外見からして禍々しいオーラを放つゾーマの城に入る。
城内に入ると、そこにはすでに見覚えのある魔法陣が起動していた。
不味いな…勇者の進行速度が速すぎる!!
ゾーマ撃破のタイミングはこちらに任せてもらわないと困るのだ!
「急ぐぞ!」
全員で魔法陣を使い転移する!
瞬時に場所を移動。
有名な、いけにえの祭壇だ。
美しくも禍々しいその空間を皆で進んでいく。
そして、祭壇まで辿り着く。
祭壇の上には、1人の少年が立っていた。
幼さを多少残す、整った顔立ちの黒髪の少年。
美しい青い鎧を纏い、神々しい剣を持った勇者。
E王者の剣
Eひかりのよろい
E勇者のたて
勇者アルス。
3装備を身につけた勇者が祭壇の上に立っていた。
「アルス!!良かった、生きてたのね!心配したんだから!」
ミオが声をかける
だが…
「ミオ…残念だけど僕はもう死んじゃったんだよ」
様子が…おかしい?
「でも、火口に落ちたのに生きてるじゃない」
勇者はふるふる首を振り。
「体は生きてるよ。でも『勇者』としての僕は死んだ。死んだ…そう、殺されたんだよ!!!」
そこで勇者はビシッ!と剣でこちらを指す。
こちらっていうか、俺?
ん、俺?
「お前が…お前が…そう、お前が全部悪いんだ!!大魔道士マトリフ!お前が『勇者』を殺したんだ!!!」
「マトリフさん…またなんかやってしまいましたの…?」
早めにごめんってなさったほうが…
こらレナやめなさい。
無実です。
今回だけはマジ。
そういえば最初見たとき違和感はあったんだ。
なんでいけにえの祭壇に立ってる勇者の顔立ちが見えたんだろ、って。
普通、後ろ頭が見えるんじゃないのか?
それが後ろ頭ではなく、こちらを向いているってことは…
つまり…
「僕は君を許せない。だから君を殺して『勇者』を取り戻す。そう、『闇の勇者』として生き返るんだ!!!」
この勇者、闇堕ちしてやがる!!!
「ちょ、ちょっと待ちなよアルス!落ち着いて!」
「落ち着いてるよアリシアさん…そうだ、皆は僕の奴隷になってくれるなら生かしておいてもいいんだよ」
「奴隷って…アンタ、そんなこと言う子だったの!?」
その勇者の下品な言葉と視線にアリシアが自分の体を隠す様にして後退りする。
「ゾーマ様は僕に言ったんだ。
『憎いヤツを殺し 抱きたいと思ったら女の子は犯せ』
って、お前にはそれが出来る力があるって」
「アルス!貴方!」
ミオの悲しい悲痛な声が響く。
ゾーマ様マジ有能。流石大魔王。
今作勇者を奸計で自軍に寝返らせるの巻であった。
「転生者の僕にとって、ここはどうせ現実じゃないゲームの世界。今までいい子ちゃんしてたけど、別にそんな必要なかったんだ。悪役のロールプレイだってありだろ」
…あん、コイツ転生者なのか!
そうかもしれないとは考えたことあるけど、それにしては攻略がチグハグでイマイチ確信が持てなかったんだけど。
「転生特典があるから、この世界で僕を殺せる人間は誰もいない…マトリフ、君も多分転生者だよね?だけど、絶対僕には勝てない。例え大魔道士の君でもね」
そら大きく出たものだ。
転生者であれば特典のことは知ってるだろう。
噂に俺の連続呪文でも耳にすれば、俺が特典持ち転生者とはすぐわかるだろう。俺が正直表舞台に出たくなかった理由である。
アルスの言う通り、対人戦闘では、俺は確かに無敵ではない。
マホカンタでメタればなんなら俺は完封できるレベルの強さではある。
だけど、流石にこの人数差を見てみろよ。
絶対勝てないだなんて…
…そこで、はっ!と気づいてしまう。
絶対、勝てない…
…つまりそれは、絶対負けないということで…
転生者に与えられる特典は3つ。
勇者に転生
3種のふくろ
…そして
いや、まさか…そんな…
確かに、アレの存在は確認したんだ。
確かに、それなら今までの勇者の不可解な攻略にも説明がついてしまうのだ。
仲間を転職させない。
はぐれモンスターも集めない。
でもスピード優先の攻略。
1人でアレフガルドを攻略し、ゾーマに挑む…
…でもさ、なんていうか…この…
伝わるかなあ、この感じ…
いや確かに合理的なんだよ。わかるよ。
ゲームならともかく危険な世界に転生するんだもんな。
わかるよ!万が一のこと考えれば絶対安心!
でも、流石にさあ…
流石にさあ…ドラクエ世界に特典も有りで転生出来るのに…
それを選ぶのはなんというか、うん、違うんじゃないかなって…
「システム設定…ゲームモード選択」
「特典『楽ちんプレイ』そう、だから僕には誰も絶対勝つことは出来ない!」
戦闘中、絶対にHPが1にはならない。
敵に与えるダメージ増加
一部ボスの自動回復無し
これならアルスの攻略方針に全て説明がついてしまう。
普通にやれば絶対クリア出来るのだ。細かい事を気にする必要は全くない!
そこでアルスが再度俺に剣を向けて
「勝負だマトリフ!」
勇者の挑戦、ってか?
冗談じゃない。
それじゃまるで俺が大魔王みたいじゃないか!