(仮題)託された想い、透き通る空の下 作:Laplaaaaaaaaaaaace
決着がつき、静寂が辺りを支配する。漆黒の中、倒れ伏すアルテマにクライヴは近づく。コツ、コツ、と靴の音だけが響く。アルテマの身体は、魔法灰となって消えゆきつつあった。そして、アルテマもまた 近づくクライヴに気づいていた。
『我が消え 神という光が失われたとき――、どのような世界になるか 分からぬのか…?』
「世は乱れる。これから多くの苦しみと悲しみが溢れるだろう」
『そう分かっていて、立ち向かってきたとは…。なぜ…?』
この世界の理を創り出した神が神が消え去れば、すなわち世界の秩序が消失したともいえる。さすれば、人は信仰対象を失い、世は更に混沌を極め、争いが絶えない苦しみに満ち溢れた世界になるだろう。
「それが人だ」
漆黒の空間に暖かな光が差し込む。朝焼けのような、奇麗な色だ。
「その意味を分からなくとも 俺たちは生きたいと願っている」
「不完全かもしれない。だからこそ、誰かと繋がりを求め 間違いながらも歩いていく」
「目の前に広がるこの世界に 答えがあると信じて。ただまっすぐ歩き続けるんだ。一歩 また一歩と」
アルテマに掌を向ける。皆の願いを叶えるために、友人との約束を果たすために、アルテマの力を使わせてもらう。青光の奔流となり、クライヴの肉体に吸収されていく。そんな最中、アルテマは最後にと 言葉を告げた。
『我が消えても この世界がある限り我が生み出した《理》が消えることはない…。黒に侵され、死にゆく世界で覆すことのできぬ因果に――』
『藻掻き苦しめ、永遠に――』
アルテマの力を吸収し、手中に収めた。強く拳を握り、目を瞑る。
すると景色は一変する。先ほどまで暖かな光が差し込んでいた場所は暗く、冷たい光が溢れる《オリジン》と呼ばれる古代遺物の中枢に。そして眼前には、血だまりに倒れ伏す弟の姿が。現実を突き付けられる。アルテマとの戦いの中で、弟は命を落とした。それも、自分の目の前で。
静かに弟へ近づく。冷たくなった体を優しく抱きしめる。服にこびりつく血も、幾許か乾いてしまっている。
思い出すのはジョシュアとの旅の記憶。殺してしまったと思っていた弟が生きており、再開し…。長くはないが一緒に旅をした。ヴァリスゼアを歩き、戦い、最後まで必死に戦い抜いた。
子供のころ――。ジョシュアのナイトになると誓い、フェニックスの祝福を受けたあの日。兄として、弟を守る役目についた日。
ジョシュアが生まれた日。まだ幼かった自分の指を、赤子のジョシュアは静かに握ってくれた。暖かかったんだ。初めて触れる弟の存在に、歓喜したのを覚えている。
涙を流しながら、弟の亡骸を抱きしめる。数々の思い出が脳裏を過り、流れていく。もうあの日々は戻ってこない。
……いや、待て。とクライヴは弟の亡骸を見て思う。
アルテマから吸収した神の力。そして、ジョシュアから託されたフェニックスの力。もしかしたら…。
神でも使うことが難しい完全蘇生魔法《レイズ》今なら、使えるのではないか。だが、その力を行使した時の代償は…。いや、考えている暇はない。
目の前で眠る弟は、心臓にぽっかり穴が開き、大量に出血をしている。なんにせよ、このままにしておくのは、兄として可哀そうだ。
優しく弟の胸に手を置く。それと同時に、フェニックスの炎で辺りを包む。羽根で優しくジョシュアを包めば、これで終わりだ。胸から手をどかすと、穴は塞がり、服に付着していた血も奇麗さっぱり無くなっていた。
一通りの処置を終えるとゆっくり立ち上がり、背後に鎮座するクリスタルに視線を向ける。中身の無い空っぽな光が発せられるマザークリスタル。ゆっくりと着実にクリスタルに近づく。
「アルテマの力は大きすぎて、俺一人の手には余る…だが、これなら」
「奴が作った世界の《理》を――、焼き尽くす事ができる」
「ベアラーもドミナントも、クリスタルも魔法も…全てを灰に返そう」
「たとえこの身が 砕けようとも…!」
炎を立ち昇らせる。すべてを焼き尽くす、イフリートの炎。そこにアルテマの力が加われば、理など簡単に燃やし尽くせる。そして、奴の言った最後の言葉も意味を持たなくなる。
例えこの先に辛く、苦しい結末が待っていようと、人は生きていける。それだけで屈するほど人は弱くない。強くなるために繋がりを求めるのだ。そして、生き抜くんだ。
その言葉を最後に、クライヴの周辺を巨大な炎柱が埋め尽くす。それこそ、クリスタルを破壊せんほどの炎だ。文字通り、すべてを焼き尽くす炎。
それと同時刻、宙に浮かぶ古代遺物、オリジンから光の柱が立ち昇った。
光の柱が収まったかと思えば、オリジンという構造物は崩壊していき、灰と化していった。夜空に浮かぶ月を背景に、キラキラと奇麗な灰となって。
どれほど時間が経っただろうか。クライヴは夜の砂浜に打ち上げられていた。
ゆっくりと身体を仰向けにし、上空に浮かぶ月を見上げ、一言静かに呟いた。
「奇麗な月だな、ジル――」
そう言葉を残し、クライヴ・ロズフィールドはゆっくりと 目を閉じた。
ありがとう、FF16。
これにてヴァリスゼア編は終わりです。次回からブルアカ世界に大胸筋お化けロズフィールドが転生します。自己解釈なんですけど、ジョシュアにレイズかけたんじゃない??って思ってるんですよね。趣味で書いてるからね、考察勢の方石投げないで。