ホシノトゲトゲ
「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩」
私の知ってるホシノはこんなことを言わない。
「そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!」
誰よりも現実を見てないくせにリアリストぶるその顔が嫌い。それでも、
「ただ、こうやってホシノちゃんと一緒にいられることが私にとっては奇跡みたいなものなの」
「
これ以上にすごくて、珍しいものなんてない。
「……ううん、ホシノちゃん。私はそうは思わないよ」
多分、ない。
「はぁ……」
ひとりぼっちの校舎で
今日、ホシノが入学する。転生して17年、ついに推しとの日々が始まるのだ。
……そう信じていた。
あの日――入学届を持ってきたホシノに会うまでは。受け取った私は笑顔でいられたのだろうか?引き攣っていなかったか不安でたまらない。
一目見た瞬間、こんなホシノは好きじゃない、そう理解した。
私は分かっていなかったんだ。
私は小鳥遊ホシノだから好きなんじゃない。私の好きな態度と見た目に合うのが小鳥遊ホシノなんだということに。あの瞬間まで小鳥遊ホシノという存在が好きなのだと信じて生きてきたというのに。
私の好きなホシノはこんなに髪が短くない。
私が好きなホシノはあんなに冷たいことを言わない。
私の好きな……。
自覚した瞬間、そんな不満とも少し違う負の感情が溢れてきたんだ。
コンコン……。
「先輩?」
嫌なことを思い出した、私はユメ。明るく彼女を迎えねばならない。
「ホシノちゃん?入って入って!」
「失礼します」
少し緊張した顔で入ってくるホシノに満面の笑みを作って見せ、両手で手を取りぶんぶんと振る。記憶の中の梔子ユメのように。
「入学おめでとうホシノちゃん!」
「ありがとうございます。梔子先輩」
「ユメって呼んでほしいな?」
ホシノはこんな呼び方しない。
「……ユメ先輩」
「よろしくね!ホシノちゃん!」
納得のいく呼ばれ方で久しぶりに心からの笑顔を浮かべられた気がする。
そうだ……簡単なことじゃないか。少しずつ彼女を私の知っている小鳥遊ホシノに直していけばいいのだ。何故今まで思いつかなかったのか。
決めた。私の好きな小鳥遊ホシノを完成させる。そのためなら何だってしてみせる。
まずは考えよう、私の大好きな小鳥遊ホシノの作り方について。
「あなたみたいに大人のようなことをする人とよろしくするつもりはありません。私はアビドスを守る為にこの学校に来たんです」
「え……」
……大好きなホシノちゃんなら笑って許してくれると思ってホシノの好きなアビドスを守る為に、多少ホシノの嫌がるような手段に手を染めてでも借金を返していたのだ。まだホシノが大好きなホシノじゃない――多少の不正も大目に見てくれない――と気付いた時には
……好感度は地の底のようだ。地下生活者には会えただろうか。