(仮題)託された想い、透き通る空の下 作:Laplaaaaaaaaaaaace
今回からアビドス編ということでメインを読み返していたんですけど、2章で泣きました。多分3章でもまた泣きます。対戦よろしくお願いします
砂塵の地へ
シャーレに所属してから、早いもので数週間が過ぎた。
この数週間は主に書類仕事や、苦情対応……。連邦生徒会から突き付けられる面倒事の解決などを主目的に活動し、着々と『シャーレ』という組織の存在をキヴォトスに浸透させている。
そうなれば、噂というものは自然と大きくなっていくもので、『生徒たちを助けてくれる大人がいるらしい』や、『連邦生徒会が裏で組織していた秘密部隊がある』なんて噂が存在するらしい。
そんな中だったか……、シャーレの手紙箱にクライヴ宛で一通の手紙が送られてきたのは。
こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。
今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、
こうしてお手紙を書きました。
単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。
それも地域の暴力組織によってです。
こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。
どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。
今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底をついてしまいます……。
このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。
それで、今回先生にお願いできればと思いました。
先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?
なんて、とても丁寧な文章で綴られていた。
こんな手紙を貰っては、黙っていられない。恐らくこう思うのも、ヴァリスゼアに居たころの性格のせいだろう。
助けを乞う手紙には出来る限り応えてきた。軽いものから、戦いを擁する荒事など……その分類は多岐に渡るが、考えられる内でも数十件……。ワレアスの時も『助けてほしい』と文言を貰っていたな。
手紙の内容から、逼迫した雰囲気…それこそ崖の淵に立たされている状況と見える。
そこからの行動は早いもので、アビドスの情報をアロナに教えてもらい、目的地を設定し荷物を纏め出発した。
しかし……問題にはすぐ直面した。
アビドスに出張という名目で、シャーレからアビドス近郊にタクシーという乗り物で移動できたは良いものの……
車を降ろされた目の前に広がったのは、広大な砂漠。ヴェルクロイ砂漠と同等……もしくはそれ以上。魔物がいないだけこちらの方がマシだが、如何せんこの世界にはチョコボが存在しない。少し前、指笛なんかを吹いてみたが アンブロシアはおろか、チョコボが現れることは無かった。
つまり……
「今からここを徒歩で移動しろ……ということか。ダリミル宿場の様な、道中で休める場所があればいいが……」
『……はい。以前説明した通り、アビドスは過去の災害によって殆ど無人……。宿に当たるような施設は現在どこにもありません。なんとしてもアビドス高等学校に到着するしか……』
アロナの機能を以てしても、どうにもならないらしい。今現在できることは、可能な限りのナビゲートのみ。
何日歩き続けただろうか、一向に学校が見つからない。ナビゲートも、砂漠では殆ど役に立たない。バイロン叔父さんも、目印を基に目的地を目指す……と言っていたが。目印になりそうなものは……何もない。砂に埋もれた建築物は多数存在するが、目的地たる学校が見当たらないのだ。
「……アロナ、時間が惜しいが少し休憩にしよう。いくら歩き慣れているとは言え、この距離は初めてだ。少し……体力が心許ない」
『分かりました!では、日陰になりそうな場所に移動しましょう。えぇと、この辺りだと……』
「あの建物の陰なら、問題ないんじゃないか?丁度日陰になっていて、座れそうな場所もある」
『わっ……先生、見つけるのが早いですね?旅慣れ……というやつでしょうか?』
「……ある程度は慣れている、といった所か。昔、いろんな場所を歩いた事がある。その話も、いつかしてみせよう。とびきりの冒険譚だ」
壮大な冒険譚。嘘は言っていない。国々を渡り歩き、時には海を渡り、龍の背に乗り空を飛んだこともある。
龍の背に乗って飛んだ、魔法を使って戦った…、神との戦いも、召喚獣や魔物、ヴァリスゼアの話は彼女達にとっても、壮大な物語になり得るだろう。
この世界の話は、クライヴ自身にとって大きな衝撃を与えた。進んだ文明に人間以外の種族、喋る獣に機械の生命体。彼からすれば この世界こそ御伽噺の世界だ。
「……彼女達の退屈凌ぎくらいになれば良いが」
これ程刺激を受ける世界に生きている者たちだ。
もしかしたら、クライヴの話だけでは事足りないかもしれない。そうなれば、完全なるお手上げ状態。彼女達の刺激を超える話なんて、尚のこと出来そうにない。
『……一体先生は、ここに来る前 何をしていたんですか?』
突然、アロナがそんな事を聞いてきた。
人っ子一人通らない砂漠に埋もれた街で、休憩を取り始めてすぐ。ずっと無言というのも、彼女としては思うところがあるのだろう。
少しくらい、昔話をしても良いのかもしれない。
「そうだな……休憩の時間潰しには丁度良い。それを教えるには、少し昔話をする必要があるが……」
『先生の過去はとても気になります!もし詮索されたくない……ということでしたら、無闇に聞き出したりは……』
「いや、別に構わない。ただ……少し長くなるかもしれないだけだ」
「これから傍で支援をしてくれる相棒の様な立場の君に、出来る限り伝えておきたいんだ。俺のことを」
そこから、少しの間……クライヴは、自身について語り始めた。
ロザリアという国に産まれたこと、弟の事。彼を守る騎士として、幼少の頃より剣術を学んでいたこと。
彼女は静かに話を聞いてくれていた。時折驚く様子も見せてくれたが、大袈裟に驚くことはない。ただ、御伽噺を聞く子供のように、夢中になって聞いてくれていたのだ。
「そうして俺は……史上最年少で公国騎士の叙任を受け、後の御前試合で優勝……。弟を守る騎士……ナイトになった」
懐かしさを感じて、右肩の方へ手を伸ばす。
しかしそこに『剣』は無く、虚しく手が空を切るだけだった。
『す……凄いです!先生の過去が、そんな壮大なものだったなんて……!』
「……誇れたものじゃないさ。ここから先は、暗く血生臭い。話すのはまた次回」
「アビドス高等学校と呼ばれる場所の問題片付き、出張が無事に終わってからにしよう。その方が、まとまった時間も取れるだろう」
『そうですね!先生のお話、楽しみにしてます!』
……なんて、笑顔で言ってはくれるが、ここから先は本当に聞く事すら躊躇われる様な、闇と血に濡れた暗い話だ。
アロナの笑顔を無駄にしてしまうかもしれない。復讐の為とは言え、剣を振るい、人を殺め……世界を敵に回した大罪人の話を、快く聞ける訳がない。
過去を打ち明けた時、彼女がどんな反応を見せるか、想像に容易い。それを、クライヴは拒み始めている。
「……あぁ」
この血で真っ赤に染まった手で、彼女達と向き合っていいものか。人の死を知らない、幼い彼女達とどう向き合っていけばいいのか。クライヴの胸中に不安の種が残る。
初めてこの世界に来た時、どこかで安心してしまっている自分がいたことを認めたくはなかった。
ヴァリスゼアの話をする度に、心に影が落ちていく感覚がある。明るい世界を生きてきた彼女たちに、クライヴの世界はあまりにも残酷すぎるのだ。
『予定に追加しておきますね!え~っと……先生の昔話を聞く……っと!』
……やめてくれ!と叫びたくなる。
知ったところで、どうにもならない。
教職者としてこの世界にいる、クライヴ自身の身を狭めてしまうだけだ。嫌な噂も流れるかもしれない。
如何せん、この世界は情報の伝達力が速すぎる。朝のうちに事件が起きれば、その数時間後には大騒ぎになっているほどだ。
「予定の調整は君に任せる」
「さて、休憩は終わりだ。先を急ごう」
『分かりました!ナビゲートはお任せください!』
胸中の暗闇を振り払って立ち上がる。
今はこんなところで過去を悔やんでいる場合じゃない。フェニックスゲートで己を受け入れた筈なのに、心に枷でもつけられているんじゃないかと思うくらいに、身体が重い。
だが、そんなことに構っている暇はない。今は先生として、生徒の問題を解決することが第一優先だ。
ゆっくりと立ち上がり、背中に背負った荷物袋を背負い直す。ふぅ……と一息つけば日陰を出て、灼熱の照り付ける大地に赴く。
……と、次の瞬間。視界の端に何かが映る。人影の様な、黒い何か。
「……何だ?」
その影は次第に大きくなっていき、気づけばすぐ近くまでやって来ていた。
もしここで会敵すれば面倒だ。体力もある程度減っているし、戦闘ともなればさらに損耗が激しくなる。
出来る事なら戦闘などはせずに、そのままどこかに隠れてやり過ごすべきだろう。
……いや、待て。あまりにも接近スピードが速すぎる。何か乗り物にでも乗っていない限りこんな速度は出せない。車のように大きな影ではない。一体、何なんだ。
対話を試みてみるべきだと、アロナは話す。相手が誰なのか分からない今、闇雲に戦闘行為に出たところで此方が反撃を喰らう可能性もある。
……ここは、アロナに従うべきだろう。
「話の通じる奴だと良いが……」
影が目前まで迫ると、キキーッと甲高い音を立てて停止する。
機械の類か……!?と警戒していると、何者かがこちらに向かって歩いてくる。背丈は自分より遥かに下。照り付ける太陽で確りと姿を視認できないが、恐らく女学生だろう。
「……あの……」
澄んだ声だ。闇を感じさせない、奇麗な色の声。
こんなに透き通るような声を聴いたのはいつぶりだろうか。
「……大丈夫?」
「……っ、あぁ すまない。少しぼーっとしていたらしい。俺は問題ない、移動の邪魔をしてしまったのなら申し訳ないことをした」
「良かった。道の真ん中で棒立ちだったから、立ったまま意識を失っているのかと」
「残念だが、俺にそんな器用なことは出来ない。仲間のうちの一人なら、出来たかもしれないが」
「ふーん……。それにしても、こんなところにいるって……ホームレス?」
ホームレス……。簡単に言うなれば家無しか。
ヴァリスゼアは難民で溢れ返っていたが、この世界でまさか難民側に回ろうとは。
「いいや、そういう訳じゃない。この自治区に用があって来ているんだ。アビドス高等学校という場所から手紙を貰っている」
『アビドス』という名前を出すと目の前の少女は、ぴこん と頭上の耳を立たせた。銀色の髪に、尖った獣の耳。
まるでトルガルを彷彿とさせるような色合いに、どこか懐かしさを感じつつ彼女の反応を見守る。
「アビドスに行きたいの?」
と、小さく首をかしげながらこちらに問いかける。
無言で頷くと、彼女は小走りでどこかへ向かっていった。すぐに戻ってきたと思えば、何か車輪の付いた乗り物を引いている。
「そっか……久しぶりのお客様だ。乗せてあげたいのは山々。だけど、これは一人乗りだから……どうしよう……」
「案内することは出来るんだけど……」
「君にそこまで迷惑をかけるつもりはない。歩いていける距離なら、案内を頼みたいんだが……」
「……ん、それなら問題ない。ここから学校までなら、それ程距離は無い。歩いて案内できる」
助かった。砂漠で遭難して命を散らす事は無くなったようだ。
もし可能であれば、この自治区内にダリミル宿場の様な中継拠点を用意してほしいくらいだ。……リンに掛け合ってみるか。
「行こう、着いてきて」
「あぁ。面倒を掛けるが、案内を頼む。詳しいことは君の学校に着いてから話そう」
お互いに、砂交じりの舗装された道路を歩き始めた。
この先に待ち受けるのは、困難か……はたまた新たな試練か。
自身の心に枷を感じたまま、クライヴは歩み始める。
目的地は、アビドス高等学校だ。
クライヴ君、なぜまた枷なんかしているんだい自分に……。
それはそれとして、ハルポクラテスの蔵書も地味に更新してあります。
お暇なときに読んでみてください!FF16を知らない先生方、またブルアカを知らない大罪人《シド》の皆さま!この作品に触れて、どちらかを遊ぶ架け橋になれたらいいなぁと思います!
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