目の前には柴さんのラーメンが2つ、その奥にはホシノ。
「いただきます」
「……ます」
そのホシノは私とお揃いは気恥ずかしいのか、両手を合わせずに小さく呟いた。
これくらいなら反抗期で可愛い妹のようなものかもしれない。
「おいしいね」
「そうですね」
美味い。ただ、何がどうなって美味いとかこんな工夫がされてるとか具体的なことは何も分からない。しかも正直市販のラーメンでも美味いし、ここで食べるのとクオリティーが全然違うようにも感じない。
幼い頃から良いものを喰ってきていたら感動の味だったのかもしれない。
けれど、素っ気ない返事をしながらも、目を輝かせているホシノを見るとそれも違うように感じる。生まれ持っての味蕾の数と質が違うのだ、きっと。
「……」
「……」
基本私は食べながら喋ることはしないしホシノだって用もないのに私に話しかけたりはしない。
その事自体は自然で特に気にすることもないのだが、偶に目が合っては気不味そうに逸らすホシノが違うのだ気に入らない。
そんな私たちの様子をチラチラと気にしている柴大将も気に入らない。
……ホシノとの同棲はかなり私には負担になっているのかもしれない。
表面にこそ出さないが直ぐにイライラしてくるし布団を被っても眠れない。疲れも取れない。そんな悪循環に陥っているようだ。
我ながらなんと情けないことか。
……リラックスできる時間が圧倒的に足りない。少し、ホシノから離れる時間を作るべきか……。
いや、『足りぬ足りぬは工夫が足りぬ』だ。
私のストレスを理由に妥協なんてできようか。
「……ご馳走様でした」
グダグダと考えている間にホシノは食べ終わったようで両手を合わせている。
私はまだ3割ほど残っているが、待たせても悪いのでさっさと食べてしまおう。
「どうするホシノちゃん?」
大将の店を出る頃には日は落ちていた。しかし、街は街灯や建物の照明で明るい。
流石アビドスの数少ない生きている街だ。
「どうするって何をですか?」
そりゃあこの後のデートプランだ。街の人に顔を見せる為って名目できたのにラーメン食って帰るんじゃ何やってるのか分からない。
「次何しようかなぁって?ご飯は私が決めちゃったから後はホシノちゃんに決めてほしいかな」
「それならアビドスの為になるようなことをしたいです」
0点。具体性がない。
そもそも、ホシノのいうアビドスの為って何なのか未だに分からない。
アビドスの人に幸せになって欲しいのか。それともアビドス自治区を無くしたくないだけなのか。はたまた学校を残したいのか……それ以外か。
「ん〜それじゃあ、署名活動でもしてみる?」
まあ、無難に
『〇〇したが××なようでは何をやっているか分からない』は将棋特有の言い回しですね。