った?」

 

「いえ、まだ時間全然大丈夫ですし」

 

 時刻は7時40分ほど。2人とも急いできたため少し汗をかいていた。

 

「先輩の服装いい感じですね」

 

「そ、そうかな…?」

 

 新道は山に登るような服装で大きなバッグを肩に背負い、両手を空けていた。

 

「妖花ちゃんはあまり物を入れてないっていうか軽装なのね」

 

「あ、はい。一応長袖長ズボンなんですけど動きやすい服装にしました」

 

 妖花は夜市の件もあり、動きやすく軽い服装をしていた。これなら、何があっても動けるはずだから。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

 2人はその目的地に向けて歩いた。

 目的地は妖花の家からも見える大きな森の中のようだった。妖花の家から少し距離のある大きな森。あまり行くことはないが自然が近くに見え、栄えている街並みが広がるこの地域はいい場所だなと感じる。

 説明を受けながら妖花はきた道を戻りながら目的地向かった。

 家を通り過ぎ少し歩くと目的地に到着する。

 

「ここら辺ですか?」

 

「えぇ。私が見た時なごみちゃん森の入り口とかではなくてこの辺から森に入っていったのが見えたよ」

 

「そうですか…」

 

 森は急斜面になっており、入るのでも一苦労しそうな場所だった。

 

「じゃあ行くよ」

 

「はい」

 

 2人は意を決して森の中へと入っていった。

 急斜面なため木をつかみながらゆっくりゆっくりと斜面を上がっていった。

 

「結構きつめな斜面ですね」

 

「えぇ。ここをあのなごみちゃんが入っていったって思うと不思議。それに妖花ちゃんと同じで軽装だったし」

 

「はい。でもここを登れば少し平らになった地形になるはずですから」

 

 妖花はここら辺の地形を知っていたのでこの斜面を登れば平らな地形になることを知っていた。

 

「あと少し、あと少し」

 

 木を掴んで土を踏み斜面をあがる。ねっこに足を引っ掛けてこけそうになったりしたこともあり、注意しながら進んでいった。

 そして…

 

「やっと登れた」

 

「はい…」

 

 やっとの思いで登り切った2人はそこから下を覗く。

 数メートルの高さはある。ここを登ったのは良いが帰りをどうするかまた話し合わなければならないなと妖花は思った。

 

「じゃあ行こうか」

 

「はい、行きましょう」

 

 2人は森の奥へと進んだ。

 

 

 

 

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