マジアベーゼ in 見滝原   作:カロリーゼロ

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マミさんは唯一技の名前を叫ぶ魔法少女ですが、魔法少女にあこがれての世界ではそっちが普通なんだよね。
一番好きな技名は『滅殺光線シュトラール』。


12話 【どの口がそんな事を言うんだと思ったね。】

 

ほむらが目を覚ますとそこはマミの自宅、そのソファの上だった。

起き上がろうとすると身体中が痛い。それでも彼女は起き上がった。

「こら。無理をしない。」

マミがガクガクとぎこちなくソファに座る彼女に一杯の紅茶を淹れる。

「……礼を言うわ、巴マミ。」

「そう。」

「………」

ほむらは紅茶を一口のみ、マミが口を開くのを待った。おそらく彼女は自分を問い詰めるだろう。前に自分がそうしたように。

「……。」

だが彼女は一向に口をきかず、ただ自分のティーカップを傾けるのみだ。

「………。巴マミ。」

「?」

「マジアベーゼは……?」

「逃げたわ。『2対1』では分が悪い…と思ったのかしらね。」

「………。」

ほむらの記憶が鮮明になっていく。電流漬けにされ、あの怪人の玩具にされていたところにマミが現れ、彼女を追い払い、そのしもべと魔女を焼き払ったのだ。

「油断はなかった。でも、私はあいつに勝てなかった。あなたが来なければきっとあのまま…んぐ!?」

殺されていた。そう口にする前に、マミが彼女の口にロールケーキを突っ込んでいた。

「……おいしい?」

「んむ……」

「今は無理に話さなくていい。美味しい紅茶と、美味しいお菓子を食べて体を休めなさい?でも…」

「?」

「これだけは言っておく。今日、確信した。マジアベーゼは………彼女はやっかいな快楽犯よ。それもかなり悪質。必ずまた悪事を働くわ。あの怪人をやっつけるには、私たちの協力は不可欠よ。一緒に見滝原の平和を…」

「そこに興味はないわ。」

「そう。」

ほむらはロールケーキを飲み下すと紅茶を一口唇に含んで立ち上がった。

「でも、あいつには聞きたいことが山ほどある。手を組みましょう巴マミ。」

「ええ。」

マミがややぎこちなく手を差し出すとほむらはその手を力強く取った。

「魔法少女連盟、『サント☆マギア☆スペランツァ』!結成ね!」

「何?」

「コンビ名よ。必要でしょ?」

「……まあ、なんでもいいわ。電話番号をここに書いてもらえるかしら。」

連絡先の交換後、二人はお互いの情報を共有し始めた。

「私は、自分以外の時間を止める事が出来る。私同様、私に触れた物質、人物も静止した世界で自由に動く事が出来るわ。」

その内容を聞いたマミは怪訝な表情を浮かべた。

(この娘…そんな規格外の魔法があって、どうして敗北するのよ。)

とでも言いたげだ。決して彼女は口には出さないだろうが、それでもほむらは先んじて

「うるさい。」

と言っておく。

「何も言ってないわよ。」

「あいつの魔法……多分、あのステッキで触れた物体を自分の手下に変えてしまう能力。それさえ知っていれば不覚は取らなかった。」

「……やっぱり、あれはそういう魔法なのね。それに、厄介なのは異能だけじゃない。」

マミは拳をほどいて振ってみせる。

「あの頑丈な身体よ。二度目に戦ったとき、至近距離で会心の一撃を浴びせてやったのに。」

そこから一日すら置かず、先程ほむら、マミと相対した時は手負いの気配すら見せなかった。

「全身に弾丸を浴びせてもほぼ無傷だった。」

まるで昔読んだギャグマンガの住人だ。

「……。」

話すべきことはもう話した。これ以上の議論はお互いの漠然とした不安を増幅させるだけだろう。

「そろそろ帰ろうかしら。世話になったわね。」

そういってソファから立つほむらに続いてマミもティーカップを置く。

「泊っていかないの?」

「いいえ結構。ちゃんと顔を見せなきゃ、あの子が心配するわ。」

「そう。」

マミはほむらを玄関まで送り届けるとスッとその右手を差し出した。

「それじゃあまた。次魔女を見つけたら必ず一緒に、ね?」

「ええ。た……」

「?」

誰にも頼らないと、何度目かの世界でそう決めた。

「頼りにしているわ、巴マミ。」

だから、今、うまく笑えているか不安だ。

「……ええ!」

少し背筋を張って、微笑む彼女を背にほむらはマミ宅を後にした。

一方、撤退したマジアベーゼこと柊うてなはホテル『エノルミータ』へ帰還したのち、キュゥべぇマッサージ技師に全身肌のケアをされていた。

「あぁ‘~そこっ。あ~もっと左ぃ、左左んぁ~^」

「S級マッサージ技師以上の技量を持つ僕に指図は不要だよ。僕は君のカラダを君自身以上に理解しているからね。ほら、力を抜いて、身を委ねるんだ。」

「気持ち悪い言い方ですね…あ^~~!ふっ!んっふぅ!ぎもぢい~…」

人間にできることはたいていなんでも出来る高度生命体の計算されつくした指使いがうてなの体を手際よく調え、優しく癒し、的確に刺激する。

「あ、そうだ支配人。」

「ん?なんですかぁ?」

「あの暁美ほむらの魔法だけどさ、今解析が終わったよ?あのチカラはただ時間を止めるだけじゃなくて…」

「あ゛ぁあああああああああああああああッッッ!」

「ぐっはぁああッ!?」

いきなりうてなが耳を抑えて絶叫し、キュゥべぇの顎に蹴りを放った。

キュゥべぇの頭はそのままホテルの天井に突き刺さり、体がシャンデリアのようにブラブラと揺れる。

「ど、どうしたのかなうてな。僕はただ…」

「ンネタバレ!ネタバレですよそれ!有罪です!貴方は自分のしようとしたことを理解してますか!?」

「あ、はい。」

キュゥべぇは反論する気さえ起きないといった様子でそのまま肩を落とす。

「あ!そうだ!魔法少女暁美ほむらといえば!」

「なんだい?」

「今回、思わず興が乗ってやり過ぎてしまいました!どうしましょう!」

そういって彼女はようやく天井から脱出したキュウべぇの顔を見る。

「……え?何が?」

キュゥべぇは主人が自分にどんなリアクションを求めているのか分からず、つい素で疑問を口にしてしまう。

「あれだけ痛めつけたんです。普通の女の子なら決して耐えられないほどの恥辱と苦痛を与えてしまったんです。」

「???…??」

「もし万が一、心が折れてしまっていたらどうしましょう!?どうしましょうキュゥべぇさん!」

うてながキュゥべぇの襟首をつかんで頭を前後に揺さぶる。

「し…知らない!知らないよぉお…」

「あぁあああ…!こうしちゃいられない!」

うてなは服を着ると部屋の外へ駆けていった。

残されたキュゥべえは呆然と虚空を見つめ、一人うなだれる。

「……分からないよ…僕には君が分からない……」

元知的生命体のつぶやきはそのまま誰に聞かれることもなく、排水溝に流れて消えた。

ほむらはマミと別れた後、ホテル『エノルミータ』に向けて逸る気持ちを抑えてビルからビルへ飛び移り、屋上を疾走していた。

そして近くの物陰で変身を解除し、ホテルまで歩いた。曲がり角を曲がったところで、ホテルの前でおろおろと辺りを見回すうてなの顔が見えた。

時計を見るともう夜の九時を過ぎていた。

心配させてしまった、そんな罪悪感がチクリと胸を刺すが、同時に嬉しさがこみあげてくる。

「あ!ほむらちゃん!」

疲れ切った少女を見つけたうてなが駆けよってくる。

「うてな。」

「だ、大丈夫?!ほむらちゃん、チェックアウトしてないのに全然帰ってこないから…」

「ええ。少し用事が長引いてしまって。」

「本当に大丈夫!?女の子がこんな時間まで...!連絡も何もないし!本当に心配したんだよ?それ…その手……火傷だよね!」

「ごめんなさい。もうレストランは開いていないわよね?」

「特別だよ?今回は開けてもらうから。でも、代わりに、約束ね?」

「え?」

「何かあったら、絶対に相談してね。私…この町に来たばかりでまだまだ分からない事いっぱいだけど、ほむらちゃんの友達だから。力になりたいから。きっと力になるから。」

「………約束する。」

ほむらのその言葉を聞いてふっと肩の力を抜いたうてなはほむらの手を取る。

「さあ入って入って。あ、ううん、お帰りなさいませ、お客様。」

ほむらはクスリと笑うとうてなに手を引かれながらホテルの中へ誘われていった。

夕食後うてなのススメで人類史上最高のマッサージ技師の手にかかったことは言うまでもない。




きゅうべぇってキュゥべえって書くんですね。
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