CSI:クラナガン   作:アイバユウ

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新暦76年4月1日午前10:55

 

午前10:55 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム

 

ラジェットはパトロールに行く予定であったが捜査部に戻っていた

そして捜査部オペレーションルームでアルシオーネからの報告を受けていた

 

「かなり危険な状況になることは間違いないな。だが今さら手を引くわけにはいかない」

 

『そんなことは私でもわかっているわ。でも無関係の人々を狙ったテロを起こされた大迷惑になる』

 

「俺たちを狙ってくるかもしれないな。教導官担当捜査官には俺の方から警戒情報を出す」

 

『助かるわ。それとあなたの上司にもよろしく伝えておいて』

 

了解したとラジェットは返答するとアルシオーネとの通信は終了した

 

「シエルならとっくに知っているはずだ」

 

そう独り言のようにつぶやくとすぐにシエルが入ってきた

 

「状況は機動六課組の受け入れを拒否しなければ爆弾を爆発させるってことね」

 

「そういう事らしい。これはかなり面倒なことになるぞ。教導官には今からEAM(緊急行動指令)を出すが」

 

緊急行動指令とは極めて危険な状況になっていることを示す言葉だ

これを受信した人物や組織は速やかに状況把握を行えという証でもある

命がけで任務遂行にあたっているのだから当然ではあるが

 

「EAMを出して警戒させておいて。強襲の可能性もある事も追加で通達」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「それと悪いんだけど、しばらく首席捜査官代理を頼めるかしら?カーターと話をしてくるわ」

 

カーターとは査察部の長であるカーター・ブレイン首席査察官である

査察部に属する者について、経歴は第1級機密事項に該当する。

そのため知ることができる者はかなり限定されている

 

「何か相談でもしてくるのか?」

 

「盗聴防止のために直接話をするだけよ」

 

何処で情報が洩れるかわからないからと。

ラジェットは警戒心がかなりある事は間違いないと思いながらも口には出さなかった

ただ、今後の捜査部の方針を考えた時に査察部と連携することも多くなるだろう

ある程度の情報共有は当然必要になる。

それにシエルの過去の経歴は査察部の局員と同じで機密扱いだ

秘密というのは幹部になればなるほど多くなるもの

シエルがオペレーションルームを出ていくのを確認するとラジェットは本当の苦労人はシエルだなと感じた

 

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南区北部ハーディー地区6番街2丁目1番地 ハーディーバンク本店 貸し金庫室

 

フィリーは盗まれた貸金庫のボックス周辺の指紋をすべて採取して照合作業をしていた

犯歴者と一致すれば事件の解決につながる大きな一歩になるのだが難しいだろう

貸し金庫室は多くの人が利用する。簡単に身元が割れるとは思えない

だからこそ希望的観測でしかない。それに間もなくフィリーのもとにとんでもないお荷物が到着する

 

「アクシオム捜査官。お届け物です」

 

なのはを連れてきたパトロール捜査官はまるでクリスマスプレゼントを持ってきたかのような口調で言うが

フィリーとしてはとんでもないトラブルの種を送り付けてきたと感じていた

問題が山積している人物を部下に持つなど苦労することをよく知っているからだ

 

「引き継ぎの書類を貸して」

 

貸し金庫室にパトロール捜査官がなのは・高町を連れてやってきた

フィリーは身柄引継ぎ書類にサインをするとなのはに自己紹介をした

 

「あなたの教導官役を担当するフィリー・アクシオムよ。言っておくけど私は厳しいから覚悟しなさい」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

少し脅迫するようにフィリーは強い口調で言ったがなのはは何とか返答した

まずは初めてのテストは合格である。

脅迫されたぐらいでビクついていたら仕事などできるはずがない

こちらは命を懸けて人々のために任務遂行をしているのだから

 

「なのは。あなたはそこでまずは私の仕事を観察すること。今は忙しいから」

 

時間ができたらじっくりと教導はするけど、今は事件捜査が忙しいからと

確かに今は貸金庫のボックスを盗んだ人物の割り出しが最優先である

 

「大変ですね」

 

「これくらいはいつものことよ。銀行に迷惑をかけるわけにはいかないから」

 

採取した指紋を照合しているとある人物の指紋がヒットした。名前はベレス・モーラス。

退役時空管理局員でありある不正に関与したとして時空管理局捜査局の捜査対象になっている

不正とは時空管理局に物資を納入している業者からわいろを受け取っていたのだ

わかっているだけでも20億ミッドものお金を受け取っていた

時空管理局犯罪捜査局は指名手配をかけている。さらに懸賞金までかけて追いかけまわしている

生きたまま引き渡せば1000万ミッドもの懸賞金を受け取ることができる

死体では何ももらえないが、多くの賞金稼ぎが身柄を追跡をしている

 

「こいつが主犯かもしれないわね」

 

メモリカードには不正を証明する情報が記録されていたのかもしれない

既に破壊されていることは確率的に言ってかなり高いが生きた証人を確保すれば話は大きく変わる

何が何でも生け捕りにしなければならない。真実を明らかにするためにも

 

「時空管理局の暗い過去を調べるとしましょう。なのは。あなたにも手伝ってもらうわよ」

 

なのははまだ時空管理局内に友人はいる。まともなが付くが

犯罪や不正行為に関与した友人はすでに時空管理局犯罪捜査局に拘束されている

もしくは逃亡生活をしている者もいる。裏口を見せたりノックするには良い機会だ

時空管理局の腐敗をさっそく見せることも勉強になる

 

「腐敗した組織の過去を探るなんて、面白くなってきたわね」

 

フィリーは不気味な笑みを浮かべていた

これからの状況の展開を楽しんでいるかのように感じられたからである

 

「なのは。友人に連絡して情報を入手するのよ。時空管理局内の派閥関係の情報をね」

 

「派閥ですか?」

 

時空管理局内にはかつては穏健派と強硬派が存在した。今はどちらの派閥も機能停止の状況にある。

本局では穏健派が多い。一方で地上本部側では強硬派が多かった。

時空管理局の改革が行われるまでは対立はかなり激しい関係であった

今は組織内の人間は大きく変わった

 

「あなたたち機動六課組は穏健派だったらしいわね。死亡したレジアス・ゲイツ中将は強硬派」

 

そのあたりの情報を入念に調べ上げるように指示を出した

口で言うのは簡単だが実際に調べるのはかなり苦労する

それに機動六課組は今の聖王教会の教皇をしているカリム・グラシアとの関係もある

注意をしながらも情報収集を行ってもらう方が効率的である

 

「なのはは時空管理局内にいる友人に確認作業を。私は時空管理局犯罪捜査局の友人に当たるわ」

 

いきなり責任重大の任務になのはは戸惑っていた

しかしこんなことで混乱しているようであれば大きな問題である

昔の旧友を利用してでも捜査に必要な情報を入手することは珍しいことではない

フィリーも同じことをしてきた経験がある。今は情報収集を継続的に行うことが求められる

 

「利用できるものはどんなものでも利用する。ただしこちらの情報と動きに関しては秘密にすること」

 

難しい注文であるがこれぐらいのことができなければ任務遂行はできるはずがない

捜査部捜査官はいつも無茶な課題でもクリアしなければならないのだから

それが任務である

 

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クラナガン自然保護区 中央部 クラナガン自然保護分署ラボ棟 2階マルチメディアラボ

 

エルガは観測装置に記録されているわずかな音を分析していた

自然保護区内は極めて静かだ。都会とは違って静寂が存在する

だからこそ、最後の望みに賭けるしかなかった

音から何か証拠になりそうな物を得ようと考えていたのだから

街のど真ん中と違って静寂な状況が作り出されている。音を詳細に分析すれば可能性はある

勿論何も得ることができない可能性も高いが何もしないより良い方である

 

「どんな情報が得られるか。あまり期待できないな」

 

エルガは抜け道が内容に分析をしたがほとんど情報を得られるものはなかった

ただし1つ分かったことがあった。発砲音は正確にはオートマチック銃の銃声と酷似していた

 

「絞り込むのはかなり難しいな」

 

『ワンワールドグループ企業が保有していたすべての金融商品の売却が完了したと公表しました』

 

『証券取引委員会は破産処理の資金確保が売却でできた事から破産処理に使うと』

 

ヴィータは暇そうにしていた。エルガも今は分析作業に忙しいのだ

教導官役としての仕事があるのがわかっているが、今は事件捜査を最優先にしなければならない

 

「ヴィータ。暇ならこれでも読んでいろ」

 

エルガはヴィータに捜査についての手法などが書かれている教本を渡した

現場確保や現場鑑識などについて詳しく書かれていた

これをすべて暗記して試験に合格しなければパトロール捜査官にはなれない

さらに銃の取り扱い資格も合格しなければクラナガン捜査局には入局できない

これが課題なのだから仕方がない。仕事のやり方を覚えることが第1目標なのだから

 

「ほかに証拠があればいいんだが」

 

「捜査はかなり大変なんだな」

 

ヴィータの言葉に当然だろとエルガは答えた

 

「俺たちの仕事ではミスは許されない。1つの証拠を失うだけで事件は未解決のままになるからな」

 

証拠1つの取り扱い方次第で状況が大きく変わってくる

だからこそ慎重な捜査と確実に証拠に基づいた捜査が求められる

 

「ヴィータは犯罪捜査の経験はどれくらいある?」

 

「犯罪捜査よりも戦闘の方が多いが」

 

確かにヴィータは戦闘部門の担当にいた。犯罪捜査の手法はあまり知らないと言えることである

今さらどうにもできないことである。ここで最低でも1年間は過ごすことになる

 

「教本を暗記するくらいの力量が求められるからしっかりと読んでおけよ」

 

教本はあくまでも知識を学ぶためである

実際に合格するには各種分析装置の扱い方ができなければいけない

今は中央パトロール本部や各分署にもラボ棟が設置されて専門分析官が配置されている

クラナガン捜査局の前身であるクラナガン捜査部の頃は分析官の人数はかなり限られていた。

予算も少なかったため捜査官が自ら分析をすることも日常的

しかしクラナガン捜査局になってからは状況は大きく変わった。

各分野の専門分析官が配置されているので捜査官が分析することはかなり減った

ヴィータはそこまで覚えないといけないのかと質問してきた

 

「お前が今やっていることで昔は俺たちも苦労してきたからな」

 

当然のことだろと返答した

 

「銃を2丁も持っていて本当に命がけの仕事なんだな」

 

「当然だろ。AMF装置が組み込まれた銃弾を使っているだ。魔導師の防護魔法は効果なしだ」

 

防弾チョッキを使ったとしても完全に守れるわけではないので、まさに命がけの仕事である

命を賭けてでも真実を明らかにするために捜査を行う。それが捜査部捜査官である

 

「真相を明らかにすることにすれば、何か別の事件解決につながるかもしれない」

 

ヴィータは最大で同時進行に担当した事件捜査は何件あるのかと聞いてきた

エルガは10件ほどの事件捜査を担当したことがあると回答した

同時に複数の事件を抱える事なんて当たり前である

時にはクラナガン市外の事件も担当することもある。連係プレーで捜査を進めている

 

「ヴィータ。俺達には記憶力がよくないと職務遂行は難しいからな」

 

『ピッ』

 

「ヒットしたか」

 

銃声の音をあらゆるデータベースを利用して解析した結果、ある銃の銃声と一致した

SIG SAUER P220の銃声とかなり酷似していた。

100%一致するのかと言われるとかなり微妙であるが

それでも手がかりとしては大きな証拠である。

あとは遺体から確保された銃弾の線条痕を照合だ

それですべてがはっきりするかもしれない。もし被害者が撃たれた銃に前歴があれば

どこか別の事件で使用されていたら捜査は大きく進むかもしれない

 

『ピーピーピー』

 

エルガの携帯電話に着信が入ってきた

 

「エルガ・ジャーニーだ」

 

『被害者の体内から摘出された銃弾ですが、前歴ありです。1週間前に退役時空管理局員の殺しに』

 

エルガの携帯情報端末に事件に関する詳細な情報が送られてきた

殺されたのはオブレ・クレース退役時空管理局員。34歳の男性。

大量リストラでリストラされた1人だ

 

「暗い過去があるのか?」

 

エルガの質問にワンワールドバンクから10億ミッドも借り入れを受けていたことが分かった

しかし破産申請をしてすべての財産を失った。借り入れの目的は金融商品の取引である

特に株や債券などの投資に使われていた。

しかしJS事件後はワンワールドグループ企業や関連企業の株や債券価格は暴落

何とか資金を確保しようとしたが手遅れであった

 

「10億ミッドも失って身動きが取れなくなったわけか」

 

『はい。さらに調べたところ、証券取引委員会が捜査を行っています』

 

「SECが?何の容疑でだ?」

 

『そこから先は我々ではアクセスすることができないので、あとはお任せします』

 

つまり機密事項に該当する案件であると意味している

捜査というのはほとんどが機密事項に該当しているものであるが

証券取引委員会が動いているという事はインサイダー取引関係の可能性が高い

 

「わかった。情報提供に感謝する。あとはこちらで何とか片付けてみる」

 

そういうとエルガは通話を終えた

それにしても連邦捜査機関が動いているとは驚きの案件だ

何が裏で隠れているか捜査を進めればわかるだろうが、とんでもない方向に向かうこともあり得る

 

「いろいろな部署と連携して捜査をするのか?」

 

「当然だろ。俺たちだけ。つまり単独捜査は難しい。連携して捜査をしなければ事件解決は簡単にはいかない」

 

エルガはそんなことを話しながらもデータを確認しているとある臨時ニュースが入ってきた

 

『連邦準備銀行は最大で8000兆ミッドの資金を流し、金融市場の安定化を図るとのことです』

 

今の国際金融市場はどこも疑心暗鬼の状態だ。

ワンワールドグループが発行した様々な金融商品が焦げ付いている

詰まり価値がなくなっているのも同然の状況だけに、資金繰りにかなり苦労している

次元世界連合全加盟国政府も国内の金融市場の安定化に必死だが、対応にはかなりの苦労がある

問題はどの金融機関にどれくらいの負債があるかがはっきりしないことだ

その影響で金融市場は不安定な状況になっている

 

「人間というのは金がなくなったらどんな手段を使ってでも回収するからな」

 

まともな金融機関なら自己破産をすればいいが、犯罪組織から金を借りていたら組織は手段を択ばない

合法ではない方法でも実行して返済用の資金を用意しろと攻めてくるだろう

 

「これからが大変だな。一気に事件が2件を抱えることになりそうだ」

 

前歴の殺人の捜査担当者はラジェットになっていた

まずは事件報告書を読むことから始めなければいけない

どのような形で事件が発生して捜査はどこまで進んでいるかなど

詳細な情報が求められるのは当然である。

ラジェットが担当している事件の情報を見ると東区東部フルヴァンナ地区で遺体が発見されていた

遺体の体内から銃弾が見つかったが、さらに遺体はドラム缶に押し込められていた

産業廃棄物の処理を行っている業者からの通報で事件が発覚したのである

業者がドラム缶からかなりひどい腐敗臭がすることから蓋を開けてみたところ遺体を発見した

かなり腐敗が進んでいたが身元はDNA鑑定で割り出された

エルガが今捜査しているレナース・ヴェロックもかなりの負債を抱えていた。

このようなことは珍しい事ではない。

時空管理局と関係があった多くの人物や組織はどこもかなりの負債を抱えている

破産申請もかなりの件数になっている。どこまで増えるかは全く予測ができない

 

「時空管理局の暗闇を調べるしかないか」

 

暗闇を調べるのはかなり苦労する。真実がどれなのかを割り出すのかが難しい

真実だと思ったことが突然になって偽物の真実であるという事に変わるかもしれないことだ

 

「難しい判断が求められるな」

 

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ベルカ州南部地方 C-5 高度8000m

 

ステラとマイアは情報収集を行っていた

潜入捜査をするのだから当然である。ミスが許されない

しくじれば殺される可能性もあるのだから

ちなみにこの輸送機は敵に見つからないように雲の中を飛行していた

そのため機体にはかなりの振動が伝わっていた。

車酔いなどが頻繁に起きる人間には不向きな移動手段だ

それでも隠密行動なのだから仕方がない。

今はこの方法でベルカ基地に向かう方が安全である

 

「それにしても今日は最悪の1日になりそうね」

 

ステラは本番はまだまだこれからであることを十分に理解している

どんな展開になるかは想像できない。それどころかどんな大騒ぎになるか予測することは難しい

 

「私としては聖王教会に潜入なんて嫌なんだけど。任務遂行と言われたら断れないし」

 

「そうですね。主は聖王教会側に顔が知られていますから潜入はかなり難しいです」

 

簡単に潜入するのは難しいことはわかっているが任されているのだから仕方がない

どんな手段を使ってでも聖王教会に潜入しなければならない

それが任務なのだから

 

「ところで教会の状況はどうなっているの?」

 

「聖王教会の規模は大規模縮小に伴って多くの人間が教会から離れています」

 

危険な組織に残っていたら自分達にまで影響がでる。逃げるしか道がないなら逃走する

逃亡は早くしておかないとすぐに追い詰められてしまうのだから当然である

 

「本当に最悪の組織になっているわよね。組織の浄化システムが機能していればよかったけど」

 

聖王教会も時空管理局と同じで組織内に腐敗が溜まっていることは間違いない

何処までも腐敗があるのか

 

「次元世界連合の査察については面倒になるわね。まぁ潜入は紛れ込みやすいチャンスだけど」

 

次元世界連合が強制査察を行うときにうまく査察官として偽装名簿に登録してもらえれば潜入は簡単になる

ただし口で言うのと実際にその行動を起こすにはかなり分厚い壁は存在する

かなり多くの関係者に協力を求める必要があるからだ

もし協力を得ることができなければ計画通りに事を進めることはかなり難しい

今は協力者の中から強力なコネを探り出すことが求められる

 

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東区東部 クラナガンハイウェイ4号線(東線) 西行き

 

アルシオーネは爆弾予告を送ってきたキャリス・ゴールドの自宅に向かっていた

市政府に表向きに登録している住所に何か証拠があるのではないか

可能性としてはかなり低いが捜索を行うことは当然である 

今は可能性をつぶしていく段階である

 

『ベルカ州内の一部の地域で有線通信ができない状況にある事がわかりました』

 

『関係者の話によると電力の安定供給が一時的に途絶えたことが原因ではないかと』

 

『ベルカ州内に通信網を保有しているベルカネットワークは最優先で復旧作業に当たると』

 

『一方でミーミルテレコムは無線通信に一部を切り替えて通信網を確保しているとのことです』

 

ただしこちらも無線基地局のバッテリーが有効に機能する時間までの話である

有線通信が使えないとなると無線通信の通信量は増大する

当然のことながらバッテリーの電力消費量は多くなる

そうなれば運用時間は想定よりも短くなってくる

回避するには外部電源の復旧が最優先で行うことが求められる

 

『ベルカ州証券取引所では経済的混乱を想定して、多くの銘柄が売りに出されています』

 

『ベルカ州商品取引所でも売りが殺到している状況です』

 

一方で近隣州の商品取引所の原油や天然ガスなどのエネルギー資源銘柄には買いが入っている

ベルカ州からの供給が途絶えることを想定しての行動である

ベルカ州の近隣州でも豊富に石油や天然ガスが埋蔵されている

今までは電力源として魔力精製炉発電所がメイン電源で火力発電所は少なかった

AMFの発明の影響で魔力精製炉発電所の安定運用に問題が出た結果、

火力発電所の増設が続いている。つまり燃料となる石油や天然ガスや石炭の消費量も増加

商品取引所ではエネルギー資源価格が経済にとって大きな目安指数になっている

その中でクラナガン市商品取引所の原油先物価格は近隣州の州商品取引所の原油価格に大きく影響する

 

『クラナガン原油価格は大きく値を上げています。クラナガン市政府は何度も備蓄原油放出の用意はあると』

 

市政府が大量に抱えている備蓄原油を放出することで先物価格が一定の値下がりが期待できる

だがベルカ州の安寧を確保しないと資源価格の安定は難しい

できるだけ早く収束させるためにはあらゆる対応が求められる

経済の混乱は犯罪発生率が高まるからである

犯罪発生率が高まるとクラナガン捜査局の対応に大きな苦労が生じる

 

「それにしても機動六課組を受け入れたら爆弾なんて」

 

それしか考えられないなら直接攻撃を仕掛けてきてもらいたいと彼女は考えていた

民間人を巻き込むわけにはいかないのだから当然である

こちらに対して直接行動をしてくれれば対応も行いやすい

しかし変な経路を使われるとトラブル解消は楽ではない

 

「まったく。今さら犯人さんの自宅に行ってももぬけの殻でしょうね」

 

それでも調べなければいけないのだから仕方がない

 

『東分署から各員へ。クラナガンメトロの駅で暴れている者がいるとの通報を受電中』

 

駅はここから少し離れている。ここは現場を知っている刑事たちに任せたほうが良い

こちらも急ぐ案件であることは間違いないのだから

今はとにかく、爆弾事案が発生させることを止めなければならない

民間人にけが人を出すわけにはいかない

 

「SA33から東分署。キャリス・ゴールドの自宅にパトカーはすでに到着しているの?」

 

『こちら東分署。現在覆面パトが待機中。家宅捜索準備待ち』

 

家宅捜索にも準備が必要だ。

反政府組織に加入しているため、犯罪組織対策法のブラックリストに登録されている

裁判所の令状なしで家宅捜索を行うことができるが無茶をするとリスクが生じる

それにタイミングを間違えると貴重な証拠を消されるかもしれない

判断を慎重に行うことが求められる。

 

「準備にはどれくらいの時間が必要なのかわかるの?」

 

『10分ほどで集結できる。到着次第、捜索を実行する』

 

「了解。できるだけ詳細な情報収集を要請する。何か発見があれば連絡を要請する」

 

『了解した。現場チームにはすでに通達を出している。何か見つかり次第、報告が入るはずだ』

 

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中央パトロール本部ラボ棟 3階銃器刃物ラボ

 

フィアットはダイナから依頼された銃弾のライフルマークを照合していた

再鑑定をして何か大きな証拠につながるかもしれない

 

「最近は再捜査の照合作業が多いわね」

 

顕微鏡を使って銃弾のライフルマークを照合する

被害者の体内にあったものと押収された銃を試射したものと照合した

結果は不一致だった。ライフルマークは一致しなかった

 

「冤罪の証拠が出てきたわけね。ダイナはかなり喜ぶわね」

 

フィアットはすぐにダイナの携帯電話に連絡した

ダイナはフィアットの報告にかなり機嫌がよい返答をしていた

 

『それはかなり嬉しいニュースだな』

 

「これからデータベースで照合して過去に使用された事案がないか確認するわ」

 

もし過去に使用されているならその関係者が怪しいことになる

それらについて入念に確認することは最も重要である

 

『できるだけ早くよろしく頼む』

 

「任せて。フル回転で照合させるから」

 

そういうとダイナは通話を切った

フィアットはデータベースとの照合を始めた

大量にあるがスーパーコンピュータを使えば比較的早く照合できるはず

今はなんとしても新しい証拠を見つけるしかないのだから

嘘のない真実を暴くための証拠を

 

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中央パトロール本部東館 8階事件再検討課オフィススペース

 

ダイナはフィアットからの報告を受けて今後の捜査方針を検討していた

銃弾のライフルマークは不一致だった。

しかしまだどのような捜査方針にするかを簡単に決めることはできない

過去の犯罪で利用されていることがわかればより詳細に捜査方針を決めることができるのだから

 

「冤罪であることは決まったが、冤罪事件の捜査は真実をあぶりだすのが難しいからな」

 

「我々もいつも苦労しています。どれが真実につながるのかを調べるのは難しいので」

 

今はとにかくすべての証拠を再検証するしかない

 

「まずは事件関係者の背後関係を調べてみるか。金融情報を中心にな」

 

事件の裏にはほとんどの場合でお金が絡んでいる

お金の流れを調べることで事件捜査が進むことがあるのだから

ダイナはすぐに作業に入る。彼はラボ棟のレイアウトルームで証拠を再検討することにした

 

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