「ワシ、実は今度王様になるのよね」
は?何いってんだこのオッサン?頭おかしいのか?
場所は夜のアッサラームの酒場。
綺麗な踊り子のお姉さんの踊りを観たりしながら一緒にお酒を飲める場所だ。
店はまさに大盛況。
そんな店のカウンターで酒を飲んでいると、隣に座ったオッサンがカウンター越しに目の前の踊り子を口説くためかそんな事を言っている。
このオッサン、実は知らないオッサンではない。
なんとルドマン氏の紹介である。
つまり俺の連れ。ルーラ便ではるばるロマリアから一緒に飲みに来たのである。
これまでも3人で何度かアッサラームに飲みに来たこともある。
どこかのお貴族様なのは間違いないだろう。
いつも身綺麗にして金払いもよく楽しそうに遊んでいくのだ。
今夜も今夜とて
「ねえねえマトリフちゃんマトリフちゃん!今夜飲み行こうよ!」
奢るからさー!
と言って俺とルドマン氏を連れてアッサラームに飲みに来ている。
今夜もきっと豪快にお金を使うのだろう。
楽しそうな。周りも楽しそうな遊びを。
俺は職業遊び人だけど、この人は天性の遊び人なんだろうなあ。
大人になってわかる。この人は綺麗な遊び方がしっかり出来る人だ。
酔っ払っても普段こんなこと言わない人なんだけどなあ。
そう不思議に思いながら、推しのミレーユちゃんが作ってくれたドリンクを口に運びながらルドマン氏の方を見る。
ルドマン氏は固まっていた。
ルドマン氏の推しのマーニャちゃんも目をパチクリしている。
ロマリア1のやり手商会の長だ。
こういう反応は珍しい。
「で、殿下…今のは、本当に?」
「うん、そうなんだよねー」
ルドマン氏は立ち上がるとオッサンの横に立ちヒソヒソと耳打ちする。聞こえてるんすけど。
殿下…殿下ねえ…
そうか、この人はゲーム本編でのロマリア王か。
確かに今の王様が戯れで王位を誰かに譲り城下町に遊びに来たという話は聞いたことがなかった。
本編前に代替わりしていたのだとすると納得する。
「これからはこうしてアッサラームにも来れなくなりそうで…最後にパーッと飲みたかったんだよねー」
そう言って目の前のグラスの酒を一口で飲み干す。
「マトリフちゃんもありがとね。短い間だったけど楽しかったよ」
「は、その…おめでとうございます」
「よせやい。似合わないなんてことは自分でもわかってるさ」
そう言って人好きのする笑顔を浮かべカラカラ笑う。
「ルドマンの紹介で、君に会えてよかった」
いつか本当にこの国が困った時は力を貸してね。
そう言って笑う。
どうやら今夜はここでお開きってことだろう。
たまにはこんな健全な夜もあっていい。
この約束はいずれ果たされる。
今はまだ、遠い話。