(仮題)託された想い、透き通る空の下   作:Laplaaaaaaaaaaaace

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エーテル溜まりよりこんにちは、私です。

FF14でヴァレンティオンデーイベントが始まりましたね。まだ見てきてないから、一通り更新を終えたら見てこようかなと思います。

それはそうと、最近FF16の画集を買ったんですよ。ちょっと値段は張ったけど。
いやぁ……良いものを買いました。イフリートかっこいいよ、イフリート。

みなさんもぜひ、FF16をプレイしてみてください!ヴァリスゼアを君の手で救い出そう!


彼なりの努力

さて、大波乱のアビドス初日を終え、現在はと言うと……。

またアビドス高等学校へ向かっている最中だ。前回彼女達で話し合った借金問題について、自分なりに考えを纏めたので、伝えに行こうという魂胆でシャーレを出発し、アビドスへの道を歩いていた。

清々しいほどの青空に、照り付ける太陽。砂交じりで廃墟と化した住宅街を校舎へ向かって歩いていると、見知った顔に出会った。

セリカだ。同じく学校へ向かう途中なのか……アビドスの制服を着ている。この前は大失敗に終わってしまったが、今回で親睦を深めれば良い。チャンスは残されている。

 

「おはよう、セリカ」

 

「な、何が『おはよう』よ!馴れ馴れしくしないでくれる?」

「私、まだ先生の事認めてないから」

 

ふむ……どうしたものか。

信頼を得るということの難しさは、ヴァリスゼアで嫌というほど味わった。人間関係の構築は信頼を得、そこから更に広げていくものだ。あちらの世界では、信頼の証としてブローチを貰っていたが、この世界ではそんなものは無い。信頼する相手に贈り物をする文化はあるだろうが、信頼の証としてのブローチは存在しない筈だ。

 

「まったく、朝っぱらからうろついちゃって。良いご身分だこと」

 

「手痛いお返しだな。暇、というより大忙しの身分さ。今日は君達の学校に用があるんだ」

「セリカも、これから学校に行くんだろう?なら……」

 

と、目的地は同じなのだから一緒に行こうと誘おうとしたら、くるりと後ろを向いて、顔を背けられてしまった。

子供は大人と違って、信頼を得るまでに時間が掛かる。これは仕方のないことだと割り切ってはいるが……、少し傷つくものもあるな。

 

「私が何をしようと、先生には関係ないでしょ」

「朝っぱらからこんな所をうろちょとしてたら、ダメな大人の見本みたいに思われるわよ」

「私は忙しいの!せいぜいのんびりしてれば?」

 

彼女、セリカは相当クライヴのことを嫌っている。

信頼に値する材料が足りない……、もしくはそもそも信頼に値しない。彼女の中では極端なものになっているのだろう。

しかし、中々どうして……心に刺さるような言葉が多いな*1、彼女は。

 

「それと!学校に行くなら一人で行ってくれる?」

「態々私があんたと仲良く学校に行く理由なんてないし」

「それに、今日は自由登校日だから、別に私は学校に行かなくても良いんだけど?」

 

「自由……登校日?」

 

「なに?自由登校日も知らないの?学校に行っても行かなくても良い日ってこと」

「私は学校に行く理由が無いから、今日は行かない。あんた一人で行きなさいよ」

 

「だとしたら、君は今日どこへ?休日、という訳ではないんだろう?」

 

「だーかーらー!あんたには関係ないでしょ!教える訳もないし!」

「じゃあね!バイバイ!」

 

清々とした顔で去って行ってしまった。

一人、砂に埋もれかけた住宅街に残されたクライヴは天を仰ぎ見る。空は憎らしいほど透き通っている。

対し、彼の心の中は、暗くどんよりとしていた。この大きな亀裂を修復するのは、かなり時間が掛かりそうだ。

 


 

 

 

場所は打って変わってアビドス高等学校対策委員会部室――。

借金返済案を幾つか用意してきたクライヴは、ホシノ達の前で持ち込んだ案の説明をしていた。

 

「まずは……そうだな、このキヴォトスに於ける賞金首。もとい指名手配犯の確保から出る報奨金だが……」

 

「一回は大きいかもしれないね。でも、全額を返そうとなると、このキヴォトスだけじゃ手配犯の人数が足りない」

「それに、潜伏場所や拠点を見つける手間も考えると、少し難しい」

 

「……そうか。では次だ」

「方々で問題を抱えている人を助け、その謝礼として金銭を貰うやり方はどうだろうか。信頼を得る事も出来て、地域への貢献も出来る」

 

「う~ん……。確かに、それなら一石二鳥!みたいな感じで良いかもしれないけど、他の人からお礼としてお金をもらうのはな~」

 

「……ふむ。そうか……それも厳しいとなると……」

 

ヴァリスゼアでは金品などを貰っていたが、どうやらこの世界ではそういった価値観ではないらしい。

あくまで、報酬として金銭を貰うのは仕事として……という価値なのだろうか。

 

「……すまない、俺が持ってきた案はこれだけだ。どうやら助けにはなれなかったみたいだな……」

 

「まぁまぁ、落ち込まないでよ~。全部すぐに返すって訳じゃないからさ~」

 

「そうですよ、先生。みんなで問題を解決するのが、私たち対策委員会です☆」

 

ノノミが銃を磨きながら励ましてくれる。

各々が好きなことをしながら、クライヴの案を聞いてはそれに対しての問題点や疑問点を挙げたり……。

アヤネやシロコ、ホシノはいるのに、この場にセリカだけが居ない。学校に用がある、とは言っていなかったので当然だが。

 

「セリカも居れば、皆に共有できたんだがな……」

 

「あっ、そういえば今日、セリカちゃんはどうしたんですか?」

 

「あぁ……、それが――」

 

クライヴは、朝あったことを彼女達に一通り話した。

セリカと会ったこと、辛辣な態度を取られ、終いにはどこかへ駆け出して行ってしまったこと。

皆様々な反応を返しながら、クライヴの話を聞いていた。「あ~……」だったり、「あはは……」だったり。

と、そこで……

 

「……!そうだ、みんな。お昼ごはん、食べに行かない?」

 

と、突然何かに感づいたホシノが、人差し指を立てて昼食を食べに行こうと提案してきた。

確かに、初対面の相手と親睦を深めるには食事が効果的だ。ホシノの提案に静かに頷き、「じゃあ、しゅっぱ~つ」の掛け声で、部室を後にした。

どこに連れていかれるかは、明かされないままだった。

 

 

 


 

 

 

少し歩いたところにその店舗はあった。

紫関……ラーメン。ラーメンという料理は知らないが、恐らくこの世界では人気のものなのだろう。

一体どういう料理なのか、大人心に弾む期待を抑えるのが精一杯だ。隠れ家では、亡きケネスや、隠れ家で料理長として務めてくれたモリーなどの料理があったが、どれも絶品だった。

あの貧しい世界で、彼らは『どうすれば料理を美味しく作れるのか』を追い求め、研鑽を怠らなかった。その結果、隠れ家の皆には大人気の料理が多数生まれたものだ。

ザンブレクのベアラー兵として皇国に居た時は、まともな食事すら摂れなかったからか、隠れ家で出される料理はどれも美味しかった。最後に、食べておくべきだったな……と思案していると、ホシノが紫関ラーメンの店の戸を開けた。

ガラガラ……と音を立てて開く引き戸の様で、恐らくこれで入店の合図となるのだろう。……と、目の前の驚愕した。

 

「いらっしゃいませ!紫関ラーメンで……」

 

開けた戸の前に居たのは、見覚えのある濃藍の髪を揺らしながら、眩しいほどの笑顔でクライヴたちを出迎える、セリカだった。

突然の知り合いの来訪に、言葉を詰まらせているのか、笑顔を顔に張り付けたまま動かなくなってしまった。

数秒の後、意識が引き戻されたのか、顔を赤くしながら驚いた表情を見せる。

 

「え……わわっ!?」

 

「あの~☆5人なんですけど~!」

 

構わずノノミが人数を告げる。セリカは未だに状況を呑み込めていない様だ。

 

「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ」

 

苦笑いをしながら、セリカを労うアヤネ。

 

「うん、お疲れ」

 

表情を変えずに、サラッと労いの言葉を投げかけるシロコ。

 

「み、みんな……、どうしてここを……!?」

 

皆の労いの言葉に応えることなく、なぜここにいるのか、という疑問を口にする。

変わらず、セリカの顔は真っ赤だ。相当恥ずかしいのだろうか。クライヴにとって、恥ずかしさの原因は理解できないが、きっと彼女達にしか分からない『何か』があるのだろう。

 

「うへ~。やっぱここだと思った」

 

トドメにホシノが言葉を告げた。

ここだと思った……ということは、前々から算段が付いていたんだな。クライヴがここにやってくる前に、何かしら動きを察知していたのか。それとも、尾行していたのか……。真偽は定かではないが、ホシノはやはり洞察力に優れる。ヴァリスゼアに居れば、相当頭の切れる人員として重宝されただろう。

 

「……セリカは、ここで働いているのか」

「人の為に料理を作ることは、何も悪いことじゃない。誇るべきことだ」

 

「先生は何を言って……っ!ていうか、なんでいるの!?やっぱストーカー!?」

 

ストーカー。この世界に来て聞くようになった単語だ。確か意味は……追跡者だったか。

追跡者ならまだしも、犯罪に発展するような行為を行う陰湿な追跡者という意味合いを含めた言葉だった気がする。まさか、その様に思われていたとは……。

 

「ストーカーという訳では……。俺は、彼女達に着いてここまで来ただけだ」

 

「そうそう。先生は悪くないよ~。セリカちゃんのバイト先と言えば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの」

 

「ホシノ先輩か……!うぅっ……!!」

 

やはり、本人は想定すらしていなかったらしい。

赤くなりながらも、悔しそうな表情を見せる。なにも、そこまで恥ずかしがることではないだろう。

と、店の入り口で軽く談笑を挟んでいると、奥から小さな影が現れた。

頭になにやら頭巾を被った……獣人、だろうか。モーグリ族にしては、少々大きすぎるし、羽根も生えていない。それに、特徴的な頭のあのポンポンも見当たらない。

このキヴォトスに来てから、色々な人*2を見てきたが、目の前の獣人は中々威厳のある顔つきをしていた。

 

「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、お喋りはそれくらいにして、注文受けてくれな」

 

声にも、心なしか圧の様なものを感じる。しかし、強すぎるものではない。

何方かというと、諭す様な、心のこもった言葉だ。

 

「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」

 

大将、と呼ばれたあの獣人……。恐らくこの店を取り仕切る存在なのだろう。セリカの雇い手、といった所か。

しかし、ベアラーの様な手酷い仕打ちを受けている訳ではない。あくまで、雇い主として、働き手は道具ではないと理解しているのだろう。その価値観に、安心した。

それに対し、セリカの顔からは眩しい笑顔が消え失せ、引き攣った笑顔でクライヴたちを席へ案内していた。何故、なのだろう……

 

大人数で座れる座席へ案内されると、先にホシノ達を座らせ、自分はどこへ座ろうか……と悩んでいた。

自分の大きい体躯では、狭さを感じさせてしまうかもしれない。この店に対しては迷惑だろうが、ちょうど一人用の席があったのでそちらへ移動しようとすると、ノノミがポンポンと隣の席を叩く。

 

「はい、先生はこちらへ!私の隣、空いてます!」

 

「ん、私の隣も空いてる」

 

ノノミとシロコの二人が、隣に座るよう促してきた。

いや、座れなくはないが……、迷惑になってしまわないだろうか。

 

「座れないことはない。ちょっと詰めれば、座れるから」

 

心の中を読まれたのか、シロコはそう告げる。それに次いで、ノノミが頷いた。

……仕方がない。彼女達には申し訳ないが、座らせてもらうとしよう。

 

「……なら、シロコの隣に座らせてもらおう。邪魔にならなければ良いが……」

 

「ん、問題ない」

 

……本人は詰めると言っていたが、一向に詰める気配はない。

というより、位置が変わっていない。どちらかというと、座る前より近いような気がする。

 

「狭すぎ!シロコ先輩、そんなにくっついてたら先生が窮屈でしょ!もっとこっち寄って!!」

 

「いや、私は平気。ね、先生?」

 

「俺も然程気にはならないが……」

 

シロコの事は、髪色も相まってトルガルのように思っている。

言うことは素直に聞いてくれているし、進んで手伝いもしてくれていたり。気の合う相棒として、このキヴォトスに於いて重要な立ち位置に居てくれる存在だ。

 

「先生まで!?もう、空いてる席沢山あるじゃん!ちゃんと座ってよ!!」

 

「……と、いうことらしい。シロコ、悪いが、少し詰められるか?」

 

「……分かった」

 

少し不貞腐れたような顔をしながら距離を取った。大人数が座れる席とは言え、大人で、かつ体躯の大きいクライヴがいるのだ。間隔を考えなければ、どちらに座ったとて、少々厳しいものがある。

 

「それにしても、セリカちゃんのバイトのユニフォーム、とってもカワイイですね☆」

 

「いやぁ~、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」

 

「ち、ち、違うって!関係ないし!こ、ここは行きつけのお店だったし……!」

 

「ユニフォーム姿のセリカちゃん撮っとけば一儲けできそうだね~。どう?一枚買わない、先生?」

 

「写真、というものなら物品として実際に残って、忘れることはない」

「私室に飾れば、いつでもその時の記憶を思い出すことが出来るし、だいじなものとして持っておくことも出来る。そういう事であれば、言い値で買おう、ホシノ」

 

「先生も先輩も、変な副業で関係を結ばないでください……」

 

……ヴァリスゼアでは、店の看板や思い出の品などを結ばれた絆の証として受け取り、私室に飾っていたが……。

やはりここでは贈り物の価値観が少し違うようだ。擦り合わせをしておかなくてはならないな。後で、アロナに聞いておこうか。

 

「そういえば、セリカ。バイトはいつから始めたの?」

 

「い、一週間前くらいから……」

 

「そうだったんですね~☆時々姿を消していたのは、バイトだったということですか!」

 

バイト……確か、アルバイトの略語だったな。短期雇用の働き手という意味だった気がする。

ヴァリスゼアでもそういったものはあったが……、生憎あまり世話になったことが無かった。傭兵というのも、その分類に入るのだろうか。ベアラー兵はそうではないかもしれないが……、労働の対価に金銭を貰うのはどこも普通の事なのだろう。

 

「貢献することは良いことだ、セリカ」

「周りからの信頼も得ることが出来て、名前を広める事も出来る。これ以上に良い手は無いな」

 

「あー!!もういいでしょっ!!!ご注文はっ!?」

 

怒らせてしまったか……。やはり、子供との付き合い方は難しい。

慣れているつもりだったが、場所が変われば対応が変わるのは至極当然の事。

まだこの世界に来てから、あまり時間が経っていないからこそ、早めに慣れて行かなければ。

 

「『ご注文はお決まりですか』でしょ~?セリカちゃーん。お客様には笑顔で接客しなくちゃねぇ~?」

 

「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……」

 

なんだか、段々と可哀想になってきた。しかし、ホシノに目をつけられていた時点で、この結末は変えようがなかったものだ。

セリカ、君は今この状況を受け入れるしかない。出来ることは、もうないのだから。

 

「私は、チャーシュー麺をお願いします!」

 

「私は塩」

 

「えっと……私は味噌で……」

 

「私はね~、特製味噌!炙りチャーシュートッピングで!」

「先生も遠慮せずにジャンジャン頼んでね~。このお店、滅茶苦茶美味しいんだよ~!アビドス名物、紫関ラーメン!」

 

「この地区の名店舗……か。それにしても……ラーメン、初めて食べる物だからか、少し不安が残るな」

 

「先生、ラーメン食べたこと、ないの?」

 

「恥ずかしながら……な。名前も初めて聞いたくらいだ」

 

と、言うと皆驚愕の表情で此方を見ている。何かおかしなことを言っただろうか。

隣のシロコが、メニューを見せてくれた。醤油、塩、味噌……。

醤油や味噌はともかく、塩は見たことのある文字だ。ヴァリスゼアにも存在していたが、確かその時の情勢も相まって高級な調味料になっていた筈。代用の利く調味料でなかったからか、ケネスもモリーも大事そうに使っていた。

 

「ラーメンっていうのは……」

 

過去に思いを馳せていると、シロコからラーメンの説明が始まった。

各々が好きな味の説明をしてくれている。醤油ラーメンと味噌ラーメンいうのは、定番中の定番。よく食べる客が多いそうだ。味がしっかりしていて、食べ応えのあるもの……らしい。

対して塩ラーメンというのは、その名の通り、塩を主とした味となっており、あっさりとしてかつシンプルな味だそう。こう様々な説明をされると、非常に迷ってしまう。

個人的には、誰かのおすすめする商品を注文したいところだが……、自分で選択しないのは、大人として少し思うところがある。見栄を張っている訳では、断じてない。

 

「そうだな……。なら俺は、醤油ラーメンというものを頂こう」

 

「初ラーメンに醤油……。良いもの選ぶねぇ、先生」

 

「そうなのか?あまり詳しくないから……、ホシノのその言葉を誉め言葉として受け取っていいのか……」

 

「素直に受け取れば良いんですよ~!」

 

……そうノノミは言ってくれているが、そういうもの、なんだろうか。

あまり、女性に囲まれての食事という物に慣れていないこともあってか、少し不安になる。女性には女性の世界があると、カローンから幾つか聞いたことがあった。難しいものだ、と思ったが……ここもそうなのか。ダメだ、考えることが多すぎて、疲れてきてしまった。

 

「あ……、ところで皆、お金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」

 

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら、限度額までまだまだ余裕ありますし」

 

「いやいや、またご馳走になる訳にはいかないよ~。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね、先生」

 

ホシノから静かな圧を感じるが、気にしないでおこう。

 

「あぁ、構わない。元より、食事の場では俺が出そうとしていたんだ」

「気にせず食べるといい。……昔も、皆の分の代金を出したりしたものさ」

 

懐かしいものだ。

ラウンジにみんなで集まって、彼らの食事代を払ったりもしたな。

モブハントで臨時的な収入が入れば、よくみんなに奢っていた。あの時の皆の顔は忘れられない。

 

「え、ほんと?気前良いねぇ、先生~」

 

『気前が良いなぁ、《シド》!』

全く同じセリフを言われた気がする。この価値観は、変わらないらしい。

皆を導く者として、救う者として当然のことだ。なおさら、この世界では子供たちが表に立つのだ。大人はその支援をしなければならないだろう。

 

皆が喜んでいる中、ノノミがひっそりと耳打ちしてきた。

 

(……先生、こっそりこれで支払ってください)

 

と、一枚のカードをこちらへ手渡してくる。これが、クレジットカード、というものだろうか。

気づけば、今着ている衣服の内ポケットに一枚入っていたが……、アロナに聞いてもクレジットカードという物以外、何物でもないという。

 

(いいや、ノノミ。気持ちだけ受け取っておく。ここは、俺に払わせてくれ)

 

(で……でも……)

 

(良いさ。俺が望んで言い出したことだから、心配は無用だ)

 

不安な面持ちのノノミを制し、皆の注文した商品が届くのを待つ。

暫くして、各々が注文した商品が届き目の前に運ばれる。湯気を昇らせながら、熱を発するソレは、匂いだけでも美味しい物と分かるくらいには、その存在を主張していた。

主な内容物は、穀物から作られた麺と……野菜。そして、干肉のようなもの。最初こそ躊躇していたが、シロコに勧められて、こう食べると美味しい。と指導を受けながらラーメンを口に運んだ。

 

正直に話そう。ヴァリスゼアに居たころ食べたどの料理よりも美味しく、記憶に色濃く刻み込まれた。

ケネスやモリーの料理も、それは美味しいものだった。しかし、他の世界にはそれを上回る物も存在する、といったところだ。

あまり興味を持たなかった『ヴァリスゼア食紀行』、イヴァンに借りておくべきだったか……と内心で後悔した。

 

運ばれてきたラーメンを完食し、全員分の代金を支払うと各々が店を後にする。

食べているとき、終始セリカは仕事に徹していたが、帰るとなると外まで見送りに来てくれたようだ。

 

「いや~、ゴチでした、先生!」

 

「ご馳走様でした」

 

「うん、お陰様でお腹いっぱい」

 

店を出ると、皆からお礼の言葉を貰う。

こういう事を言ってくれると、払った甲斐があったというものだ。残しもせずに、奇麗に完食してくれたことも、とても嬉しかった。ラーメンを作ったあの大将と呼ばれる獣人も、仕事に従事するセリカも、気分が良いことだろう。

 

「早く出てって!そして二度と来ないで!!仕事の邪魔だから!」

 

……掛けられる言葉は刺々しいものだが、きっと喜んでくれている筈だ。

 

「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」

 

「ホント嫌い!!みんな死んじゃえー!!」

 

と、照れ隠しなのか、言葉を告げると足早に店内へ戻って行ってしまった。

……結果的に親睦を深めることは出来たのか、疑問は残るが、今いるメンバーとは多少なり仲良くなれたのではないだろうか。

 

「あはは、元気そうで何よりだ~」

 

まるで老人の様な事を口走りながら、ホシノは満腹になったであろう腹部を擦る。

……時たま、ホシノは『おじさん』なんていうが、年齢はここにいる皆とあまり変わらないのだろうか。特異体質という物でなければ、おじさんと言うには性別も年齢も違いすぎるが……。

 

「さてと~。それじゃ、帰ろっか」

 

食後に出来た余暇時間を適当な考えに割いていると、ホシノから帰ろうと提案された。

セリカに出ていけと言われた以上、ここに長居するのも問題になるかもしれない。取り敢えずホシノの言葉に賛同し、皆で学校への帰路についた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……お疲れさまでした~……」

 

紫関ラーメンの裏口から、店を出る。

時刻は夜7時過ぎ……。賄いで出たラーメンを食べ終え、仕事を終えて家路につこうとしていた時だ。

 

「目まぐるしい一日だったわ、ホント……」

 

普段通り業務をこなしていたら、見覚えのある顔が全員揃っているものだから、動揺してしまった。

そこからペースを乱されて、中々仕事に集中できないし、ミスはしちゃうしで……最悪だった。

 

「人が働いてるってのに、先生先生って、チヤホヤしちゃって。ホント迷惑。何なの、アレ」

「ホシノ先輩、昨日のことがあったからってわざと先生を連れてきたに違いないわ!」

 

脳裏に浮かぶ、ピンク頭の先輩が『だいせいか~い』と答え合わせをした。

 

「……ふざけないで。私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから」

 

対策委員会の皆で、解決しようって決めた問題に、ぽっと出の大人なんか、いらない。

私達だけで、何とかしようって決めたのに。なんなの。皆、先生が来てから変。

私は絶対に認めない。必ず自分で何とかしてみせる。先生の力なんて、借りるもんか。

 

 

 

 


 

 

 

 

夜も更けてきたころ、シャーレへ戻ったクライヴの元に一つの通信が入った。

 

『先生!アビドス高等学校のアヤネさんから通信です!』

 

「……あぁ、今出よう」

 

一人、夜空に浮かぶ月を眺めながら過ごしていた時だった。

 

『先生!先生!!夜分遅くにすみません、緊急事態で……!』

 

酷く焦った様子のアヤネが、息を切らしながら話している。

こうも焦っていると、伝えたい情報がうまく伝わらないこともある。まずは落ち着かせることが優先だ。

 

「アヤネ、落ち着いてから話してみろ」

「深呼吸をして、呼吸を整えるんだ。そうしたら話し始めてみてくれ」

 

『……っ、すみません。取り乱してしまって……。その――』

 

そこから、アヤネの話を一通り聞いた。曰く、セリカが家に帰っていないとのこと。

普段この時間は家に居て、彼女達のSNSグループでも、就寝前の会話をしているらしい。しかし、今日に限って反応が無い。不思議に思ったアヤネが家を訪ねてみると、家の中はもぬけの殻。人の気配がしなかった。普段持ち歩いている銃も鞄も、家には無かったとのことで、アルバイト先にも確認を取ったらしいが……紫関ラーメンの大将は、いつも通りの時間に家へ帰した。と言っていたようだ。

 

「……粗方の状況は理解した。セリカが行方不明、か」

「こちらでも情報を纏めてみよう。アヤネ、万が一の状況を踏まえて、皆を学校へ」

 

『……分かりました。召集は掛けておきます!』

 

ブツッ――と通信が切れると、私室を静寂が包み込む。

 

「アロナ、今の通信から何か得られる情報は無いだろうか」

 

『う~ん……。一番効果的な情報は……あ!紫関ラーメンの周辺防犯カメラ映像はどうでしょう?』

 

「一通り見せてくれ。少しでも情報が欲しい。時間は……セリカが紫関ラーメンを出た辺りだ。確か……7時過ぎだったな」

 

『分かりました!え~っと、えいっ!』

 

アロナの掛け声とともに、画面いっぱいに映像が表示される。

路地裏から大通り、歓楽街に、寂れた街角など。写された建物に光は灯っていないが、映像は鮮明だ。

音声が聞こえないのが、唯一の欠点だ。だが、ヴァリスゼアにこんなものは無かったから、あるだけでも情報を得るのに大助かりだ。

 

「……!」

 

クライヴは一つの映像に人影を見つけた。

一人や二人ではない。複数人の人影だ。誰かを担いでいる。死体か……、もしくは……。

監視カメラという機械は、事件の足掛かりを全て記録してくれている。人影が向かう方向、待機しているのは大型の車だ。確か、トラックというやつだ。荷車のように機能する便利な車だと聞いている。

人影の何人かが荷台に乗り、車に光が灯る。光の先には、ヘルメットを被った人物が写った。

 

「……人攫い。世界は違えど、やる事は変わらない……ということか」

 

攫った理由は大方、彼女達の抱える借金ぐるみの何かだろう。それ以外で、セリカを攫う優位性が存在しない。というよりも、理由が存在しない。

彼女を人質に取って、何をするつもりか……。交渉材料にでもしようというのか。何にせよ、ヘルメット団とやらの単独犯行ではない。ヘルメット団の『裏』に居る何者かの指示だろう。

 

「アロナ、今からアビドスに向かう」

 

『え!?今からですか!?かなりの時間が掛かりますが……』

 

「時間に構っている場合じゃない。人の命が懸かっているかもしれないんだ」

「それと 可能であれば、ホシノに取り次いでくれ。彼女にやってもらいたいことがある」

 

 

急ぎ支度を済ませ、クライヴはアビドスへの道を独り走り始めた。

*1
ウィルゲージが削れ気味

*2
人というかロボットとか獣人とか




マザークリスタルからこんばんは、私です。

クライヴ、紫関ラーメンの常連になりそう。性格的に考えて、新しいお店を開拓するみたいなことはしないと思うんですよね。どう思います?行きつけのお店で、仲良くなったお客さんとかマスターと楽しくしゃべっててほしいんですよ、私は。

FF16をプレイしている方がいらっしゃったら、ぜひともクライヴの隠れ家でみんなにご飯を奢ってあげてください。実は奢れるんですよ、あれ。モリーさんに話しかけると、確か奢れたはずです。気前が良いなぁ、シド!!

それでは、また次回お会いしましょう!!
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