新道の話を聞いて最初に声を発したのは夏海だった。
「こっわー!!!!」
夏海が大声で叫び、机にうづくまってしまった。
他の部員もその声に驚いた様子だった。どちらにせよ、話の内容に驚いて欲しかった新道だったが夏海のリアクションを見てふふっと笑った。
「急に大声出さないでよ、びっくりした…」
妖花は心臓を抑えながら夏海を見ると「あぁ、ごめんごめん」と謝罪をしてもらったところで先ほどの話のことについてを話を始めた。
「確かに天狗は大きく強いイメージあるけどそんなことをするんだね…」
「まぁ、2人とも。とりあえず新道に向けて拍手を」
部長の一言で皆新道に向けて拍手をする。
少し照れながら新道はお辞儀をした。
「ありがとうね、私の話どうだったかなー?」
気になる様子で皆を見つめる新道に対して、部長が感想を求める。
「では、皆感想を!」
感想を言うのはこの部活の決まりで、話をした方に感謝を送ると言う意味で行っている。
部長からの言葉で皆が1人ずつ感想を新道に向けて言う準備をしていた。
そんな中はじめに口を開いたのは同い年であるが、違うクラスの
「まるで本当にあったかのような喋り方、さすが新道先輩です!」
阿羅型は不思議な性格をしていると私は思っている。その話し方や立ち振る舞いから何かただならぬものを感じてしまうのだ。人によって態度が変わりすぎる。
それが彼、阿羅型煙羅だ。オールバックの髪の毛の彼は暑い性格というわけでもなければ冷たい性格でもない。影は薄くも濃くもない。
彼はいわばとても温度差が激しいのだ。時に暑くなり、寒くなり、薄くなり、濃くなる。
私は別に何か特別彼に対して思うことがあるわけではないものの1年生の時は同じクラスだったということもあり、阿羅型とは思いのほか仲がいいと思っている。
阿羅型は様々な人と話す、話したことのある人ない人関係なし。私ならそこまでできない。特に仲のいい友達もいなければ悪い友達もいない。それが彼のいいところでもあり、悪いところでもある。
だからなのか阿羅型の周りにはあまり人が集まらない。みんなも好きでも嫌いでもない、どうでも良い存在と思っているのだろうかと女子目線の妖花は思ってしまう。
ただ、人が集まらないと言っても誰かしらが阿羅型の側にはいる。
話すわけでも、聞くわけでもない、ただいるだけ。一人にされるのが嫌なのか分からないが、阿羅型は孤独を恐れているのかもしれない。
彼の過去も人生も私は聞いたことはないし、これからも聞くつもりはない。
ただ、阿羅型という人間はそういう人間なんだと伝えたかった、それだけのこと。
そんな阿羅型は感想を伝えてキラキラした目で新道を見つめている。
「いえいえ、ありがとう阿羅型くん。私今回の話は自信あったんだよ」
片目でウインクをする新道は先ほど言った通り自信に満ちた顔をなっている。いつもなら心配そうな顔でみんなを見つめているのだが、上手く話すことが出来たことで機嫌がいいのだろう。
「今回の話は特に良かったです!新道先輩みたいな話し上手になりたいですよ!」
「そんなことないよ、私はたまたま見つけた話をしただけだから。」
「よし、とりあえず阿羅型に拍手を」
手を叩く音が終わるとまた部長が口を開いた。
「じゃあ阿羅型から時計回りだからつぎは俺だな」
部長からの提案により感想を言う順番は時計回りとなり、皆部長の方へ顔を向ける。
「新道は本当に毎回とんでもない話をもってくるからすごいと思っている。今回の話は天狗の話だったが、皆天狗に種類があるのを知っているか?」
天狗の種類?天狗の種類ってなんだろう、そう妖花が思っていると、軽い口調の声が聞こえる。
「うち、知ってるけど」
そう声を上げたのは2年生の
今日もギャルらしくネイルなどをしている。そんな彼女はとても後輩思いの良い先輩であると言うことを私は知っている。
夏海が誘ってくれたことは確かだが私がこの部活に来てはじめて話をしたのが伊家波先輩だった。誰にでも話しかけてくれる優しい先輩は私の大事な部活仲間だ。
「うち、知ってます。それ」
もう一度手を上げながら声を出した伊家波の方に視線が注がれた。
「ほぉ、さすが伊家波。ではどんな種類があるのだ?」
部長も伊家波のことを一目置いているのだろう。部長は自分よりもすごい人間には目がない。それはこの部員皆がそうだからだ。部長は皆を認め、尊敬している。それが部長のいいところなのだ。
伊家波は自分に視線が集まったことを確認してから話し始めた。
「まぁ種類は諸説ありますけど大体は3種類いるらしくて、
「流石の一言だ。その通り、天狗にはその3種類が存在するらしい。他にも種類があるらしいが大きく分ければこのぐらいだろう。今回の新道が話したのは多分大天狗か鳥天狗だと思われるな。」
「何故ですか?」
妖花は部長に疑問をぶつけた。
「それはな、大天狗と鳥天狗は全く違う見た目をしているんだ。私達がよく見る天狗の姿をしていると呼ばれているのが大天狗だ。大天狗は鼻が長く、鳥天狗は口の部分がカラスの嘴になっているそうだ。どちらも人のような見た目ではあるんだがな。
この話では天狗という表現だけだったのでわかったのはそこぐらいか。木の葉天狗というのはいわば大きな鳥と思ってくれたらいい。あまり妖怪を知らない人が天狗といったなら大天狗か鳥天狗だろうというのが私の考えだ」
「そうなんですか。勉強になります。天狗にも種類があったなんて知らなかったです」
部長が私の疑問に答えてくれたところで、伊家波が口を開く。
「知らないのも無理ないってー、うちも最近知ったばっかだし、大天狗は日本の大魔王と呼ばれるほど強い力を持つ妖怪だったらしいよー」
「そんな強い妖怪なんだ!臨美先輩すごーい!」
夏海も私と同じようにリアクションを取っていた。先程まで怖いと言ってうづくまっていたが、この天狗の話に興味があるらしく、すぐに立ち直って話を聞いていた。
「天狗といえばやはり羽団扇。ヤツデの葉だな。別名テングノハウチワとも呼ばれる有名な葉だ。そして天狗は強力な神通力を使うとも言われている」
得意げに語る部長へ夏海は夢中なようだ。
「私も勉強が必要ですね!もっと妖怪のこと知ってたくさん怖い話したいです」
「頑張りたまえ!」
部長から応援され、夏海は強くうなづくと、次の人が感想を言っていった。
少し時間がたち、私以外の人がこの話の感想を言い終わり、感想を言うのも最後の1人。
次は私が感想を言う順番になっていた。
「では、始めてくれ。」
部長の合図で私は口を開いた。
「本当に怖かったです。本当にあったかのような話し方がまた恐怖を誘ってきます。それが新道先輩のすごいところだと私は思ってます。一つ気になったんですけどどうやってこの話を聞いたんですか?」
私の問いに皆唖然としていた。
何人かは何をいっているんだと首を傾げていた。しかし1人この話をした新道亜美だけは私の問いにとてもびっくりした顔をしている。
「何が言いたいんだ?」
部長が私に対して訳を教えろといってきたのでそれに答える。
「いえ、なんとゆうか友達に聞いたのにその友達は死んでるから誰に聞いたのかわからなくてそこが気になっただけなんですけど。」
「ふむそう言うわけか…で新道、とゆうわけだがどうなんだ?」
「よ、妖花ちゃん、考えすぎよ。この話は作り話なんだからそんな友達は実在しないし、そんな疑問は持たなくていいんだよ?この部活で話されていることのほとんどが作り話やネットから持ってきた話ばかりなんだから」
「そうですよね、すみません。私そこが気になっちゃったもので。作り話に決まってますよね、私ったら…変な質問してすみません、亜美先輩。」
私が申し訳なさそうにしていると、新道はきにしないでと肩を叩いてくれる。
「でも、確信をついてくる質問ありがとう。今度はもう少し上手く話せるようにするね」
「てかさ、作り話なんだからさ。そんな気にすることはないと思うぜ」
阿羅型も私のカバーに入ってくれる。
「よし、そう言う疑問を持つことはあるだろう。それを言えることは千子のいいところだと思うぞ!」
部長からも励まされ、少し和やかな雰囲気が部室に流れていた。
皆が和やかな雰囲気に包まれる中で1人ぼーっとしている人物がいた。
「どしたの、夏海?」
私が声をかけると大声で夏海は叫ぶ。
「嘘だったのー!!!私全然嘘だってわからなかったー!そんな…じゃあ天狗の種類も嘘なんですか…?」
本当によく叫ぶ子だなと思っていると伊家波先輩が口を開く。
「天狗の種類はまじよ?3種類いるのはマジだから。話が嘘ってだけよ?」
「そ、そうなんですか…とゆうか私ずっとみなさんの話が本当の出来事かと思ってました!」
その言葉で皆一斉に笑い出した。夏海の勘違いがここまでとは私も思わず、堪えていた笑いが吹き出す。
「やめてよ、夏海、ほんとに真面目なんだから。」
皆が笑っている中1人ずっと鋭い目つきで私を見つめる新道先輩に私は気づいてはいなかった。
〈登場人物紹介〉⑤
阿羅型 煙羅 (あらかた えんら)
霹靂中学2-1所属。身長171cm。
オールバックで熱くも冷たくもない性格の人物。
父親が〈ある組織〉に所属しており本人もそのことは知らない。父親のことをずっと警察官であると思っている。
伊家波 臨美(いけなみ のぞみ)
霹靂中学3-1所属。妖花が部活に来た時最初に話しかけてくれた生徒。霊感がとても強い。いわゆるギャルで友達も多い。基本的にタメ口を使うが敬意を忘れることは無い。