小鳥遊ホシノの作り方   作:ベジがぐてー

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ホシノカツカツ

「寒い……」

 

 ビナー亡きアビドスに砂嵐はなく、チラホラと緑が見られる。だが、まだまだ砂漠と言えるバイオームの夜に、ホシノに誘拐された日に着ていた、露出度の高い制服では心もとない。

 

 吹き付ける風は右足を刺激してヒリヒリする。

 

 大量の通知は私をヒヤヒヤさせる。

 

 セクシーフォックスによる安否確認とお小言だ。私が無事なことくらい分かっているだろうに。

 

 ロック画面に映る文言でホシノに圧をかけていたのだろうか。お主も悪よのう。

 

 ホシノはそれを読んでいたのだろう。見るのが辛くて、見るのをやめたんじゃ負けたみたいだもんね。

 

 その結果、スマホは充電されていて私は脱走できました、と。

 

 さては策士だなセクシーフォックスめ。

 

 

 スマホで近況を調べながら歩くこと数時間。遂に校舎に辿り着いた。ホシノは十数分で登校していると思うと圧倒的身体差に泣きたくなる。

 

 とことこと見た目は大して変わっていない校舎を歩き、しばらくして今回の目的地、私の城に辿り着いた。

 

 しかし、ドアの隙間からは光が漏れている。犯罪者が中にいるようだ。

 

「クックックッ、ご無事でなによりです」

 

 すぐに逃げようとしたが、後ろから迫るくる変態。最早逃げ道はない。

 

 くっ、殺せ。

 

「たった今貞操の危機を迎えてるところ」

 

「おやおや、それは大変ですね。微力ながら応援させていただきます」

 

 こいつは今日も随分と機嫌が良さそうだ。私の機嫌はたった今墜落した。

 

「何しにきた?友達料でも払いに来たのか?」

 

「友人と認識して頂いているとは、大変光栄です」

 

 こいつは絶好調だ。手がつけられん。

 

「クックックッ、では本題に入りましょう。本日は此方をお渡ししようと思いまして」

 

 いつの間にか彼が持っていた袋を引ったくる。中を漁ると経口補水液や市販の風邪薬、冷えピタなどの看病グッズが詰まっていた。

 

 背筋にゾワゾワとした寒気が走る。

 

「……いや、流石にこれはドン引き。ホントに犯罪者じゃねーか」

 

 私がホシノが風邪を引いていることに気付いたのはホシノが家に帰ってから。もしかして家の中まで観測してんのかこいつは。

 

 身の毛がよだつ憶測に思わず両腕で胸を隠し後ずさった。

 

「いえ、私からのはこちらです」

 

 と少し焦ったように私に紙切れを差し出す。なんだ?白紙の小切手か?

 

 良く見てみると水族館のペアチケットだった。なんで?

 

「この間のささやかなお礼です」

 

 あぁなるほど。

 

「そちらの袋は此方においてありました。ベアトリーチェのいう予言の大天使とやらによるものでしょう」

 

 それをなんでお前が持ったんだよ……。まあいいや。

 

 まあこれだけが予定なら態々ここまで足を運ぶこともないはずだ。本題はなんだ?そう、視線で訴えかける。

 

「何故?何故あなたはあれほど暁のホルスに執着するのでしょうか。てっきり戦力として期待しているのかと思えばそれを利用しようともしない。それどころかあれ程解決に向かっていたアビドスをまた光明の見えない状態にまで戻した。何故?」

 

「私のアレテーってやつに気付いただけ」

 

 例えば、刀のアレテーは人を斬ること。

 

 例えば、名もなき神々の王女のアレテーは世界を滅ぼすこと。

 

 例えば、先生のアレテーは正しい『選択』をすること。

 

 そして、『梔子ユメ』のアレテーは、きっと私の大好きな『小鳥遊ホシノ』を完成させることだ。 

 

 不本意とは言えあれだけ無能だった『梔子ユメ』でさえやり遂げられたのだ。神に授けられたロールなのだろう。

 

 きっとそれは原作でもこの世界でも不変なのだ。

 

「あなた達がテクスチャって呼ぶそれと一緒だよ」

 

「なるほど……おや?」

 

 何かに気付いたかのようにまだ会話中だというのに何処かに消えていく黒服。

 

 そして、かつかつと響く、階段を昇る誰かの足音。

 

「こんなところにいたんですね。ユメ先輩」

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