勇者が死んでしまった後の世界で   作:のりしー

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16歳

16歳が成人の目安みたいな話をしたと思う。

 

俺が16歳になった夜、祖父がお祝いだと言ってたまに行く美味しいレストランに連れていってくれた。

 

「ここまで無事に、こんな立派に育ってくれて本当によかったよマトリフ」

 

豪華なご馳走を2人で食べながら、本当に嬉しそうに満ち足りた笑顔でそういう祖父。

 

 

「こちらこそ。ここまで育ててくれて本当にありがとうございます」

いい笑顔にはいい笑顔で返す。

2人にこりと微笑みあう。

美味しい食事、酒も少し飲ませて貰う。

笑顔と楽しい会話。

 

この夜は本当にいい夜で、幸せな時間を過ごす事ができた。

 

両親を亡くした自分を親代わりに育ててくれた祖父。

色々気苦労も多かったことだろう。

それが無事成人まで子供を育て上げたのだ。

 

嬉しいだろうし、安心もしたのだろう。

 

 

……だからだろうか?

 

この夜が過ぎ、約一月が経った頃。

 

祖父は穏やかな笑顔で亡くなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「マトリフ。あまり気を落としすぎるなよ」

「穏やかな笑顔だった。きっと君がしっかりと育ったのを見届けて安心してあちらに旅立ったのだろう」

葬儀が無事に終わり、神父様達に言葉を頂く。

 

享年70歳。

この医学が発達していない世界。

平均寿命60歳と考えればまさに大往生といっていいだろう。

 

死に顔は穏やかなもので、苦しまずそっと息を引き取っていた。

確かにこの1年ほどは寝ている時間も増え衰えは感じていたが、まさかあの夜から一月でとは驚くばかりである。

 

本当に、自分の成人を見届けたいという一心で生きる力を振り絞っていたのか?そう言わんばかりの大往生であった。

 

献花の花の多さは生前の人望だろうか?

穏やかさに魔法使いならでは知恵のある祖父は、周囲の人たちに自然頼られていたように思う。

 

ここではあまり語ってはいないが、語っていない思い出の中でも祖父は自分にも自分以外の人にも優しかった。

 

日常生活で一緒に家事をする祖父

呪文を教えてくれる時の厳しくも優しい祖父

そんな思い出が山程あるのだ。

 

転生前の世界の両親と同じくらい大切な家族だった。

 

せめて心安らかに眠ってほしい。

 

 

世界を旅する商人が伝えるところ、すでにオルテガは死んだ。

火山の火口に落ちたとのことで、シナリオ通りにゲームは進行している。

旅立ちのタイミングからみて、ゲーム本編スタートまで後10年切っただろう。

 

ゲームの進行上、ロマリアは最初から最後まで平和だ。

そして俺はメインストーリーに関わる気はない。

 

だから安心、と考え過ぎるのも良くないだろう。

 

優しい祖父が心配せず安心して天国で暮らせるように。

強くなることは間違いではないのだ。

 

前々から温めていた計画を実行する時が来た。

 

そうだ、ダーマにいこう!

 

 

 

 

 

 

 

 

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