「う…うぅ…ぐぁあ!はっ…かはっ…!」
タンクローリーの魔物がほむらを圧迫した上で彼女をグリグリと地面に押さえつける。
「おや?手品はもうおしまいですか?」
悲鳴をあげるほむらの頭上でマジアベーゼが彼女に熱を孕んだ視線を向けていた。
「まだ戦えますよね?ほら、頑張って?」
ほむらは歯を喰い縛ってタンクローリーの下から這い出ようともがく。
(まだ…万策尽きたわけじゃない…!一瞬でいい…隙を作って……また時間を止めて…)
盾に収められている閃光弾を取り出そうと試みるが、それを察知したベーゼのハイヒールが彼女の右手を踏みつけた。
「ぁうっ!」
「空間転移?いや、あるいは相手の時間を止める魔法?それか、自分のイメージを瞬時に具象化する能力とか?一体どんな仕組みなんです?これ?」
タンクローリーの怪物が手を地面につき、ほむらの上から離れる。
「…っっはぁ…はーっ…はーっ…」
圧迫感から解放され、ようやく呼吸が出来る。
「ほら立ち上がって?私、まだまだまだまだ満足…していないんですから!」
『時間停止』
ほむらはみたび時を止める。
そして、約束された自分だけの世界でなんとか膝をついて息を整える。
全身が軋むが、幸運なことに骨も心も折れてはいない。
「まだ…まだ敗けてない!」
撤退を視野に入れ、状況を吟味する。
暁美ほむらが今準備できる火力でマジアベーゼを倒すのは難しいだろう。敵の数も増えた。魔女のスペックも未知数だ。
巴マミならばあるいは……
彼女と協力しなければこの変態は倒せないだろう。そこまで考えたところで
「あぁなるほど。そういう事でしたか。これは周囲の時間の停止…といったところですね?面白い!」
頭上から降ってくるネットリとした声が彼女を硬直させる。まさか…。あり得ない。
彼女は今自分に触れてはいないはず。
否、彼女とベーゼは繋がっていた。
気付かなかった。
床に張り巡らされた魔女の電気コード。それに触れてしまっていたことに。そしてマジアベーゼがその電気コードを踏んでいたことに。
直後床の電気コード達がほむらに巻き付こうと迫ってくるのが見えた。
ほむらは瞬時にジャンプしそれを回避…
「無駄です。」
「っ!」
…出来なかった。
頭上からマジアベーゼの掌が容赦なく彼女の髪を鷲掴みにし、地面に引き戻す。
コードが彼女の手足を捕らえる。
「そんな素晴らしい能力を持ちながら…」
「…ッ!……放して。」
マジアベーゼがほむらの顎を撫で、その瞳を覗き込む。
「クククク!放せばまた時間を止められてしまうでしょう?そうなっては次に何をされてしまうか。喉にセメントでも流し込んでみますか?油をかけて火を放ちますか?それとも……電流で痺れさせてみますか?」
背後で電気コードの魔女がパリパリと嫌な音を立てる。
マジアベーゼの愉悦を湛えた眼が細められどす黒く輝く。
「……まさかっ…」
「やりなさい。」
ビリビリビリビリビリビリビリビリ!
身体が引き裂かれそうな程の高圧電流がほむらの全身に流れた。
「…ッッッッッッッあ゛ッッ!ッッぅッッ!」
上手く叫ぶことすら許されない。
ただ目を見開き、涎を垂らして与えられる衝撃を受け入れることしか出来ない。
「やめ。」
ベーゼの号令で電流がとまる。
ベーゼはうなだれるほむらの顔を乱暴に掴み、その表情をじっくりと観察する。
「フーッ…フーッ…」
ピクピクと痙攣する彼女の顔は涙と涎で彩られている。が、その瞳から闘志は失われていない。
ベーゼを睨み返し、歯を喰い縛り、なんとか意識を保とうとしている。
「…素晴らしい。」
ベーゼはその尖った舌でほむらの涙を舐めとる。ほむらは青ざめ、心底恐怖する。
(嫌…何なのこの人……理解できない……気持ち悪い…!)
「この様子だとまだ耐えられそうですね?ではもう一度、いきましょうか?」
マジアベーゼの手が彼女の顔から離れる。
「3…」
「ぁ…あぁ」
「2…」
「ま…待って…」
「1、ゼロ♡」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!
「ぅッくぁあっぁあッッッひぃいいいいイ゛ッ」
終わりが見えない。苦しみの中では一秒が永遠だ。熱い、痛い、そして恐ろしい。自らの身体の引き裂きながら電流が走り抜ける感覚がだ。
「やめ。」
ようやく止まった。
「っはぁーっ!ハッ…ハッ…う…うぅう!」
ピチャ………
「おや?」
温かい液体が太腿のタイツをつたい落ちる。
「これはこれは…おやおやまあまあ♡」
彼女は失禁してしまっていた。
「くっ…違っ!これは…違うっ///」
ここで口を開いてもこの変態を悦ばせるだけだ。分かってはいた。
だが、恥辱のあまり沈黙を貫くことが出来なかった。
「何が違うと?これが事実ですよ?」
ベーゼが彼女の耳許に口を寄せ、彼女のスカートの中に手を忍ばせる。
「あなたは恥ずかしい恥ずかしい…お漏らしをしたんです♡」
「ひっ…嫌っ…そんなっ!」
彼女の指が、ほむらの絶対領域を無情にも暴いていく。丘をなぞられ、谷をほじられ、ついにはビチャビチャの部分を布越しに擦りあげられる。
「はっ…ぁあ…ど…どうしてこんな…やっ///」
「これでおしまいですか?まだやれるでしょう?反撃してみてくださいよ、魔法少女。じゃないと……」
ギュッ!
「カヒュッ…」
下着越しに、敏感な神経の塊をつねられる。凄まじい力で。数秒後に遅れてやってくるであろう痛みに身をすくめ……
来る…来た…声を抑えなければ…
「ぁ…あ゛…づぁあぁ゛あ゛ああ゛っ!あぁああ゛!」
我慢できなかった。天井を見上げ、ひきつる顔を晒す。マジアベーゼと目が合ってしまう。
「はぁ…はぁ…」
「………。」
抵抗する気力は完全に折られてはいない。だが、否が応でも実感させられる。ほむらの身は今完全に、この怪人の掌の上なのだと。
一方、ベーゼはただ痛がるだけのほむらを見てがっかりしていた。
この魔法少女に、今のところ覚醒だとか、想いの力で強くなるだとか、そういった要素は見受けられなかった。
これ以上の段階は、もっと彼女を知ってからの方がよいだろう。
(そろそろ潮時でしょうか。)
「それではさようなら魔法少女。」
「……え?」
「3!」
「え?え?」
「2!」
「あ…あぁ…許して……」
「1!」
「許してっ!嫌だ!いやぁああ!」
無駄と分かっても身を捩って暴れる。
パニックに陥るほむらに、無情にもそれは下された。
「ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!」
ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビヒ!
「ッッッッぉおお゛お゛お!お゛お゛お゛おお゛お゛お゛お゛ッッふぉっぉオオ゛お゛おぉお゛おぉお゛ごッ!……かひッ…っッ…ッッんぅぅううう゛ッ!!」
終わらない。本当に終わらない。指先から爪の焦げる匂いが届いてくる。痛みが支配する脳が全身に危険信号を送ることすら止めてしまう。
ビビビビビビビビビビビビビビビビ!
「ッッごわれぇっ壊れりぅう゛ッッ!ぁッッ……っっ……ひゅ……これ…死゛……ッッぁああ゛……ぅう゛う゛ぅあ゛ぁああ゛あ゛あ゛!」
全身を隅々まで雷に凌辱され、逃げ場もない。
視界が霞み、もう何も考えられない。
そんな時だった。
何かが耳に触れる。どこかで聞いたことのあるあの曲が鼓膜を揺らす。脳がそれを識別できなくても身体が覚えている。
聞くもの全てに夢を与えるこの曲は……
そう…確か…ティロ…
「ティロ・フィナーレ!三連打!」
ベーゼ「へ?うわぁあああああ!?」
世界一ロイヤルな不意打ちが炸裂する。
巨大なエネルギーの塊がコードの魔女を熱殺し、タンクローリーの怪物を貫き、マジアベーゼを木の葉のように舞いあげる。
「暁美さん!」
マミは全身から煙をあげるほむらを介抱し、その身体からコードを取り去る。
その時、魔女の結界がとけ、天井が月夜に変わる。夏の夜風がほむらの肺に流れ込み、気絶寸前だった彼女は意識を取り戻す。
「…かはっ…ケホッ…と…巴…マミ………」
「立ちなさい!ほら!いじめっ子が来るわよ!」
爆風に煽られたマジアベーゼが遥か上空から羽を広げ、そのまま二人に向かって急降下してくる。
「キヒヒヒヒッ!魔法少女が二人!なんて贅沢な!」
マジアベーゼの突進に対抗するようにマミは大量の銃を生成し、同時に発砲する。
マジアベーゼは高密度の弾幕を
「チィイッ!」
急旋回して回避する。それでも何発か霞めたようで、頬や肩から流血する。
グラウンドに着地したベーゼはマミとほむらを順に見て少し頭を冷やす。
一撃で魔女を屠る火力と厄介な時止めの能力。
この二人を同時に正面から相手取るのは難しいだろう。
マジアベーゼはワープゲートを自らの傍らに呼び出し、捨て台詞を残して撤退した。
「ククク…!これで勝ったなどと思わないことですね!また逢いましょう?魔法少女のお二方♡…」
「一昨日来なさい!」
「マ…ミ……さ」
金髪の先輩(?)魔法少女の背中を見上げながら、暁美ほむらは気を失ったのだった。
ティロフィナーレ≫魔法少女拳>越えられない壁>近代兵器
この世の理。当然だよなぁ?