経済事件に関しては私はアメリカ合衆国の法律と、
日本の法律を足して2で割った感じの法律を採用しています。
これから頑張っていきます
中央パトロールが管轄するクラナガン市は極めて広い面積だ
市行政区が入る領域は南北300km×東西1400kmの長方形に似た形状。
大陸部分は市領域の西側の南北300km×東西200kmであり、
残りの南北300km×東西1200kmは海となっている。
海域にはいくつかの島々が点在している。市内南西部にはクラナガン自然保護区が存在する。
自然保護区は70kmの正方形状の形をしている。
長方形のクラナガン市と重なっているのは南西部の東西10km×南北10kmのみ
クラナガン市南西部にクラナガン自然保護区を加えると、
長方形の左下に別の正方形が重なっているかのような構図。
そんな広い領域の中で殺人などの重罪行為に対する捜査を担当するのは中央パトロール本部捜査部である
捜査部のトップである捜査部首席捜査官はシエル・ミズノ首席捜査官だ
捜査部には3つの係がある1係と2係と3係。別のどの事件でもどの係が担当しても問題はない。
捜査部捜査官は科学捜査のプロだ。人員は1係が6人。2係は8人。3係は9人在籍している
彼らはあらゆる事件にも対応できるように鍛えられている。
また港湾パトロールでさまざまな軍事訓練を受けてきた。
そのため指揮官としても有能な人材だ。彼らがいなくては解決できなかった事件は数多く存在する
ちなみに中央パトロールには南区北部にある中央パトロール本部。
クラナガン市の大陸部門の治安維持は中央パトロールがしているが、
市内全域を担当しているのは中央パトロール本部
中央区を担当しているのはセントラル分署。北区を担当しているのは北分署
東区を担当しているのは東分署。南区を担当しているのは南分署。
西区を担当しているのは西分署。次元世界連合がある西区のクルック地にはクルック分署が設置されている
6つの分署を統括しているのは中央パトロール本部である。
中央本部のすぐ近くにはクラナガン市政府機関の建物が数多く設置されている
ミッドチルダ連邦の首都であるため、中央区中央に連邦政府機関の数多くの建物が設置されている
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部首席捜査官執務室
「相変わらずの強引さですね。統合管理官」
捜査部のトップをしているシエル・ミズノは中央パトロールのトップである統合管理官と電話会議をしていた
空港本部と港湾本部のトップは空港本部長・港湾本部長となっている。
中央パトロールだけは例外として統合管理官という役職名になっている
今の統合管理官はエリ・ミズノ統合管理官だ。
クラナガン捜査局の前身組織であるクラナガン捜査部時代から勤務しているベテラン。
クラナガン捜査部の時は副部長を務めていた。ちなみにユウ・ミズノ捜査長官とは家族だ
『次元世界連合事務総長である彼女の希望を無視するわけにはいかない。意味は分かるわよね?』
2人が話し合っているのは時空管理局機動六課に関する今後の取り扱いについてだ
時空管理局が次元世界連合の下部組織に移行して様々な部門が統廃合された
特に事務方の部門に関しては次元世界連合が選出した文民による対応に切り替わったことが大きい
今までは時空管理局の事は時空管理局での処理だったがそれらはすべて廃止になった
時空管理局の事務方部門に関しては次元世界連合の直轄担当部門に置かれることになった
これにより今までできていた時空管理局の予算関係は大幅に圧縮された
また時空管理局員の給与水準も引き下げられた。人員削減という名の大量リストラ。
時空管理局が予算を確保のために発行していた時空管理局債についても扱いは厳しくなった
今までは安定的な安全資産とされていたがその保証も失われた。
金融市場で取引される時の取引価格は額面価格に対して10%にまで値下がった
元々時空管理局債に関して大量に買い込んでいたのは退役時空管理局員が多い
その次にワンワールドグループ企業の金融部門関係の企業だ。
価格が暴落した結果、多くの企業では財務状況は大幅に悪化した
シエルはその資料を見ながらエリ・ミズノ統合管理官と電話会議をしていた
債権処理に関して次元世界連合の関係国際組織。
次元世界通貨基金が価格が大幅に値下がった時空管理局債が現在低価格で買い入れていた
国際金融市場に不要な混乱が出ることを抑制する事が第1の課題である
時空管理局債の償還するにあたって、現在発行されている時空管理局債の総額は100京ミッド近い額になる
これだけの額を次元世界連合が負担することになれば体力的に問題になる
そこで低価格で取引されている時空管理局債を大量購入して、少しでも少ない金額で償還しようというのだ
「まぁね。それで誰が受け入れに納得すると思っているの?こんな案には」
シエルが眺めているのは機動六課組に関する取扱いだ
時空管理局にとっても自らの闇を知っている機動六課組に対する扱いに困難を極めていた
簡単に言えばトカゲのしっぽのような扱いにとのことだ。
仕方がないと言えばそうだが、受け入れをするこちら側にとっては面倒になる
『だからあなたに頼んでいるのよ。急ぐの。即決してもらえない?』
「1時間もらえる?ラジェットと交渉をしてみるわ」
ラジェットとは捜査部1係の捜査官であり1係主任補佐官だ。
2係や3係にはそれぞれ主任捜査官という役職になっているが、
1係は主任補佐官であるラジェット・ハングリーが1係のトップだ。1係には主任捜査官が設置されていない
「事を穏やかに進めるには私の補佐の賛否を確認したいから」
『わかったわ。少しだけは待つけど、できるだけ急いで即決を』
少し待ってと言うとシエルは8階捜査部フロアにあるオペレーションルームに向かった
オペレーションルームには最新の技術が投入されている。そこには捜査部の作戦指揮が行える。
正面には映画のスクリーンのような大型スクリーン ]
左端:[ 各種情報端末・壁には複数のディスプレイ ]
右端:[ 市内全域の地図( 海洋部分も含めた市域 ) ]
そこにラジェット・ハングリー捜査官がいた
「ラジェット。機動六課組に関する報道の状況は?」
「良くはないな。マスコミに漏れるのも時間の問題だ。早速来たという事はこちらへの編入申請か」
察しが良いわねとシエルは答えた。
「その通りよ。だから直属の部下であるあなたに聞きに来たの。あなたならどう判断する?」
「俺か。大反対と言いたいところだが。問題を抱えている事は間違いない」
正面スクリーンには様々な報道番組が表示されていた。
どのメディアも時空管理局の暗い部分。通称:HRと呼ばれている暗部についてまで報道されていた
時空管理局の情勢はかなりのリスクがある。
「あなたは反対しないと?」
「俺はすべての情勢を見ている。リスクがない仕事なんて存在しない。おまけに時空管理局の現役や退役局員は悲惨だ」
退役局員に今まで支給されていた高給な年金に関しても、
その年金を運用を任せていた投資ファンドから金がもらえない情勢が続いている
理由は簡単である。現役時代に退役後に年金を受け取るため、
投資ファンドに預けていたのだが投資ファンドが運用に失敗。
それにより受け取れる年金金額はかなり少ないことになった
おまけに退役局員は銀行などから融資を受けて時空管理局債の購入に使った
当時は安定資産だったが今では火の車だ。
今の生活も受け取っている年金ではやりくりできなくなってしまった。
高齢になってもアルバイトをしなければならない所まで追い詰められている人間もいる
「これを見てほしい」
ラジェットは1冊のファイルを渡した
機密のハンコが押されたファイルだった
「どこでこれを?」
「情報は集まるものだ。幹部になれば多くの機密情報がな」
ラジェットが渡したファイルの題名はこう記載されていた
時空管理局機動六課に関する人事報告書だ。ラジェットに簡単にわたるような資料ではない
極秘中の極秘事項である
「捜査部ナンバー2をしてきたあなたには豊富な情報と人脈が集まってくるわけね」
とにかく判断してほしいのとシエルはラジェットの機動六課組の調整に関しての決断を迫った
「上は何て言ってきている?おおよそ見当はつくが」
「エリは形だけこちらの意見を求めているけど、実質は決定路線でしょうね」
ラジェットはクラナガン捜査局の上層部が決定していることは理解していた
面倒な事はすべて押し付けてくることは十分把握していた。
「俺にはやて・八神をやらせてくれるなら説得はしてやる」
ラジェットはクラナガン市の北西方向にある旧ベルカ自治区。
今のベルカ州出身だ。彼には深い闇がある。
ベルカ自治区時代にベルカで生まれて、州政府へ移行を目的とする組織に所属していた時がある
彼はさまざまな情報をクラナガン捜査部に提供した。
その中には聖王教会に関する様々な不祥事に関する情報提供が条件とされていた
情報提供によって聖王教会や時空管理局の暗いそこの闇の事実を明らかに。
数年間は刑務所に収監される予定だったが保護観察下の状況下でクラナガン捜査部に加入
もちろん厳しい監視の目で見られることは分かっていたが、彼はさまざまな信頼を勝ち取ってきた
全ては罪なき人々を守るために行動をしたからだ
「わかったわ。このファイル。もらっても良いの?」
「好きにしてくれ。それに部下が知った情報は上司に報告する事が義務付けられているからな」
ラジェットの言葉を聞いてありがとうと言って捜査部オペレーションルームを出ていった
オペレーションルームの情報管制をしているギブリ・インディが質問してきた
「良いのか?豪勢な手土産をプレゼントして」
「貸しがある知り合いは多くいる。あれくらいのことで俺がビビると思わないでくれ」
ラジェットはそう言うとある報道番組を空間モニタで見始めた
その報道番組はある特集を組んでいた。
JS事件に関するもので時空管理局の最高指導者とスカリエッティの関係。それも大々的に流していた。
スキャンダルは誰もが喜ぶネタである
「時空管理局に恨みがあるお前にとっては楽しんでいるのか?」
「ギブリ。俺は恨みはあるがそれを公私混同するほど馬鹿な人間じゃない。俺は正義の味方なんだからな」
「よくもまぁ言えたものだな。シエル首席は気づいているが陰でこっそりとアルバイトをしているだろ」
「シエル首席が何も言ってこなければ関知しないという事だ。シエルに昔こう言った」
俺が起こした不祥事が火種になるようなトラブルが起こりそうならクビにしろとなとラジェットは言った
「お前は怖い奴だ。敵でない事が嬉しい限りだ」
ギブリはそう言うと引き続き情報収集を行った
『時空管理局の上部組織として立ち上がった国際組織。次元世界連合は時空管理局と聖王教会の闇を暴くと』
『次元世界連合安全保障理事会で次元世界連合加盟国の法執行機関が今までの時空管理局の活動を調査するとも発表』
ニュース専門チャンネルのテレビ番組では時空管理局の闇について徹底的な報道をしていた
今までは圧力をかけられてかなり報道規制がかけられていた。今は全く状況が異なっている
自由に時空管理局の闇を報道していた。もう規制という名のダムから水があふれるように徹底的に情報が漏れていた
時空管理局に所属していた職員は大量リストラされた。
おまけに退職金や退役後に受け取れるはずだった年金も大幅に縮小された
時空管理局に物資を収めていたワンワールドカンパニーという企業も時空管理局が破綻すると同じようになった
今は大量リストラされた退役時空管理局員は毎日の生活にも困っている
そのため犯罪をしてでも生活費を稼ごうとしていた。特にクラナガン市の北西にあったベルカ自治区。
現在のベルカ州では聖王教会に関係するトラブルが大量に発生している
ワンワールドグループ企業とも関係があった。ワンワールドグループ企業は時空管理局が管轄権を持っていたすべての管理世界で企業活動をしていた。
今は時空管理局と同じで破綻して何もかも失った
ワンワールドグループ企業には銀行や投資銀行やファンドなどの金融部門が数多くあった
彼らが出していた金融商品はすべて紙くず同然になってしまった。
特に時空管理局が発行していた時空管理局債は紙くず同然になり価値がまったくなくなった
時空管理局債の債務残高は数京ミッドを超えていている。
債権が紙くずになり大量の負債を抱えている投資家は多い
次元世界連合は時空管理局債を数ミッドですべて購入。
金融市場では時空管理局債はすべてなくなってしまった。大量の赤字を抱えている投資家はかなりの人数だ
時空管理局債は安全であるという神話があったことが致命的な理由である
聖王教会でも聖王教会債を発行していた。それらもすべて紙くずになった
価値はない。それを抱えていた投資家は財産を失うことになってしまった
財産どころか借金まで抱えることになった。一方である企業は大きくなった。
ミーミルグループという企業グループである。あらゆる業種に展開している企業グループである。
スカリエッティが開発したAMFによって、今まで魔石燃料を使った魔力精製炉発電所の安定が難しくなった
そのために火力発電などの電源分散化を行っている。
おかげでミッドチルダ連邦国内はバブル景気になろうとしている
連邦準備銀行は政策金利を大幅に引き上げている。同時に預金準備率も引き上げている
これらの金融政策によって国内の景気動向を抑制しようとしているが難しい道ではある
ちなみにミーミルグループは証券取引所に上場していない非上場企業。
4人の人物が株式を保有している。非上場企業ではあるが基本的には様々な企業情報を開示している
「できることなら問題が大きくならないほうが良いのだがな」
『中央本部から各員へ。旧時空管理局地上本部の解体作業が間もなく行われる。警戒態勢を維持せよ』
JS事件によって多くを損傷した地上本部は解体されることが決まっている
同時に時空管理局は本局と地上本部という区別を廃止。
クラナガン市内に新たに時空管理局本部庁舎を設置。
さらに時空管理局の管轄範囲は次元空間と無人世界だけになっている。
次元世界連合全加盟国内の警察業務は時空管理局とは切り離された法執行機関が立ち上がって業務を引き継いでいる
時空管理局ではそのために大規模のリストラが行われた。組織のスリム化を行うことで無駄な出費を抑える
さらに時空管理局の事務部門は次元世界連合が選出したものに仕切りを行わせることになった
しっかりとした文民統制(シビリアンコントロール)が機能する行政組織に変わりつつある
JS事件までは時空管理局にはしっかりとした文民統制をするだけの機能がなかった
だからこそ暴走することになった。今はかつて犯してしまった罪の捜査を受けることを待つだけである
捜査対象になっている人数を少なく見ても数万人も存在する
それだけ時空管理局には暗い部分があったということだ
今はこれまで犯した罪の償いをしている真っ最中である
今のミッドチルダ連邦国内の景気が極めていいのはある意味ではスカリエッティのおかげである
あの男が開発したAMFによって魔石を使用した魔力精製炉発電による発送電の安定供給に疑問ができた
だからこそ火力発電や水力発電などの様々な電源分散化に動いている
設備投資などのおかげで国内の景気はバブル景気のような状況なのだ
今後は火力や水力などの電源分散化による発電所建設が進むことは間違いない
同時に石油や石炭などの様々なエネルギー資源開発が求められる
新暦以降は時空管理局が魔力精製炉発電という安価で安全性の高い発電方式をメイン電源として採用してきた
特に時空管理局の影響下にある管理世界には発電所の割合で魔力精製炉発電は5割以上になっている
だがそれも今は大きな転換期を迎えている。
ミッドチルダ連邦国内だけでなく、次元世界連合全加盟国には豊富な鉱物資源が眠っている。
魔石燃料に頼ってきたことからほかの資源開発はしてこなかった。そのため石油や石炭などの鉱物資源がある
さらに今に技術では惑星汚染物質を分解する技術が開発されている。
おかげで工場などから排出される汚染物質はほぼすべて分解される。
化石燃料を使用しても温暖化や惑星の大気汚染になることは基本的には考えられない
『連邦準備銀行はさらに政策金利を12%から14%に引き上げることを検討しているとの情報があります』
政策金利が14%に引き上げられても今の国内景気の状況をコントロールするのは簡単には進まない
極めて難しい判断に迫られることはだれの目から見ても明らかである
「連邦準備銀行は大変だな。バブル経済にならないように金利を引き上げているのにまるで効果がないのだから」
その影響は金融犯罪も発生することを示している
インサイダー取引などが頻発するのだ。このように金融市場が荒れているときは特にその傾向が高い
捜査をする立場から言えば面倒ではあるが。これも仕方がない
『クラナガン原油価格は1バレル8000ミッドになっています』
クラナガン市内にはいくつもの油田やガス田やそのほかにも様々な鉱物資源が眠っている鉱脈が存在している
JS事件前は低い価格で市場で取引されていたが今は高値で取引されている
それだけに資源開発はかなり進んでいる。国内の車は大きく分けると2種類に分けられている
石油系統燃料車と電気自動車である。
ガソリンなどの石油系統車両から排出される排ガスは惑星汚染物質分解装置で排出されない。
環境には優しいが燃料価格はその時々によって変化する。見極めるところが必要である
電気自動車は高性能なバッテリーが流通しているので1度充電すれば最低でも200kmを走ることができる
だがトラックなどの場合は石油系統の燃料のほうがパワーがある
国内で走行している電気自動車は小型車が主流となっている
「燃料価格が上がれば苦労するだろうな。運輸関係の企業は。資源開発会社にとっては利益だがな」
『火力発電所で使用される石油系燃料や天然ガスや石炭などの燃料価格も上昇。影響は電気代にすぐに出るでしょう』
「資源価格が値上がりすれば物価も連動して値上がり。そうなればなおさら利益を得ようと動く連中は増える」
ラジェットはヘッジファンドの動向を気にしていた
今後の状況次第では大きな波にもまれることは容易に想像できる
最悪の事態に備えて行動することが求められる
「ギブリ、ベルカ州にある聖王教会本部の偵察画像を過去48時間までさかのぼって収集してくれ」
中央パトロールと港湾パトロールは独自に大量の人工衛星を保有している
1つの人工衛星に様々な機能が積み込まれた多機能型人工衛星であるが
以前は港湾パトロールのものを借りる形で使っていたが独自保有と衛星軌道上に展開されている
これにより港湾パトロールに頭を下げる理由はなくなり好きなときに使用することができる
「何を知りたいんだ?」
「聖王教会の内情を知っておく必要があるだろ。通信傍受も。ただしこちらが偵察していることを知られない程度に」
難しい注文だなと答えるとギブリは情報端末を操作して過去48時間のベルカ州中央地方にある聖王教会本部
その偵察衛星画像を集めてきた。それを様々な角度から分析した
「正面スクリーンに映し出す」
無線通信の情報も入ってきた。
それによると聖王教会で最高指導者を務めることになるのはカリム・グラシアになっている
聖王教会にも大きな闇がある。
スカリエッティと組んでいた幹部だけでなくベルカ自治区時代に犯罪組織と結託、
自治区内で麻薬や銃火器などの密造工場のバックアップをしていた
そういった幹部はベルカ州政府が発足した時に州警察に全員身柄が拘束されて拘置所に収監されている
今は捜査と裁判を待つ状態になっているのだ。
闇を抱えているものの多くは犯罪組織からかなりの金を受け取り私腹を肥やしていた
「ベルカ州警察は大変だな。俺たちが教導官役をして育ててきたが。今が正念場だな」
クラナガン捜査局はミッドチルダ連邦構内だけでなく、
次元世界連合全加盟国から警察官の教導官役を育てるために受け入れをしてきた
今は多くの次元世界国で彼らが教導官として新しい捜査官を育てている
ちなみにクラナガン捜査局には軍が運用する艦船だけでなく、戦闘機などの軍用機を保有している
陸上戦闘部隊は港湾パトロール海兵隊である。
海兵隊はかなり厳しく鍛えられているのであらゆる任務に対応できる能力を持っている
中央パトロールはクラナガン市内の警察組織という名の法執行機関として機能している
空港パトロールはクラナガン市と近隣集の空港内の警察業務を担当している法執行機関である
『中央本部から各員へ。ワンワールドグループ企業の破綻により退役時空管理局員が暴走する可能性あり』
警戒せよとのことだった。もしかしたらでは済まない
ワンワールドグループ企業は時空管理局と完全に一体化したような関係だった
ワンワールドグループ企業には銀行や投資銀行やファンドなどの金融機関部門があった
そのほかにも時空管理局に物資を納入する場合は必ずワンワールドカンパニーという企業が絡んでいた
時空管理局は局員の給与振り込みをワンワールドバンクで行っていた
完全に持ちつ持たれつの関係にあったが今は大きく異なる
物資納入は競争入札制になっている。以前は時空管理局の幹部の天下り先となっていた
今は破綻したのでほぼ全員が拘束されている
次元世界連合では退役時空管理局員の天下りを全面禁止にしている
「機動六課組の基地はどうだ?」
「抗議している連中が集まっている。そんな連中を俺たちは受け入れるのか?いやな仕事だな」
「仕方がない。受け入れなければ殺されるのだからな」
機動六課組はJS事件の真相を明らかにしたが時空管理局という組織を破壊した
かなりの人物に恨まれていることは簡単に想像することができる
「機動六課組はパンドラの箱を開けたな。箱の中身は真実でもとんでもないものが入っていることを予測しないで」
少しでも危険であることを認識すれば動きがあったはずだ
だがそんなことは知らないで真実だけを見ていた。自浄作用がある組織ならよかったのだが、
時空管理局にはそのような部門は形だけの存在であり正常に機能していなかった
それでは意味がない。何も
「本当に大変なことになるかもしれないな。今はそれを抑えるしかないが」
『港湾本部から中央本部。スタントン州の海域に潜水艦を確認との連絡あり。最悪の事態に備えて行動を』
潜水艦といっても色々と種類がある。巡航ミサイルと魚雷を搭載した攻撃型潜水艦
最も恐ろしいのは弾道ミサイルを搭載した戦略ミサイル搭載型潜水艦だ
もし弾道ミサイルの弾道に魔力爆弾が搭載されていたら被害は甚大になる
それを止めるためにクラナガン捜査局は存在している
ちなみに自衛権のための軍備に関して国際条約で所有することができる兵器が定められている
大陸間弾道ミサイルは基本的には製造・所有・運用は禁止されている
中距離弾道ミサイルは所有が認められているが発射には大きなリスクがある
弾頭は高性能爆薬であっても国際政治に大きな影響を与える。
それゆえに次元世界連合の許可を取り付けることが優先事項になってくる
中距離弾道ミサイルの最大射程は5000km前後。それ以上の射程を持つ弾道ミサイルの所有・運用は認められていない
港湾パトロールでは弾道ミサイル搭載型潜水艦を保有することで、
クラナガン市と近隣州を守るために使用している
「戦争のない世界があれば良いが、世の中はきれいごとでは片付くことはないな」
必ずどこかで負荷がかかってしまうが、これも仕方がないことである
問題はどこを落としどころにするかが極めて重要になってくる
「捜査長官は今ごろ次元世界連合に向かっているだろうな。今後の交渉次第で状況が変わるかもしれないしな」
次元世界連合は時空管理局の上部組織。今の時空管理局は次元世界連合の下部組織である
かつての栄光はすでに地に落ちている。あらゆる権限は取り上げられている
管轄エリアもかなり限定されていることから人員は大量解雇された
リストラされた退役時空管理局員の末路は極めて悲惨なものであることは間違いない
今後の状況次第でどうなるかは全く予測がつかない
「時空管理局は大量の地雷を埋めているのと同じだな。ギブリ。退役局員で危険人物に該当するリストを作ってくれ」
ラジェットはそういうと捜査部オペレーションルームを出て行った
ギブリは大きく荒れるかもしれないなと考えながらもラジェットの指示を聞き、
危険人物のリストをまとめる作業に入っていった
何が出るかわからないというのは危険指数が急上昇するのと同じであることを示している
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中央パトロール本部庁舎 2階事務部首席事務官執務室
首席事務官は中央パトロールの事務方のトップである
機動六課組の取り扱いに関する報告書をリーザ・コンパーノが見ていた
「ひどい話ね。真実を明らかにしたら時空管理局という組織をつぶす行為になるなんて」
機動六課は確かにスカリエッティによる犯罪を暴いた
しかしそれは時空管理局の崩壊にもつながってしまった
時空管理局員にとっては暗殺したいところだが、そんなことをすれば自爆行為だ
崖っぷちに立っているのと同じ状況なのだから大変である
「問題はどこまで追いつめられるかです」
執務室には首席事務補佐官のテリオス・コンパーノもいた。リーザとは姉弟の関係である。
補佐官として今後の機動六課組の受け入れについて対応する必要がある。
だからこそ協議を行っていたのだ
「今の時空管理局にはもう体力はないわ。組織規模と権限の縮小で追い詰められている」
あとはどこまでも地獄に向かって転がり続けていくだけであるとリーザはつぶやいた
「ひどい話だな。守るべきものを牛うなったからと言って責任を放り投げる。無責任の子供のように」
時空管理局が権力を握っていたころは好き勝手にできた
だが今はその逆で、その過去をかなり激しく掘り下げられている
今後の動向次第でどうなるかはわからない。
最悪の場合は時空管理局という組織がつぶれるかもしれないのだ
誰もそこまでの道を選びたくないが仕方がない。これが今まで犯した罪の代償なのだから
「ワンワールドグループ企業が抱えた不良債権は何千京ミッドにもなる。影響は長期にわたることは間違いない」
「テリオス。ワンワールドバンクが抱えている不良債権の総額は軽く見てどれくらいなの?」
「今のところでは1000京ミッドを超えている。今後さらに増えることになる」
「経済に与えるダメージは極めて甚大になることは確かね」
ワンワールドグループ企業が発行していた社債や株式や証券化商品の値段は暴落した
さらにペイオフの解禁でワンワールドバンクの預金の多くを失った富豪は極めて多い
ワンワールドグループ企業は破綻することなどありえないというのが通説だった
仮につぶれそうになっても影響が大きすぎることから救済措置が取られるという思惑があった
だがそれが実行されることなく、ワンワールドバンクは破綻した
預金のうちミッドチルダ連邦法で国内の預金者は1000万ミッドまでしか預金保護はされない
それ以上の預金は保護対象から外されているので失ったも同然である
「ワンワールドバンク関係でトラブル多発が予見されるから警戒を呼び掛けて」
大量の不良債権を抱えているワンワールドバンクの破綻は多くの次元世界国の金融市場に影響を与えている
ミッドチルダ連邦国内だけでもワンワールドバンクがメインバンクとしていた企業の株価は大きく急落している
さらにワンワールドバンクから融資を受けていた債務者は返済に追われている
返済どころか自己破産がかなり急増している。これによる影響は甚大である
自己破産をすれば借金はなくなるが様々な制裁を受けることになる
クレジットカードの作成や金融機関から融資を受けることができないなど、
生活にかなり行き詰ってしまうことになる。
カードや預金口座開設ができなくなると現金で常に生活しなければいけないのだ
日常生活はかなり苦しい。仕事をするのも公務員になることはできないなどの制約がある
苦労することは間違いない
「クラナガン市内に自己破産申請をした人間はどれくらいの数になるの?」
「かなりの人数になるとだけしか今は言えません。申請件数は市内だけで数万件にもなっているので」
クラナガン市の人口は2億人である。今後さらに増えるかもしれない
だからといって自己破産者の増大は市内の経済に大きな悪影響を与えるかもしれない
金に困れば犯罪発生率も高まる。『もしも』のプランを練る必要がある
自己破産者が増大すれば、国内金融市場だけでなく国際金融市場にも大きな影響が生じる
「自己破産者の多くがワンワールドバンクから融資を受けた債務者。回収のために徹底的に財産の差し押さえを実行中」
「今のところは大丈夫だけど状況によっては危険になる確率は高いわね」
「市内にあるワンワールドバンクの支店には警戒態勢を発令しています」
クラナガン捜査局はクラナガン市内の銀行などの営業拠点に警備のためにパトロール捜査官を派遣している
希望があれば無償で受けることができる。これは銀行強盗を防ぐためには大きな抑止力となっている
国内のほかの州でも同様の制度を実行している警察などの法執行機関は多い
犯罪を未然に防ぐには効果は十分ある
「それにしても、JS事件の影響はかなり広範囲で酷い有様ね」
よくもここまで世界情勢を壊すことができたものだとリーザは言った。彼女の言葉は正論である。
時空管理局が暴走して、暗い闇を一気にまき散らしたからこそ、ここまでひどいことになった
今後どうなるかは全く予測できるものではない。何時どうなるか。
新たに大きな騒動が生まれるかもしれない。それを抑え込むために警察などの法執行機関が存在している
『クラナガン原油先物価格は1バレルで7800ミッドを超えています。JS事件後は急激な上昇に』
『今後、自動車燃料価格の上昇だけでなく、様々な物価上昇につながるとのことです』
石油由来の製品はリサイクルがされているとはいっても様々な物価値上げの要因になる
急激な値動きを避けるためにも多くの次元世界国政府は原油などのエネルギー資源の備蓄は極めて重要である
緊急時には放出することで急激な値動きをコントロールすることができる
『基本的に需給バランスはしっかりと保たれているとしていますが、ヘッジファンドは大きく動くかもしれません』
先物価格の値段はすぐには反映されない。
1か月か数か月後にその実際に先物価格の取引価格が反映されてくる
だからこそ原油先物価格は物価などを見る指数として最も重要である
「クラナガン市政府は急激な変動があった場合は備蓄原油の放出を想定しているとのことです」
クラナガン市は州政府ではない。ミッドチルダ連邦の首都であるクラナガン市が州と名乗るのは危険と判断
クラナガン市は正式にはクラナガン州クラナガン市という名前だが、誰もがクラナガン州と名乗ることはしない。
基本的にはクラナガン市と名乗ることにしている。
首都であるクラナガン市はミッドチルダ連邦の国内金融の拠点である
市内には国内最大の証券取引所や商品取引所などの様々な金融市場取引所が設置されている
『クラナガン平均株価は2万ミッドから3万ミッドの間で揺れています』
ミッドチルダ連邦国内にある金融市場は基本的には1年中24時間常にいつも取引できる
土曜日も日曜日も関係なく金融市場が開設されている
それだけに金融市場の数字は常に値動きすることから、冷静な判断ができなければ危険である
少しの判断ミスが財産を失うことを意味している
『ミッドチルダ連邦政府は連邦国防省設立に伴う国防関係の予算を作り出すための国債を発行すると公表』
『第1段階として額面で5000兆ミッドの1年物短期国債の発行を行うと』
国防用の艦船や航空機を配置するために使われる債権である
ミッドチルダ連邦政府は豊富な基金を持っている。
別に国債を発行しなくても予算編成などは簡単にすることはできるが、
国防のためだからと言って基金から資金をねん出していたらいつかはコントロールすることができなくなるかもしれない
それを避けるために国防費をねん出するために国債発行を行うのだ
それも1年後には償還される短期国債であることが重要である。ちなみに金利は1%となっている。
低金利でも今の金融市場ではワンワールドグループ企業関係などで財産を失った者達が買いに来るのは当然である
誰もが新しい投資先を求めている。仮に低金利であっても安定しているミッドチルダ連邦国債なら確実に償還される
安心できる債権として買い注文が多く入るのは間違いない
ミッドチルダ連邦国債は絶対に償還される債権なのだ。安全を100%保証しているといっても過言ではない
ちなみに時空管理局の予算は次元世界連合で作成されることになる
その審査は次元世界連合層の総会で審議されて過半数を入れられたら承認される
今までは大量に予算要求をしてきたが今年からは大幅に圧縮されることになる
今年の時空管理局の予算は5000兆ミッドになっている。
JS事件前までは数十京ミッドになっていることを考えると大幅に削減されている
一番の削減の多さは人件費だ。その次に物資納入は完全競争入札制の2本柱だ
これだけで大幅な予算カットに成功することになった。
本局と地上本部に分かれていた部署の統合でさらに人件費の削減など、
無駄なコストがかからないようにすることを最重要課題としている
給与水準も大幅に減少させることに成功していた。
今後もさらに無駄な予算を見つけては削減対象にするだけである
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南区北部イーストハーディー地区3番街1丁目と2丁目の間の通り
「こちらSA13。現在イーストハーディー地区で警戒中」
『南分署からSA13。引き続き警戒態勢の維持を要請する。中央本部にはこちらから連絡をする』
SA12は捜査部1係のフィリー・アクシオムの無線識別コードである
捜査部に属するメンバーはそれぞれ捜査部にしか割り振られることのない無線識別コードで無線交信をしている
これによりだれがどこにいるのかを簡単にわからないようしている。
それ以外にもクラナガン捜査局で使用している無線はデジタル暗号方式を採用しているので、
傍受をすることができても簡単に解読することはできない。専用の暗号コードを入力しないと意味がない
フィリーは事件事故について車載搭載端末を使って確認したが今のところは何もない
つまりこの地区と近隣地区は安全ということである。だからといって安心できるわけではない。
ハーディー地区とその近隣地区はもともとは低所得者向けのの住宅が多かった
以前から犯罪発生率は極めて高い。そんなところで平和などありえない
もしかしたら何かが起きる前兆かもしれない。
冷静な判断能力が求められる現場であることは間違いない
「さっさと見つかればいいんだけど」
フィリーはある人物の目撃情報から張り込みをしていた
その人物は時空管理局の幹部で地上本部に物資納入の選択権があった人物だ
簡単に言ってしまえば裏金をもらっていた。それもかなりの金額の
その事実が発覚する直前に逃走した。今は指名手配を受けて次元世界連合全加盟国で手配がかけられている
「街灯観測システムの映像で最後に確認されたのは1時間前。もう1度、包囲網の中に来ればいいけど」
市内には街灯のような形状をしたクラナガン捜査局が使用する様々な支援機能が詰め込まれた装置が存在している
街灯観測システムとは名前の通り街灯のような形をしているからそう呼ばれている
機能としては監視カメラや無線通信中継だけでなく気象観測も行う優れものである
この装置によって犯罪者の逮捕率は極めて高い。証拠画像としても採用されることが多い
「街灯観測システムの監視映像で引っかかれば何かわかるんだけど」
『中央本部からからSA13。警戒態勢を維持して待機せよ』
「そちらでもハーディー地区の顔認証検索は行っているの?」
『中央本部でも継続して実行中。何か情報が入り次第連絡を入れる。それまで待機されたし』
捜査対象者である以上、必ず身柄の確保を行わなければならない
ミスをすることは許されない。万が一に備えて対応するというのはそういうことである
「まだこのあたりにいてくれると助かるんだけど」
簡単に見つかるような奴でないことはわかっている
もしもすぐに確保されている対象なら既に拘置所に収監されているはず
それができていないということは簡単に捕まえることができないことを示している
逃がした魚はかなり大きい。何としても釣り上げなければならない
何時までも逃亡生活を送るのはかなり難しい。
犯罪者が逃亡生活をするにはかなりの資金が必要になるからだ
銀行などの金融機関の口座はすべて凍結されていることから現金を常に持つことになる
そういった生活をするには通常の日常生活よりも多くの資金が必要になる
長い逃亡生活は金がかかって仕方がない。苦労することはかなり多いことは間違いない
「どこに隠れているか。絞り込む材料があれば助かるけど」
フィリーは車載情報端末を操作してある検索エンジンにかけた
それは港湾パトロール安全保障局が運用しているデータベースにアクセスするときに使うシステム
港湾パトロール安全保障局は国内の安全保障にかかわる重要情報の収集と分析を行っている
もちろん対外工作も行う諜報機関の1つでもある。
基本的にはミッドチルダ連邦大統領に最新の情報を提供している
中央本部捜査部の捜査官は港湾パトロールで鍛えられている
現在は離れているが、必要になれば訓練を受けた部隊で軍事作戦に参加もする
だからこそ機密情報取り扱い資格を持っている。この資格がなければ機密情報へのアクセスはできない
捜査部捜査官は数多くの機密情報にアクセスするのだから必ず必要になる
「どこにいるの?」
フィリーは過去48時間のこの周辺に設置されている街灯観測システムの監視カメラ映像を確認した
ヒットするかどうかは本当に運次第である。確率から言ってそれほど高いものとは言えない
それでも挑戦することが求められるのだ。仕方がないことではあるが
確認作業をしながらニュース専門のテレビ番組を見始めた
『JS事件後は時空管理局に物資を納入していた企業の破産申請が急激に増加しています』
『ワンワールドグループ企業の破綻で預金を失った人物も極めて増加』
『融資を受けていた対象の半分以上は回収不能の不良債権になっています』
『金融機関の関係者からは破産者はこれからもさらに増大することは間違いないとの意見が多いです』
もともと時空管理局の物資納入には必ずワンワールドグループ企業が関与していた
今後はどうなるかは全く予測できない。最悪の状態に備えることは当たり前だ
すでに破綻しているワンワールドグループの金融関係の企業は大量の不良債権を抱えている
今わかっているだけでも総額1000京ミッドを超えている。今後はさらに増加することは間違いない
少しでも縮小させるためにも回収できるものは徹底的に回収しなければいけない
しかし実際には簡単にその通りに事が進むことはないのだ
苦難の道を歩くことはわかっている
『ベルカ州議会では初めての州議会選挙で当選された州議会議員のうち聖王教会関係者は全員落選』
聖王教会はベルカ自治区からベルカ州に移行されて初めての選挙に次々と立候補者を送り込んだが全員落選した
今は反聖王教会派の人間の議員が中心に州議会が構成されている
『反聖王教会派の政党が与党に。州議会は聖王教会に対する調査を連邦政府と次元世界連合に求めると』
旧ベルカ自治区、現在のベルカ州では今年から州政府が発足した
州議会では聖王教会を徹底的に監査対象にすることで州内の安全確保に努めるとしている
州知事は港湾パトロールに属していたが、ベルカ州知事選に出るために退役した
今のベルカ州知事は35歳のアルス・トーシンである。
ちなみに州内にはいくつかの港湾パトロール基地が設置されている
州都であるベルカ市の周辺には港湾パトロールの基地や聖王教会本部がある
最重要警戒組織として港湾パトロールは監視を行っている
「大きな動きがこっちにも影響を与えてこなければいいけど」
今のベルカ州はかなり景気が良い。
ベルカ自治区時代は環境保護のために資源開発をかなり押さえつけていた
しかし今は環境基準を守ることができれば好きなだけ資源開発ができる
州内には石油や石炭だけでなく、様々な資源が眠っている
大きく稼ぎチャンスでもある。そのため資源開発が進んでいる
それに州内の道路や鉄道網などの各種ライフラインを充実させるための公共工事もかなり多く行われている
州内の経済はまるでバブル景気のような状況である。コントロールするのはかなり苦労するだろうが
ベルカ州政府は公共事業を行うために州債を発行している。発行金額は100兆ミッド分。
公共工事で安全な債権として低金利でも買い注文が殺到している。ちなみにベルカ州債の金利は1%。
『南分署から各員へ。サウスハーディー地区でけんかの通報を受電中。至急急行されたし』
小さなうちにトラブルを解決しなければ影響は大きくなる
被害を最小限に抑え込むためには何としても素早い対応が必要になってくるのだ
「誰がトラブルを起こしているの?」
フィリーは車載情報端末を操作して確認した
顔認証システムで照合した結果、退役時空管理局員の2人がもめているようだ。
どちらも過去に怪しい経歴はない。『クリーンな人間』であるということだ
時空管理局の大量リストラで解雇された人間であることは間違いない
再就職にかなり苦労している。今は日雇い労働者として建設現場の労働者として生計を立てていた
「あちらは問題はなさそうね」
ホワイトカラーの仕事からブルーカラーの仕事に移った
プライドが邪魔をしているかもしれないが、生活をするにはお金が必要になる
そのためには文句を言っているような状況ではなかったのだろう
今は生活するので精一杯といった感じである
「苦労するわね。天国から地獄に落とされると」
生活に行き詰ってけんかをして刑務所に放り込まれる。
その先に待っているのは悲惨な末路であることは確かである
リスクがあることをわかっていても危険な橋を渡らなくては生活できないというところまで追いつめられている
それどころか見つかり次第、裁判を受けさせられて刑務所に放り込まれる道になるかもしれない
『ピーピーピー』
フィリーの携帯電話に着信が入ってきた
発信者はシエルからだった
「シエル首席。こちらはハーディー地区周辺で警戒中」
『引き続き警戒を行って。それとある仕事を任せたいの』
シエルはハーディー地区に本社があるハーディーバンクでもめている事案について対応してほしいとのことだ
ハーディーバンクは低所得者が多いハーディー地区や近隣地区で規模が大きい金融機関である
活動範囲は主にクラナガン市内だけである。ハーディー地区と近隣地区ではかなりの融資をしている
低所得者がよく利用する金融機関であるが、預けられている預金総額はかなりの金額になっている
「こっちは問題を抱えていることはわかっていますよね?シエル首席」
『もちろんよ。優先事項があればこちらで対応するから』
「上は今ごろ大慌てで機動六課組の保護のために動いているって話は本当なんですか?」
『時空管理局にとって機動六課組は問題集団でしかない。だからこちらに身柄保護を依頼しているらしいわ』
「面倒ごとを押し付けて高みの見物ですか。時空管理局にメリットはあってもこちらにはデメリットしかない」
『仕方がないわ。これは想定されていたことだから否定できないけど』
「現場に苦労を掛けないようにしてほしいですね。こちらはいつも忙しいのに」
捜査部捜査官は常に事件捜査のために活動している
有給休暇という制度はあるが、事件解決を優先することが多いので取得率はかなり低い
仮に有給休暇を取らない場合は無休業務手当で給与に上乗せさせられる
自宅で休んでいるときも事件捜査のことを考えていることから苦労することが多い
『念のために警戒態勢を敷くのよ。機動六課の基地にはすでに港湾パトロール海兵隊が展開しているわ』
海兵隊だけでなく機動六課基地の東の沖合にはイージス艦が配置されている
リスクについて対策をするには全力で対応しなければいけない
「本当にひどい話はどれくらい続きます?」
『これから上層部と会議だけど、機動六課組の主要メンバーの受け入れはこちらでやらされるわ』
「下っ端に問題人事の押し付け。面倒な話です」
『そんなことはわかっているけど仕方がないことだわ。こちらも陰でこっそりと動いていたのだから』
「本当の正義をなすために組織されたのがクラナガン捜査局だと?」
クラナガン捜査局が設立されたことは平和を維持させるために組織された
時空管理局が暴走していたことが多くの次元世界国が知っていた
しかし、時空管理局の力が強すぎてどうすることもできなかった
JS事件後は大きく組織の力の構造が異なっている。今の時空管理局には飼い主が存在している。
次元世界連合という国際機関が飼い主をしている。内部調査の対象はかなりの部署と局員である。
あらゆる問題が解決するまでは次元世界連合は調査対象者は拘置所に収監される
今は問題解決にならなければ拘置所で収監されて、有罪か無罪なのかの判定が出るまでは収監される
「疑惑がなくなるまでは多くの次元世界国にある拘置所に収監されて捜査待ちというわけですか」
『まぁそういうところね。こちらが熱心に治安権限返還を求めて動いていたから多少の面倒は仕方がないわ』
「そうですね」
クラナガン捜査局は時空管理局が禁止にしていた銃などの質量兵器の運用を行っている
もちろん銃火器を扱うには訓練を受けて試験に合格しなければならない
合格しない限りは銃の携帯は認められない。
銃火器の携帯が認められていない間は事務方の部署に配置される
これはかつて時空管理局が設けた制限だったが今になってみればよい制度とも言える
誰もが銃の携帯許可を認めていたら暴走することは目に見えている
ちなみに時空管理局と聖王教会には銃の携帯資格は認められていない
銃などの製造や運用には次元世界連合や次元世界連合傘下の『質量兵器監視機構』の承認が必要である
『質量兵器監視機構』の承認がない限りは様々な銃などの質量兵器の製造・運用が認められない
運用承認試験が厳しいのはだれもが知っている。今の銃火器の弾頭や弾丸にはAMF装置が組み込まれている
おかげで魔導師であってもシールド魔法で防ぐことはできない
スカリエッティが開発したAMF装置は時空管理局での損害率の上昇の要因になっている
敵は銃やミサイルを使っているのに彼らは魔法の運用しか認められていない
そんなことで自分の身を守ることも難しい。
AMF装置が組み込まれた兵器を使われたら魔導師側に防ぐ力はない
負傷率が上がるだけでしかない
『聖王教会の問題についてこちらから港湾パトロール安全保障局に調査を依頼しておくわ』
「彼らが簡単にこちらに情報を流してくれる可能性は低いですけど」
『市内の街灯観測システムの映像で確認作業を進めているけど、時間がかかるわ。スパコンを使ってもね』
クラナガン捜査局にはいくつものスパコンを持っている。
特に中央本部捜査部は独自のスーパーコンピュータを保有している
分析性能は0.0001秒で1極回の浮動小数点数演算が行える
次期捜査部専用スパコンとして0.0000001秒で1極回の浮動小数点数演算が行えるものが最終チェックを受けている
開発はクラナガン市の西隣にあるフローレンス州の東部地方にあるイーストフローレンス基地。
そこにある港湾パトロール研究施設で行われている
2つのスパコンを並行して利用することで検索スピードは極めて高めることができる。今は単独での運用だが。
ちなみに中央パトロールの各分署にも独自のスーパーコンピュータが配備されている
これらの運用によって捜査に必要な指紋などの各種照合作業の効率上昇につながっている
「我々自慢のスパコンでも市内にあるすべての街灯観測システムの照合には時間が必要ということですか」
『そういうことよ。今は最優先で検索をかけているけど時間がかかるわ。港湾本部にも要請しているところよ』
港湾パトロールのスーパーコンピュータは次元世界連合全加盟国が保有しているあらゆるスパコンよりも高性能
素早く検索できるが機密の塊のようなものなので簡単に使わせてくださいと言ったところで難しい
そこはコネがあるかどうかで変わることもあるが
『クラナガン市上下院議会では自動車燃料税の増税に関する審議決議を見送る可能性があると公表』
自動車燃料税は連邦税では1リットルで20ミッド。クラナガン市税で20ミッドが課税されている
今回の増税法案はさらに1リットルの5ミッドの増税であったが、原油先物市場で原油価格が高値で動いている。
増税法案が実質的に凍結されたということである。
原油価格が高値で推移しているということは数か月後には自動車燃料価格も上昇する
物価高騰などの観点から取引価格の安定化のためにクラナガン市政府が備蓄している原油の供給も考えている
一時的に市場に大量の原油が投入することで価格の安定化につなげることができる
しかしそれは紙一重の決断でもある。判断時期を見落とすと大きなダメージになってしまう
政治的駆け引きが極めて重要であることは間違いない
『クラナガン市政府はキャピタルパワーエネルギー社に新たに10兆ミッドの出資を考えていると』
キャピタルパワーエネルギー社はクラナガン市と近隣の州内で発電所の運営をしている
以前はクラナガン市政府と近隣州政府の下部組織だった
現在でも株式の60%をクラナガン市と近隣州がそれぞれ15%ずつを保有している企業
この企業は首都であるクラナガン市と近隣州で構成される首都圏、
それら地域の電力安定供給を滞ることなく実行できるように設立された
クラナガン市政府はさらにクラナガンシティエネルギーという企業を持っている。
そこでは市政府が独自に石油と液化天然ガスの備蓄も行っている
これらによって資源価格の安定化を目指している
クラナガン商品取引所で売買される原油先物価格はミッドチルダ連邦国内で大きな指標として判断される
それだけにクラナガン原油先物取引に参加している投資家は企業や個人とかなりの数になる
金融機関である銀行やヘッジファンドだけでなく、個人投資家も参加して取引が行われている
それだけに些細なうわさや情報だけでも大きな値動きをしてしまう
『クラナガン原油先物価格は1バレル8000ミッドまで上昇』
『一方で多くのエネルギー資源開発企業は需給がひっ迫していることはないと』
つまり需給バランスは崩れていないということだ。
思惑だけで金融市場の原油先物取引価格が高騰している
それはそれで極めて危険なことになることは間違いない
「シエル首席捜査官。これからトラブルが起きているハーディーバンクに向かいます。SWATの派遣も」
『もう手配をかけているわ。あなたの好きなように料理をしてあげてくれたら問題はないから』
つまり好き勝手にしろということだ。規則の範囲内であれば多くのことは認めると
それはそれで助かるというものである。大きな手を打つ前に事前に承認を得る必要がないからだ
事後承諾ですべて物事を進めることができるということはかなりこちらにメリットがある
『とにかくトラブルの早期解決のためには手段を択ばないで。規則の範囲内なら認めるわ』
援護もするからというと通話は終了した。フィリーはさっそく仕事に取り掛かることにした
犯人側に気づかれないように現場に向かった。現場まではそれほど離れていない。
すぐにその場所に到着することができた。すでに現場は包囲網が敷かれている
犯人は窓ガラス越しに見えるだけで10人ほどの人質を取っていた
簡単に手出しができるような状態ではない。下手な行動をすれば人質にけが人が出てしまう
それだけは避けなければならない。人質の無事救出は絶対である
「かなり大きな問題になることは間違いないわね」
現場ではかなり盛り上がっている。マスコミも規制エリアの外で報道合戦をしている
規制エリア内はこちらの関係者だけで固められて立ち入り規制がかけられている
あとはどうやって人質を救出するかである。金融機関の窓ガラスは防弾仕様だ
対物ライフルなら貫通することはできる。だがあの弾が犯人に被弾したら即死である
生け捕りにしなければならないのならそれはだめだ
「プランを練る必要があるわね」
まずは犯人を落ち着かせることだ。窓から見える犯人はM4カービンを所持している。
乱射されたらかなり厄介である。
それを阻止して、生け捕りにするを同時にするとなるとかなり苦労はすることは間違いない
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西区東部クルック地区1番街1丁目 次元世界連合本部庁舎 記者会見室
「時空管理局機動六課基地の主要メンバーの身柄をクラナガン捜査局に移管することを正式に決定」
次元世界連合事務総長のラビット・ボートの記者発表に誰もが驚いていた
「それは機動六課の主要メンバーを守るためでしょうか?」
記者の質問にその通りですと回答した。今の時空管理局に機動六課組はお荷物だ
安全な場所でほぼ隔離された状態のほうが今後の対応で最も安全である
彼らの証言も極めて重要であるからだ。
すべての真実を明らかにするには時には超法規的措置もしなければならない
「今は生まれ変わりつつある新しい時空管理局の再編成に問題になるかもしれない部隊を抱える余裕はありません」
そのための措置ですと誰がどう聞いても邪魔だから出て行ってくれと言っていると感じる
機動六課組は時空管理局の旧体制の幹部のコネがある
その手の人物とは一度切り離すことで時空管理局内の改革を進めるために有効な一手を打てる
今は改革を進めるほうが最優先である
「次元世界連合は時空管理局を正しい法執行機関にすることを目指しています」
以上ですというと記者会見は終了した。記者たちはすぐに報道活動を始めた。
彼らにとってはさぞかし楽しい話題なのであろう。
今までは時空管理局に抑え込まれていたが今は自由に報道することができる
それどころか時空管理局の過去の暗い闇を暴こうとかなり必死になって動いている
時空管理局内の犯罪を操作する時空管理局犯罪捜査局よりも先に報道するくらいに
今のマスコミにとっては最高の状態にあることは間違いない
ラビット・ボートは自らの執務室に戻る。そこではある直通電話の着信音が鳴っていた
「ユウ・ミズノクラナガン捜査長官。そちらへの今回のご迷惑は申し訳ありません」
クラナガン捜査局のトップであるユウ・ミズノは数多くのコネを持っている
それらを利用することで暗い闇に真実という名の光を照明してきた
今もそれらのコネを利用してクラナガン市と近隣州に住んでいる人々に平和を届けようとしている
『こちらとしてもある程度は想定はしていました。問題はそちらがどれほど飴をくれるかです』
「我々次元世界連合としても時空管理局の闇を暴くためにはクラナガン捜査局の協力は必ずほしくなります」
それだけに情報は常に共有する必要があるので連携は密にしたいと考えていますとラビット・ボートは回答した
確かに次元世界連合単独でできる捜査活動ではない。
多くの法執行機関との連携がなければ成功することはない。
『クラナガン捜査局が確保して拘置所に収監されている疑惑がある関係者はかなりの人数になります』
「そのことはもちろんです」
『ミッドチルダ連邦国内だけでなく、次元世界連合全加盟国でもかなりの人数が拘置所に収監されています』
裁判が行われてすべての真相が明らかになるには膨大な時間が必要になる
JS事件関係の裁判がすべて完了するまで、最低でも数年は必要になる
どれくらいですべての作業が終わるかは全く予測できない
「今は真実を明らかにすることを最優先に」
『了解』
そしてユウ・ミズノとの通話は終了した
「本当にどれだけの時間が必要になるかは見当もつかないわね」
『先ほど聖王教会傘下のセントラルベルカバンクが債務超過で破綻をミッドチルダ連邦政府に申請をしました』
債務超過。それはつまり収支が債務残高が資産を超えたことを示している
金融機関にとってはそれは致命的である。破綻申請をするしか道はないのだ
影響はさらに拡大することは間違いない。聖王教会が発行していた聖王教会債を大量に保有していた
それがとどめになってしまった。金融市場で聖王教会債の取引価格が暴落したことで資産から負債に変わった
状況としてはかなり危険な状況であり、選択肢はかなり限られていた
だからこそはミッドチルダ連邦政府に破綻申請をした
『不良債権は3000兆ミッドになっているとのことです』
セントラルベルカバンクは聖王教会が株式のすべてを保有している金融機関だ
そこがつぶれるとなると聖王教会への影響もかなりのものになる
どこまで影響が出るかは想像もしたくない。再建する道はかなりの茨の道であることは間違いない
いっそのこと潰してしまったほうが良いかもしれないが、そう簡単にそちらの路線を選ぶわけにはいかない
銀行などの金融機関の破綻処理はかなりの時間が必要になる
それにほかの金融機関とのつながりというものが簡単に切れるものではない
今は金融機関は時空管理局債や聖王教会債を抱えていたことから資金繰りに行き詰っている金融機関も多い
わずかにこうなることを想定して時空管理局債などの空売りを仕掛けて大儲けをしたところもあった
それはかなり限定されている投資家である。多くの投資家はかなりの資金を失っている
金融機関は不良債権をかなり抱えて再建のためにかなり苦労している
今は少しでも自らの財務状況が悪化しないことに努めるしかない
「どこも自らの再建で精一杯の様子とは?」
--------------------------(16ページ)
中央区中央部セントラル地区2番街 ミッドチルダ連邦大統領府(ホワイトハウス) 大統領執務室
「国内の金融機関はかなり大きな問題を抱えています」
ミッドチルダ連邦大統領のアンナ・ランシングは経済政策担当大統領補佐官と協議をしていた
国内の金融機関は時空管理局債や聖王教会債だけでなくワンワールドグループ企業が発行していた債権、
それらがすべて紙くずになって経済的に追い詰められている
金融市場では債券は価値がない。買う人間がいないので値が付かない状況にある
「金融市場では時空管理局債やワンワールドグループ企業の株式や債券は破綻で影響はかなり大きいです」
「今後の想定は?」
「ワンワールドグループ企業から破綻申請が出されています。今後はさらに関連会社の破産申請が増加するかと」
時空管理局に物資を収める場合は必ずワンワールドグループが絡んでいた
そして時空管理局の幹部だったものは退役後は天下り先として高給を受け取っていた
酷いどころの話ではない。完全に泥沼の状況にあった。この先の対応方法としては慎重に選ばなければならない
少しでも間違った選択をすると今の景気が危険なほどの不景気になってしまう
「金融市場の動きの監視を。コール市場に資金取引などの問題を抱えた場合はこちらから資金供給を」
ミッドチルダ連邦政府には様々な基金があり、その中の1つである金融市場安定化基金から資金を供給する
この基金には総額7000京ミッドを抱えている。コール市場を含む金融市場で問題が発生した場合に利用する
連邦政府にはそのほかにも様々な基金が存在する。外貨準備金額や金の保有量も次元世界連合の中で第1位である
だからこそミッドチルダ連邦の景気は最高の状況になっている
「急激な景気状況の変化がないように対応を連邦準備銀行と連携して行って」
わかりましたというと経済政策担当補佐官は退室した
退室したのを確認すると彼女は大きなため息をついた
次元世界連合安全保障理事会でミッドチルダ連邦政府は唯一の常任理事国である
安全保障理事会には特別理事国というのも存在している
常任理事国でミッドチルダ連邦の立場は次元世界連合総会と安全保障理事会の両方で過半数の可決されなければ常に安全保障理事会理事国でいることができる
一方で特別理事国は通常の理事国が任期が2年に対して4年と比較的長い期間、
安全保障理事会で理事国でいることができる。ちなみに常任理事国はミッドチルダ連邦1国。
残りの14理事国のうち4か国の次元世界国が特別理事国になることができる。
そして残りの10か国は2年間の理事国になる。特別理事国になるには巧みな外交戦術が必要である
常任理事国だからと言ってのんびりしているようではすぐにその立場はなくなってしまう
外交政策はしっかりとしたものでなければ立場を守れない
今は情報収集と必要に応じた次元世界連合の決議と行動が必要なのだ
「今の時空管理局の対応に苦労させられるわね。以前とは違った意味で」
JS事件までは時空管理局はかなりの予算要求をしてきた
しかし今は大幅カットされてかなり圧縮されている。今後は管轄エリアの縮小でさらに削減されるだろう
それらの対応をするにはうまく外交政策を実行しなければいけない
かなり苦労する政策実行が求められる。
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東区東部 ミーミルクラナガン貨物ターミナル
ミーミルクラナガン貨物ターミナルの敷地は南北5km×東西4kmもある
数多くの貨物列車が利用する貨物ターミナルである。貨物列車だけでなくトラックなどの車両も利用する
クラナガン市の中でもかなり規模の大きい貨物ターミナルである。
この貨物ターミナルはミーミルクラナガン石油化学コンビナートの近くにあり、1日でかなりの貨物が動く
それだけに密輸や密航する者も多いので警戒態勢はかなり厳しい
最近は麻薬だけでなく銃火器の密輸もかなり急激な上昇率を示している
すべてはスカリエッティが開発したAMF装置のおかげである
あれがあれば魔導師を相手にしても殺せるのだから。それも簡単に
『中央本部からSA32。応答せよ』
SA32。捜査部3係のジャスティ・フォレスター捜査官の無線識別コードである
彼はこの貨物ターミナルを監視できる監視センターで張り込みをしていた
タレコミが入ってきたのだ。麻薬の密輸があると。確実性はないが情報を調べる必要がある
小さな情報だからといって無視するわけにはいかない。まずは確認をしなければいけないのだから
「こちらは現在も監視作業中」
『監視作業の継続を一時中断。時空管理局機動六課基地に向かえ』
「俺は仕事を放棄するつもりはない。他をあたってくれ」
『それは許可できない。すでに引き継ぎ担当を向かわせた。ヘリで機動六課基地に向かえ』
要請ではなくて命令のようだと彼は感じた。命令となると断るのは難しい
苦労するのは現場だと思いながらも無線で了解したと返答した
これでこの場所の代わりの人材が来てから交代を伝えたがすぐに迎えとのことだ。
ますます嫌なことになるのは間違いない
「了解した。ただし貸しだからな。今度はこちらの要請にすべて答えてくれ」
『こちら中央本部。了解した』
ジャスティは監視任務の引継ぎ用意に入った。時空管理局機動六課基地の周辺の規制はかなり厳しい
抗議活動をしているグループがいくつも存在しているからだ
次元世界連合全加盟国の地上では時空管理局の拠点では抗議活動が毎日のように行われている
時空管理局の基地の一部が今も各次元世界国の地上に基地を持っているのは、
大規模災害時に復旧作業に着手することができるようにするためである
もしもに備えてある程度の駐屯を認めている。今は・・・・
各次元世界国政府内で時空管理局の部隊の代わりである独自部隊が編成できたら撤収させられる予定
「なんで俺たちが奴らを守らなければいけない。時空管理局が自ら仕組んで自爆した自業自得なのに」
現場は通常業務だけでも大変なのにほかのことまで押し付けられる。
そうなれば嫌な感情を持つのは当たり前である
「捜査部は面倒を抱えるわけか。俺たちに面倒を押し付けて上は高みの見物」
一番そのことを納得していないのは上司でアルシエル首席捜査官だろうなと彼は考えていた
シエルは時空管理局のことを嫌っている。迷惑な存在だったのに最悪のお荷物を押し付けてくる
押し付けられた後はこちらから元に戻されることは確率的に低い
時空管理局を退役させられて追い出される運命にあることは捜査部の全員が思っていることだ
『こちらSA33。現在SA32の場所にヘリで向かっている。到着は5分以内』
「アルシオーネ。なんでお前が機動六課に行かない?暇なんだろ?」
『上からの命令で逆らえるわけないでしょ。今はとにかく安全確保。嫌な任務でも担当するのが捜査部捜査官』
「お前も高みの見物か。良い立場だな。面倒がなくて」
『あなたが担当していることを私が引き継ぐのはかなりの貧乏くじよ。代行するのも苦労でしょ』
確かに。広いこの貨物ターミナルの監視は簡単にはできない。
あまりにも広すぎるし出入りする貨物列車やトラックなどもかなり多い
簡単に物事が片付くような場所ではないことは犯罪捜査に携わる者なら簡単にわかる
警戒態勢を厳重にしてもどこかに抜け道は存在する。100%すべてカバーするのは難しい
だからといってもそれができないと答えるわけにはいかないのだ
やり遂げるしか道は残されていない
「それは言えているな。とにかく早急に到着してくれ。大至急の引継ぎを行いたい」
『了解。到着は5分以内』
そこで通信は終えた。まだこの貨物ターミナルの警戒態勢は解除するわけにはいかない
引き継ぎ作業中に何か大きなトラブルが起きるかもしれないのだ
妨害工作を阻止するには円滑な引き継ぎ作業が求められる
「5分で到着とはかなり準備が良いな。誰かが上手く計画を立てていることは間違いない」
『こちら貨物ターミナル管制。23番線で停車中のガソリンを積載している30両編成の貨物列車を出発させる』
ミッドチルダ連邦では自動車はいくつかの種類に分かれた燃料を使用している
石油製品であるガソリンや軽油。そのほかに燃料電池などをしたものや電気自動車などの種類がある
それぞれ個性があるが最近はガソリン価格が上昇している。おかげで燃料代もかかっている
一方の電気自動車は充電すれば1度に400kmは走行できる。
しかしこれは結局のところは電気で充電するということは発電のために様々なエネルギー資源を使っている
結局のところはあまり変化はないということだ。どれを選択しても
原油価格が上がれば火力発電などで必要になる石油系燃料コストも上昇する
そうなれば電気代が上昇することになってくる。どう頑張っても難しいのだ
国内ではダムなどを建設して、水力発電所の増設を急いでいる
そのほかにも太陽光発電や風力発電や地熱発電などの電源分散化の方針を進めていた
国内の多くの発電設備は魔力精製炉発電の多くの割合が占めていた。
しかしそれもAMF装置の開発によって安定した魔力精製炉発電方式は難しくなった
だからこそほかの発電設備の建設を急ぐ必要があった
「それにしても石油などのエネルギー資源開発はかなり進んでいるな。おかげで貨物列車の量も大幅に増加している」
鉄道運用許容範囲を超えるかもしれないほどの貨物列車の運行がされかけている
増便するために複線化などの工事を進めている。
しかしそれが完成するまでは運行本数は簡単に増加させることはできない
運行本数を増やせないため、1つの貨物列車に対して貨車を100両編成などにするなど
ぎりぎりの対応をしているのが現状である。
「ここまで貨物列車が多いと探すのも苦労する」
今のところは上空から熱感知センサーを搭載したヘリなどを利用して貨車に不審な人物がいないかを調べている
人が貨物の中にいれば熱感知センサーでわかるかもしれない。
しかし銃や麻薬などの密輸を摘発するには人力で調べるしかない
センサーですべてを調べることなどできるはずがない。
この貨物ターミナルには膨大な貨物コンテナがあるのだから、当然といえばそうかもしれないが
コンテナ内には大量の荷物が積み込まれている。ちなみに貨物コンテナにはそれぞれ識別番号が割り振られている
専用の電子タグが設置されているので位置情報がわかるようになっている
無線装置があり、貨物コンテナがどこにあるのかがすべて確認できる
このシステムは貨物輸送の効率化につながっている
『2番線にフローレンス州から石炭を積み込ん列車が入線する。石炭は貨物船に積載される予定』
フローレンス州東部地方には高純度の石炭鉱脈がある
今は資源開発が活発に行われている。ちなみに今の技術では惑星汚染物質を完全に除去するための技術がある
温暖化物質や大気汚染物資などの排出をほぼ0にすることができる
連邦法でいかなる工場であっても汚染物資除去装置の設置が義務付けられている
もちろん車にもそのための装置が搭載されている。排気ガスの問題はない
クリーンで惑星汚染が出ない暮らしができるのだ
「こちらにすべて責任を押し付けて高みの見物か。上層部の人間に文句を言ってやりたいな」
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中央パトロール本部南館 地下2階 射撃訓練室
そこではステラが射撃訓練をしていた。隣のブースでも1人の大人の女性が訓練をしていた
彼女の名前はマイア。しかし彼女は人間ではないリィンフォースツヴァイと同じような存在である
ステラが保有している魔導書のユニゾンデバイスである
本来はリィンフォースツヴァイと同じような大きさだ。
だが、それでは現場職はできないので様々な魔法改造を行って成人女性のサイズで職務をこなしている
「マイア、良い腕ね。今度の狙撃大会のコンテストで優勝候補に名を連ねているだけあるわね」
マイアは狙撃部門で長距離狙撃の達人とも言われている。
射程1000mでも確実に的に当てることができる。魔法ではなく、狙撃銃での弾を
あまりの正確なためスナイパーマシンとも呼ばれることもある
まさに狙撃のプロである
「マイアは相変わらず私よりも射撃精度が良いわね。狙撃もそうだけど、スナイパーとしては一流の腕ね」
「いろいろと経験しています。これくらいのことは簡単です。それに私よりもSWATの狙撃担当のほうが腕は良いです」
「それはあっちは本職だもの。でもマイアは捜査部の捜査官補佐。私の大切な相棒よ」
私としては信頼できる相棒に背中を任せることができて安心だわとステラはマイアに話した
「そういえば、マイアはリィンフォースツヴァイについてどう思っているのかしら?」
「人事報告書を読みましたが、戦場をよくわかっていないことは間違いないと思います」
戦場では人の命はすぐに消えることもある
紙一重に近いわずかな細いラインの上をダンスをしながら歩けと言っているものなのだ
戦場とはそういうものである
「相変わらずの手厳しい意見ね。でもそれがなければこの仕事はできない。そうでしょ?」
「それはそうですね。常に最悪の現場になることを想定して動く。それに私たちにはチームプレーはないに近い」
そう。チームプレーによる任務ミスという言い訳は通用しない
チームプレーを期待するなという意味でもある。あるとするならスタンドプレーから生じるチームプレーである
つまり自らの目で状況把握を行い行動選択をしなければいけないということだ
『ピーピーピー』
ステラの携帯電話に着信が入ってきた。発信者はラジェットからだった
「ラジェット?何か緊急の用事かしら?」
『お前たちにある仕事を任せたい。聖王教会に潜入してもらえると助かる』
「そういうのは港湾パトロール安全保障局の仕事でしょ。私たちがしても良いの?」
諜報活動は捜査とは異なる。簡単にできることではない
それにステラは仮にも元時空管理局員であるそれも旧時空管理局本局戦技教導官をしていた
つまり時空管理局に顔を知られている。
それと同時にマイアというユニゾンデバイスを持っていることから聖王教会にも知り合いはいる
情報が洩れたらさらにトラブルが発生することにつながるのだ
それはそれで極めて危険な行動であることは間違いない
『聖王教会の教皇が新たにカリム・グラシアが選出された。内部状況の偵察を任せたい』
簡単に言えば教会内の派閥構成について調べてこいということである
面倒であることは間違いない
「私は元時空管理局員よ。あちらには顔を知っている者もいる。リスク回避の観点から評価すると問題では?」
『聖王教会内部の組織構成勢力の状況を知ることが優先させられる』
教会内の内部派閥がどういう状況であるかはまだわからないところが多い
次元世界連合は聖王教会は国際機関と認定はしている
しかし、監査対象にされているので財務状況や違法行為を実行していないかの調査を受けている真っ最中だ
もし些細なトラブルが確認されたら国際機関としての役割は失ってしまう
彼らもそんなことはわかっているはずである。
それだけにリスクになりそうな要素は排除する方向で動き出す。
聖王教会に残されている未来につながる道はかなり限定されているのだ
切り離すところはカットしなければ大問題になってくることはわかるはず
すでに聖王教会騎士団に属していた魔導師の中にはかなりの不正行為に加担していた人物も多い
だからこそ次元世界連合は独自の調査委員会を設置している
今は少しでも小さな疑惑であっても調査対象になっている
「私に貧乏くじを引かせるから、少しはお土産でもあるのでしょうね?死ぬ可能性が高い仕事なのだから」
『俺のほうで給与で特別手当を付けておくように事務部に話を通しておく』
特別手当というのは危険任務担当手当のことを示している
これは特殊なスパイ工作活動を行った者だけに与えられる特別手当てである
そして作戦を見事に成功させることができればそれだけの有能な人材であるという証でもある
もちろん簡単にできることではない。命の駆け引きをしなければいけないのだから当然であるが
「了解。勲章も期待していますので努力します」
ステラはそういうと通信を終えた。彼女自身はため息をついていたが
かなり難しいミッションになることは確実である
「スパイ活動をするのってスリルがあるから楽しいけど、食事と一緒で食べ過ぎると良い事はないわね」
とにかく旧ベルカ自治区、現在のベルカ州に向かうために行く方法を考え始めた
スパイ活動をするなら移動記録を残すわけにはいかない
となると答えは1つだ。移動記録が残らない方法で向かうしかない
つまり軍用航空機で貨物と一緒で向かうのが最も早い
貨物機であれば乗客はパイロットだけの扱いになる
スペースが狭いのはつらいところではあるがこちらの情報が洩れる確率はかなり下がる
「マイア。通常の物資輸送航空機の記録を確認して。軍用貨物機でベルカ州に向かいましょう」
「了解です」
2人は射撃訓練室を出るとすぐに携帯情報端末を使って手配を開始した
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東区東部サウスクラナガン港 魚市場 パトロール事務所
サウスクラナガン港には漁船や小型クルーザーなどの比較的小型船舶が数多く停泊していた
サウスクラナガン港のすぐそばには魚市場がある。そのほかにも数多くの食品を扱う問屋街もある
クラナガン市に住んでいる人々の食品の重要拠点である。
この市場を経由してクラナガン市内だけでなく近隣州にまで魚や野菜などの生鮮食品が届けられる
「今の時間は活気があるわね」
中央本部捜査部2係のシエナ・アルファードは市場に設置されている地区パトロール事務所にいた
彼女は市場に数多く設置されている監視カメラ映像を見ながらそう言った
確かに今の時間は活気がある。昨夜遅くに出発した漁船が帰ってくる時間であるからだ
魚市場では漁獲された魚たちが取引されていた
一方で密漁する犯罪者も存在している。ミッドチルダ連邦国内の漁業のメインは通常の漁業とやることは変わらない
連邦政府や州政府では補助金を出すことで養殖業なども盛んにおこなわれている
そのため、養殖で得られた魚達の割合が比率で4割を占める時もある
養殖業はかなり盛んにおこなわれているのでクラナガン市政府もかなりの補助金を出している
おかげで漁業は季節によっては少しの変動はあるが安定した漁獲を得られている
問題は密漁である。高値で取引されるマグロなどを漁獲枠を超えて取るケースがかなりある
その摘発は本来は港湾パトロールの担当だが、中央パトロールと連携して対応することはいつものことだ
特別に珍しいわけではないのだ
「今日も密漁者がいるのか興味があるわね」
ちなみに1日に最低でも1回は違法操業を行っているケースを摘発している
いくら魚市場の監視を強化しても密漁が横行しているのだ。
それに最近は海上に投棄された麻薬の回収のためにこの港を利用するケースも増えている
沖合を航行する貨物船などの船舶から麻薬や銃火器が詰め込まれた箱を回収して密売する
犯罪組織にとっても極めて重要であることから港湾パトロールの分署も最重要警戒港湾施設に指定した
おかげで常に監視が行われている。それでも事案やトラブルが減らないのだから苦労するものである
「それにしても最近は麻薬の密輸が多いわね。今年に入って一気に前年比で2倍以上の摘発量」
取り締まる側の苦労を知ってほしいものだと言いたい。犯罪組織には。
犯罪組織にもJS事件関係で資金的な問題だけでなく組織構成員が確保されて組織の維持に必死だ
摘発が増えているのは少しでも組織の資金を増やすためであることは一目瞭然である
何としても見逃すことがないようにしなければならないが、こちらはルートを少しずつ潰すしかないのだ
時間が必要になることはわかっている
「太陽が出ているうちは出入りする人間が多いから密輸にはうってつけなのかもしれないけど」
あまり人がいないところでは密輸の成功率は低い
人が多いほど多ければ密輸は行うことが比較的容易になってくる
多いと監視が追い付かないからだ。密漁の摘発もしなければいけないと考えるとなおさら
「見つけたわ。また出入りしているの?懲りないわね」
シエナは港の桟橋の近くに止まっているセダン車に乗っている男性を確認した
彼は麻薬密輸で2回逮捕されていた。しかし2回とも検挙した時に司法取引で数か月の刑務所生活だけ
甘い判決が出された背景には裁判官に金を握らせていたことがわかって現在指名手配を食らっている
それなのにまだクラナガン市内にいるとは間抜けというほうが正しいかもしれない
こちらの重要指名手配犯リストに載っているのだ。
市内にいるほうがリスクは高いことを理解していないのかと言ってやりたい
「懲りない連中って珍しくないけど、今のこの状況下で密輸行為をするなんて無謀ね」
危険すぎる行動をとるということはいろいろと苦労があるのだろう
ちなみに麻薬ビジネスにはかなり初期投資が必要になる
密売のためのルートを作らないといけないからだ
簡単にそれができるわけではないことは簡単に誰でもわかっている
それでも犯罪組織は何とかするしかないのだ。資金を稼ぐには一番手っ取り早い方法である
麻薬や銃火器の密造密輸は金になる資金源ではあるが、ミスをすれば大きな損失になってしまう
慎重に事を進めることが求められるだけに苦労も多い
「それにしても朝から密輸をするなんて根性があるわね」
まるで摘発してくれと言っているようなものだ
本来ならばこの場で水際対策で摘発してもいいが、せっかくなら中心部分の摘発もしたい
今回は泳がすことにした。ただし尾行などを付けて常時監視を行うが
根っこを刈り取らない限り簡単に犯罪という名の雑草は成長してしまう
いたちごっこになるなら犯罪組織の内部を徹底的に除草したほうが良い
その方が新たな犯罪発生率が下がるのだから
『セントラルベルカバンクが正式にミッドチルダ連邦裁判所に破綻処理を行うと』
『不良債権総額が3000兆ミッドもあるとされていることから、今後、大きな問題になるかもしれません』
ちなみに抱えている不良債権の大部分は聖王教会関係者に貸し出されているものである
多くが返済不能な状況になってしまったことと、さらに大きなダメージを与える理由がある
融資の担保を本来なら土地などの不動産にするべきところを、
時空管理局債やワンワールドグループ企業が発行した債券としていたことだ。
債権の金融市場取引価格が暴落した事で担保の裏打ちを失って、
時空管理局と聖王教会の組織体制の縮小で回収できなくなったのだ
完全に致命的なダメージを受けることになってしまった
「いよいよ聖王教会も追い詰められてきたわね」
このままでは聖王教会の幹部は破産申請をしなければならないだろう
融資を受けていた金額のうち、返済できる金額はそれほど多くはないのだから
最終的に回収できないとなると連邦準備銀行の監視下に入る
本来なら大きすぎる金融機関はつぶさないほうが良いかもしれないが
セントラルベルカバンクは対象外である
元々聖王教会傘下の企業であったのだから、公的資金の注入をするなら聖王教会に資金が流れるだけだ
金融政策と経済政策を考慮した場合はそれらが好ましいとはいえるはずがない
「連邦政府は今ごろ慌てているでしょうね。破綻することはわかっていたけど不良債権の残高に」
3000兆ミッドも不良債権を抱えているとなると金融機関として立ち直るのは簡単ではない
ちなみにすでに預金はすべて凍結されている。1ミッドも動かすことができない状況になっている
連邦法では金融機関の預金は国内の拠点の金融機関で利息が付く普通口座で1000万ミッドまでしか保護されない
それ以上の金額の預金は没収されることになる。ただし無利息口座と無利息当座預金に関しては全額保護される
多くの預金者は倒産することなどありえないと思っていた。
そのために利息が付く普通口座で預金をしていた。それが今は大きな損害になっている
リスク分散をしていなければかなりの資金を失った預金者は必ずいるはずだ
苦労していることは容易に想像できる
「財産を失えば路頭に迷いこむ連中が増えるわね。こっちの仕事を増やさないでほしいところだけど」
経済が不安定になれば犯罪発生率は上昇する
うまくバランスがとれていればそれほど急激な変動はないが
金融機関の破綻などが起きればことは大きく変わる
「船舶位置情報システムにアクセスして不審な行動をしている船がいないか調べてみようかしら」
民間船舶には現在地を海上交通管制をしている行政機関へ位置情報を提供する事が義務付けられている
地上中継基地を使う場合や人工衛星を利用した衛星測位方法で常に船舶情報の把握を行っている
1隻でも不審な動きをすればすぐに新設された連邦海軍や連邦空軍が派遣される
ちなみに船舶が多く利用する港湾施設には港の船舶交通をコントロールする管制センターが設置されている
管制センターの指示を無視したら一発で船舶免許のはく奪などの厳しい罰則が待っている
クラナガン市と近隣州の港はすべて港湾パトロールの管轄になっている
港湾パトロールは首都圏防衛と災害対応。その他にも海上警察などの役割も行っている
「それにしても密輸が多いのは苦労するわね。JS事件以降は摘発量がかなり増えているし」
2倍以上に跳ね上がっているがそれはあくまでも摘発しただけの量だ
実際に密輸に成功した事例をある程度計算するとさらに数は増えることは間違いない
本当に摘発する側にとっては迷惑な話である
『三番埠頭に漁船が入港する。積み荷はクラナガン市海域で漁獲した魚。確認作業を行え』
今の無線はサウスクラナガン港管制センターだ。
サウスクラナガン港の船舶交通整理と各種指示を出す拠点である
確認作業とは魚以外に違法なものを陸揚げしないかどうかを確認するのだ
麻薬や銃火器の密輸を阻止するために入港するすべての漁船とクルーザーに行われる
徹底的な対策をしなければ抜け道があると思われてしまう
「漁船の陸揚げした魚の確認は苦労するわね」
シエナはそんなことを言いながら船舶情報を事務所内にある情報端末で確認していた
次々と入ってくる情報を完璧に頭に覚えさせておかないと犯罪捜査の時には問題になる
常に最新の情報を持っているかどうかが事件解決につながる確率が変わる
『港湾本部からサウスクラナガン港分署へ。サウスクラナガン石油化学コンビナートに入港予定のコンテナ船で問題が発生』
サウスクラナガン石油化学コンビナートは3大エネルギー資源開発会社の1社であるドッジエネルギー社が運営している
大規模石油精製施設があることで有名である。
『問題の発生内容は貨物船内で病人を発見。治療の必要性がありとの報告を受けた』
『受け入れのためにドクターヘリのスクランブルを要請する』
『了解した。港湾本部基地からヘリを向かわせる。検疫作業を速やかに実行せよ』
かなりおかしなほうに転がり始めている。
もし病人が保菌しているものが伝染病なら大きな問題になる
市内の公衆衛生を考えた場合には隔離された病室が求められる
『貨物船での病人は検査のために市内の隔離病棟がある医療機関に緊急搬送を行う。他の乗組員にも安全確認を行う』
安全確認。つまり感染症に感染しているかどうかを調べるのだ
もし何もしないで放置したら市内に感染症が広がることになる
そんなことを許すわけにはいかない。何が何でも止める
選択はこれしかないのだ
「沖合で停泊しているコンテナ船には全部でコンテナは全部で9000個を積載しているみたいね」
貨物船に積み込まれている大量の貨物コンテナ、
そこには人々が生活に必要な日常物資から工業製品などの様々なものが積み込まれている
クラナガン市にとっては市内の貨物ターミナルを経由することで、
ウエストミッドチルダ大陸中の様々なところに向かって貨物列車などで運ばれていく。
運航スケジュールの誤差は好ましいとは言えない
速やかに調査を行うと同時に貨物コンテナの積み下ろし作業を行うことが求められる
これからは時間との戦いである。ロスタイムを限りなく0にして対応することが最優先である
時間的余裕がないとしても許可なく貨物船の積み下ろし作業を認めるわけにはいかない
今できることがあるとするなら速やかな健康チェックである
他にも病人がいないかどうかを調べる必要がある
「忙しくなってきたわね」
シエナはすぐに彼女の上司である2係主任捜査官をしているミカ・ミズノに連絡した
「シエナです。こちらはサウスクラナガン港にいます」
『ええ。把握しているわ。病人のことは港湾パトロールに任せておいてかまわないわ。あなたは自分の任務を』
つまり応援に駆け付ける必要はないということだ
今は密輸や密航の手助けをする対象の捜査に当たるようにとのことだ
それはそれでうれしい話ではあるが
「ほかにこちらで問題になるような情報はありますか?」
『今のところは平穏だけど、密輸や密航対策には全力で対応を』
ミカの指示にシエナは了解というと通信を終えた。
室内にある情報端末を使って港の監視カメラの映像をモニタで確認した
「上は身勝手ね。こちらに苦労を散々押し付けてくれる。時空管理局関係でもめていた人物も多いし」
漁獲量に関して取り決めをするときに時空管理局の幹部が業者から資金を受け取って上乗せのことを認めていた
本来なら連邦政府やクラナガン市政府が決定権を持つべきところだが、JS事件までは時空管理局からの圧力があった
そのため問題行動を何度も起こしていた。今はそれらについて再調査のメスが入っている
『これより漁船の積み荷の確認作業を開始する。作業は5分ほどで終わる見通し』
簡単な検査であるので何も問題がなければすぐに終わることだ。何時もそうである。
問題があるような事例が起きるときは船員などの表情を見れば調査官はすぐに何かを察する
これは何かあるなという気配を感じるのだ
「捜査部捜査官は大変ですね。何でも担当しないといけないとよく聞きますよ」
「そうよ。私たちは小さなもめごとから大きな国家安全保障にかかわる問題までカバーする範囲が広いの」
現場の苦労は知ってくれないから給料アップでもなければやってられないわと、
シエナは愚痴るかのように事務所内にいるパトロール捜査官に話をした
確かにその通りなのだから仕方がない
パトロール捜査官も数多くの事案を抱えていることは珍しいことではない
複数の事案を同時に並行して考える力を備えなければ刑事資格の取得はできない
ちなみにパトロール捜査官になるには中央パトロールの場合は中央・空港パトロール学校で勉強
座学のほかに実技試験を受ける。そこでようやくパトロール捜査官候補生になれる
パトロール捜査官候補生は現場訓練をある程度を行って試験に合格すると正式なパトロール捜査官になれる
刑事になる時もパトロール捜査官を数年間活動して、さらに刑事試験を受けてようやく刑事に昇格できる
刑事になっても常に2人1組で1チームを編成して常に行動する
パートナーとして任務遂行をするのはパトロール捜査官と刑事も変わらない
唯一捜査部捜査官は基本的には単独活動になる。
それだけに捜査部捜査官になるにはさらに厳しい試験を受けなければならない
各種分析官としての学力を持つために大学や研究所で勉学を学ぶ
その他にもスパイ活動もあるので一時的に港湾パトロールの部隊に入隊して鍛えられることが求められる
機密情報取り扱いのためをするため各隊に入隊して鍛えられることは当たり前のことである
『サウスクラナガン港に新たに1隻の漁船が入港する。調査準備は万全で対応できる』
つまりすでに調査団が待っているということである。
積み荷の検査を受けて問題がなければすぐに本格的に荷下ろしだ
『中央本部捜査部SA24へ。こちら港湾本部。高速で海上を航行している小型クルーザーが向かっている』
シエナの携帯情報端末にその小型クルーザーの情報が入ってきた
船舶は40ノットという速いスピードで航行している。
高速で航行しているということは急ぐ理由があるからだ
港湾本部からさらに情報が流れてきた。無線交信に一切応答するつもりがないとのことだ
ますます怪しいと言ってくれというようなものだ。密輸船の可能性がかなり黒に近い
何とかして取り締まるためには航行を止めさせる必要がある
そうしなければ大きな問題になることはわかっている
「少しくらい休みをくれると助かるんだけど。うまくいかないわね」
法律的な解釈についてかなり曖昧なところがあるかもしれませんが、
そのあたりは見逃していただけると幸いです。
私でもそこまで完璧に作ることはできていないので