勇者が死んでしまった後の世界で   作:のりしー

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動き出した世界

ロマリア王の言葉を受け、場は大きく2つに割れた。

 

その通りだ。各国の精鋭を集め今すぐネクロゴンドに向かおう。

いや、各国の防衛もある、今少し慎重に考えるべきだ。

 

当然帰結する2つの意見。

ロマリア王は沈黙を守る。  

 

何となく意図がわかる。

 

結局この方は一石を投じれればそれでいいのだ。 

 

勇者とその仲間達だけで世界を救うのは無理だった。

だから当事者意識を持たせたいのだろう。

 

最終的に各国連合軍なんて大袈裟なものは必要ないのだから。 

各国の本気の本気の応援。

 

それが本当に欲しいものだ。

 

攻めるべきと、それは拙速という意見。

どちらも正しいし間違いではない。

当事者意識を持ち、本当にクリアに向けて国が協力してくれればそれでいいのだ。

 

議論は、白熱する。  

 

「会議中失礼致します!!!!」

 

 

白熱する謁見の間。

その会議の中に、イシスの兵士が慌てて飛び込んできた。

 

「…何事ですか?」

代表し、イシスの女王が、兵士に問う。  

 

わかっているんだ。

この会議は世界の王が集まる大事な大事な会議。

 

よっぽどでなければ、乱入など許されない。  

 

…つまり、よっぽどのことが起きた、ということだろう。

 

恐怖に怯えながらも、声を振り絞り兵士が伝言を伝える。

「ネクロゴンドよりモンスターの大群の侵攻を確認しました!!!」

 

やはり、来たか。

各国ともに最悪の覚悟はしている。 

緊急退避のためのキメラの翼も用意済みだ。

 

「そうか…数はわかるのかね?」

皆まで言うな。モンスターの数だ。

 

兵士は震えながら

「視界を覆い尽くすほどの数がネクロゴンドの山を越え向かってきております…」

 

その数、およそ3000…

 

よりによってのネクロゴンドの強力なモンスターが3000。  

 

なるほど…こいつはハードだなあ。

「わかりました…では、各国の皆様。この場は我らイシスがお引き受け致します。避難を早く」

気丈なイシス女王。

怖くないわけはないだろうに。 

自分が治める国に殉じるのだろう。健気なことだ。  

 

苦渋の決断を迫られる、各国の王。

…焦っていないのは。うちの陛下だけだった。

 

「大魔道士マトリフ」

 

慌ただしくなる謁見の間で、不思議と何故だか皆に届く穏やかで不思議な声でそう呼びかけてくる。

 

「は、何でしょうか陛下」

 

呼びかけに答える。

 

不思議だ。

一刻も早く動く必要があるこの局面。

何故か皆が、俺達2人を見ていた。

皆が動きを止め、俺達2人を観る中で、

 

「私のこの考えは間違っているのかな、大魔道士マトリフ?私は、君ならばこの絶望的な状況をどうにか出来るのでは、とそう考えているのだが」

 

そう語りかける陛下。

…おいおいおい。

これはあれじゃないか?

2次創作やなろう系でよく見るあの展開じゃーないか?

 

…やれってのか?今、ここでアレを?

 

後世の歴史家や画家が『まるで神話の中の1ページだ』と題材にして楽しむようなあれだろ?

 

…いいぜ、やってやる。

…やるさ、やるのだ。

何故なら俺は、世界を救うと決めたのだから。

 

陛下の前に跪く。

 

「陛下がそうお望みとあらば」

 

ふむ…俺の答えを聞き、陛下はこう返す。

 

「マトリフ。私が望むものはただ一つ。我ら人類の完全なる勝利だ。それ以外は決して認めない」

 

「で、あるならば陛下。大魔道士マトリフが陛下に人類の完全なる勝利を捧げるだけのことであります」

 

「ならば行くのだ!大魔道士マトリフ!!」

 

陛下が大きな声で宣言する。

世界全ての人に届けとばかりに。 

普段は決して声をはらないこの人が。

 

「行け!マトリフ!人類に完全なる勝利をもたらせ!」

「は!」

 

「手始めに、まずはイシスを救うのだ!!!!」

「陛下のお望みのままに!」

 

その声を受け、俺は戦場に向かう。

やってやるさ。

俺は世界を救う。

まずは手始めにイシスを救ってやるさ!

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