車好きの転移先は、憧れの頭文字D!?   作:憂@やる気がない

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布石なので短めです。

色々と気付くお話。大丈夫かこいつ?




第8話 ふと我に返って

 

 

 side 主人公

 

 

 

 ───今、俺の前に2種類の人間がいる。

 

 

 

 腕を大きく振り上げ、勝利の喜びを分かち合う者。

 

 

 沈痛な面持ちで、目線を地面に落とすもの。

 

 

 そして面白そうに、楽しそうにほくそ笑む涼介(白い彗星)さま。

 

 

 

 

 ・・・ごめん、3種類だったわ。*1

 

 

 さてこの状況、諸君らはどうしてこうなっているのかが気になるだろう。*2

 言っとくが、俺は途中からは関与していない。

 ヒルクライム走った後にスピードスターズの面々にもみくちゃにされて、追撃と言わんばかりの池谷先輩の汗臭い抱擁から逃げるために車内に閉じこもっていたのだから。*3

 

 

 

 

 

 

 何があったのだろう。

 

 

 

 

 

 

『こいつが秋名のダウンヒルなんて走ったら、あっという間に事故って! あの世行きっすよ!?』

 

 

 

 

 

 

 何があったのだろう。

 

 

 

 

 

 

『啓介が煽られてるぞぉ!? 秋名代表のハチロク、めちゃ速だ!?!?』

 

 

 

 

 

 

 何があったのだろう。

 

 

 

 

 

 

『啓介が抜かれちまったぁ!! 呆気なく、インからスパーンッと!!!』

 

 

 

 

 

 

 何があったのだろう。*4 *5

 

 

 

 

 

 

 いや、まぁ・・・たった今ゴールを迎えたダウンヒルのせいなんですけどね。*6

 

 ヒルクライムを終えた直後は尊敬するアニキに話しかけながらも、犬歯を剥き出しにしてコチラを睨んできていた啓介。まだ闘争心が残ってるのかと戦々恐々でしたよこっちは。

 だがその後に原作通り遅れてやってきた2代目秋名のハチロク*7が、無事ダウンヒルをぶっちぎって終わらせた。その差なんと7秒強。あまりの速攻さに某トランプもビックリだろう。

 

 

 啓介の受けたショックはどれ程だろうか。

 原作ではハチロクへの2度の敗北が効きすぎたのか、GT-R戦前には厄介オタクムーブをかましてたけども。

 

 

 

 ・・・そう考えるとあんまり心配する必要ないか?? 

 

 

 

 しかもハチロクが来る前にFDはタイヤ交換をしていたので、俺の時と違ってグリップ力が落ちてたとかの言い訳は効かないのである。*8

 

 加えて負けたのはダウンヒル。ヒルクライムよりも難しいのは誰もが知るところだろう。

 

 

 

 ダウンヒルが難しいと言われる理由の最大の要因が、下っていくというその形態にある。

 

 下り勾配というのはパワーに味方し、ブレーキには強烈な足枷となる。

 平地より重力が強く作用する関係上、加速しやすく止まらないのだから、危険度が跳ね上がるのは分かるだろう。

 

 加えてダウンヒルにおいては、フロントのみが消耗しやすい傾向にある。タイヤマネージメントも一苦労だろう。

 

 んで・・・当然だが、ブレーキを踏めばフロントが沈み、リアが浮く。

 

 

 そう。フロントが沈んで荷重が前に寄るのだ。

 ただでさえ下りで元から重量の寄っているフロントへ。

 

 そして車の重量は変わらない。前に寄るか後ろに寄るかの荷重割合の変化のみだ。フロントに寄った分はリア側が減る。つまりトラクションが抜ける訳だ。

 そうなればタイヤが地面を掴みにくくなるため、ブレーキング中にオーバーステアが誘発されやすい。

 

 意外と見落とされてるダウンヒルの難しい要因がこれだ。荷重の抜けたリアは僅かな路面のギャップでも振られてしまう。横Gを逃がしながらの減速がハイテクニックに分類される理由でもある。

 

 

 ステアリングとペダル操作でリア側のグリップをコントロール出来なければ、即事故でアウトだ。

 

 

 ダウンヒルのオーバーステアは事故に繋がりやすい。その殆どが予期せぬ挙動であり、発生が唐突だからゆえ。

 弱アンダーの車が乗りやすいと言われるのは、安定している挙動により安心してコントロールできるから。だから限界付近まで思い切って攻めれる。だって当たり前の操作をすれば曲がってくれるのだから、わざわざ難易度の高い方を選ぶ人なんていないだろう。

 

 レーシングドライバーという面で見ても、オーバーステアを好んだドライバーは少数派。有名どころで言えばF1のミハエル・シューマッハだろうか。

 あれはオーバーステア車の回頭性を生かしつつグリップの限界ギリギリまできっちり使い切る走り方なので、ドリフトはしてないが。

 というか普通はそんな精密なコントロールは無理。

 

 

 ───話が脱線した、失礼。

 

 

 とりあえず、原作通りに落ち着いたことで一息つけた。無事、"秋名のハチロク"誕生という訳だ。

 少しレッドサンズに対する評判は下がるだろうが、勝負の世界は勝った負けたしかない。ここはグッと飲み込んでもらおう。

 

 

 頭の中でうだうだとおべんちゃらを垂れていたら、気付いた時には真横に涼介が来ていた。

 どうしたんですかい? イケメンフェイス引っ提げて。

 

 

 

「予定通り、といったところか? お前の計算通りに事が運んでいるようだが」

 

 

「・・・なんの事ですか??」*9 *10

 

 

「フッ、とぼけても無駄だぜ。あのハチロクの情報を啓介に教えたらしいじゃないか。お前のことを不思議そうに話してたぜ。・・・これは俺の想像でしかないが・・・、お前はもっと新しい情報も持っていたんだろう?」

 

 

「あー・・・まぁ、そうですね」

 

 

 

 少しなじるような視線を向けながら彼は語る。それに対して、俺はそりゃそうだとしか言えないのだ。*11

 

 

 何の因果か、今はこうして現場の当事者の1人として振舞ってはいるものの、本来の俺は読者。この世界を物語として認識し、憧れていた1人に過ぎないのだ。

 だから全体の流れや人の持つ情報なども把握出来ているし、この日初めてベールを脱ぐはずだった

『群馬最速のダウンヒラー』のことも知っていた。・・・だって主人公よ? 彼。

 

 今日が交流戦だって言う話はあの時のシルビア三人衆に聞いたから知れた訳だけど。もし来てたらちゃんとお礼したいな。*12

 

 

 色々情報をもっていて、

 

 地元のチーム*13にツテもあり、

 

 レッドサンズに勝つ腕前も証明されてる、と。

 

 

 

 ────うん。やっぱり諦めるしかないね。

 

 

 

 自分を客観視した結果にため息しか出ない。どこのなろう系主人公だよこれ。眺めているだけで良かったはずなのだが、気付けば巻き込まれ確定というかもう巻き込まれた後というか。

 

 

あたまおかしいよこんなけっか。*14

 

 

 まぁいいやー帰って不貞寝しよー。

 

 

 と、いつもの現実逃避を考えてピタリと止まる。

 

 

 

 

 

 

・・・てか俺、家どーすんの? *15

 

 

 

 

 

 

 ナンバー的に前の世界と同じ登録地みたいだけど、原作を眺めたい以上引越しはほぼ確定事項。・・・というか俺の住んでいたマンションってこの時代にあるの?? 

 

 直近で起こるイベントを考えるとスタンド近くに越してくるのが1番丸いが、今の俺は貯金があるのだろうか。

 何事も先立つものがないと始まらないのは当然だろう。財布の中も時代に合わせて変化しているだろうけど、銀行のキャッシュカードがあるかは確認していない。

 ・・・そういえばお札も変わってたね。今気付いたけど。*16

 

 

 お前ファミレス行っただろうって? 

 

 

 ・・・中身をちゃんと確認せずに支払いしてました。*17 *18 *19

 

 

 

 マズイ、思った以上に事態は深刻だ。

 

 どうしよう。

 

 

 

 

「今後のお前の活躍を楽しみに────? 凄い顔つきだが・・・大丈夫か?」

 

 

「ダイジョウブデス」

 

 

「・・・そうか」

 

 

 

 涼介に若干の距離を取られながら、俺は悩み続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ✣✣✣✣✣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side ??? 

 

 

 

 

 

 

「───ただいま」

 

 

「・・・おう」

 

 

 

 無愛想な返事。まぁいつも通りか。親父の横を通り過ぎながらも時計を確認する。

 もう10時半か・・・、明日に備えて早く寝ないと。茂木に叱られちまう。

 

 

 

 ───あ・・・そうだった、釘刺しとこう。

 

 

 

 階段から半身を出しながら、口約束を強調しておく。

 

 

 

「勝ったから・・・ガソリン満タン。約束だからな」

 

 

「・・・」

 

 

「・・・約束だからな!」

 

 

 

 無愛想ながらもどこか子供みたいに聞こえないふりをする親父にちょっとムッとする。

 

 ・・・いいや。もし足んなかったら給油して、後で請求しよう。

 

 

 

「───拓海、1ついいか?」

 

 

 

 向き直って階段を登り直した矢先に呼び止められ、思わずつんのめる。

 

 なんだよいきなり改まって? 

 

 

 

「祐一から聞いたんだが・・・上りを走った奴は頂上に居たか?」

 

 

「・・・???」*20

 

 

 

 ホントになんの話だ??

 

 俺は頂上に登る為に走ったけど、当然その時は1人だし・・・。

 

 

 

「・・・聞き方が悪かったか。お前が着く前に上りでのバトルがあったらしいんだが、そっちのバトルを担当した奴は見かけたかってコトだ。ド派手な羽の付いた、銀色したセダンだって話だ」

 

 

「いや、別に・・・。クルマなんていっぱいいたし、わかんねーよ」

 

 

 

 

「───そうか。ならいい」

 

 

 

 

 それっきり新聞紙に目を落とすオヤジに、ちょっとびっくりしてる自分が居る。

 どういう風の吹き回しだろう・・・、オヤジが余所のクルマを気にするなんて初めて見た。

 

 

 何となくキツネにつままれたみたいな感覚を覚えながら、部屋に戻る。どうせ明日もまず配達だし。

 

 

 さっさと2階へ上がったせいか、オレは聴き逃してしまった。

 

 

 オヤジの意味深な呟きを。

 

 

 

「───レガシィ・・・だったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
御三家か何か?? 

*2
おぉメタいメタい

*3
なお1度喰らった。1敗

*4
すっとぼけ

*5
知らないとは言っていない

*6
分かりきった答え

*7
初代は言わずもがな親父

*8
ちなみにまたPOTENZAだった。さすが金持ち

*9
何も分かってない

*10
ばなな顔

*11
ここガバ

*12
彼らは残念なことにトラブルで来れず(第1話あとがき)

*13
スピードスターズのこと

*14
IQ3

*15
判断が遅い

*16
千円札が漱石の頃

*17
ただのアホ

*18
何だこのポンコツ

*19
危機管理×

*20
よくわかっていない






主人公 : 池谷先輩のハグを避ける為に結果として原作シーンを鑑賞出来ず仕舞い。ぶっちゃけ逃れられた方に安堵してて後悔薄め。身分証や愛車の登録情報は真っ先に確認していたのだが、今更この世界での貯金、住居、身の振り方を考えてへにゃっている。やる事が・・・やる事が多い・・・!!


藤原拓海 : 原作主人公であり、MF GHOSTの時代には"伝説のダウンヒラー"と呼ばれる程になる現在ピチピチの18歳。原作通りにひょっこり頂上に現れ、いつものようにかっ飛ばして啓介を豆にした。このレコードは池谷たちスピードスターズの自己ベストから1分以上は余裕で速い。もちろん本人はまだ手抜き。車には無知で、自身の駆るトレノ=ハチロクに未だにピンと来ない。
翌日、無事に茂木なつきとの海デートに繰り出し、青いビキニ姿(・・・・・・)を目に焼き付けた。

交流戦は結局カットされ、作者に裏切られた。ゆるして。


白い彗星さん : 突然遭遇したパンダトレノに下りをぶっち切られて、赤城レッドサンズの完全敗北を刻まれた。だが嬉しそう。本作主人公とはマシンの差がデカすぎると理解出来ていたが、ハチロクでFDをぶっちぎって()せた拓海に対して無事モンスター認定。美味しい獲物発見である。


クレイジー文太(ぶっ壊れ) : 原作主人公たる藤原拓海の実の父。掛け値なしの原作最強。最終進化した拓海でトントンか、ハチロク同士限定で紙一重上回れるかくらい。なおハチロク以外だと()。某ドリキンと旧知の仲であり、本作では向こうがサーキットを。文太がラリーを極める為に違う道を選択した設定。現役は10年以上前に退いたが、彼とはライバルであり戦友。
フルタイム4WDが市販乗用車に使われる駆動システムという印象が無い時代生まれの人間のため、それを峠で自在に振り回したという主人公を祐一経由で知り、ちょっと興味が出た。さて。

主人公のプロフィールまとめは・・・

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