俺の作るジュースが美味しい   作:とうもろこしヘッド

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脱出✖️遺失✖️こいつは異質

 ノブナガに監視された小さな部屋の中では、重苦しい沈黙が続いていた。

 

 普段なら軽口の一つも叩くジョセフでさえ、その視線に射抜かれ、息を潜めることしかできずにいた。

 

 時間だけが、じわじわと過ぎていく。外が暗くなり始めた頃、沈黙を破ったのはキルアだった。

 

「ゴン、ジョセフ。俺が囮になる。お前らだけでも逃げろ。」

 

「何言ってんの?」

 

ゴンが即座に返す。

 

「キルア、それは無理だぞ。」

 

ジョセフが呆れたような声が重なる。

 

「全くだ。やめとけ。

敵の力量も分からねェ程未熟でもあるめェ。

スキなんか、作らねェよ。」

 

 クソっ……。

出口は一つ。相手は間合いを円で固めてる武士

どう考えても正面突破は無理だ。

 

 そう考えている間にも、ゴンとキルアは言い争いを始め、その様子をノブナガは楽しそうに眺めている。

 

――その時だった。

 

「あ!!!」

 

突然、ゴンが大声を上げた。

 

「ヨコヌキ!」

 

妙に強調されたその言葉に、キルアが一瞬きょとんとし―次の瞬間、表情が変わった。

 

「……あぁ。」

 

二人の視線が、同時に壁へ向いた。

 

 ゴンとキルアが一気に盛り上がり始める中、

俺だけが話についていけず、ただ首を傾げていた。

 

 するとキルアが、少し考えるような素振りを見せてから、こちらを見た。

 

「ジョセフ。お前も「念」使えるんだろ?」

 

 唐突な質問に、一瞬言葉に詰まったが、正直に頷いた。

 

「じゃあ行けるな。」

 

キルアは静かに続ける。

 

「ハンター試験のトリックタワー。

最後の分かれ道で、何やったか覚えてるか?」

 

 トリックタワー?

 

 「……おぉ。」

 

そうか、壁を壊すのか!出口がダメなら作るのみ!

 

 3人がオーラを練り始め、一斉に出口に向かい走り出した。ノブナガが刀の柄に手をかけ居合斬りの態勢に入るがゴンとキルアが左右の壁に分かれて壁を壊した。

 

 2人が横なら俺は下だ!

 

 ゴンとキルアが横に移動した瞬間にジョセフは足にオーラを込め地面に穴を開けた。

 

ーーー

      「こいつら!壁を!」

 クソッ誰を追う!?いやガキ2人は俺のワガママで連れてきただけだ。今逃しちゃいけねェのはドリンク屋だけ、下だ!

 

 下に降りると左右の壁に穴が一つずつ開けられておりこの状況にノブナガの足がすくんだ。

 

 …この土壇場で頭が回るじゃねーか。一瞬迷ったが左から物音が聞こえてるぜ!

 

 左の穴に進むと壁も壊れておらずドアも瓦礫に埋もれていた。

 

 隠れてるのか?いや音がしねェ

 

 ノブナガが踵を返し戻もうとしたところ

 

 「キルア!ジョセフ!いるか!?3人であいつをぶっ倒すぞ!」

 

 この発言でノブナガの足が完全に止まった。

 

 気配が消えた、闇に乗じて闘る気か、馬鹿が…円に入ってきたら斬る、いつでも来い。

 

 ノブナガは誰もいない廃墟を歩き始めた。

ーーー

 

 ジョセフの格闘に対するキャリア総じて長くない。そして念の才能に関しては何百、何千万人の中の1人と言われたら頷く他はない。心源流拳法をビスケから教わり上手くサボりながらもやってきた戦闘訓練。

 

 打・投・極からなる戦闘技術を差し置いて才能を見せたのは逃亡する術である。

 

 ゴン、キルアが左右の壁を壊すと判断し下にいった躊躇なく選択できる思考の速さ。そしてジョセフは下の部屋にて左右の壁を破壊した、その後正規の扉から出て階段のある方向へと逃げる。壁の穴を用意する事で二つの選択肢に絞らせるという姑息な手段である。

 

 普段であれば対処出来たかもしれないノブナガに対し、初手の壁破壊で壁を伝って逃げると思考させ正常な判断をかき乱した。

 

 この作戦を一瞬にして思い付き実行する事が出来るのがこの男、ジョセフである。そしてゴンの発言により足を止めたノブナガに反してジョセフは止まらない。

 

 最初から闘う意思はなく、この状況でゴンとキルアがノブナガに挑む蛮行をやらないと判断したからだった。

 

 そして逃亡する事に成功したジョセフは疲れた事から自分が滞在しているホテルへと帰還した。

 

 次の日、外は雲行きが怪しく外出を控えたジョセフはホテルのルームサービスを堪能していた。

 

 天空闘技場で190階まで勝ち上がったジョセフは、大金持ちではないが、少なくとも金に困らない程度の余裕はあった。

だからヨークシンでも、少し背伸びしたホテルを選んでいる。

 

 暇なので新聞やニュースを見ると昨夜マフィア達の抗争などが大々的に書かれていて他には2日後に開催されるサザンピースオークションの事や色々な記事が載っていた。

 

 物騒な街だなと他人事のように考えながら昼飯を流し込み、そのまま眠気に身を任せた。目が覚めると外は雨が降っており景色も暗くなっていた。

 

 起床をしてゴン達に連絡をする事を忘れていたジョセフは携帯を取り出し……携帯が無い。昨日何処かで無くしたのか?部屋の中を探しても見つからなかったジョセフは交番に行く事に決めた。

 

 部屋を出てエレベーターのボタンを押そうとしたところホテルのライトが落ちた。ホテルの停電によりエレベーターを使う事なく階段で下へと向かった。

 

ーーーーー

sideパクノダ 9月4日19時頃ベーチタクルホテル

 

 やられた…停電の一瞬の隙をついて団長が攫われた。鎖野郎の事も置き手紙のせいで皆んなに話せない。

 

 この状況の中、パクノダは先程ゴン達から読み取った記憶を旅団員に伝えるか伝えないかの2択に迫られた。

 

話すべきか黙するべきか、生かすべきかはどちらか。

 

 「フィンクスか急げ!団長が攫われた。」

 

 ノブナガが電話で話していると停電が直り電気が復旧し視界が明るくなると思いがけない人に出会った。

 

 「クソッ!やられたッ!鎖野郎許さねェ!…あぁ?お前ドリンク屋か?」

 

 最初に気づいたのはノブナガだった。そこには昨日捕まえて逃げられたドリンク屋がいつの間にかいた。

 

「おいパク、アイツの記憶を見てくれ何か知ってるかもしれねェ。」

 

 「この2人の子供以外の事なら喋っても大丈夫だと思うよ。」

 

 ノブナガとコルトピの発言に頷き。ジョセフに近づいたパクノダは先程ゴン・キルアにも聞いた同じ質問をした。

 

 

 ーー何を隠しているの?ーー

 

 

 何か知っている事が他にあればジョセフの記憶として旅団の皆んなに伝える事が出来る。そういった考えを持ちながらジョセフの記憶を見たパクノダは刹那…想像し得ない感覚が脳内に走った。

 

 ジョセフの記憶は果てしない。今まで誰1人として話してこなかった前世での数十年という時間が数秒という速度でパクノダに流れ続ける。

 

 「ッ……!?」

 

   クラっ——と視界が揺れた。

 

 パクノダの体がわずかによろめき、慌ててマチが支えた。

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

パクノダは息を整えながら、首を横に振る。

 

「……ただの目眩よ。問題ない。」

 

問題しかなかった。

 

 これは異常だ。普通の念能力者の記憶じゃない。膨大かつ多すぎる。まるで別世界の人間の記憶そのもの。

 

ジョセフ一人に、二つの人生がある。

 

(……こんなの、誰にも言えない。

 説明できない。信じてもらえない)

 

そして、パクノダは静かに確信してしまう。

 

 この子は、旅団の今回の件には関係していない。何も知らない。ただ、違う世界の記憶を持って生きている。

 

だからこそ、言った。

 

「……この子は関係ないわ。

 今は、放っておいて。」

 

 声が少し震えていたが、

旅団はそれを現在の状況に対する焦燥と誤解した。

 

 誰一人、彼女の内心の異変に気づかなかった。

 

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