天網のつくもがみ ~みゆきの蜘蛛糸電文禄~   作:きないしょく

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~前回のあらすじ~

 北の小国クリームランドから海を跨いで二ホンの市立デンサン女子高等学校にやってきた美少女転入生セリシーに屋上に呼び出された黒井みゆき。
 まさかの愛の告白にパニック状態に陥るみゆきだったがセリシーから飛び出た発言は意外なもので…?


file.6‐2 乙女ロード

「…クー、ル?」

「そうクール、みゆきのどんな時でも表情を変えないクールな顔にアタシは惚れたシ、どうシたらアタシもみゆきのようにクールになれるかおシえて欲シいシッ」

 

 突然のアタックに呆気に取られるみゆきの手を更に強く握り、セリシーはその白面の肌を更に紅く染めて言葉を続ける。

 

「アタシ…、転入シた時こそクールにシてたけど、ホントは全然クールじゃないんだシッ。

 だってアタシコーシーのブラック飲むとすぐ顔がシブくなるシ、ババ抜きでジョーカー引くとすぐ顔に出るシ…。

 アタシクリームランドだとバカ扱いだったシ、憧れの二ホンに来てクールビュティとシて生まれ変わるつもりだったのを、この学校でみゆきってホントのクールビュティに出会ったシ。

 これはきっとFate(ふぁて)だシ、プライド様がアタシに授けてくださったFate(ふぁて)だシ、だからみゆき、アタシにクールビュティの生き様をおシえてシッ」

「えっと、とりあえずふぁて…Fate(フェイト)っていうのは主に悪い運命の事を指すの。だからこういう時はFortune(幸運)とか、私だったら…Lot(偶然)って言ってくれた方が嬉しい」

「みゆきは物シりだシ、流石クールビュティだシッ」

「…まぁ、セリシーにとっては確かにFate(悪い運命)かな」

 

 高揚するセリシーとは反対に、みゆきは消沈して答える。

 

「私はセリシーの思っているようなクールビューティーなんかじゃない。

 クールなんじゃなくて、表情の作り方がわからないだけ。

 子供の頃は明るかった様な事を聞いたけど、私は私の好きなように振舞うと、周りの人達は私の事を気味悪がって、だから私は気味悪がられないように自分を出さないようにしたんだけど、そうしたらだんだん表情の出し方も他人の事も…私自身もわからなくなって…」

「それは酷いシ、みゆきをキモがるとか許せねぇシ、そいつら見つけたら切り刻んでやるシ」

「…セリシーは嬉しくないかもだけど、セリシーは自己紹介の時から感情豊かだった。だから私、初めて見た時からセリシーが可愛いなって思って、セリシーみたいになりたくて…」

 

 みゆきの告白に逆にセリシーはしどろもどろに答弁する。

 

「シ…、アタシバカだシみゆきは憧れる相手間違えてるシ」

「でもセリシーはクリームランドでは人気者だったでしょ?」

「人気だったとシてもアタシの理想の人気者とは違うシ、アタシはバカとかKawaiiじゃなくてアタシの望むクールビュティになりたいシ。だったらっ」

 

 セリシーはみゆきの瞳を真っ直ぐに見つめ、真剣な声色で発声する。

 

「アタシはみゆきからクールを学ぶ。みゆきはアタシからKawaiiを学ぶ。それでおあいこだシ」

「…それって、私と友達になってくれるって事?」

「むシろアタシがみゆきと友達になりたかったシ。だから、これからよろシくお願いシます」

「セリシー…」

 

 思いが堪え切れないみゆきはセリシーを力強く抱き締める。

 

「嬉しい…」

「シ…、シ?」

 

 やにわにセリシーはみゆきを突き放し、屋上の床の何かに覆いかぶさるように倒れ込む。

 不思議そうに床に転がるセリシーを見ると、何らかのキャラクターを模したグッズがみゆきの視界に確認される。

 

「ち、ちげーシこれアタシアニメ好きで二ホンに来たわけじゃねーシッ」

「…飛影?あぁー、幽遊白書かー懐かしいなー、私陣好きだったなー」

「シーシーシーアタシオタクバレシたくねーシッ、これみゆきとアタシだけの秘密だシッ」

「ん、そういうことなら大丈夫」

 

 オタクバレに発狂するセリシーをなだめるようにみゆきは語り掛ける。

 

「女子高って、異性との出会いがないから開放的になるの。一応男性の先生とかもいるけどそんなの殆ど無視で好き放題やるの。セリシーも見たんじゃない?…上級生達の教室の汚さとか」

「いやでも一年の教シつは綺麗だったシ」

「それはレインと私が清掃してるから。私は骨董品屋の娘だからお客様の目を意識したお掃除の心得があって、最近知ったけどレインも銭湯の娘さんだから、アイツそういうところしっかりしているのよね。まぁそれは置いといて、そんなわけだからオタク趣味も私を含め別にどうと思う生徒はいないはずよ」

「でもそれクールじゃ‐」

「そうだ」

 

 みゆきはポンと手を叩き、セリシーに友達として初の提案をする。

 

「セリシーも行ってみない?オタクの町、イワハナタバタウンへ」

 

 

 イワハナタバタウン。

 そこら辺の草を食べれば大抵の病気が治る人種が支配する二ホン一ダサい県民が勝手に首都と崇める、デンサンタウンと並ぶデンサンシティの観光街。

 そのイワハナタバ駅には待ち合わせスポットとして有名なフクロウルと呼ばれる像があり、みゆきはフクロウル像の前でイワハナタバタウンでも有名な嫌われ者に絡まれながら待ち人を待っていた。

 

「ケッケッケ、へへん、この町は○○ばっかだな。××ッてるならオレが十万ゼニー払うぜ。△△だろうがなんだろうがバスティングレベルSで□□せてやんぜっ?ヒャヒャヒャッ」

(クズが)

 

 男のあまりに品のない発言に閉口しながら、みゆきはPETで待ち時間を確認する。

 ドンとのおくデン谷の待ち合わせの時は初めての友達付き合いだった為に家を出るまでごたごたしたが、あれから何度か友達と待ち合わせをするようになってからその手の緊張が薄れ、予定より余裕をもって待ち合わせ場所に到着できるようになったのだが、今度は時間が早すぎて厄介者に絡まれる弊害が生まれていた。

 

(予定より15分前じゃ早すぎるか、5分くらい前にしようかな)

 

 無視を決め込むみゆきになおも男がウザがらみを続けると、不意に男の首筋にナイフが突きつけられる。

 

「やれやれね…、その下品な言葉遣い、二ホンの品位を著シく下げるわっ。どうせ、表辺りでウイルスバラまいては大きな顔シてるチンピラでシょ?現実世界を彷徨う亡霊になりたくなかったら、二度とここでは出歩かないことねっ」

「ひ、ひげー」

 

 男が情けない悲鳴を挙げて退散すると、白と水色の基調のパーカーに赤いマフラーを巻いた少女、セリシーが右手に持つナイフを左手の「暴漢撃退マニュアル【著・瞳】」と出力されたPET画面に押し付け刃先をぴょこぴょこ飛び出させてみゆきにこれが玩具のナイフだと認知させる。

 

「アタシナイフ集めがシゅ味だけど持ち歩きはできないから、こうシて玩具のナイフ持ち歩いてる。これでも脅シくらいにはなるシ」

「そんなでも人前で見せびらかすと騒ぎになりそうだから気を付けた方がいいかも。でも、ありがとう」

「どういたシまシて。みゆきの黒と紫のワンピース、かっこいいね」

「かっこいいじゃなくて可愛いって言って欲しいけど、私のお気に入りの服。セリシーの衣装は確かにクールだけど、フードまで被って熱くない?」

「オシャレには我慢が必要、ありがとう。それじゃみゆき、町の案内よろシく、シ」

「案内と言ってもすぐそこだけどね。じゃあスカルマン、また後でね」

『わかったよ、女の子二人で楽しんできてね』

『セリシーはバカだからちゃんと見張るクワッ』

 

 ネットナビにも主となる性別があり、スカルマンとペンギーゴは男性人格を有するプログラムである。

 自身の性別とは反対の性別のネットナビを所有する場合(もっとも男性が女性型ネットナビを所有するケースは稀だが)、特に性を意識した遊興の時は、街の指定したネットナビ用の安全な電脳空間に放逐するケースが多い。

 体よくスカルマン達をPETから追い払ったみゆきとセリシーは、乙女二人の解放された時間を楽しむことにする。

 

 

 駅を出て10分と経たない場所にあるショッピングモールの向かい側にある大通り。

 そこはオタク女子とダサい県からの来訪者が己の推しを存分に推し進める夢の空間、通称「乙女ロード」。

 セリシーは乙女ロードの空前絶後の超絶怒涛の推し活熱量に圧倒されていた。

 

「こ、これは凄いシ、コスプレ女シもいるし痛バッグも沢山、みゆき、アタシもバッグをデコッていいのかシ?」

「いいよ、乙女ロードはそういう所」

「やったシ、思う存分推シ活するシッ、みゆきも推し活するシッ」

「わ、私はいい、私そんな度胸ない」

 

 異国の地で初めて見る乙女のエネルギーに興奮収まらないセリシーと共にみゆきは乙女ロードを巡り歩く。

 

 

「こ、これは煉獄さん400億の男、炎の弁護士フェニックス・ライト、熱い男勢揃いだシーッ」

「北国出身なのに、いやだから熱い男が好きなの?」

「取り消せシ、今の言葉」

 

「ヅラもコスもこんなに沢山、アタシ飛影やるからみゆきは雪菜やるシ」

「やめてってば、私そういうの無理」

 

「しかしセリシーなら執事カフェ辺りが喜ぶと思ったけど、まさか駅を跨いで羊の…その…脳みそ…カレー食べたいなんてね」

「クリームランドでは羊はシゅシょくの一つ。羊が食べられる店があるって聞いて行きたかった。ほらみゆきも食べてみて」

「ん…、美味しい」

 

「お姉さん絵が上手ですね、見ててもいいですか?」

「気が散るからガキはどっか行きな、オフの日くらい一人でいたいのよ」

 

「さー続けて行くシ、今度は薄い本漁りだシー」

「あ、ヤドクガエル新刊、買っておこうかなって、あっ」

『ちょっとそれはケロが先に取ったケロッ』

「い、いやいいんですっ、それではまた来週~っ」

「?」

 

 

 乙女ロードを満喫し、日も暮れだしてスカルマン達との落ち合い時間が近付き、回れる店舗も後一つと目途を付けたみゆき達はゴシックロリータ専門店に訪れていた。

 

「みゆきはミニスカートとか履かないの?確かにロングの方がクールだけど、ミニなみゆきとかKawaiiと思うシ」

「私がミニとかそんな…、それに私は落ち着いた服の方がいいから…」

「でもみゆきも彼シとかに自分の足見て欲シいでシょ?それにミニって足が長く見えてKawaii以外にもかっこいいシ、試シに着てみなよ」

(まぁ…着るだけなら…)

 

 みゆきはセリシーに手渡されたゴシック服を片手に試着室へ向かい、鏡に映る自分の姿を正視して先程のセリシーの言葉を反芻する。

 

(彼氏…か、あの時はパニクッちゃってつい熱斗くんの名前を出しちゃったけど、熱斗くんみたいな元気な男の子が私なんかを好きになる訳がないよね、セリシーには聞かれちゃってたかな?)

 

 みゆきは衣服を脱ぎ下着を見て、もし彼氏がいたらどういう下着だと喜ぶのか想像を巡らせる。

 みゆき自身、本日セリシーと遊ぶのに気合を入れる為の勝負下着くらいは所持している。

 とは言ってもその全てが気合を引き締める用のスポーツ下着であり、気になる異性に向けて背伸びした色気のある下着などを買ったことは無い。

 

(正直…、例えば熱斗くんが性の事で頭がいっぱいだったら嫌だけど…、もし初めて異性に興味を抱いた相手が私だったとしたら…嬉しい)

 

 小学生くらいの子供が年上のお姉さんを意識するといった話は漫画ではよく見るシチュエーションだ。

 最も、その手の話は大抵の場合は憧れのお姉さんで終わりそれ以上の発展はないのが定番だが、例えそうだとしても初めて異性として意識した相手から初恋の人として想われるのなら、一人の女としてどのような気分になるのだろう。

 初めて恋をした異性の衣装は露出の少ない落ち着いた雰囲気の衣服に身を包んだクールな女性だろうか。

 もちろんそれが好意を抱いた相手からのものであれば、それだけでも天に昇るような心持ちになるだろう。

 

(それでも…、私だったら、初恋だけでなくその先を意識してほしい)

 

 セリシーが選んでくれたミニの黒紫のゴシックワンピースから覗かせる自分の生足を見て、胸が熱くなるのを抑え、試着室のカーテンを開き、そわそわと待っていたセリシーに試着したゴシック服の感想を聞いてみる。

 

「どう…かな」

「ん…、モデルがモデルだから生あシが長く見えてクールだシ、それでいてKawaii」

「…例えばセリシーが男の子だったとしたら、どう思う?私なんかでも異性として興味を持つ?」

「異性とシてって、それエッチな目線でって事?それならスカートめくって見た方が早いシ‐」

「ダ、ダメッ、私の下着そういうのじゃないからっ」

 

 みゆきは慌ててスカートに手を伸ばすセリシーを払いのけカーテンを閉め元の衣服に着替え、買い物かごにセリシーのワンピースと少し背伸びした下着を吟味して入れて会計を済ませる。

 自分がこれらの衣装に身を包むのは何時になるか、或いはそんな機会など巡り会う事もなく一生を終えるかもしれない。

 そう考えつつも、みゆきは一歩大人の階段を上るのであった。

 

 

 乙女ロード漫遊を終え、落ち合い場所のショッピングモール「ボクタイ」にてみゆきはスカルマン達と再会する。

 

『楽しかったよ、フクロウル像の由来とか学んだりさ。フクロウルはとある科学者が昔のワクチンプログラムとして開発されたものから発想を得た最新の防衛プログラムで、元となったワクチンはなんだか曰くつきのものらしいんだけど、プログラムは不完全な人が作ったものだから不完全なのは当然で、ならそこから改善を重ねてより良いものを作ればいいって事で、この町の守り神になる事を認められたんだって』

「その科学者さんは私の理想の考えと近いかも、一度会って見たいな」

『それでセリシー達はどうしたんだ…クワッ、カバンがスゲーことになってるクワッ…』

「シシシ、アタシシっかり推シ活楽シんだ。けどまだアタシみゆき達とやりたい事ある。この建物にもゲームセンターってある?」

 

 悪戯っぽく微笑むセリシーの横顔を見てみゆきは事を察する。

 自己紹介の時からネットバトル好きを公言したセリシーがゲームセンターの所在を確認するなら目的は一つだけだ。

 

「勿論ある、今から負けの言い訳でも考えててね?」

「シシシ、逆にさっきまでみゆきは負けの言い訳考えてなかったの?」

 

 互いが互いを挑発しながらボクタイのゲームセンターへと向かい出す。

 

 

 バトルチップスタジアムは、本来ゲームセンターで観客を交えてネットバトルを楽しむ事を目的として作られたアーケードマシンだ。

 ホッケーゲームマシンくらいの大きさはある四角い筐体のそれがBCS(バトルチップスタジアム)の祖と言われている。

 BCS以前にネットバトル自体の普及がごく最近の事なのだが、短い期間でもBCSは度々改善、改良を重ね続け、一定規模のゲームセンターではまず一台は置かれていると見ていい程度には世間にも認知されだしていた。

 みゆき達がデン女で使用した小型BCSと違い様々な手厚いサポート内容で、1プレイそれなりの値が張るが、それに見合うだけの実利と熱狂感が約束されている。

 そして今二人の女子高生がBCSに、二ホンとクリームランドを含めた全世界共通の通貨、ゼニーを電子マネーで支払い、最愛のネットナビをBCS内に送り込む。

 

「プラグイン、アイシー・ペンギーゴ.EXE、トランスミッション」

「プラグイン、スカルマン.EXE、トランスミッション」

 

 大型アーケード筐体上に二体のネットナビのホログラムが映し出されると、それに釣られ、或いはプレイヤーの美少女二人に目を奪われた観客達が続々と集まってくる。

 

「おい見ろよ、あんな可愛い子がオリナビでネバトすんだとよ」

「久しぶりに自作ネットナビが一度に二体も見られるとは、これは目が離せんでマス」

「やっぱりセリシーは魅力的に映るのね、私じゃそうはいかないな」

「ん?アタシはみゆきに見惚れてるんだと思うシ」

『クワッ、ネットバトルでナビに注目しないとか何しにBCSに群がってるクワッ』

『ぼくはみゆきに好意を向けてくれるのはわりと嬉しいかな、でも今はペンギーゴとの試合に集中しないと』

 

 二体のナビが気合を入れると、BCS上の四面ディスプレイにみゆき達の顔アイコンと電脳上の登録ネームが表示され、スピーカーから試合開始のカウントダウンが流れ出す。

 

『オペレーター黒井みゆき&ネットナビスカルマンVSオペレーターセリシー&ペンギンマン』

『おいセリシー電脳ネームは変えろとアレだけ言ったクワッ』

「シーッ、アタシすっかり忘れてっ、みゆきこれは違うシッ」

「ん、大丈夫、知っていたから」

 

 バトル直前の漫才を軽く流し、二人と二体は気を取り直して目の前の試合に集中する。

 

『バトルオペレーション、セット、イン』

「切り刻め、ペンギーゴ」

『クワーッ』




セリシー

別に原作だと中二入ってるだけですが、本作ではおバカキャラとして参戦

幽遊白書

オタク女子の必修科目では?

イワハナタバタウン

山手線の英雄から

嫌われ者

新宿

ボクタイ

サンシャインシティより

羊の脳みそカレー

この店の存在は「桐谷さんちょっそれ食うんすか」という寄食漫画経由で知って行きたいと思っているのですが、中々機会に恵まれません

ヤドクガエル

要くん

フクロウル

電脳獣ファルザーを参考に作られた新型ワクチンプログラムという設定で、現実のフクロウ像と掛け合わせての登場

ミニのゴシックワンピース

エグゼ1公式ガイドブックに載っている初期案みゆきの衣装

乙女ロードとか勝負下着とか

この辺全部想像で書いていますが、とにかくエグゼ世界の思春期の女の子としてのみゆきを書きたい一心でやっています
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