「おかえりなさい、ホシノちゃん」
無視……しかし、様子がおかしい。いつもは私の無事?を確認するために部屋に入ってくるが、今日はドアを開けて一目見たら即撤退していった。
表情は見えなかったがきっといいことではない。問い詰めねば。
なぜ部屋から出てきたか問われてもモーマンタイ。あの手この手でホシノから奪い取った洗濯、ご飯、お風呂の用意など、言い訳をたくさん持っている。
そのついでにちょっと話しかけたくらいなら怒る理由にはならないはず。
リビングに行くと、ホシノは武器、弾薬の手入れをしていた。まあこいつはそういうところはしっかりしてるからな。
「ご飯とお風呂どっちが先がいい?……ご飯するね」
といってもレトルト、湯を沸かして突っ込むだけである。電気ケトルで沸かしている間にお皿を並べながら事情聴取だ。
「今日は何をしてきたの?」
「いつもといっしょですよ」
今日も今日とて害虫駆除に勤しんでいたらしい。まあ予想どおりだ。しかし、何時もより更に声に元気がない。まさか返り討ちに遭ったなんてことはないと思うが……。
「何かあったの?」
「何も」
「でも声もなんかシナシナしてるよ?」
「何もないっていってるじゃないですか!」
今のは私が悪かった。こんな食い下がり方されたらガキなら絶対にムカつく。しかし、いくらホシノといえど、これくらいで怒りを顕にするのはおかしい。いつもなら飲み込める筈だ。
「ごめんね……」
「……」
ただ、引き下がるわけにはいかない。大抵のことならアドリブで何とかなるが気付いたらホシノがカイザーにいるとかそういうのは流石に困るのだ。ホシノのことを知っておいて損はないだろう。
とは言え、これ以上ホシノにちょっかいを出すとシバかれてしまう、お茶みたいに。
……今のナシ。
とにかく、話しかけずにさり気なく観察しよう。
服装はいつも通り、姿勢もいつも通り、ストレスのせいか傷んでいる髪に赤い肌……。赤い肌?
ホシノは私に弱みなんて見せたくないだろうから『熱測っていい?』なんて聞いたらシバかれて終わりなので勝手に測ってシバかれよう。
体調を崩した上に働かせる訳にはいかない。
「ごめんねホシノちゃん」
「は?」
謝りを入れて、ホシノのおでこに手をあてる。やはり熱い。バレると私に文句を言われると思って隠していたのだろう。正解だ。
「やっぱりひどい熱だよ……」
「触らないでください!」
隠していたものが暴かれたからか元々赤かった顔を更に赤くしてベシッて手が振り払われた。
それが私にとってはかなりの力でバランスを崩してしまい、私が咄嗟に捕まったのが電気ケトルで――。
床に体が倒れて『痛てっ』と思うのに少し遅れて右足に熱湯が降り注いだ。
「~~!?~~~!!!」
熱いというより痛い。しかし、痛いとも少し違うような激感が私を襲った。
身体的な問題だと酷めの弾丸による怪我よりは大分マシなのだろうが慣れがあまりに足りず少しパニックになっているという自覚はあった。
私だって腐ってもキヴォトス人だからしばらくしたら治るだろうが、前世の常識が警鈴を鳴らすのだ。前世から引き継いだクオリアというものはなかなかどうして困ったものだ。
少しして相変わらず痛いが、少しは頭が回るようになってようやっと冷さなきゃと気付き、お風呂に向かった。
その間ホシノは固まったままだった。ホントに使えない。