CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午前10:40

 

午前10:40 中央パトロール本部庁舎 屋上へリポート

 

ジャスティとはやてやなのはやフェイト達の機動六課組は無事に中央本部庁舎に到着した

これからクラナガン捜査長官との面会に入る。すぐに捜査部に連れて行っても良いのだが

その前にいくつか確認事項をしなければならないからだ

 

「ラジェット。お前がお出迎えか」

 

捜査部1係のラジェット・ハングリーが彼らを出迎えるために来ていた

 

「ジャスティ。お疲れだな。あとはこちらで引き受けて対応しても良いがどうする?」

 

「そうだな。変わってくれるなら任せたいところだ。問題はないのか?」

 

本来なら任務全うするべきところだがジャスティもいろいろと疲れている

交代できるなら嫌な役回りから逃げ出したいと思うのは当たり前である

 

「この書類にサインをしてくれ。権限移譲の書類だ。これであとは通常業務に戻れる」

 

ラジェットに渡された書類にサインをするとジャスティはすぐにエレベーターに向かった

 

「捜査部1係の主任補佐官をしているラジェット・ハングリー捜査官だ。これから捜査長官との面会がある」

 

ラジェット達は1フロア下にある捜査長官執務室に向かった

はやてたちは突然の交代にどういうことなのか理解していないが、

ラジェットがいるのはある事を意味していた

捜査部でも事実上のナンバー2ともいわれているラジェットだ

彼がいるという事はシエルの代わりに来ているという事

今の彼には機動六課組の編成について口出しすることが認められていることを意味していた

捜査長官は次元世界連合に行っていたが既に戻っている。執務室で様々な事務書類を確認して処理していた

 

「機動六課組はしばらくは耐えることを覚えることだな。あまり良い視線を浴びることはないからな」

 

好感度はかなり最低にみられることははやてたちもわかっている

自らパンドラの箱を開けたようなものであることは今も十分なほどに理解している

だからこそ機動六課組は一時的かそれとも永遠になるかもしれないが時空管理局から切り離されたのだ。

今後の道は全くの予想もつかない展開になることは確実である

当分の間は冷たい視線を覚悟しなければならない

ラジェットは経験があるのでつらいことは百も承知だ

だがその視線を乗り越えて信頼を勝ち取ることができたら仲間として認められる

そしてさらに知識を増やすことによって犯罪捜査により貢献することができる

 

「ここがクラナガン捜査局のトップである捜査長官執務室だ」

 

捜査長官執務室のドアをノックするとどうぞと声が聞こえた

ラジェットが失礼しますというと室内に入った。その後ろから機動六課組のメンバーも入室した

室内にはユウ・ミズノ捜査長官とエテルナ・ジンガー捜査長官首席補佐官がいた

 

「ようこそ。クラナガン捜査局に」

 

ユウ・ミズノ捜査長官がそういうとはやてたちは敬礼をした

どちらが上官であるか、よく理解している

今の彼らには後ろ盾がないのだから、クラナガン捜査局に頼るしか道がない

もし時空管理局に残っていたらどんなことになっていたか

あまり良い想像はできないことは間違いない

 

「時空管理局機動六課のはやて・八神です」

 

「クラナガン捜査長官のユウ・ミズノです。これから皆さんは中央パトロール本部捜査部に配置されます」

 

厳しい立場や視線にさらされることを覚悟してくださいとはやてたちに伝えた

彼の言葉は正論である。しばらくは冷たい視線を覚悟しなければいけないのだから

それも飛び切り冷たい視線をだ。誰だって敵を中身に入れたいなんて考える人間は少数派だ

今回は特別に限定されている。それに事情がある事を理解しているから大声で批判はしないが認める者は少ない

 

「捜査部に配置される皆さんには教導捜査官が上司として担当することになっています」

 

しっかりと勉強することを頑張ってくださいというとラジェットに捜査部に案内するように伝えた

ラジェットは了解と返答するとともに敬礼をすると彼らを連れて退室していった

残されたユウ・ミズノはシエルに連絡を入れて今から捜査部に向かっていることを通達した

あとは捜査部の仕事だ。時間はかなりかかるだろう。信頼を獲得するまでは

一方のラジェット達は再びエレベーターに乗り込むと8階に向かった

8階全体が捜査部のオフィスエリアとなっている。

ここに入るためには専用の許可がなければ入ることができない

もし専用のIDを持っていない者が立ち入った場合は即座にアラートで知らせることになっている

そのために必要なのがIDカードだ。クラナガン捜査局の全局員はすべてIDカードを所持している

IDカード以外にも局員であることを示すバッジにも、同じ役割を果たすICチップが組み込まれている

この2つでどこまで立ち入ることができるかがすぐにわかるようになっている

ラジェットはエレベーターが8階に到着するととりあえずIDカードを受付でもらうことにした

今日の日中の受付を担当しているヘラルド・アクレイムは苦労しているなと言いながら、

写真と名前が書かれているIDカードをラジェットに手渡した

機動六課組全員分のIDカードがそこにある。そして受付にはもう1人珍しい人物が来ていた

中央本部検死ラボのリエ・ミズノ検死官だ。彼女はシャマル・八神を迎えに来ていた。

彼女は検死ラボに配属されることになっているからだ

シャマルは医務官として機動六課にいたので検死ラボで身元を預かることになっていた

 

「リエ検死官。シャマル・八神をよろしく頼む」

 

「ええ。任せて。シャマルさんですね。中央本部検死官のリエ・ミズノです。あなたの教導官役を担当します」

 

早速ラボに行きましょうというとシャマルだけを連れてラボ棟1階にある検死ラボに向かった

 

『ピーピーピー』

 

「ラジェットだ」

 

ラジェットの携帯電話に着信が入ってきた。発信者は聖王教会に向かっているステラからだった

彼は少しはやてたちと距離をとると通話を始めた

機密情報に関する通信であると危険であることを考慮に入れての対応だ

 

「何か問題が発生したか?」

 

『問題なんてものじゃないわ。港湾パトロールの無線を傍受していたんだけどSLBMの発射準備に入っているそうよ』

 

弾道ミサイルを搭載している潜水艦から発射されるミサイルのことをSLBMと言う

港湾パトロールが運用しているSLBMの最大射程距離は約5000kmとなっている

弾道ミサイルの発射命令を行うのはミッドチルダ連邦大統領であると定められている

 

「理由は?」

 

『教会を破壊するべきではないかという意見が出ているからとなっているけど、実際のところは不明よ』

 

「こちらでも確認してみる。情報をつかんだら速やかに提供する」

 

ちなみに港湾パトロールは弾道ミサイル搭載型潜水艦は6隻保有して運用している

弾道ミサイルについては保有数を次元世界連合に報告する義務がある

さらに保有できる数には国際条約で厳しく定められている

 

『私としても弾道ミサイル発射なんてことは避けたいから』

 

こっちまで巻き込まれたら最悪よと言うとステラは通話を切った

ラジェットはため息をついた。もし弾道ミサイル攻撃が行われたら大騒動だ

現実には簡単にそれが行われることはない。

次元世界連合安全保障理事会で唯一の常任理事国であるミッドチルダ連邦政府が、

外交政策に大きな影響が出るようなことを簡単にすることはできない

慎重な対応が求められることは事実なのだから

 

「はやて・八神。お前は俺が教導官役をする。早速だがある事について訓練を受けてもらう」

 

ラジェットはそういうとはやてを連れて中央パトロール本部南館の地下にある射撃訓練室に向かった

今は銃に1度触れさすことが重要であった。魔法デバイスと違って扱い方を誤れば人の命が失われる

正確な判断能力が求められる。それができなければクラナガン捜査局員になることはできない

ミスは許されない緊迫した仕事である

 

「銃の訓練ですか?」

 

リィンフォースツヴァイの言葉に当然だろとラジェットは回答した

何事も経験が重要である。銃の所持許可はすぐにとれるものではないが、訓練は必要である

まずは少しずつ銃の射撃になれることが極めて重要なのだから

 

「そうだ。お前たち魔導師は本物の拳銃を撃ったことがないだろう。まずは慣れるところから訓練することが好ましい」

 

「射撃訓練ですか?」

 

「そうだ。初めての発砲を味わなければわからないこともある」

 

命のやり取りをする感覚を少しでも味わうためには必要なことだとラジェットは話した

ラジェットとはやてとリィンフォースツヴァイは一緒に南棟に入る。

エレベーターで地下2階の射撃訓練室に向かった

 

「調子はどうだ?」

 

地下2階の射撃訓練室の受付担当の男性パトロール捜査官に話しかけた

 

「ラジェット・ハングリー捜査官。とんでもない重たい荷物を背負っていると噂になっていますよ」

 

さすがはクラナガン捜査局だ。噂話はすぐに広まる。それが面白い話ならなおさらである。

自分達には特別影響がないなら吹聴して回っている奴もいる

世の中そう単純なところもあるのもまた事実。逆に単純で片付かない時も存在している

 

「いつだって俺たちは貧乏くじを引く運命だ。悪いが銃を1丁借りたい。俺が持っているのと同じ物を」

 

「自分の彼女は貸したくないってことですか?」

 

「俺の相棒は他人に触れられるのが大嫌いな銃だからな。頼む」

 

了解ですというとS&W M39を奥の倉庫からとってきた。9mm弾の50発入りの箱も

その他に防音ヘッドフォンを3つ受け取った射撃訓練室ではこれがなければ耳が一時的に問題が出る

聴覚と嗅覚は捜査において重要になってくる。

ラジェットは2人を連れて射撃訓練室のブースの1つに入った

 

「防音ヘッドフォンは赤ランプが消えるまでは外すな」

 

壁に赤色のランプがある。

発砲して良い時と不可の時をしっかりと判断するために設置されている

ラジェットはヘッドフォンを着用。はやてとツヴァイの着用を確認すると自分の銃をホルスターから抜いた

そして人型ターゲット的に発砲。見事に8発全弾が頭部に命中した

 

「すごいです!」

 

「ほんまや」

 

ツヴァイとはやては驚いていたラジェットは赤ランプのスイッチを切るとヘッドフォンを外した

 

「これがクラナガン捜査局に正式に入局。部署への配属時に求められる射撃レベルだ」

 

ラジェットはマガジンを抜くと銃弾を装填して再び銃に戻した

今度は発砲することなくホルスターに戻した

次に借りてきたS&W M39のマガジンを抜くと9mm弾を装填して銃に装てんした

 

「よし、はやて。1発だけ撃ってみろ。反動がきついから気をつけろ」

 

誰だって自分の銃を他人に貸すことはしない

アサルトライフルなら話は別だが拳銃の場合は基本的には弾は貸しても銃は貸さない

変な癖がつくと嫌になるからだ。慣れた相棒が突然気分を変えたら元に戻すのに時間がかかる

恋愛と同じようなものなのだ。銃の扱いというのは

はやてを射撃ブースに立たせると後ろからラジェットが銃の持ち方などをサポートしながら体験させた

そして1発だけ発砲させたが的には命中するどころか斜め上の射角になってしまって天井に当たった

赤ランプを消して防音ヘッドフォンを外すと厳しく指摘を開始した

 

「もっと腕を鍛えるしかないな。そんな腕だと銃の扱いはできない。魔導師での経験は全くここでは役に立たない」

 

それをよく理解しておくことだというとはやてから銃を回収した

残りの7発はラジェットが訓練の目的で使用することにした

ここにいる全員が防音ヘッドフォンを着用するのを確認。赤ランプの点灯も確認すると発砲した

弾は全弾人型ターゲット的に命中した。それも頭部に

再び赤ランプが消灯するとマガジンを抜いて安全確認を行った

 

「これがプロの仕事だ。一瞬の判断ミスは許されることはない」

 

『ピーピーピー』

 

ラジェットの携帯電話に着信が入ってきた

 

「ラジェット・ハングリーだ」

 

『シエルよ。問題発生。ベルカ州東部地方から無線応答を行わない民間航空機を確認』

 

民間航空機はミーミルエアクラフト社製[ 機体モデル:ボーイング747-8 ]である

 

「今の現在位置は?」

 

『ベルカ州東部地方イーストベルカ市を起点に南東方向へ飛行中。戦闘機がスクランブル発進』

 

ラジェットは携帯情報端末を取り出すと対空レーダー情報を確認した

確かに通常の空路とは異なる空域を飛行しているのを確認した

ベルカエアライン14便。この航空会社は元は聖王教会関係企業だったが株式をすべて金融市場に売却

今は完全に民営化されているがまだ聖王教会関係者が数多く存在している

本来はベルカ州の東隣の州であるマリネット州に向かうはずだった

しかしこのままの針路を維持するとクラナガン市の空域に入る。これはこれで大きな問題になる

 

「攻撃指令は出ているのか?」

 

『まだよ。港湾本部も慎重な判断をしているみたいね。まずは戦闘機を派遣して対応を見るはずよ』

 

「まさか航空機を使った自爆テロという疑いがあるのか?」

 

『それについてはまだわからないわ。今港湾パトロール安全保障局が乗客名簿を調べている』

 

結果待ちの段階だから何とも言えないけど

 

「ブラックリストに登録されている人物はいないのか?」

 

『それは確認済みよ』

 

そもそも犯罪組織対策法のブラックリストに登録されている組織と関係者は、

民間航空会社の航空機に乗り込むことは連邦法で禁止されている

すべては究極の安全確保のためである。

最近は不名誉除隊した退役時空管理局員の登録数がかなり増加している

今後も増加傾向にある事は間違いない

 

「無線機の故障という線はどうなんだ?」

 

『衛星電話で呼びかけても応答なしよ。ただの居眠りとは状況が異なるわ』

 

無線にも衛星電話での通信にも応答がない

誰がどう見たって異常事態であることがわかる事案である

このままの針路すればまだ海上に抜けるが、針路が変わりクラナガン市中心部に向かうようなら大ごとだ

 

「このままの針路だと海の上に行くコースだな。直線コースをとるなら。だが」

 

『港湾本部もそれを懸念して戦闘機を出したはずよ。もし人口密集地に墜落コースをとるなら撃墜も』

 

「いやな風向きだな。それで俺にどうしてほしい?」

 

『あなたは私の部下よ。そして最も信頼できる側近。あなたにもこの情報を把握しておいてもらいたいだけよ』

 

私に何かあった時のためにというとシエルは通話を切った

 

「やばい状況にならなければいいがな」

 

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西区中央区域ウエストセントラルサウス1番街1丁目 ミーミルエネルギー本社 最高執行責任者執務室

 

ミーミルエネルギー社は多くの石油や石炭だけでなく様々な鉱物資源を取り扱っている

その他に農作物の生産なども行っている資源開発会社だ

業界1位の企業であるが、証券取引所には上場していない非上場企業である

ただし決算書類などは上場企業と同じように公表している

企業内の透明さを保っていることから有名である

 

『ベルカ州商品取引所ではベルカ州原油先物価格が1バレル7000ミッド台まで上昇』

 

『一方でベルカ州証券取引所では多くの銘柄が売りに出されています』

 

『ベルカ州内で魔力爆弾が爆発した影響で電力やエネルギー資源開発企業の株価は大きく値下がり』

 

安定供給に影響がでることになれば州内の経済活動に大きな影響がでる

それを避けるためにも今は法執行機関が安全対策をしてくれないと多くの企業は困る

 

「本当にトラブルばかりね」

 

セリーナ・ヘイリガはため息をつきながら報道番組を見ていた

ミーミルエネルギー社はベルカ州内でかなり資源開発を行っている

それだけに本格的な影響がでることになれば大きな問題になる

 

『クラナガン原油価格もベルカ州産原油価格と連動する形で上昇しています』

 

『備蓄原油の放出である程度の範囲内での動きしかしていませんが。どうなるかは全く予測が難しいです』

 

ミーミルエネルギーはベルカ州内で様々な鉱物資源の採掘や農作物の生産を行っている

ベルカ州で生産された農作物は近隣州に輸送されて多くの人々の食事を支えている

もし農作物の輸送が遅れると農作物の価格に影響がでる

 

「とにかく冷静な判断をしないといけないわね」

 

ミーミルエネルギー社は3大資源開発会社の1つである

残りの2社はサーストンペトロリアムとドッジエネルギー

この3つの企業が毎日競争にさらされている。

 

「クラナガン市内に原油と天然ガスの安定供給を最優先にしないと」

 

セリーナにとって大切なのは安定である。

世界が安定していれば経済に大きな動きはない。

だが景気が良いところだけでは済まない。次元世界国によっては大不況になっている国もある

好景気と不景気。どちらも交代でぐるぐる回っているのだ

 

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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

 

「ギブリ。ベルカエアラインの状況は?」

 

シエルは正面モニターに対空レーダー情報を映し出して状況確認をしていた

F/A-18Eが2機警戒のためにスクランブル発進している

もしも何か不穏な動きを見せたら撃墜するつもりである

 

「今も危険な状況だ。港湾本部は最悪の場合は対空ミサイルで撃墜を考えている」

 

「それは嫌な話ね。民間機を撃墜となると後始末が大変。マスコミ対応を含めてね。連邦政府はどうなの?」

 

もし対空ミサイルで民間機を撃墜したらどうしてそういう判断になったかを回答しなければならない

それは様々な大統領の政策に影響がでることは間違いない

国内の政策だけでなく外交政策にも影響がでる。撃墜はあくまでも最後の手段である

 

「国防省が対応中だ。国土安全保障省も連携している。各省の報道官も記者会見を行っている」

 

「さすがは素早い対応ね。首都を狙った自爆攻撃なら手段は選んでいられない」

 

「大統領もこれから記者会見を行う予定らしい。ようやくことが大きく動く時が来たことは間違いない」

 

「ギブリ。私は執務室に戻るけど状況に何か変化があればすぐに内線で呼んで」

 

了解とギブリが言うとシエルは首席捜査官執務室に戻っていった

シエルがオペレーションルームから出るとラジェットが慌てて戻ってきた

はやてとリィンフォースツヴァイと一緒に

 

「シエル。状況監視は俺で行おうか?一緒に入ってもいいならだが」

 

本来であればオペレーションルームにはやてたちを入れるのは少し問題がある

機密情報を取り扱うことが多いからだ。しかし今は緊急事態なのだから仕方がない時も存在する

 

「かまわないわ。今は国家機密事項は扱っていないし」

 

その言葉を聞くとラジェットははやてたちと一緒にオペレーションルームに入った

 

「ギブリ。機体に積載されている航空貨物の積み荷確認を行ってくれ」

 

「すぐにやる」

 

はやてが貨物の積み荷で何かわかるのですかと聞いてきた

 

「航空貨物はすべてはセキュリティチェックを受けている。危険物を積載させないためだ」

 

だがごくまれに反政府組織などのテロリストなどは直接貨物を積載させる

貨物に爆発物を設置すればセキュリティチェックを通過することができる

もちろんかなりの手間と労力が必要になる。空港関係者に協力者を作ることも必要になるからだ

だからこそ法執行機関のセキュリティチェックを超えるのは簡単のことではない

 

「怪しいものは確認されていない。他にどうする?」

 

ギブリの回答に何かヒントを見つけないと危険だなと考えていた

 

「現在の燃料残量から計算してどれくらいの飛行が可能だ?」

 

「最大で5000kmってところだな」

 

「針路上で安全保障において最も危険とされる魔力精製炉発電所はあるか?」

 

魔力精製炉発電所にもし突っ込む気があった場合、

事前にAMF装置を作動させて魔力爆発を防ぐことが必要である

そうなる前に事を終わらせなければ危険である

 

「直線飛行した場合は通過することはない。だが港湾本部は警戒している」

 

ギブリの報告にラジェットはため息をついた

最悪の場合、魔力精製炉発電所に針路を向けた場合は戦闘機から対空ミサイルが発射される

影響が拡大する前に対応することは仕方がないことも存在する

 

「警戒態勢の配備を。それとパトロール部には万が一に備えるように通達を出せ」

 

「わかった」

 

「港湾パトロール飛行隊の無線をこちらに流してくれ」

 

そんなことをしても良いのかとギブリははやて達の方に視線を向けた

確かに軍事機密に関係する無線をはやてたちに聞かせるのはかなり危険である

だがラジェットは責任は俺がとるというと傍受を開始した

 

『グラリス1から港湾本部。ベルカエアライン14便は現在直線状に飛行している』

 

無線には一切応答してくる気配はないとのことだ

これはこれでかなり危険な状況であることは間違いない

港湾本部は当然最悪のシナリオを想定して動くことになる

首都と近隣州を守るためには選択肢はかなり限定されてくる

問題を解決する手段が危険な方法しかないというならその道を選ぶしかないのだから

 

「衛星電話につなげてくれ。俺が対応する」

 

「良いのか?港湾パトロールから苦情が来るぞ」

 

苦情とは管轄権について文句を言ってくるという意味だ

確かに今の状況では港湾パトロールの管轄になる。しかし事件性があるなら連携捜査も必要になる

言い訳ぐらいいくらでも可能である

貸しのある友人も多いのだから返済をしてもらうちょうど良いタイミングである

 

「航空交通管制システムから何か情報が得られないかわかるか?」

 

ラジェットはギブスに裏口からノックするように指示した

裏口とは緊急時に不正アクセスを止めるための停止コードを送るためのアクセス口だ

簡単には見つからないようにシステム設計されている。航空管制官ですらそんな物がある事は知らない

知っているのは限られた人間だけである

 

「やばいことになるぞ」

 

「いつものことだ。気にするな。さっさとノックしてくれ」

 

了解というとギブリは裏口からアクセスした

クラナガン市と近隣州の航空管制を担当するクラナガン航空管制センターでも混乱が生じているようだ

今はベルカ州内の民間航空機の飛行は一切禁止している

ベルカエアライン14便はその制限の前に離陸したので問題はなかった

初めのうちは。しかし、ベルカ州で魔力爆弾が爆発したタイミングとほぼ同じで交信が途絶えた

何か隠し事があると言っているようなものである

 

「本当に厄介なトラブルだな。通信が途切れたのが魔力爆弾が爆発してからか」

 

そこでラジェットは空間モニタを表示すると乗客リストを再度チェックした

するとある人物の名前があった。その人物とは知り合いであったことから通信を入れてみることにした

その人物は港湾パトロール飛行隊で機体整備の教導官をしている

ラジェットとは親しい関係である。何度かチームを組んだことがあるので

 

『ラジェット。久しぶりだな。どうなっているんだ?この飛行機は異常だぞ』

 

通信がつながったことは良い事だが。トラブルは面倒な話である

ラジェットはまず何が起きているのか状況把握から始めた

 

「何が起きている?」

 

『機長と副操縦士の死亡が確認された。おまけに無線機などの航空無線機は壊れている』

 

「衛星電話もか?」

 

『通信設備はすべてダウンしている。機体の自動操縦は解除されているから苦労している』

 

「操縦しているのか?大丈夫か?」

 

『自動操縦が機能していないから苦労しているが輸送機の運用訓練を受けているからある程度は大丈夫だ』

 

リスクがありそうなら即座に報告しろとラジェットは指示した

援護をしてくれる人物がいると助かるというと通信を終えた

 

「これで何とかなればいいが」

 

港湾本部に連絡するように指示を出せとラジェットはギブリに伝えた

無線交信のシステムがすべてダウンしたと

問題は今後の展開だ。他にも危険なことがあるかもしれない

もしかしたら航空機に爆弾が設置されている可能性は完全に否定されたわけではない

怪しい荷物がないというだけは事実だが、爆弾までないかどうかについてはわからない

 

「あとは港湾パトロールに任せるしかないな。こちらからできることは少ない」

 

『港湾本部から中央本部捜査部オペレーションへ。こちらでもコンタクトを確認。今後はこちらで対応する』

 

「了解した。あとは任せる。通信終わり」

 

そういうとラジェットははやてたちを連れてオペレーションルームを出て行った。

捜査キッドを持つとパトロールに向かった

 

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南区北部ハーディー地区6番街2丁目1番地 ハーディーバンク本店 会議室

 

フィリーはハーディーバンクの顧問弁護士と協議をしていた

貸金庫に貴重品を預けていた人物のリストを提出してほしいと

しかしそれは金融機関にとっては大きなダメージになる。簡単に認めるわけにはいかなかった

 

「大変申し訳ないのですが。貸金庫の中身については機密事項ですので」

 

顧客の情報を簡単に開示すること顧客との信頼関係を損ねることになる

もちろん裁判所の判事に情報開示令状を請求すれば問題ないが

今は協力を求めることで対応したい。顧客の財産を取り返すには何が盗まれたのか

それを確認する必要があるのだ。だが経営者たちの頭は固い。だから簡単に承認をするはずがない

 

「顧客の財産を回収できなければそちらの経営に大きな影響がでるのでは?」

 

「それは確かに」

 

確かに顧客から預かった財産を奪われたことを知ればハーディーバンクの信頼は落ちる

そうならないためにも何を奪われたのかを回収することが求められる

証拠としてお借りするのではなくあなた方の目の前で確認をさせてくださいと提案した

表向き、証拠として提出していないとすれば銀行も情報開示をしていないことを証明できる

顧客との信頼関係を保つことができるのだ

 

「閲覧したことは本当に記録に載せないことを約束してくれるのですね」

 

「必要したらこの場で閲覧します。顧問弁護士のあなたがいる前なら安心でしょう。カメラもなしで」

 

フィリーの提案に妥協が必要だと判断。了承した

そして記録が開示された。貸金庫を借りていた人物の中にとんでもない大物が存在した

時空間置局地上本部の中将をしていたレジアス・ゲイツ中将である

 

「この人物が何を預けていたかを開示できますか?本人はすでに死亡。相続人は裁判を待つみ」

 

令状請求をすれば露見するだけだと。フィリーはある意味、脅迫をしていた

預かり帳簿のリストを見せてくれた。そこにはメモリカードがあったことを示す記載があった

内容は簡単に想像できる。時空管理局内の不正に関する事だろう

それをネタに改革をしようとしたのかもしれない。本人がすでに死亡しているのでわからないが

改革がすべてよかったと思う者はいないだろう。だからこそ今回の強盗騒ぎを起こした可能性はある

 

「わかりました」

 

感謝しますというと会議室を退室した

フィリーは携帯電話を取り出すとすぐにシエルに報告した

 

「シエル首席、まだJS事件は終わっていないようです。今回の銀行強盗もその一環かと」

 

『それは危険ね。最優先で捜査を』

 

了解というと通話を終えた

問題は今回持ち出されたとされるメモリカードだ

そこにどんな情報が保存されていたかが重要なキーワードになる

 

「メモリカードにどんな秘密が隠されていたのか知りたいわね。それを調べるためにも追跡するしかないわね」

 

時空管理局の闇情報が記録されていたなら、その情報をもとに捜査が行われるべきである

ここは時空管理局犯罪捜査局との連携捜査が必要になるかもしれない

しかし情報が何かわからない以上まだ憶測の範囲でしかない

できるだけ素早く対応するためにはメモリカードを回収することが求められる

 

--------------------------(ページ)

 

東区東部サウスクラナガン港 港湾パトロールサウスクラナガン分署 取調室

 

シエナは再度、麻薬の密輸に関与したカイル・テーグに尋問をしていた

 

「あのコカインをどこに運ぶつもりだったの?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「黙秘権はあなたが好きに行使してもいいけど、組織は口封じに刑務所まで死神を送りこんでくる」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

完全黙秘のようだ。証言してもしないでも運命はそれほど変わらない

そのことをわかっているのだろう。証言をして保護されていてもどこかで殺されるかもしれない

証言をしないで刑務所に放り込まれても殺し屋が送られてくる

どっちにしても運命は変わらないことは間違いない

 

「最高で何十年も刑務所暮らしよ。それでも良いの?協力したほうが身のためだけど放棄するの?」

 

証人保護プログラムを受ければどこかの安全な場所で保護される

刑務所暮らしをするよりも安全に暮らせるはずなのだが、それでも拒否するという事は覚悟があるのだろう

ここまでやって折れないなら仕方がない。市内にある拘置所に連行することを指示した

 

「あとは任せても良いかしら?」

 

シエナが港湾パトロール部の刑事に相談をすると問題はありませんと回答した

港で起きた事案だ。現場のことを知らない人間がかき乱すよりも専門の職員に任せた方が安全だ

彼女は中央本部に戻ることにした

 

--------------------------

 

西区中央部 中央パトロール西分署 3階分署地域情報センター

 

レックスは交通事故で死亡したホレイス・カーズレスの金融情報などを再度チェックしていた

少しでも不審な情報がないか徹底的に調べていたのだが、それらしい情報はなかった

ただしかなりのギャンブル好きで金に困っていたことは間違いない

だからこそ自殺のために筋弛緩剤を盗んだのかもしれない

楽に死ねるように。その前に交通事故で死亡してしまったが

 

「今回はこれで決着になりそうだな」

 

レックスはあとで報告書を作成してすべての事件捜査を終了することにした

 

「パトロールに戻るか」

 

--------------------------(ページ)

 

南区中央部 クラナガンハイウェイ6号線(南線) 北行き

 

エバックは中央本部に戻ろうとしていた

エリバート・クインスを追跡するために顔認証システムで照合をかけているので結果待ちだ。

 

「それにしても厄介な事件だな。暗い過去のある人物の捜査となると」

 

この案件はすでに捜査部の手から離れようとしていた

長期逃走犯追跡課が捜査を引き継ぐことで手続きはしている

だからこそエバックも中央本部に戻ることにした

少しでも別の証拠がでればいつでも捜査を再開するつもりでいるが

 

「本当の嫌な案件だな」

 

--------------------------

 

 

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