何もする気が起きない。寝たのか寝てないのか自分でも分からないような状態でぼ〜っと天井を眺め続けて5分か30分、もしかすると1時間以上。
寝ないといけなかったのに日は昇ってしまった。にも関わらず焦りも湧いてこない。少し喉が渇いた気もするから水を飲みにいかなきゃいけないし、少し肌寒いからもう一枚きなきゃいけないのに寝返りを打つことすら煩わしい。
そして、やらなければならないことはあるのに脳は暇だと主張している。
あまりに暇で1-1/3+1/5-1/7+1/9-1/11+1/13-1/15+1/17……と何の生産性もない計算を繰り返すだけ。
どれだけやっても収束する気配を感じないこの計算にすら腹がたつ。
「あ〜ばにばに……」
………………。
…………。
……。
「何時まで寝てるんですかユメ先輩!」
ばぁん!と扉が開かれ、驚いて醒めた脳内に耳障りな声が響く。最悪の目覚めだ。
まあ、気絶してたのか寝てたのか分からないが。
「おはようホシノちゃん」
「おはようじゃないですよ何時だと思ってるんですか!?」
壁にかかっている時計を見ると短い針も長い針も真上を指している。tanが連続しなくなってしまう時間帯だ。
「ごめんね今起きるね!」
焦ったような声を出す口に伴って布団を跳ね飛ばしながら起き上がる。
それでも頭に靄がかかる不快感とも違うような気持ち悪い感触のせいか、鈍った脳に焦りという感情が湧いてくることはなかった。
そして立ち上がろうとすると……。
「あれ?」
「何やってるんですか!?」
次の瞬間には視界は天井とそれに繋がる壁で埋められていた。咄嗟に来るであろう痛みに備えるがそれがやってくることはなかった。
背中と腰に感じる圧力と匂い、そして耳元から聞こえる声から察するにホシノに受け止められたのだろう。
「寝ぼけちゃってたみたい。ごめんねホシノちゃん」
「全くもう、しっかりしてくださいよ」
「ひぃん。それじゃあ朝ごはん……ブランチ作ってくるね」
「もうお昼ですよ。潔く諦めてください」
私の痴態を見たからか、幾分か良いホシノの機嫌に反比例するかのように私の機嫌は低空飛行を始めた。
ホシノの軽口にこれ以上付き合う気にはなれず、ドアノブを捻ろうとしたが捻れない。
「ん?」
「どうしたんですか?」
「なんかドアが開かなくて……」
そう言うとホシノは私の言う事を確かめるために此方に向かって歩き、ドアノブを捻った。捻った?
「普通に開くじゃないですか」
それに反応しようとしたが、何故か膝の力が抜けて座り込んでしまう。
「あれー?」
「ちょっと先輩ほんとに大丈夫ですか?」
少し心配したような顔をして私の額に手を当てるホシノ。次の瞬間ペシッて音がして、それを聞いた瞬間に理解した。私がホシノの手を叩き払ったということを。
「あはは……えっと、ごめんね。何やってるんだろう」
少し傷ついたような顔をしたホシノに子供のような言い訳をすることしかできない。そのことに不満を感じていると急激に眠気がやってきた。
それに逆らうことができないまま私の意識の連続は時計の針のタンジェントのように途切れた。
なんか、送れた気がします。多分気の所為