「センセ!!!」
「ああ、わかってる!」
ゼシカちゃんとの呪文の実施練習でロマリア探索中、モンスターに襲われている少女を見つけた。
「ピオリム!急ぐ!気をつけながらゆっくり来るんだ!」
「ええ!」
懐かしのアニマルゾンビやバブルスライムなどだ。
すばやさを上げ少女を助けるため走って向かう。
200メートルほどあった距離は、推定500付近のすばやさ+ピオリムの効果もありぐんぐん縮まっていく。
平地だったのもありがたい。もう少しカザーブ寄りで山道であればこうも行かなかっただろう。
「ベギラマ!」
少女をモンスターが囲んでいるため、殲滅用のイオラが使えない。
逃げ道を作るためベギラマで目の前のモンスターだけ焼き払う。
「君!助かりたければこちらに逃げてこい!」
「っく!はい!」
ベギラマが作った逃げ道を通り、少女がこちらに走って逃げてくる。
「ギラ!ギラ!」
残りのモンスターをギラで牽制する。
飛行系のモンスターがいないのが幸いだった。足元にギラを連発することで簡単に足止めを行える。
そうして少女が俺の横を通り過ぎる。
…女武道家!?
…いや、考えるのは後だ!
「イオラ!」
とりあえず落ち着いてから考えればいい。
残りのモンスターもイオラで殲滅。
「センセ。この子毒受けてるみたい」
「わかった、キアリー」
追いついて来たゼシカが助けた少女の状態を教えてくれる。
「ベホイミ」
まず毒を治療し、負傷を癒す。
「た、助かりました…本当にありがとうございます」
黒髪の少女がペコリとこちらに一礼する。
短い黒髪を左右で軽く縛った、稽古服姿のその少女…
これ絶対女武道家だよなあ…
原作開始まで残り1年。
ついに原作キャラとの邂逅である。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「本当にありがとうございました」
「ああ、気にしなさんな」
武道家の少女はミオという名前だった。
カザーブ村出身で年齢は16歳。
勇者の仲間になるためアリアハンを目指していたようだ。
これからポルトガに向かい、船でアリアハンに渡るそうな。
やっぱ原作キャラか…
原作開始まで近くなるとこういうこともあるのだろう。
偶然ではある。
が…
「貴方は勇者の仲間にはならないんですか?そんなにお強いのに」
期待に輝く瞳でミオが問いかけてくる。
当然の問いかけである。
しまったなあ。原作キャラに自分の存在を知られてしまった。
これは余りよろしくない流れな気がする。
ゆっくりと左右に首を振りながら、
「すまないがそのつもりはないよ。俺は自分の力を自分と自分の大切な人たちを守るために使うと決めている」
不特定多数の人を救うために戦う勇者は立派だ。
だが自分はそういったタイプではないのだ。
勇者はきっと長く続く苦難の戦いの果て、魔王と大魔王を討伐するのだろう。
世界は平和となる。
そして地上には戻れなくなる。
そんな戦い、俺は嫌だ。
「そーよね、センセまた守るもの増えるもんね。でも、私の事もしっかり守ってね♫」
最近さらに主張の強くなってきた胸を俺に押し付けながら、ゼシカは俺と腕を絡ませてきた。
そして俺の顔を下から覗き目を合わせてニッコリと微笑む。
…最近色々と色々なことの主張が強いのであるこの子も。
あわあわあわと顔を真っ赤にしこちら少女が見ている。
「やれやれだ…」
天を仰ぐ。
「あ、あの…せめて、良かったらお名前だけでも教えてくれませんか?落ち着いたら改めてお礼に伺いたいので」
「ん、ああ名前ねえ…」
どうするか?
ここですっとぼけて別の名前を名乗るのも一つの手である。
連絡手段の少ないこの世界。名前を間違って教えれば探す手だてもその分少なくなる。
幸い、ゼシカは俺のことをセンセと呼ぶので名前はバレていない。
決めた。
「助けたことは気にしないでいいさ。たまたま通りすがっただけだからな。礼も十分受け取ったし大丈夫だよ」
「でも!」
「そうだな…俺のことは…そうだな」
ふっと笑いこう伝える。
「通りすがりの大魔道士、そうとでも覚えておけばいい」
いつか君と縁があれば、また出会うときも来るだろうさ!
そう言って別れを告げると、ゼシカと2人でその場を離れる。
賢者と名乗ると大事になる。
しかしベギラマ使ったあとにベホイミとかキアリーも使ったのでバレる可能性は高い。
なので、大魔道士だ。
僧侶レベル20で魔法使いに転職したと考えてくれれば儲けもの。
少女の見送りを受けながら、ゼシカと腕を組みながらその場を立ち去った。