午前11:00 中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム
ラジェットは人工衛星から撮影された画像を見ていた
撮影された場所はベルカ州中央地方ベルカ市郊外にある聖王教会本部である
「今のところは異常はないか」
はやてとリィンはあまり良い表情をしていなかった
大切な友人がいる組織の監視など気分の良いものではないことは誰でも同じである
だからといってやらないわけにはいかないのだ
任務であるならどれだけ危険な任務でも挑戦するしかないのだから
それが罪のない人々を守ることにつながると信じているからである
そうでなければできるはずがない
今はなんとしても問題解決のために迅速に事を進めていくことが求められる
「はやて、これが情報戦というやつだ。事件捜査の裏にはこういう汚い面も存在する」
今のうち慣れておくことだなと伝えた
確かにこういう事はよくある事である
「情報戦ですか?」
「ツヴァイ。俺たちは情報戦を担当することもあるからな。実戦任務を担当することもある」
実戦任務を担当することで少しでも被害を最小限にすることが求められる。既に情報戦が展開されている。
聖王教会過激派と思われる連中からこちらへの攻撃が予告されている
だからこそ国内の証券取引所や商品取引所の取引が活発に行われている
「はやて。聖王教会本部の設計図はあるか?」
「あるがどうするんだ?」
ラジェットは理由は簡単だと回答した
潜入する時に利用するのだ。せっかくある『資料』を利用しない手はない
聖王教会内の詳細な設計図があればいろいろと利用することができる
潜伏するときや情報を外部に持ち出すときの抜け道としても利用が可能である
『SA39から中央本部捜査部。現在中央本部に向かっている』
エリバート・クインスの照合作業はどうなっていると聞いてきた
このまま迷宮入りになることは避けたい。何が何でも事件解決のために真実を暴きたい
すでにエバックの手を離れた事案であるが、照合作業が円滑に進めるように手はずはしておきたい
「今も照合作業を進めているがかなり難しい」
犯罪に大きいも小さいもない。すべて平等に扱うことが求められる
しかし実際は殺人や組織犯罪などの大きな事件を扱うことで大きな手柄を上げることができる
そして昇格や昇給などを得ることができる
『港湾本部に頭を下げてくれないか』
「あっちのスパコンを使いたいのか?」
『その方が早いからな。ラジェット。今度良い酒のボトルを譲る』
「それは上物のワインか?」
『ああ。当たり年で1本50万ミッドもするワインだ。それで何とかしてくれないか』
港湾パトロールが運用しているスパコンの方を利用すればかなりのスピードで照合ができる
もちろん簡単にできることではない。軍事組織のスパコンを借りるのは簡単な事ではないからだ
「それで何とかしてみる。カザーナに要請を出してみる」
カザーナ・ステージアは港湾パトロール安全保障局長である
港湾パトロール安全保障局は諜報活動で様々なことを行っている
捜査部捜査官のほぼ全員がコネを持っている
聖王教会の設計図の情報を提供する事でスパコンを借りる見返りにしようというのだ
「何とかなるものなんか?」
はやては諜報機関の情報が簡単に閲覧することができるものなのかと聞いてきた
確かに簡単に諜報機関が集めた情報を見るのは難しい
しかし土産物があれば話は別になる。はやてが持っている聖王教会内の設計図という手土産だ
「カザーナとはよく連携している。お互いのやり方はわかっている」
はやては聖王教会施設内の設計図のデータをラジェットに提供した
仕方がない決断である。これも仕事なのだから
「つらい決断をするときは珍しいことではない」
今後も覚悟することだなというとカザーナと通信を行った
カザーナに今のこちらの情報をすべて提供すると話す。
簡単に港湾パトロールが保有するスパコンの使用許可をくれた
これで今回の貸し借りなしよといってカザーナは通信を切った
同時に照合スピードが一気に加速した
あとは照合システムに任せることにして今度こそはやてとともにパトロールに向かうことにした
「捜査部はかなり忙しいみたいやな」
はやての言葉にいつものことだと返事をする。
そしてラジェットははやてとリィンと一緒にオペレーションルームを出た
「今度こそパトロールに行くとするか」
3人は駐車棟に移動した。
8階に止めているラジェットのSUVに乗り込むと各種装置の稼働が問題ないか確認
問題がないことが確認するとすぐに出動することにした
「今日はハイウェイのパトロールでもするか」
捜査部捜査官は中央本部で待機する者もいれば巡回パトロールを選択する者もいる
どのコースを選択するかは個人に選ぶことができるようになっているのだ
「要請がない限りは暇だからな。パトロールをしているほうが良い」
ラジェットはクラナガンハイウェイ10号線(南北線)の南行きに入ると制限速度ぎりぎりで走行していた
スピード違反の取り締まりでもしようというのだ。クラナガンハイウェイは全部で14号線まである。
制限速度はほとんどすべて路線で時速120kmと定められている
実際は違反車両がかなり多い。機械でスピード違反を摘発しているが、人力で行うことも多い
「これからのんびりと仕事をするか」
「のんびりってどういう意味なんですか?」
「ツヴァイ。俺達は何でも屋なんだ。この車だって覆面パトと同じ扱いだからな」
交通違反者の摘発はいつものことだと彼は返答した
その時、無線連絡が入ってきた
『ハイウェイ10号線南行きで玉突き事故発生との通報を受電中。現場付近にいるパトはすぐに向かえ』
「お仕事の時間だな。SA11から中央本部。現場付近にいるのでこちらも急行する」
『了解した。危険物を抱えていることを忘れず警戒態勢の状態で対応せよ』
危険物というのははやてたちのことを示している
もしかしたら彼らを狙っているのかもしれないからだ
『中央本部から各員へ。ワンワールドバンク本社でデモ活動をしている市民を確認』
暴徒化する前に事態の収拾に動くようにとの指示である
ワンワールドバンクは退役時空管理局員が起業した金融機関である
JS事件によって経営破綻した。不良債権は1000京ミッド以上になっている
時空管理局員の多くが預金口座を持っていた。それも倒産することなどありえないという安全神話があった
ところがJS事件後は多額の不良債権を抱えていたことが発覚して預金が急激に引き下ろす人物が増加した
保護される預金は1つの口座で1000万ミッドまでになっている。
実際にはそれ以上の預金をしていた人物がかなり存在した。失った財産に表情は暗い
破産申請を出す者が続々と増加傾向である
失ったお金を取り戻そうと必死にデモ活動をしているが、まったく意味がない
「俺たちに責任を押し付けられるのは面倒なものだな」
金融機関へのデモ活動はかなり増加している。
特にワンワールドグループ企業関係となるとかなりひどい状況になっている
銀行のワンワールドバンクとヘッジファンドのワンワールドファンドにはかなりの負債を抱えている
時空管理局債や聖王教会債を主に引き受けていたことも大きな負債を抱えることになっていた
2つの再建は金融市場で紙くず同然になった。
時空管理局債のすべて次元世界連合がすべての時空管理局債を金融市場から数ミッドで回収した
今年度から時空管理局の予算は大幅圧縮されて5000兆ミッドになった
大量リストラと管轄区域の大幅縮小が低予算でも組織が上手く運営できることに成功したからである
リストラされた立場の退役時空管理局員はかなり追い詰められて日々の生活にも困っている
聖王教会債は聖王教会が暴落した教会債権をすべて買い取った
「生活する金がなくて困るのは誰もが同じだ。だが退役時空管理局員の生活は派手だからな」
つまり金遣いが荒いという事だ。浪費もかなりの金額になる
すぐに生活費の節約などできるはずがない。
それだけでなくワンワールドバンクからかなりの資金を借りて企業経営をしていた者も多かった
その企業のほとんどすべてが倒産して借金返済に行き詰っている
自己破産件数もかなりの数になっている。
いくら破産になったからといって正規の金融機関からの借金はなくなっても、
マフィアなどの犯罪組織から借りた金は返さなければ殺されることは間違いない
彼らにとって金は何よりも大事なものなのだから。
連邦法で定められている犯罪組織対策法によってマフィアたちはすぐに犯罪で得た資産を奪われるからだ
うまく隠したとしても、いつかは発覚するものである
「苦労は絶えないな」
酷い有様だとラジェットは考えていた
闇があまりにも深すぎる。どこまで真実が暗い闇の中にあるのか
それを突き止めることは難しいことは間違いない
『中央本部から各員。次元世界連合が聖王教会の強制捜査に踏み切る。我々も教会への警戒レベルを引き上げる』
「いよいよ本番になってきたな」
ラジェットは今後の展開が楽しみだと回答した
確かに今後の展開次第ではどうなるかは全く予測することは難しい
『南分署から各員へ。ハイウェイ10号線南行きの事故について続報』
『事故車両は大型トラック2台とセダン車両1台。セダン車両はトラック同士に挟まれて潰されている』
セダン車両に乗っていた人物たちの生存は絶望的であると無線連絡が入ってきた
最悪の場合になることは間違いない。セダン車両に乗っていた人物は死亡している可能性が高い
トラック車両に挟まれてサンドイッチ状態になっていれば生存確率はかなり低い
「はやて、お前は車から降りるな。念のために警戒しておけ。狙われていることは間違いないからな」
『中央本部から各員へ通達。機動六課組が狙われている可能性が高い。教導官担当は警戒されたし』
『ほかにも問題事案が確認されたら無線連絡で報告を入れる』
『交通事故現場付近は事故車両の部品が散乱しているので車線規制をかけている』
安全確保をしたうえで現場に向かえとのことだった
簡単な事ではない。すでに現場付近渋滞していることは明らかであった
現場に向かうまでは少し時間がかかると判断したラジェットは路側避難帯に車を止めた
「はやてとツヴァイもついてこい。ここで2人きりにするわけにはいかないからな」
「「了解」」
はやてとリィンは返事をするとすぐに車を降りるとラジェットと一緒に走って現場に向かった
現場までは100mほどだ。捜査キッドはそれなりの重さをしている。
しかしラジェットはまるでそれを感じさせないように軽快に走っていた
はやてとリィンも同じように走っていた。捜査官は素早い状況判断能力と体力が必要だ
そうでなければ命にかかわる大問題を発生させる可能性がある
事故現場に到着するとかなり悲惨な状況になっていた
2台のトラックの間にセダン車両が挟まれてほぼ完全に潰されていた
「ラジェットだ。状況はどうなっている?」
現場にはすでに交通捜査課の刑事が現場整理をしていた
交通捜査課は文字通り、交通事故を専門に扱っている部署である
死亡ひき逃げ事案などが発生した場合は捜査部と連携して捜査を行うこともあるので顔なじみである
「セダン車両の車から男性運転手と女性と思われる遺体を確認した」
検死官が検死作業を行っている真っ最中であることを報告した
「身元は誰なのかわかっているのか?」
「指紋でヒットした。元ワンワールドバンクでトレーダーをしていた人物。SECが追跡をしていた」
金融市場でトレーダーをしていたこととSEC(証券取引委員会)が追跡をしていたという事は、
経済犯罪を行っていた可能性があるという事だ。例えばインサイダー取引などの
詳細はこれから調べることになるが、この事案はかなり厄介になることは間違いない
「名前はハイリス・ボーディン。年齢は34歳。SECが100億ミッドのインサイダー取引をしたとして追跡中だ」
「あっちには俺から連絡しておく。管轄権についても話をつけておくから現場検証は入念に行ってくれ」
ラジェットは中央本部に一時通行止めの措置に入るように要請すると回答した
今は証拠採取が最優先。一般車両の通行を規制する必要がある
「SA11から中央本部。ハイウェイ11号線南行きの全止めを求める」
全止めとは全車線通行止めを行うことを示している
今は何よりも安全確保のために動くことが求められている
仮に民間車両を通した場合は証拠が破損するかもしれない
そんなリスクは避けるべきであることは明らかである
『全止めに必要な人員はいるのか?』
「現在では対応可能と判断する。許可を要請する」
今はかなりの刑事やパトロール捜査官が集まっている。
早急に事態収拾をするには一度全止めして早期に状況把握と証拠採取。
現場整理を行うことが重要になってくる
『許可するが1時間以内で全止めは解除せよ』
「了解した。道路交通情報でもそのように通知をよろしく願いたい」
ラジェットはできるだけ影響を最小限にするためには情報伝達が正確に進んでいることが望ましい
中央パトロール管制センターはすでに通達を出していると返答してきた
だからこそ1時間以内に通行止め解除を行うように指示してきたのだろうと察した
『港湾本部から中央本部捜査部SA11。こちらから上空支援を出す。ヘリでハイウェイ上空を監視している』
港湾本部が上空から支援をしてくれるのはかなり異例のことである
今は何が起きるかわからないから混乱になりそうなことには、
連携して対応するべきなのだろうとラジェットは考えた
彼は協力感謝すると無線で返答した
「証拠を30分以内にすべて回収だ!現場検証は他の場所でもできるように詳細に記録しろ」
中央本部と各分署には現場再現ができるように大きな倉庫のような建物を保有している
そこで再現をすることでより詳細にわかることもある
そのためにも現場状況を再現できるように詳細に記録することは重要なのだ
問題はそれほど時間がないという事である
1時間しかないという事はかなり急いでしなければならない
証拠を破損することなくすべて回収して現場の通行止めを早期にやめること
この2つは完ぺきにこなすことはかなりの困難がある事は間違いない
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南区北部ハーディー地区6番街2丁目1番地 ハーディーバンク本店 貸し金庫室
「悪いわね。いつも迷惑をかけて」
フィリーは時空管理局犯罪捜査局の捜査官と電話会議をしていた
何か情報をに持っているのか互いのものを共有することで事件解決するかもしれない
それを共有することは極めて重要である。
何か些細な事であっても事件解決の糸口になるかもしれないからだ
『気にするな。こっちもいろいろと迷惑をかけているからな。これくらいのことは簡単だ』
「貸金庫に保管されていた物が時空管理局の闇の証拠となるとさっさと処分するかもしれないわね」
『それは言えている。犯罪記録が記録されていたものとなるとさっさと処分するはず』
「時空管理局犯罪捜査局にとってもそれはとんでもない迷惑な話でしょ?」
『こちらでも局内の動きを監視。少しでもおかしな動きを示したらこちらも行動する』
「うまく動いてくれると助かるわ」
そういうとフィリーは通話を終えた。
一方でなのはは時空管理局内のまだ親しい友人と情報共有を行っていた
しかし簡単に事は進んでいない様子であった
機動六課組はいろいろな意味で恨みを買っている
それをなおさら余計に面倒をかけることになっている
「だめです。私の友人は裏切り者には協力できないと」
しかしフィリーにはそれは予想通りの結果だった。こうなることはわかっていた。
だが彼女はあえてやらせたのだ。現実を理解させるために。
現実では簡単に物事が進まないという事を理解させるにはこれぐらいのことが必要だった
こういう経験は早いうちにやらせておくほうが良い
あとからとなるとダメージが大きすぎるからである
まだ傷が大きくならないうちに実感させることが何よりも重要である
「まぁ、仕方がないわ。あなたたちは真実を白日にさらしたけど組織の人間は誰もそれを望んでいない」
「そこまで深刻なんですか?」
なのははかなりショックを受けているような表情を浮かべていた
「時空管理局の友人とは今まで通りの友人関係を続けることは難しいと思いなさい」
組織から弾き出されたら元に戻ることは難しい
もう時空管理局に戻ることはほぼ不可能であるのだ
「もう時空管理局時代の友人との関係は拒絶しておくことね。あなたを強襲するために動くかもしれないし」
フィリーは教導官として護衛の担当もしていることを考慮に入れると私も自分の命は大切にしたいから
なのはの教導官をするという事はフィリーも一緒に狙われることを意味している
そんな大きなリスクはあまり抱えたくない
『アンナ・ランシング大統領は緊急の記者会見を行い、聖王教会本部への強制捜査に連邦軍の派遣を検討すると』
アンナ・ランシング大統領は新暦75年1月にミッドチルダ連邦大統領に就任
支持率は80%とかなり高い。反時空管理局派として有名である。
次元世界連合では安全保障理事会で唯一の常任理事国でありミッドチルダ連邦政府のトップ
外交では中立の立場を貫くことが求められるのが安保理の常任理事国として求められる立ち位置である
そしてうまく各国をまとめていくことも極めて重要である
今の軍備体制では次元世界連合全加盟国の中でミッドチルダ連邦が最も軍備が充実している
今も最新兵器の開発や軍艦や戦闘機の開発が進められている
軍艦の建造のノウハウを持っているのはミーミルグループ企業である
そこで一定数の軍艦の建造を認める代わりに技術公開を行う協定を多くの次元世界国政府と締結した
今ではさらなる安全性の高い軍艦建造の研究が進められている
『また港湾パトロール海兵隊の派兵について検討していると表明。クラナガン捜査長官はあらゆる選択が可能と』
「さすがは長官ね。手回しが良い事で」
『連邦財務省は国内の金融機関の動揺を抑え込むためにコール市場に最大で1京ミッドの資金供給を行うと』
「連邦政府も大変ね。国内経済を安定化させるために全力で対応しないといけないとなると」
『中央本部からSA13。問題が発生した』
問題の内容がフィリーの携帯情報端末に送られてきた
中央本部が問題としているのは退役時空管理局員たちが組織した過激派がある行動を開始したのだ
その行動とは時空管理局の旧幹部の暗殺を行っているという事である
幹部たちの大部分は時空管理局犯罪捜査局が身柄を抑えて拘置所に収監されている
しかし包囲網から逃れた連中が殺されているらしいとのことだ。
それは大きな問題になることは間違いない。
貴重な証言を得ることができないだけでなく証拠も消されてしまう
「市内で拘束されていない元幹部はどれくらいいるの?」
『港湾本部の情報によると100人ほどとの情報が入っている』
港湾パトロールも必死になって追いかけているが、なかなか捕まらない状況にあるようだ
過激派にとっては時空管理局の不正の証拠は自らに大きな影響を出す
そのことを考えると証拠や証言をすべて無くすことが求められる
殺すことで証言させることを止めることができるのだ
どんな手段を利用しても証拠の抹消を行うことは間違いない
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クラナガン自然保護区 中央部 クラナガン自然保護分署ラボ棟 2階マルチメディアラボ
エルガは今も情報を分析していた
「酷い状況だな。借金で自滅しているのは明らかだ」
ワンワールドバンクから借り入れをして金融市場で運用していたが多くの負債を抱えて破綻していた
レナース・ヴェロックとオブレ・クレースの2人は同じように数億ミッド以上の負債を抱えている
自転車操業をしているような状況であったが、ワンワールドグループ企業の破綻で自転車操業もできなくなった
負債を大量に抱えているからこそ逃げ道が残っていなかったことは間違いない
誰かが殺した可能性は十分にあるが、自殺を手伝ったという話も成立する
仮に自殺を手伝ったとしたとしても殺人罪になることは変わりはない
殺しは殺しなのだから
『自然保護区分署から各員へ。保護区内で大雨が降る可能性が高い。警戒されたし』
クラナガン自然保護区はすぐに天気が変わることで有名である
それだけに自然保護区内で事件が発生しても貴重な証拠が流された後という事が頻繁にある
雨の間に密漁を行う連中も多いことは事実である。
雨音によって各種観測システムの機能を100%発揮することができない。そこが最大の問題であるのだ。
できることなら問題を最小限にして対応したいがクラナガン自然保護区はかなり広い
簡単にカバーすることはできない。もともと厳しい人員でやりくりしているのだから
『中央本部から各員へ。機動六課組の教導官は警戒態勢を維持せよ。必要なら港湾パトロールに協力を求めよ』
「トラブルが俺のところに来るな。雨の中の事件は嫌いなんだが」
雨が降っている間の事件は本当に面倒であることは捜査関係者なら誰もがわかっている
貴重な証拠が流れていくからである。事件解決率の割合がさらに低くなる
今後のことを考えると余計に大変である
「ところでヴィータ。1つだけアドバイスだ。お仕事は楽しくないと長続きないものだ」
特に殺人などは集中力が物を言ってくる
あらゆるものに対して警戒網を張り巡らせることで事件捜査が進むのだ
「捜査で楽しい事なんかあるのか?」
「真実を掘り返すことができる。そこが最も楽しいところだ」
確かに真実というものを掘り返すのは簡単な事ではないが成功すれば大きく喜ぶことができる
真実が明らかになることで犯罪者を摘発することができるとともに、
被害者に対してしっかりとした状況説明をすることができる
それだけでも最高な事である
「こっちの人工衛星で観測されている衛星画像を全て調べるか」
中央パトロールが運用している人工衛星はかなりの数がある
高度600kmで36種類の軌道を周回している人工衛星が360基が存在している
人工衛星の機能は多機能型となっている。
機能は[気象・通信・衛星電話・衛星インターネット・位置測位・魔法監視・偵察・早期警戒・デブリ監視]
360基の人工衛星によってクラナガン市だけでなくミッドチルダ連邦の惑星全土の状況監視ができる
勿論、衛星のシステムにアクセスするにはセキュリティ資格が求められる
捜査部捜査官はその資格を持っているので問題はない。ヴィータには詳細なことは話せないが
「通信傍受の令状を請求したいところだな」
エルガのひとりごとにヴィータはそんなことが可能なのかと聞いてきた
確かに簡単にできることではないがテロ組織のメンバーであることや、
犯罪組織対策法に登録されている組織の構成員ならば簡単にできる
その前に構成員であることを確認して登録者であるかを照合しなければならないが
「念のためやってみるか」
犯罪組織対策法に登録されている組織の構成員の通信記録は連邦政府のデータベースに保存されている
クラナガン捜査局でも連邦政府とは別にデータベースを運用しているので簡単に通信内容がわかる
「酷い世の中だな」
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ベルカ州中央地方 C-5 高度5000m
ステラとマイアが乗り込んでいる輸送機は間もなくベルカ基地に到着するところだった
「ようやく到着になるわ」
ベルカ基地の警備体制はかなり厳しい状況になっている
聖王教会騎士団や過激派が襲撃してくることが想定されるからだ
彼らにとって港湾パトロールベルカ基地は邪魔な存在でしかないのだから
だからこそベルカ基地は港湾本部基地と同等なぐらいの厳重警備体制になっている
「これからが本番ね。聖王教会に潜入するとなると」
ステラはとんでもない困難な任務を任されたのかとつくづく思うわと疲れた表情をしていた
当然の反応であることは事実だ。ミスをすれば命を失うかもしれない任務なのだから
それだけに慎重な行動と臨機応変な対応が求められる
「聖王教会も最悪の運命になっていることは間違いない。正義の味方が今は汚れた組織と思われているなんて」
「同意見です。機動六課組が真実を白日にさらした結果はこのありさまですね」
「彼らはとんでもないパンドラの箱を開けたことは疑いようのない事実ね」
機動六課組が開封したパンドラ箱には時空管理局の破壊というシナリオが描かれた紙があったようなものだ
まさに最悪である。おまけに聖王教会も一緒に道連れにすると巻き添えを食らった
だからこそ時空管理局と聖王教会の規模は大幅に縮小されて権限も失った
苦難の道を歩み始めたばかりである。
「それにしても聖王教会本部に潜入は厳しい」
「私は通信でバックアップします。万が一のことを考えて暗号通信で行います」
当然のことである。聖王教会もこちらの通信を傍受しているはずだからだ
クラナガン捜査局で使用されている暗号通信は簡単に解読できるものではない
仮に解読できたとしてもある程度の時間稼ぎはできる。
それに攻勢防壁を通信に紛れ込ませることで傍受に使用している通信装置を破壊できる
かなり危険な方法ではあるが。やるからには徹底的に行うことが求められる
「マイア、私との通信はすべて攻勢防壁を使用した暗号回線で行って」
「了解です」
そこまで徹底的にしないと危険性の排除はできない
潜入捜査においてリスク管理は必ず行うことが求められる
もし正体が判明すると殺される可能性が高い。あるいは厳しい拷問を受けるかもしれない
「最後の頼りは港湾パトロール安全保障局が作ってくれている偽装IDだけね」
港湾パトロール安全保障局が作ったIDなら簡単には発覚しないが
それでも完全とは言えない。いつ発覚するかについては時間の問題である
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム
「セントラルベルカバンクの腐敗がどこまで進んでいるかを解明するのは大変ね」
セントラルベルカバンクが抱えている不良債権だけでも数千兆ミッドも抱えている。
聖王教会傘下の金融機関だったが今は全く異なる状況である
ミーミルバンクが買収した。それもわずか数ミッドで。
現在、不良債権や問題の融資がなかったか徹底的に調べられている真っ最中である
実際に不良債権だけでも数千兆ミッドもあるのだ。どこまで企業として腐敗しているかは見当もつかない
今は真実を1つ1つ明らかにするしか道がないのは間違いない
「シエルはどう考えているんだ?」
ギブリは様々な経済情報を正面スクリーンに表示させながら分析も行っていた
そんな状況下でも彼は冷静な声でシエルに質問をした
「まぁ、少しはまともな企業に生まれ変わってほしいわね。簡単な事ではないけど」
「それは言えているな。1度腐敗した組織を綺麗にするにはお金も時間も必要だ」
「そうでしょ。否定する要素はどこにもない」
『クラナガン証券取引所の平均株価は2万ミッド前後で値動きが続いています』
クラナガン証券取引所に上場しているほとんどの上場企業はミッドチルダ全土で活動している企業。
クラナガン平均株価はクラナガン証券取引所に上場している銘柄を300社抜粋して算出する平均株価でもある
「ベルカ州の一件で振り回されるなんて」
「ベルカ州とクラナガン市はいろいろと密接な関係になったからな。政治的にも、経済的にも」
ベルカ州で収穫されている農作物の多くが近隣州に出荷されている
最も多いのがクラナガン市に貨物列車などで輸送されている
さらに最近は石油や天然ガスがパイプラインを通して、
石炭やレアメタルなどの鉱物資源は貨物列車を使って輸送されている
だからこそベルカ州で混乱が生じるとクラナガン市にも即座に影響がでる
また、これらはクラナガン市だけでなくベルカ州の近隣州すべてに該当する
ベルカ州では今は石油や天然ガスや石炭などのエネルギー資源開発がかなりの勢いで進んでいる
その他にも州内には豊富に様々な鉱物資源が存在していることから資源開発が急ピッチで進んでいる
なぜ資源の多くが埋蔵しているのか。理由は簡単である。
聖王教会が政治権限を握っていた頃は環境保護に重点が置かれていた
そのため開発することは認めていなかった。
しかしベルカ州政府に権限が移行されてからは環境基準を守れば認められることになった
だからこそ、今のベルカ州内の様々なところで資源開発が行われている
今やバブル経済といってもいいぐらいの好景気だが聖王教会の一件で問題が発生している
「苦労するわね。対応に」
「ベルカ州政府は連邦政府と協議を行うことを決断したとの情報も入っている」
「被害を最小限にするにはそれしかないわね」
経済的影響を避けるには連邦政府との協調行動が求められる
そうしなければ、単独で対応することなどできるはずがないのだから
問題は時間的余裕がどこまであるかだ。今回の場合ではそれほど余裕があるとは思えない
早期解決をしなければ厄介なことになるかもしれない
『ミーミルバンクは不良債権しているものについてはあらゆる手段を行使して回収すると表明』
「債務者はかなりきつい状況に追い込まれるわね。悲しいけどそれも経済の流れだから」
もともと無理なことをしていたのだから仕方がない
本当に苦労するのはこれからだ。あらゆる財産を失って無一文で放り出される運命にある
『ベルカエアライン14便は無事にノースクラナガン空港に着陸を確認』
「ようやく問題の1つが解消されたわけだな」
「ギブリ。問題はそれだけの仕掛けを誰がしたかよ」
「そうだな。今回は偶然助かった。だが次はないだろうな」
今回はベルカエアライン14便にクラナガン捜査局の局員が搭乗していた。だから助かった
だがそんな偶然は連続して起きるはずがない
「ベルカエアライン14便のことについては運輸安全委員会と港湾パトロールに任せましょう」
運行上の問題かテロが関与しているされる問題の場合は運輸安全委員会か連邦捜査機関の管轄になる
テロ行為なら国防省や諜報機関。港湾パトロールも関与することも珍しい事ではない
「本当にどうなるかはわからないわね」
そこに中央パトロール管制センターからの無線が入ってきた
『地下鉄レッドライン路線のコウリッツ地区駅でトラブルが発生。付近にいる者は直ちに急行せよ』
コウリッツ地区駅は中央区西部にある
ちなみに地下鉄レッドラインはセントラルクラナガン駅地下のサブセントラル駅を中心に東西総延長150kmの路線
路線は複々線でありクラナガン市交通局が運営している。1日に多くの市民が利用する
「相変わらず駅での問題は多いわね」
鉄道で痴漢や盗撮といった性的犯罪行為はかなりの件数になる
被害者は恐怖から申告しないことも多いので犯人を余計に刺激してしまう結果になる
悪循環が始まるのだ。だからこそ中央パトロールではおとり捜査を行っている
『トラブルの内容は痴漢行為とのこと。担当は鉄道犯罪課に移管する』
鉄道犯罪課は鉄道利用者を犯罪に巻き込まれないように、安全を守るために存在している
中央本部と各分署に配置されている。その他に主要ターミナル駅にも事務所が設置されている
『フローレンス州からクラナガン市に向かっている貨物列車に問題が発生したとの受電あり』
受電内容を早急に調べるようにシエルは指示を出す
列車には大量の貨物が積み込まれている。それらは人々の生活に重要な物も含まれている
慎重な対応が求められるケースもかなり存在するからこそ確認作業が求められるのだ
「原因は機関車の非常ブレーキシステムが自動作動しているとのことだ」
「運行上に犯罪性があるのかどうか確認させて。もしそれに違法性があるなら運輸安全委員会に連絡よ」
鉄道や航空機などの事故やトラブルは運輸安全委員会の担当である
FBIも捜査に絡むこともあるが犯罪性がなければ原則として運輸安全委員会になる
「今はとにかくベルカ州の問題をどうにかしないといけないわね」
何が起きるかわからないのだから仕方がない。
「聖王教会の組織内部をクリーンにするには相当な荒療治が必要になるな」
「今ごろ次元世界連合も同じことを考えているはずよ。苦労するのはこれからが本番」
次元世界連合安全保障理事会の下部組織である聖王教会調査委員会が動いている
小さな動きがいつもにかとんでもない大きな動きになってくるのは間違いない
「今後の展開を考えると恐ろしいわね」
「面倒になればこちらにも責任があると?」
「ギブリ。いつも言っているでしょ。私は大切な部下を守りたいだけ。ステラたちが潜入中に何かあったら」
「わかっている。常に監視体制は整っている」
シエルにとって大切な部下を失うわけにはいかない
そのためにはいかなる手段を行使してでもステラたちの任務遂行を補佐する
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東区東部 クラナガンハイウェイ4号線(東線) 西行き
アルシオーネは今もキャリス・ゴールドの自宅に向かっていた
既に家宅捜索が行われていた。その結果、爆弾の材料や作るための道具が室内から発見された
これで爆弾を本気で作っていたことの証明ができる。問題はそれをどこに仕掛けたかだ。
それが分かれば大きな手掛かりになるのだが、敵が尻尾を出すことはまずない
見つけてくれといった行動をとるとは思えないからだ
「もう何も残っているとは思えないけど調べるだけ調べないと」
もしかしたらヒントになるものがあるかもしれないからである
可能性がある以上は調べることが求められる。
すべての可能性を消して残ったものが、どれだけあり得ないものでも正解なのかもしれないのだから
「本当に面倒なことになるわね。どうして機動六課組を受け入れたから私達に不幸という名の雨が降ってくるよ?」
『中央本部から各員へ。市内でテロが起きることが予想される。警戒態勢を維持せよ』
「機動六課の受け入れを決めてから連中の動きが激しい」
それだけ彼ら持っている証拠が重要であることを示している
今後のことを考えるとさらに詳細な情報収集が必要になる
『中央本部からSA33。応答せよ』
「こちらSA33。何かあったの?」
『キャリス・ゴールドの遺体が自宅近くのゴミ箱で発見された。背中に複数の刺し傷がある』
殺しになったわけだ。
誰が何の思惑で動いているのかを追求するための証人が消されることになった
嫌な話だが。バックが時空管理局の暗部にいることは間違いない
機動六課組を狙っているという事は彼らのことを好ましく思っていない
そんな人物がいるとするなら時空管理局の立場にいる人間である
大量リストラやJS事件の関係で多額の財産を失った者は彼らのことを恨んでいるはず
だからこそ機動六課組に関係する人物を攻撃するつもりなのだろう
そんなことをさせるために攻撃に必要なものを用意させるためにキャリス・ゴールドは利用されたのかもしれない
今はまだ憶測に過ぎないが捜査を進めていけばいつかは真相にたどり着くはずである
時間がかかることは間違いないが。それでもあきらめるわけにはいかない
もし攻撃されたらこちらの護衛能力が甘いとマスコミにたたかれることになるのだから
それに捜査部捜査官の立場という者も関係してくる
「今は早く現場に向かわないと」
アルシオーネは急いで現場に向かった