月に照らされた鉄骨の狭間に、空間の歪みが生じている。マジアベーゼはそれを視認するな否や、獲物を狙う猛禽類のように上空から急降下する。
魔女の結界。
端から見れば吐瀉物をぶちまけたキャンバスに邪悪な子供がクレヨンで落書きをしたような使い魔達が蠢く、とても近寄りがたい魔窟だ。
だがうてなはそれに迷いなく飛び込む。なぜなら、確信があったから。工事現場の一角に咲く異空間への入り口から聞こえてくる、華やかで豪奢で、優雅なコーラスのBGM。それは間違いなく魔法少女のものだ!
魔法少女が今、まさにこの中で戦っている!
結界の深部へ勘と手探りで潜り、使い魔を掻き分けながら奥の開けた空間を目指す!
そこには…
【サァーティーロイヤーリー♪アバリチェターティアマーサーエスティーヤー♪】
金髪の魔法少女が何本ものマスケット銃を生成しながら使い魔、そして巨大な毛虫の異形、魔女と戦っていた。
縦ロールの金髪とそのしなやかな肉体美を惜しみ無く振りながら敵の刺毛をすり抜け、魔女の胴に何発も銃弾を打ち込む。
(さっきから何なんですこの歌は!?それにおっぱいが揺れ…揺れてぇえ…!)
ベーゼがマミを凝視していると、彼女は視線に気付き、顔を青くして叫んだ。
「そこの貴方!ここは危険よ!早く…」
その瞬間魔女もベーゼの存在に気付く。毛虫のおぞましい顔面がマジアベーゼの方を向き、雄叫びをあげると同時に凄まじい密度の毒針をマミに放ち、彼女を牽制する。
「くっ…まずいっ!逃げてっ!」
マミが怯んだ隙に魔女はその口を大きく開き、ベーゼを頭から丸呑みにして補食した。魔女の喉がゴプンとなって、完全にベーゼの身体が魔女の腹におさまる。
「あぁっ!…そんな!」
だがその時だった。
魔女の腹が膨れる。そして、そこからどす黒いエネルギーが魔女の身体を侵食し、灰化させて行く。
「な…なによ…これ。」
やがて、ゴゴゴゴゴゴと結界全体が揺れる。
マミは思わず銃を構える。魔女に向けてではない。魔女の腹の、その薄皮一枚向こうにいるであろう相手にだ。
魔女の体内でベーゼは魔女の身体に自らの魔力を流し込んでいた。自らの獲物、フルスタドミネイトを魔女の腹に突き刺して。
支配の怪人、マジアベーゼが魔女の肉体を掌握したのだ。同時に魔女の情報が、記憶がマジアベーゼの中に流れ込んでくる。
魔女としての呪いと後悔にまみれた陰惨な記憶。そして、それよりも前の想い出…
「なんだ…そういう事ですか…」
ベーゼが怒りで震える。魔力が大気を震わせ、魔女の結界全体を揺らす。
「あのきゅうべえとかいうマスコットもどき…何が契約ですか…魔法少女への冒涜ですよこんなの…絶対に許さない。」
そう呟き、ベーゼは手早く、そして細かく魔女の全身を内部からバラバラに解体した。
魔女の結界が晴れ、周囲の景色は蒸れ汗を霧散させたような不快な空間から、夜風のよく通る工事現場に戻った。
ベーゼはグリーフシードを手に取ると丁寧にマミに手渡す。
「…あ…あなたは一体…」
ベーゼは無言で去ろうとするが、パンッという音でやむなく足を止める。ベーゼの髪をマミの銃弾が掠めたからだ。
「…待ちなさい!貴方は何者?返答次第では…」
「『武力行使も辞さない』ですか?やってみて下さいよ。」
マジアベーゼは不敵に笑う。
「そのお力…是非見せて下さい!」
マミは接近すると試すように銃を鈍器のように振りかぶる。本気ではない、殺さない程度に加減しているのだろうか…今のベーゼはどうみても一般人ではないというのに。彼女の善性をしめすその配慮にベーゼは涎を垂らして感激していた。
(貴方も怖くて堪らないでしょうに……でも魔法少女は…慈愛の心を忘れない!ああ!涙が出そうです!)
ガツン!
マジアベーゼのフルスタドミネイトとマミのマスケット銃が衝突する。気合いの差でマミの銃が弾かれる。次の瞬間にはマミの顔面をベーゼの手が掴んでいた。
「なっ!?」
その細腕からは想像できないほどの膂力がマミの頭をそのまま地面に投げつける。身体が頭部に引っ張られ、マミは全身を強かに地面に打つ。
「ぐぅ!?なにをっ!」
マミはすぐに起き上がり、銃を構える。もうその目に迷いはない。
「……。やっとその気になってくれましたか?」
「もう手加減しないわ。ちょっと痛い思いをして貰うわよ。」
マジアベーゼがゆっくりと近づき、間合いを詰めてくる。近づくほどマミのマスケット銃が使いづらくなると踏んでのことだろうか。もっとも、そんなことで焦るようなマミではないが。
にらみ合い、互いに気配で牽制しあう。もう間合いは三メートル、二メートル…一メートルほどだ。
先に動いたのはマミだった。
「はぁ!」
素早い射撃を行おうと引き上げられた銃身はマジアベーゼのヒールに踏み落とされる。
「…っ!」
「ふっ」
ベーゼのステッキが振り下ろされる。
しかしマミはそれを身体の軸をずらして避け、そのまま銃を生んで殴りつける。
ベーゼがそれを腕でガードする。しかし、その腕で受けてなお数歩後ずさってしまう。間髪入れずマミのリボンがベーゼの両足、両手を拘束する。
間合いが空き、ベーゼは回避不能。こんな好条件そうはない。まさにフィナーレには絶好のタイミングだ。
マミは大量のマスケット銃を周囲に生成して発砲をしようとする。
勝ちを確信した。後は殺してしまわないよう、手足のみに照準を合わせて…、そんなことを考えていた。
マジアベーゼの唇が歪むのを目視するまでは。
マミの足元の地面から大量の蔦が伸びてきた。マミは慌てて発砲するが、マジアベーゼはそれを全て羽で防いで見せた。そしてそのままマミは頑丈な蔦に拘束される。
「くっ!?」
普段の彼女なら決して捕まらなかったであろう。しかし、油断を突かれたのと、構わず発砲するか逃げに徹するか判断を迫られ、迷いが生じた。
蔦がマミの腹、腕、そして首に巻き付いて強く締め付けた。
「…ぅう…ぐ……ぁ」
マジアベーゼがあっさりとマミのリボンを引きちぎって悠々と地面に降り立つ。
「あれ?苦しくないんですか?」
「はっ…おあいにく様!…魔法少女はね…痛みに強いのよ…!」
「そうですか。それは困りましたねぇ!」
マジアベーゼは魔力を込めたフルスタドミネートで縛られたマミの尻を叩く。
マミ「…くぅ!?」
その反応を真顔で見つめるマジアベーゼ。
(…悶絶するほど痛いはずですが…痛みに鈍いのは本当のようですね。)
「でしたら…こういった責めは如何でしょう…?」
マジアベーゼはマミの豊満な胸に五指を沈みこませた。
「っ!?あ…貴方何して…!」
「クス……。」
マジアベーゼはニヤニヤしながらマミの胸をただひたすら弄ぶ。
「いい加減に…ちょっ…そこはっ…ん…」
「ほら…いいようにされてますよぉ?抵抗しなくていいんですかぁ?魔法少女さぁん♡」
ベーゼはマミの衣装を破り、胸を露出させる。
「ひっ…!嘘…こんなところで…」
「誰か来てしまうかもしれませんねぇ…」
ベーゼはマミの先端を摘まむ。
「おや…先程より随分固くなりましたねぇ…ひょっとして…」
ベーゼはマミの耳元で囁く。
「妙な想像して興奮しちゃいましたか?」
「……ッ!///」
マミの背筋を鳥肌が走り抜ける。
「はぁ♡…次はここを……おっと…」
ベーゼはある視線に気づく。物陰からじっとこちらを見つめる、赤くて丸い一対の眼に。
「……。今回はこれくらいで勘弁してあげましょう…。魔法少女。」
ベーゼはワープゲートを作り出し、その場を去った。
ベーゼが消えたとたんマミの拘束が解かれ、マミは慌てておっぱいをしまう。
「はぁ…はぁ…助かった?…のよね?あの娘は一体…。」
幸か不幸か、彼女の問いに答える者は誰もいなかった。