頬の鋭い痛みで意識が戻る――数秒気絶していたようだ。
「本当に身体が弱いんですね。冷静になってみると、先日はなにかタネがあったのかと思ってたんですが」
仰向けに倒され、ホシノにマウントポジションをとられている。流石に発砲はしなかったものの、銃で殴り倒されたようだ。
大切なものが多いこの部屋で暴れ回られるよりはよほどマシか……。
「やめてよホシノちゃん、こんなことしても何も……ッ」
膝がめり込み右腕がギシギシと嫌な音をたてている。
「アビドスを出ていってください」
「嫌だよ」
身体が痛すぎて、口も回らない。胸が圧迫されて息苦しい。
「それなら出ていくまで……」
ダダダダーン……ダダダダーン……。
「……」
「……」
突然私の携帯から鳴り響く『運命』。緊張していた空気が一気に凍り付く。
数瞬固まったホシノは乱暴に私のポケットを漁り、携帯を取り出すが、そのタイミングで着信音が途切れる。
……。
「……どうしたらアビドスを出て行くんですか」
少し気まずい空気を振り払うように言う。
「出ていかないよ。まだ、出ていくわけにはいかない」
「……いつになったら出て行くつもりですか」
「今年中かな、遅くともキヴォトスが冬になるころにはいなくなるつもりだよ、だからそれまで待ってくれないかな?」
出任せだと思われるだろうけどそれでいい。梔子ユメならきっと嘘はつかない。
嘘がバレるバレないじゃない。完全に真似ることはできなくても、少しでもそうあろうとすることはきっと大切なのだ。
もっとも、私の知る小鳥遊ホシノに必要な梔子ユメになるにはあまりにも遅いのだろうけど。
「そんなの待てるわけないじゃないですか!そんな悠長なことしてたらアビドスは!」
「ホシノちゃんだってこんなことしたくないでしょ?」
「何を根拠にそんなこと言ってるんですか!?」
「ホシノちゃんは優しいから」
「はぁ?こんなことしてる人が優しいわけないじゃないですか」
『ホシノちゃん』が優しくないなんて認めない。
「アビドスのためなんでしょ?それなら仕方ないとは言わないけど優しくないとは言えないんじゃないかな」
「……うるさいですね」
……ぴょんぴょん。
痛みと息苦しさでかなり思考が鈍っているのかもしれない……。
「結局私にはこれしかないんです」
「それで?」
これ――暴力――しかない。キヴォトス人なんてみんなそんなもんだろう。それが今さらどうしたというのか。
「だから、貴方が頷くまでこうするしかないんです」
そう言って私に銃口を向けるホシノは泣きそうな顔をしていた。
やっぱり君はそういう顔が似合ってるよ。