春の君に、夏に恋をした。   作:聖 那由多

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初投稿です。
拙い文章かもしれませんが、よろしくお願いします。


第1話

「なぁ秋人、来週夏祭り行かね?」

 

 そう言って自販機横で僕――夏宮秋人に声を掛けてきたのは、同じクラスで同じ部活に入っている友人の浜辺弘樹だった。

 

「夏祭り? そう言えば隣町の花火大会、来週だっけ?」

「そう、それだよそれ!!」

 

 片手で知り合いからのSNSのDMの返信をしつつ、飲みかけのスポーツ飲料を飲み干す。それと同時に隣町の大きな花火大会があることを思い出した。

 

 その花火大会は自分が物心ついた頃から毎年の様に通っていた花火大会だ。地方の二万人程度の町にしては屋台なんかも沢山連なり、地元で一番大きな花火大会で夏祭りといえばこの花火大会を指す。だけど中学に入ってからは部活動で夏休みが潰れることも多く、実際ここ二年ぐらいは行けていなかった。

 

「俺等も野球部引退したしさ、暇だろ?」

「まぁ、確かに」

 

 そんな部活動も、地区大会二回戦負けという弱小校の名に恥じない成績で終えた。毎日休まずに練習した成果がこれとは、神様という存在は余程人が悪いと見える。それにしても夏祭りか……。

 

「今年は行ってもいいかもね」

 

 僕が思わずそんなことを口にすれば、弘樹は嬉しそうに声を上げる。

 

「うっし、決まりだな!! それにきっと可愛い子も沢山居るだろうし、今から楽しみだぜ」

「なに、ナンパでもするの?」

「当たり前だろ。俺がなんでお前を誘ったと思ってんだよ」

「???」

 

 僕が頭の上にはてなマークを浮かべていると、弘樹は溜め息を付きながら言葉を続ける。

 

「いいか、女の子って生き物はイケメンが好きだ」

「そんなことないと思うけど」

「いいや、間違いないね。じゃなきゃ俺に彼女が居ない理由に説明がつかないだろ」

「性格じゃないかなぁ」

 

 僕は内心ちょっと呆れつつも合いの手の様に弘樹へと言葉を返した。

 

「それで、そのイケメンと僕になんの関係があんのさ」

「そら、お前がイケメンだからだ」

「僕が?」

 

 どうやら僕はイケメンらしい。

 そっか、僕はイケメンなのか。

 

「ああ。悔しいがお前はイケメンだ。それもちょっと儚げな幸薄系のイケメンだ」

「誰が幸薄だ誰が」

「まぁまぁ怒んなって。それに俺の脳内スーパーコンピューターがシミュレーションした結果、女の子はお前みたいな男が好きだという結論が出た」

「まるで未だに現役でフロッピーディスク使ってそうなコンピューターだね」

「ばっか、俺の脳内スーパーコンピューターは世界最高だっての。それに実際お前、モテるだろ?」

「そんなことないよ。告白とかされたこと無いし」

 

 実際告白された経験は一度も無い。まぁ仮にあったとしても部活を優先してたと思うけど。

 

「いや、俺の予想じゃうちのマネージャー陣はお前にホの字だし、特にほら、あいつからバレンタインにチョコだって貰ったろ?」

「アイツ?」

「アイツだよアイツ。優香だよ」

 

 そう言われて思い出した。優香とは同じ部活でマネージャーをしている水戸優香の事だ。目の前の弘樹の幼馴染でもある。

 

「あぁあれね。義理チョコだよ義理チョコ」

 

 少なくとも僕はそう思ってる。渡された時も個別じゃなく、他の男子と同じ様に渡されたし。何より水戸さんは……いや、これは別にコイツに話すことじゃないよな。

 

「そうかぁ? いや、でも良く話してるし……」

 

 何故か神妙な顔で考えごとを始めた弘樹。

 別にそんな考える様なことでも無いと思うけどなぁ。

 

「まぁそれは一旦置いといてだ。来週の土曜日、十五時に待ち合わせな!! 場所は駅前!! 忘れんなよ!!」

 

 そう言った弘樹は声を上げながら走り去って行く。

 

 僕は手に持った空き缶をゴミ箱へと放り投げると、なんだか疲労感を覚えたので再度自販機にお金を入れた。

 

「あんなにガツガツしてなくても良いのに」

 

 そんな独り言をこぼしながら自販機から出てきたサイダーを手にとる。

 

「まぁ、あれだ、弘樹の恋愛に幸あれ。……ってね」

 

 恋なんてしたこともない自分に来た水戸さんからの恋愛相談のDMに返信をしながら、サイダーを口にする。パチリと弾ける様なシュワシュワとした炭酸の心地よい甘さが喉を抜けていった。

 

 恋愛なんて所詮他人事で、初恋すらまだな僕にとっては恋する良さすら分からない。

 だけど恋ってのは、人によってはサイダーの様に甘く弾けて心地いいものらしいってのは、知識としては知っている。

 

 そう、知っているだけ。

 経験なんてものは無いのだ。

 

「恋……か。僕もいつかするのかな……」

 

 僕の呟きと一緒に、手の中でパチパチと鳴る炭酸が夏の空へと消えていった。

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