(仮題)託された想い、透き通る空の下 作:Laplaaaaaaaaaaaace
思ったよりエーテル溜まりが心地よくて長居してたら、他の皆がアカシアになってしまいました。あーあ。
というわけで、10話目?です。
アビドス編大好きなので沢山書いちゃうかもしれないけど、エタらないと約束だけはしておきます。心配しないで欲しい、任せて。
では、どうぞ。
学校に戻ってきたクライヴたちは、対策委員会の部屋に集合し、戦闘後の休息をとっていた。
「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……。勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか」
ホシノはやんわりと言葉を述べるが、彼女たちは補給があってこそ底力を発揮できた。
今までは、その補給すら無しにヘルメット団とやらを返り討ちにしていたのだろう。驚くべき戦力だ。
これは、このアビドスの面々が元より持ち合わせている連携力の賜物なのか…、それとも誰かの突出した戦闘力なのか。
真偽は定かではないが、今は勝利を喜ぶとしよう。幸い、クライヴの使った力は誰にも見られていなかったようで、道中で追及されることや、学舎に着いてから説明を求められるようなことは特別無かった。
帰りの道で、やけにホシノからの視線が刺さった気がするが、向こうも追及しないでいてくれるんだ。こちらも不干渉といこう。
「それにしても、先生の指揮が良かったね」
「これが大人の力……。すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」
「そこまで褒められる事はしていない。君達の得意分野で戦う様に指示を出しただけだ」
「そこからの判断は、君達に任せただろう?これは、俺だけの力じゃない。君達の力も、元より強かった……ということだ」
言葉通り、それ程大それた戦術指揮などしていない。
各々の得意な距離で、得意なやり方を勧めただけだ。後は…、制圧射撃の要請くらいだった。
後方に位置していたリーダーはクライヴが戦力を奪ってしまったし、何しろ、彼女達が守りたい学舎をすぐ近くで守らせてやりたかった。それだけだ。
「今まで寂しかったんだねぇ、シロコちゃん。パパが帰って来てくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!?」
「そうそう、可哀そうですよ」
「あはは……少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します、先生」
彼女達の茶番を横目に、しばしの平穏を享受していると、挨拶の声が掛かった。
「私たちは、アビドス対策委員会です」
「私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年の奥空アヤネ……」
「こちらが、同じく1年の黒見セリカ」
ちら、と黒髪の少女に視線を送るアヤネ。
確か戦闘中、ホシノに名前を呼ばれていた女学生だ。どこかツン…とした印象を受けるが、今は黙っておこう。
「どうも」
短く挨拶を貰ったところで、こちらも「あぁ」と一言返す。
「そしてこちらの二人が、2年の十六夜ノノミ先輩と砂狼シロコ先輩」
「よろしくお願いします、先生~」
「さっき、道端で最初に会ったのが、私」
「……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」
あの後方で防衛線を張っていたのが、ノノミという少女か。
彼女の戦力を直にこの目で見たわけではないが、恐らく広範囲の制圧に長けた力を持つのだろう。あのタイプの銃は今まで見たことが無い。というより、あの大きさのものを銃と言っていいのだろうか。最早設置型の兵器ではないのか…?
「そして、こちらが委員長、3年の小鳥遊ホシノ先輩です」
「いやぁ~よろしく、先生~」
……相変わらず、向けられる視線は懐疑的だ。
完全に信頼されていない。心のどこかで遠ざけられているな。
彼女の過去に何があったのか、詮索などしたくはないが、この様な幼い少女がしていい眼差しではない。子供というのは純真無垢でいなければならないのだ。隠れ家の、あの子たちのように。
「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました」
「先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……」
「礼は気にしなくても良い。俺は、君達のやるべきことに助力しただけだ」
「それよりも……、対策委員会、と言うのは?」
「そうですよね。ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」
「うんうん! 全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです! 全校生徒といっても、私たち五人だけなんですけどね」
「アビドスを……蘇らせる、か」
大層な目的を掲げて活動しているようだ。
しかし、不可能ではないのだろう。完全に死んだ土地を生き返らせようという荒唐無稽な話より、住民が出て行ってしまったこの地区を元の形に戻す方が、現実的だ。
術があれば、黒に侵されていく大地を、クライヴたちも元に戻せたのかもしれないが。彼女達の心意気には感服した。
「他の生徒は、転校したり、街を出て行ったりした」
「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなって、カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに襲われている始末なの」
……死にゆく世界で。死が決まった世界で生きて行く物好きなど、普通に考えれば存在はしない。
自分たちが生きて行く為に新天地を探し、新たな土地で生きて行くのが、道理だ。アルテマもそうだった。
奴は滅びゆく世界で種の根絶を恐れ、新天地を求め、黒に侵されていない世界、ヴァリスゼアを見出したのだ。生物として、正常な行動だと思う。
しかし、彼女たちは死にゆく土地を蘇らせようと、この地に残った。例え砂に埋もれようと、どれだけ厳しい環境だとしても、彼女たちはこの地の復興を夢見て活動している。
「……少し、似ているな」
「え……?」
アヤネが不思議そうな顔をして、こちらを見つめる。
「昔読んだ本に、似たような物語があったんだ」
「死した大地に囲まれた世界で、藻掻きながら生きて行く人々の話だ。その世界は、貧困に喘ぎ、死んでいく者も大勢いた。身分の格差や、生れ等の理由から 迫害を受ける者まで。そんな人々を助けるために立ち上がった、《大罪人》の話さ」
「助けるために立ち上がったのに、大罪人……?」
「ん、ヒーローじゃない。おかしい」
「……」
「何、その話。すっごい暗そうだけど……」
「おじさんには難しくて分かんないなぁ~」
「大人向けの書物だったから、小難しい表現が出てくるんだ。君達にも分かりやすく解説できるように、話を纏めておこう」
……人が、人として生きて行く為に。ベアラーも、ドミナントも。誰も彼もが理不尽な格差を感じずに、穏やかに生きて行く世界を実現させるために、戦った《誰か》の話を。
彼らと彼女達を重ねてしまう部分も、幾つかあるかもしれない。シド……、シドルファス。あんたの英雄譚だ。語ることくらい、許してくれるだろう?
「……すまない。話を逸らしてしまったな。アヤネ、この後の動きは?」
「あ……えっと、そうですね。こんな消耗戦をいつまでも続けるわけにはいきません」
「ヘルメット団以外にも、たくさん問題を抱えているのに……」
「アヤネちゃんの言う通り。いつまでも消耗戦を続ける訳にはいかない。ってことで、おじさん、ちょっと計画を練ってみたんだよね~」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ……!?」
「いやぁ~……、その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなぁ」
「おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさ~」
「それで、ホシノ。君の言う計画というのは……どんな内容なんだ?」
「まぁまぁ先生、焦らず聞いてよ」
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからね~」
「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって」
「今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさ~」
「そうか……。相当の覚悟で襲撃しに来たと言っていたが、そういうことなら当然向こうは物資も体力も消耗している」
「ならば、装備が整う前の準備段階で奴らを叩き、戦力を確実に削いでしまおう……ということか」
「そうそう。いや~、本当に先生鋭いね~。ここに来る前どこかで戦ってたりした~?」
「……いや、軍事行動について少し詳しいだけだ。そこまで気にすることじゃない」
……このホシノという生徒、勘が切れるだけでなく、洞察力がとても高い。
上手く隠し通さなければ、クライヴの過去など簡単に見透かされてしまうだろう。
他の生徒は、ホシノがこんな作戦を立案することを考えていなかったのか、皆一様に驚きを隠せていない様子だ。
「ほら、今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるでしょ?」
「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発すればさっきの部隊が到着したと同時に攻撃できるかも」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし」
「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」
「俺も賛成だ。前哨基地を潰し、中継地点を無くさない限り 敵は幾度となく攻めてくる」
「そうなれば、いくらシャーレの補給があったとしても、戦線の維持は厳しくなるだろう。その先に待つのは敵に学び舎を占領される最悪な未来」
「それだけは、どうしても避けなければならない。君達の頑張りのためにも…な」
戦術的にも、兵站拠点を潰した場合の恩恵は大きい。
敵最前線への補給、装備品等の配備を全て止めることができる。これらを止める事さえできれば、奴らの襲撃は当分の間鳴りを潜めるはずだ。
「よっしゃ、先生のお墨付きも貰ったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますか~」
「俺も同行させてもらう。どうにも、後ろに立つだけ……というのは性に合わないんだ」
「……分かった。とにかく善は急げ、ってことだね」
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
ノノミはいつも軽快で、明るいムードメーカーだな。これから襲撃作戦だというのに、近場に散歩にでも出かけるような雰囲気だ。
周りを見てみれば、皆面持ちは明るく、楽しそうだ。やる気に満ち溢れている。
こちらとしても、部隊全体の士気が上がる分大助かりだが、引き締めるところは引き締めさせないといけない。基地に到着すれば、このふわりとした雰囲気もなくなるだろうが……。
今は、敵前哨基地まで、短くはあるが 暫しの旅と行こう。
その道中は、まるで遠足の様な雰囲気だった。
これから敵の拠点に攻め込むというのに、今日の天気の話やアビドスという自治区についての話。
逆にキヴォトスの常識に中々触れてこられなかったクライヴも、幾つか質問を投げ掛けたり。
その中でも、クライヴが特に興味を示した内容は……『この世界における剣術』の概念だった。なんとこの世界、剣という概念が殆どと言っていいほど存在しないらしい。あくまで、コレクションや蒐集品などで、使用を前提とした剣は、この世界に存在しない。
それと同時に、剣を持つ生徒は誰もいないということ。皆各々銃を用い、接近戦はしない。打撃を攻撃のパターンに組み込みながら、射撃を行う生徒はいるらしいが、全てを接近戦で片付ける者は、どうやらいない様だ。
それだからか、先の襲撃時、何も持たずに駆け出したクライヴの姿を見て、無事では済まないだろうと思っていたらしい。
しかし、結果は無傷での生還。魔法は使ったが、それでも銃を持たずに出歩くのは全裸で出歩くよりおかしい……らしい。
世界が違えば価値観も違うというが、まさかここまでとは……。
この世界の価値観に頭を抱えていると、学校で一人指示役を務めてくれているアヤネから通信が入った。
『カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました!』
『半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知』
「細かい敵数は把握できないが、敵拠点ともなれば 恐らく襲撃時より人数は多いだろう」
「皆、警戒を怠らないようにするんだ。ここは敵地、どこから攻め込まれてもおかしくはない」
「散り散りになって戦力を分散させるより、全員が固まって動くべきだ」
「「「「了解」」」」
「ホシノ、君には前衛を頼みたい。敵からの攻撃を盾で捌きつつ、隙を見せたら近づいて攻撃だ」
「難しいこと言うねぇ、先生。ま、やってみるけどさ~」
「シロコ、セリカはホシノの支援を。万一に、ホシノが敵を仕留め損なった際の補助要員だ」
「加えて、前方以外の警戒も頼む。死角に入り込まれれば、瓦解するぞ」
「分かった。ドローンも使って全力で行く」
「注文が多いわね……この先生……!」
「そして、ノノミ。君は後方で火力支援だ」
「君の銃は、広範囲を薙ぎ払いながら射撃できるものだと思っている。その武器の特性を活かしながら戦ってみてほしい」
「……巻き込まないように、撃つ時は一報を入れてくれると助かる」
「了解しました~!皆さん、射線にはご注意を~」
「ノノミちゃん、怖いこと言うねぇ~。おじさん足が竦んで動けないよ~」
「何言ってんの!ほら、敵地のド真ん中なんだから、シャキッとして!」
……まったく、ここまで来てこの雰囲気を壊さないとは。
特別仲が良いんだろうな、彼女たちは。とても強い絆で繋がっている。この繋がりこそが、対策委員会の力か。
繋がりが強ければ強いほど、大きな力を生む。強ち、間違いではなさそうだな。
「……アヤネ。君は遠距離にいるが……彼女達のサポートを頼む。校内にシャーレの補給品を幾つか置いておいた」
「回復資源から弾薬まで、好きに使うといい。ここまで運ぶ手段は……」
『大丈夫です!ドローンを使えば、すぐに!』
便利なものなんだな、そのドローンという物は。
今度、シロコに見せてもらうとしよう。もしかしたら、今後の戦闘に役立つかもしれない。
『それでは皆さん、作戦の立案は完了です。恐らく……敵もこちらが来たことに気づいている筈です』
『ここからは実力行使です!頑張ってください!!』
「……目標はこの基地を叩くこと。ただ、深追いには気をつけろ。敵の殲滅が目的でないことを忘れるな」
「やれるな…行くぞ!」
先程の戦闘と同じく、ホシノと共に、物陰に隠れながら戦線を押し上げる。
さすがに敵の本拠地ということもある、相手もそれなりに抵抗してくるか。
「……流石に数が多いか」
遮蔽物を上手く使いながら敵の攻撃を回避しつつ、隙を見て反撃するシロコとセリカ。
盾を巧みに構え、銃弾の弾道を逸らしながら的確に敵を落としていくホシノ。
ノノミには、施設の破壊と共に後方支援を任せたが、この分なら施設破壊で収まりそうだ。
アヤネも、支援のタイミングを完璧に捉えている。このメンバーなら、早期の幕引きも容易だろう。
だが、問題がある。
敵の数が一向に減らないのだ。基地の施設自体はまだまだ奥に続いている。この分では、どこかに伏兵でもいるかもしれない。なにしろ、基地内部は構造が入り組んでいて、それこそ物陰が多数存在する。
隠れた場所からの攻撃は、警戒しておかなければならない危険要因だが……
「っ、先生!後ろ――っ!!!」
戦闘の展開に思考を割きすぎた。
背後から迫る敵に気づかなかったらしい。シロコに名前を呼ばれ、ハッと現実に引き戻される。
背後を見れば、黒いヘルメットを被った下っ端と思わしき敵が銃をこちらに向けていた。
「喰らえ、クソがーっ!!」
ダダダダダダッ!!と銃が乱射される。
しかしその軌道は、一直線にクライヴに向かっていた。
気づけていれば、回避は容易だったかもしれない。しかし、惜しいことに今回ばかりは、攻撃に気が付かなかった。
キヴォトスの住人程頑丈ではないクライヴは、銃弾一つで傷を負い、当たり所が悪ければ、それこそ命の火を散らすだろう。魔法ならば、ある程度の対処は出来たかもしれない。
しかし飛来するは鉛の塊。フェニックスの力を発現させることも、もはや間に合わない。
万事休すか――
『先生は――』
『やらせません――っ!!!』
瞬間、クライヴを透明の何かが覆った。
ドーム型のソレは敵の銃弾を弾き、クライヴへの攻撃を無効化したのだ。
咄嗟のことで、クライヴもシロコ達も、そして敵までもが驚いている。攻撃したのに当たらないなんて、普通の道理ではない。
脳裏に、過去の記憶が蘇る。
確かあれは、マザークリスタル・ドレイクスパインにジョシュアと向かっている道中だった。
クリスタル神殿に続く橋で、ウォールードの使役する魔獣、ベヒーモスと戦った時の事。
奴と会敵した時、頭上から無数の隕石が降り注いだ。ベヒーモスの使う魔法《メテオ》だ。
降り注ぐ無数の隕石に回避する余裕などなく、クライヴは立ち尽くしていた。
『まずい!兄さんは後ろへ…!障壁を張る!』
『なっ…!』
兄の前に出、フェニックスの力を使い障壁を張る弟の姿と、隕石をただ眺めていたことを覚えている。
咄嗟に何もできなかったことを、今でも悔やむ。
「……っ、何が」
『先生、ご無事ですか……!?』
この声は……アロナか!?この障壁は……アロナが展開したものなのだろうか。
無事かどうかの確認に、短く「あぁ」と返すと、アロナは安堵したように息を吐き、少しの疲れを見せた。
『シッテムの箱の機能で、先生に障壁を張りました!並大抵の攻撃では破壊できない、とびっきり硬い障壁ですよ!ふふん、すーぱーアロナちゃんにしか出来ない事ですからね!……はふ…』
「その割には疲れている様だが……」
『えーと、その……。まだバージョンが低い、というお話は以前しましたよね?そのせいもあってか……その、少しの間しか展開できなくて……』
「その効果はいつ切れる……!?」
『多分……そろそろ……』
聞こえる声に雑音が混じり始める。
恐らく体力の限界が来たのだろう。あの身体でここまで強力無比な機能を使えるのだ。何かしらの反動はあると思っていたが……!
「シロコ!何も考えずに、そのまま銃を撃て!」
「で、でも そんなことしたら先生に……!」
「構わない!俺の事は良い、他の対策委員会は戦闘に集中しろ!」
クライヴの声に反応したのか、各々がクライヴに視線を集める。
だが、そんなことをしてしまっては、同じように急襲に対応できない。シロコ以外のメンバーを戦闘に集中するよう促し、シロコに自身を狙わせる。
何か策がある事を察したのだろう、少しの迷いと決意の入り混じった表情でクライヴを見やった。
「っ……!」
パパパパパッ!と軽い射撃音が響く。
それと同時にアロナの展開した障壁が瞬く間に消失。今度こそクライヴは、魔法以外で自身を守る術を失った。
しかし、これでいい。シロコの放った弾丸は、一直線にクライヴへ。
……クライヴの後ろに、誰がいるかはシロコとクライヴ自身が良く分かっている。
「こんな所で、死ねるか……!」
「俺は、前へ進むと決めたんだ。シドや、皆の分まで!」
「この世界で……、全てを救ってみせる!」
弾丸が当たる直前、クライヴはその大きな体躯を捻りながら、横に回避した。
長い戦闘経験が生んだ卓越した身の熟し、迫る攻撃を視認し、確実なタイミングで回避する動き。
《プレシジョンドッジ》とでも言おうか。回避した後、攻撃に繋げようが乱撃をさらに回避しようが、この技術を磨けば、戦闘を優位に進める事など簡単なことだ。
そして、この見事なまでな回避をし、銃弾を避けた先。
クライヴの背後には、ヘルメット団のメンバーがいる。その体躯に隠され、迫る弾丸すら見えなかったヘルメット団が、シロコの放った弾丸を目にしたのは、被弾の直前であった。
「ぐべっ!?」
頭部に全弾命中。恐ろしい射撃精度だ。
魔法を扱えるようになれば、間違いなく精鋭魔法兵の仲間入りだろう。
背後で地面に倒れ伏すヘルメット団を横目で流し見ながら、シロコの元へ向かう。
「良い射撃だった。君が敵でなくて良かったと、心の底から思わされたな」
「……こんな危ないこと、させないで欲しい」
「すまない。状況が状況だったんだ、今回ばかりは許してくれ」
……何故か懐かしさに駆られ、彼女の頭を撫でようとしたところで、ピタ……と手を止めた。
この血で穢れた手で、無垢な彼女達に触れるべきじゃない。血生臭い世界を生きてきたクライヴとは対照的な世界の住人なのだ。撫でるなど、言語道断だ。
「先生、どうしたの?」
「いや……なんでもない。少し、昔を思い出しただけだ」
……この嘘も、いつまで続けることが出来るだろうか。
この子たちは、洞察力に優れる。気づかれるのも時間の問題だろう。
「おわっ……ぐはっ!!」
……何やら断末魔が聞こえたな。
それと同時に、辺りを騒がせていた銃声もピタリと鳴り止んだ。
敵の気配も、感じない。……ということは。
「せんせぇ~、シロコちゃん、無事~?」
ホシノがふら~っと戻ってきた。
続いて、セリカ、そして施設破壊の任務を任せていたノノミがシロコとクライヴの元に帰ってくる。
「ホシノ先輩と一通り確認してきたけど、もう敵はいないみたいよ」
「こちらも弾薬庫と、補給所、装備保管庫の破壊完了です~」
各々の任務を終え、ここに集結した様だ。
最後はアヤネからの報告だが……
『敵の退却を確認!並びにカタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認……』
『その地点の敵性シグナルは消滅しました!』
……アヤネの報告も上がった。
『皆さん!カタカタヘルメット団前哨基地襲撃作戦は……成功です!』
どうやら、作戦はつつがなく成功したらしい。
こちらの損失は0、敵方には痛手だろうが、これで当分の間は攻めてこれない筈だ。
「これでしばらくは大人しくなるはず」
シロコが凛とした表情で言葉を発する。戦闘中とそうでない時での感情の起伏が少し激しい*1性格なのか。
戦いというのは、人の性格を大きく変える。これも、仕方のないことだろう。
「よ~し。シロコちゃんも先生も、皆無事だね~。作戦終了~、みんなおつかれ~」
「それじゃ、学校に戻ろっか~」
のほほんとした雰囲気で、ホシノは皆を連れて基地を後にする。
クライヴは彼女達の最後方に位置し、基地だった場所を見つめた。
これだけの設備に、武器。ましてや人員など。恐らくカタカタヘルメット団だけが関係している事件ではないだろう。
裏に『黒幕』とも呼べる存在が隠れている筈だ。
「……必ず、引き摺り出してやる」
最後に、どこまでも青く澄んだ空を睨み、どこにいるかも、存在すらも分からない『黒幕』に向けて、挑戦の言葉を吐いた。
うーむ、うーむ。
クライヴ君の心情描写がしっかり出来ているか不安だ。まぁでも趣味の小説だしとりあえずは気にしないでおこう!うん!私の主観でのクライヴ君がこの作品には多分に含まれます。お気をつけて。
それとそれと!感想で質問をいただいたのですが、クライヴ君の頑丈さや服装に関して!
ここで説明しておけば皆さんの目に触れると思うので、少し長くなるかもしれませんが、お付き合いお願いします!
Q.クライヴの身体ってどれくらい頑丈なの?
A.クライヴの肉体は本編準拠となっております。つまりどういうことかというと、銃弾避けなきゃ穴開くし、ナイフで斬り付けられれば出血して切り傷になります。いくらドミナントと言えど、キヴォトス人レベルで硬かったらゲーム本編でも全くダメージ受けませんしね。
アルテマもびっくりだと思います。
Q.クライヴの服装って?
A.滅茶苦茶悩んでました。普通にスーツだけにしようかな~と思ってスーツ姿のクライヴを想像したら「なんか違う」となったので、今の所は便利屋先生の様な服装で考えてます!黒ワイシャツに連邦生徒会のコート羽織ってる、みたいな感じ!今後もしかしたら変更あるかもしれないけど……。そうなれば随時報告いたします!
Q.クライヴの武器は?
A.素手、もしくは剣!インヴィクタスはどこかで登場させたいな……と思っているので、お楽しみに!いつまでも栗本チャレンジさせるわけにはいかないからね……。流石にベアおばに手刀は無理よ。いや行ける……?
というわけで、質問来てた!ので答えておきました!武器に関しては来てないけど。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!また次回お会いしましょう!
ご感想やご意見、誤字報告などなど受け付けております~。私がアカシアにならない程度にやんわりと教えてね!