sideパクノダ 9月4日深夜
クラピカとの交渉の末、団長のクロロを解放する事が出来たパクノダは帰り道の途中、思いがけない人物に出会った。
…ドリンク屋。
見覚えのある子供を見つけた。雨が降る中で傘も差さず、落とし物でも探すように、足元ばかりを見ている。警戒心はあるが、殺気はない。
絶を使っていて姿が見えるまで気づかなかった。
もうこの子は何も関係ない、これから起こる事に関わらせる意味もない。…だけどふと私は彼に自然と近づいた。
「こんな時間に、何してるの?」
びくりと肩を震わせ、振り返る。
「うわっ!あ、あんたこの前の…」
逃げない。
逃げる判断をしない。
「安心して、今日は、あなたを捕まえに来たわけじゃない。」
そう言うと困ったように頭を掻いた。
「じゃあ何しに来たんだよ。こっちは携帯無くして色々あったんだよ。」
「そう、災難ね。」
沈黙が落ちる。
雨音だけが、二人の間を埋めた。
私は、確かめるように聞いた。
「…あなた、自分のことを普通だと思ってる?」
「え?」
予想外の質問に、目を瞬かせる。
「普通かどうかは分かんないけど。
まぁ、普通寄りなのかな。…?」
苦笑。
——やっぱり、分かっていない。
私は、あの時見てしまった記憶を思い出す。
長すぎる人生。
この世界とは噛み合わない知識。
それを、自覚せずに生きている危うさ。
「忠告よ、しばらく他人に深入りしない方がいい。
特に…私たちみたいな連中には。」
「…脅し?」
「善意。」
少し考えてから、頷いた。
「分かった。」
疑っていない。だが信じてもいない。ただ、受け取った。それでいい。
私は踵を返す。今更記憶について深く聞こうなんて思わない。他人の記憶を見るのはもううんざりだ。見たくない事まで見えてしまう。
背後で、小さく呟いた声が聞こえた。
「あのさ
振り返らない。
「俺、何か見られた?」
一瞬だけ、足が止まる。
触れれば、もっと深く読めた。思考も違和感も正体も、でも私はそれを選ばなかった。既に答えは、用意してある。
「いいえ、見え過ぎただけよ。」
それ以上は言わず、私は歩き出した。
背中に視線を感じながら——
それでも、振り返らなかった。
あの子は、いや彼は知らない。こんな腐った世の中、
知らないまま笑って、知らないまま人を笑顔にさせて、知らないまま誰かを救うのかも知れない。
ふと思い出したのは。幻影旅団を発足させる前の
あの頃の記憶。ひどく懐かしく、あの純粋だった私達に彼と姿を重ねた。
「なあ
まだ声が追いかけてくる。
「俺はあんたのことは全然知らないんだけど。」
少しだけ、口元が緩んだ。
「私の記憶は、高くつくわよ。」
「じゃあやめとく。」
即答。その軽さが、可笑しかった。笑いそうになって、でも結局笑わなかった。もう、そういう時間ではないから。
「忠告は本気よ。」
最後にそれだけ残す。
「しばらくは、誰も信じない方がいい。」
「…あんたも?」
答えない。答えれば、嘘になる。
私は歩き出す。背中に、彼の視線を感じる。
振り返れば、少しだけ楽になれる気がした。何かが変わる気がした。だが、それは選ばない。選べなかった。
雨音の向こうで、私は彼に呟く。
「じゃあね、ドリンク屋じゃない人。」
足は、止めない。
夜は、静かだった。
「現実は非情」篇
ジョセフ「加糖は甘くて武藤は冷たい。」
キルア「武藤は人によるだろ。」
ジョセフ「加糖も入れる量によって変わるだろ。」
キルア「…え?これ今俺が負けてる感じ?」
ジョセフ「そんな世の中にも希望はある。
缶コーヒーBOSS。」
キルア「急に締めんな!」