俺の作るジュースが美味しい   作:とうもろこしヘッド

26 / 30
再会✖️邂逅✖️最後の会話

 sideパクノダ 9月4日深夜

 

 クラピカとの交渉の末、団長のクロロを解放する事が出来たパクノダは帰り道の途中、思いがけない人物に出会った。

 

 …ドリンク屋。

 

 見覚えのある子供を見つけた。雨が降る中で傘も差さず、落とし物でも探すように、足元ばかりを見ている。警戒心はあるが、殺気はない。

 

 絶を使っていて姿が見えるまで気づかなかった。

 

 もうこの子は何も関係ない、これから起こる事に関わらせる意味もない。…だけどふと私は彼に自然と近づいた。

 

「こんな時間に、何してるの?」

 

 びくりと肩を震わせ、振り返る。

 

「うわっ!あ、あんたこの前の…」

 

 逃げない。

 逃げる判断をしない。

 

「安心して、今日は、あなたを捕まえに来たわけじゃない。」

 

 そう言うと困ったように頭を掻いた。

 

「じゃあ何しに来たんだよ。こっちは携帯無くして色々あったんだよ。」

 

「そう、災難ね。」

 

 

 沈黙が落ちる。

 雨音だけが、二人の間を埋めた。

 

 私は、確かめるように聞いた。

 

「…あなた、自分のことを普通だと思ってる?」

 

「え?」

 

 予想外の質問に、目を瞬かせる。

 

「普通かどうかは分かんないけど。

 まぁ、普通寄りなのかな。…?」

 

 苦笑。

 

 ——やっぱり、分かっていない。

 

 私は、あの時見てしまった記憶を思い出す。

 長すぎる人生。

 この世界とは噛み合わない知識。

 それを、自覚せずに生きている危うさ。

 

「忠告よ、しばらく他人に深入りしない方がいい。

 特に…私たちみたいな連中には。」

 

「…脅し?」

 

「善意。」

 

 少し考えてから、頷いた。

 

「分かった。」

 

 疑っていない。だが信じてもいない。ただ、受け取った。それでいい。

 

 私は踵を返す。今更記憶について深く聞こうなんて思わない。他人の記憶を見るのはもううんざりだ。見たくない事まで見えてしまう。

 

 背後で、小さく呟いた声が聞こえた。

 

「あのさ

 

 振り返らない。

 

「俺、何か見られた?」

 

 一瞬だけ、足が止まる。

 

 触れれば、もっと深く読めた。思考も違和感も正体も、でも私はそれを選ばなかった。既に答えは、用意してある。

 

「いいえ、見え過ぎただけよ。」

 

 それ以上は言わず、私は歩き出した。

 

 背中に視線を感じながら——

 それでも、振り返らなかった。

 

あの子は、いや彼は知らない。こんな腐った世の中、

 

 知らないまま笑って、知らないまま人を笑顔にさせて、知らないまま誰かを救うのかも知れない。

 

 ふと思い出したのは。幻影旅団を発足させる前の

あの頃の記憶。ひどく懐かしく、あの純粋だった私達に彼と姿を重ねた。

 

「なあ

 

 まだ声が追いかけてくる。

 

「俺はあんたのことは全然知らないんだけど。」

 

 少しだけ、口元が緩んだ。

 

「私の記憶は、高くつくわよ。」

 

「じゃあやめとく。」

 

 即答。その軽さが、可笑しかった。笑いそうになって、でも結局笑わなかった。もう、そういう時間ではないから。

 

「忠告は本気よ。」

 

 最後にそれだけ残す。

 

「しばらくは、誰も信じない方がいい。」

 

「…あんたも?」

 

 答えない。答えれば、嘘になる。

 

 私は歩き出す。背中に、彼の視線を感じる。

 

 振り返れば、少しだけ楽になれる気がした。何かが変わる気がした。だが、それは選ばない。選べなかった。

 

 雨音の向こうで、私は彼に呟く。

 

「じゃあね、ドリンク屋じゃない人。」

 

 足は、止めない。

 

 夜は、静かだった。

 




「現実は非情」篇

ジョセフ「加糖は甘くて武藤は冷たい。」

キルア「武藤は人によるだろ。」

ジョセフ「加糖も入れる量によって変わるだろ。」

キルア「…え?これ今俺が負けてる感じ?」

ジョセフ「そんな世の中にも希望はある。
        缶コーヒーBOSS。」

キルア「急に締めんな!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。