「ごめんね〜」
「全くもう、しっかりしてくださいよ。倒れたときは何事かと思いましたがただの睡眠不足だなんて」
「あはは……」
あれから1日様子を見たものの、目立った異常はないとのことですんなり解放された私はホシノにおぶられ、アビドスを目指している。
ホシノだって馬鹿じゃない。いや、大馬鹿者ではあるが、頭は悪くない。明らかに様子のおかしかった私を見て、ただの睡眠不足でしたなんて結論で納得しているわけがないのだ。
でも、それを詰めるほどホシノは私に敵愾心を抱いてないし、聞けるほど親しくもない。
だからこれは上っ面だけのくだらないやりとりだ。
「ねえホシノちゃん」
「はい?」
「一緒に水族館にいこうよ。こないだチケットもらったんだけど使わないのも申し訳ないしさ!」
急な話題転換にホシノは驚きで訝しみを隠すような顔をした。下らないことは上手だよね。
ホシノといえば鯨。デートの舞台として水族館は安定感と、彼女の癖の両方を満たすことができる。
自然な会話の流れでホシノをデートに誘うことなど不可能なので、喋れる時に喋っておこう。何故か急にそう思った。
「最近ずっと学校……いや労働にかかりっきりだったからさ。たまには休みも必要かなって。ホシノちゃんは元気だから大丈夫だと思うけど、私はだめだったみたいだから。あはは、私も年かなぁ」
……反論がない。てっきり『それなら先輩だけで行ってください』とか『せっかくの休みなら遊びになんて行かずに寝てください』みたいな心無い言葉を繰り出してくるものと思っていたが、まさかの無反応。
「……それも、いいかもしれませんね」
今度はホシノを医者に見せなければ。頭がおかしくなってしまったようだ。
「…………」
上手く言葉を継げないまま、玄関までやってきてしまった。
ホシノは私を降ろして、振り向きもせずに自分の部屋へ帰ってゆく。いつものことだが、冷たくて少し寂しい。
私とて、もう無理に声をかけるようなことはしない。
私は私が知っている私の姿をした生徒みたいに明るい顔で明るいことを言える人間じゃない。結局、劣っていたんだ。人間としては彼女とは比べ物にならない程に私は優れている。
しかし、ホシノのパーツとしてはあまりにも劣っている。まあ、わかってはいたことだ。何故なら彼女が成功したと言う結果を私が知っているから。もしも彼女だったなら……って考えた時、成功するに決まっている彼女との差は歴然としている。
結局私は理想だけをみて、現実をみなかった。彼女は善意――知らなかったが私は悪意――現実を知っていたのだから、尚更たちが悪い。
そして、これからもそれを積み重ねていく。何故ならそれが私の物語だから。
なんとか生きてます。来週末頃からちゃんと復活するので、再来週末くらいから投稿再開します