午前11:45 中央パトロール本部庁舎 10階捜査長官執務室
『聖王教会本部への強制査察で聖王教会の今後の存続状況に大きな影響が出ると警戒されています』
『最悪の場合、聖王教会が破綻する可能性があります』
ユウ・ミズノ捜査長官は執務室で報道内容を確認していた
どこも聖王教会の今後について注目していた
「聖王教会は大変だね。今や窮地に立たされているのだから」
「はい。ですが身から出た錆ではありませんか?」
室内には捜査長官首席補佐官であるエテルナ・ジンガーもいた
彼女の言うとおり身から出た錆である。今は厳しい状況下で聖王教会は組織調査を受けている
今後の見通しは全く予測できないことは間違いない
「ところで使用済み魔石燃料の輸送に関する報告書は上がっているかな?」
「はい。こちらが報告書です。1時間後にサウスクラナガン魔力精製炉発電所から使用済み魔石燃料を輸送します」
輸送先はクラナガン市内にあるクラナガン魔石燃料工場である
輸送には貨物列車で行われることになっている。警備は港湾パトロール海兵隊が担当
使用済み魔石燃料にはまだ反応がすべて終わっていない部分があるのでそれらを燃料工場で抽出
再び燃料に加工する工程が行われる。完全に使用済みなった燃料はただの石になるので自然界に悪影響は与えない
そのため海上での埋め立てに使われることになっている
「使用済み魔石燃料の輸送は今後は減少することになるけど、それには時間が必要だね」
魔力精製炉発電所の稼働時間が減少すればそれだけ魔石燃料の消費量も減少する
電源分散化で化石燃料や自然エネルギーにも多様化しつつある
今はまだ魔力精製炉発電に頼るところが大きいがそれもいつまでの話になるのか
「使用済み魔石燃料の輸送は面倒が多いから苦労させられるのはいつもこちらだよ」
「ですが盗まれるわけにはいきませんから」
当然である。もし盗まれて魔力爆弾でも作られたら大ごとになる
それらを阻止するための警備態勢が敷かれている
「念のため、パトロール部に連絡して線路沿いに不審物がないか確認作業を進めるように通達を」
さらに警備態勢の強化を指示すると他の報告書の決済作業を再開した
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部オペレーションルーム
シエルはそこでクラナガン市本土の沖合の海上レーダー情報を確認していた
沖合には数多くの貨物船が航行している。
クラナガン市には本土と沖合の島に数多くの石油コンビナートが存在する
そのため石油タンカーやコンテナ船などの数多くの貨物船が出入りしている
さらにクラナガン市の近隣の州にも大規模石油コンビナートが存在するので貨物船の出入りは多い
それらをすべて監視しているのは港湾パトロールだ。そのレーダー情報を確認していた
「今日はお客さんが多いわね」
お客さんとは他次元世界国からの貨物船である。
次元空間を超えてきた貨物船。主にコンテナ船が多い
沖合で入港待ちをしている貨物船はかなりの数になっている
いろいろと面倒になっていることは間違いない
『沖合で待機中の貨物船へ。これより順次の入港許可を出す。スタンバイされたし』
『こちらミッドコンテナシップ209号。速やかにセントラルクラナガン港に入港したいので優先的配慮を求める』
理由としては沖合で入港待機時間が長すぎたことからいろいろと問題が発生しているとのことである
おそらく次の輸送手段へバトンを渡す時間が迫っているのだろう
貨物列車やトラックにコンテナを引き渡す時間が迫っている
だがこの程度の遅れは日常的なものなので珍しいことではない
クラナガン市内にある貨物港には1日で何百隻の貨物船が入出港している
だからこそ予定通りに事を進める必要があるのだが、
現実はそんなに簡単に机の上での計算のようにはいかない
だからこそ素早い対応が求められる
「本当に港は忙しいわね。入港できても積み下ろしの手続きで時間がかかるし」
そこにフィリーが入ってきた。1冊のファイルを持って
「フィリー。車がつぶれたらしいわね。苦労人ね」
それで何かあったのかしらと聞くとフィリーは1冊のファイルを渡した
そこにはマフィアから情報を得たデクス・マークレの資料があった
「心当たりはありませんか?」
「以前に問題人物としてマークされていたわ。港湾パトロール安全保障局が調査をしていたことは把握している」
「何か大きなことを起こしたのですか?」
「港湾パトロール保障局からの情報によると時空管理局からかなりのお金を盗んでいたことで捜査対象に」
時空管理局犯罪捜査局が捜査を担当しているということだ
機動六課組を暗殺するために暗殺者を雇っている。
今回のフィリーの車への攻撃の原因となるとかなり危険なことになる
他の教導を担当している捜査官にも情報共有する必要がある
「教導担当官に警告を出しておいてください」
「わかったわ。念のために警戒するように通達するわ。あなたも気を付けるように」
フィリーは了解ですというとオペレーションルームから出ていった
シエルはオペレーションルーム管制官であるギブリに機動六課の教導担当官に警告メッセージを送るように指示
彼は素早く対応した。彼らが持っている携帯情報端末に警告メッセージを送信した
「機動六課組というお荷物を抱えるなんて本当にとんでもないことになったわね」
『国防省の高官からの話で聖王教会への攻撃命令準備をしているとのことがわかりました』
『この発言を受けてベルカ州証券取引所の平均株価が大きく急落』
「国防省も面倒な発言をしてくれたわね。それにしても誰がしゃべったのか調べないと」
そんな危険な見解を持っている人物はできるだけ早く見限る必要がある
聖王教会だけでなくミッドチルダ連邦政府の外交政策にも影響が出てきてしまう
そうならないようにするためには当然の措置である
「話した以上は責任を取ってもらわないと。責任を押し付けられるのは嫌だし」
国防省の政府高官には発言の責任を取らせる必要がある
些細な一言がとんでもない大騒動に発展することを自覚してもらうためにもだ
特に軍事関係を扱っている国防省となると影響は大きい。そこを分かってもらわなければならない
「国防省にしっかり仕事をしてもらうしかないわね。ここまで状況が悪化するとなると」
「だがマスコミ連中は簡単には引き下がらないと思うが」
「それを何とかするのがお仕事よ」
そういうとシエルは携帯電話を取り出してある人物に連絡を取り要請を出していた
「できるだけ素早くお願い・・・・それじゃよろしく」
「交渉できましたか?」
ギブリの質問に問題ないわと返答した
『国防長官が記者会見を開くことがわかりました。これから生中継でお届けします』
そしてミッドチルダ連邦国防長官の記者会見が始まった
国防長官であるエドガー・クロウフォードは聖王教会への攻撃準備命令は現時点で発令していないと発表した
シエルの電話からすぐの記者会見にギブリは驚いて彼女の姿を見た
「さすがはシエル首席だね」
「国防省も迷惑に思っているはず。自分に災いが降りかかる前にどうにかした方が良いと伝えただけよ」
シエルはそういうとオペレーションルームでベルカ州の衛星からの偵察衛星画像を出すように指示した
それも最新のものを
「うちの衛星が聖王教会の上に来るまでの時間は?」
「もう衛星から偵察衛星画像が来ている。正面スクリーンに映し出す」
ギブリが正面スクリーンに中央パトロール支援衛星から撮影された偵察衛星画像を映し出した
そこにはベルカ州中央地方ベルカ市郊外聖王教会本部施設から黒い煙のようなものが出ていた
「火事でもあったの?」
「港湾パトロールの通信ネットワークと接続する」
『聖王教会内部で爆破事案が発生。至急応援を要請する!』
「ギブリ。ステラの位置関係を調べて」
「ステラの現在位置は聖王教会本部にいる。まだ中にいるが退避命令を出すか?」
「ええ。大至急避難させて。万が一に備えて」
もし聖王教会本部で爆破などの攻撃があればステラの安全問題にかかわってくる
今、彼女を失うわけにはいかないのだから当然の対応方法である
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中央パトロール本部庁舎 1階カフェテリア
ラジェットとはやてとリィンは少し早めの昼食を食べていた
食べる時間があることは良い事だ。いつもは忙しくてハンバーガーかサンドイッチだ
「貴重な食事休憩だ。ゆっくりしている暇はないぞ」
「食事の時間も勤務シフトなんですか?」
「当然だろ。2日間もテイクアウトのピザっていうときもある。健康には悪いがな」
タバコを吸わないだけまだましだと。ちなみにラジェットはたばこを時々吸っている
普段はそんなことはしない。捜査や鑑識の時に邪魔になるためである
たしなむ程度の喫煙である
『ピーピーピー』
「ラジェットだ・・・・・・・・・・ああ。それで場所は?・・・・わかった」
昼食はヘリで食べてもらう。それとお仕事の時間だというとも伝えると急いで現場に向かう準備を始めた
「何があったんですか?」
「セントラルクラナガン港の沖合15kmで水死体を港湾パトロールの艦船が引き上げた」
連邦法では沿岸から22Kmまでは陸地側の警察組織の管轄になると連邦法で定められている
15Kmとなると中央パトロールの管轄になる。ただし水死体ということはあまり良い印象を持っていない
水死体はかなり事件の中では最も難解な事件とされている
水の中で証拠になりそうなものはすべて流れてしまった後の可能性が高いからである
「ヘリで行くぞ。7000t級駆逐艦[ 艦船形式:あきづき型護衛艦]が沖合で待っている」
7000t級駆逐艦[ 艦船形式:あきづき型護衛艦]は港湾パトロール艦隊の艦船である
港湾パトロール本部基地には8隻が配備されている。軍艦なのでミサイルなどを数多く搭載している。
密輸船や不審な潜水艦や航空機が首都であるクラナガン市に入ってこないように警戒している
基本的には8隻配備されているからと言ってすべてが常に稼働しているわけではない
艦船は通常3隻か4隻ずつ配備するのが効率よく運用できる基準と言われている
1隻が稼働しているときは他の艦船は乗組員の訓練・休暇・艦船の整備などを受けている。
港湾本部基地に同型艦が8隻が配備されていても通常運用時は2隻が展開しているパターンが多い
ラジェットは1度捜査部のフロアに立ち寄って必要なものを補充してから屋上へリポートに向かうことにした
はやてとツヴァイも行動を共にした。8階の捜査部フロアで捜査キッドに必要なものを補充。
再びエレベーターに乗り込んで屋上へリポートに向かった
ヘリポートに到着するといつでも離陸できる状態でヘリが待機していた
「セントラルクラナガン港沖合15Km地点に向かってくれ」
「了解」
ヘリは離陸するとすぐに現場に向かっていった
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西区南西部 クラナガンハイウェイ7号線(南西線)北東行き
エルガとヴィータはSUV車で南区サウスウエストハーディー地区1番街2丁目5番地に向かっていた
そこには現在は仮釈放中の人物。アズレエル・バーシンが住んでいる
ハーディーバンク本店を襲って強盗を行った。今は仮釈放中である
令状がなくても事情聴取をすることはできる。少しでも怪しければ分署か中央本部に連行する
それくらいのことは認められている。もちろん確かな証拠が出ない限りは推定無罪の原則がある
「銀行強盗でけが人を出さなかったから仮釈放が認められたんだろうな」
「そうなのか?」
「ヴィータ。もしけが人を出してみろ。罪が重くなって仮釈放が認められる確率は下がってくる」
確かにそのとおりである。
罪状が増えれば増えるほど刑期は長くなり、仮釈放は認められなくなる
「おとなしく自宅にいればいいんだが」
仮釈放中でも一定期間ごとに分署で現在の生活状況を報告することが義務付けられている
もし1度でも違反すれば仮釈放が取り消されることもある
それほどまでに厳しい規則が定められている。違反すれば刑務所に逆戻りだ
さらに罪状が追加されることになってしまえばもっと罪が重くなる
「今の勤務先はハーディー地区の不動産会社の事務職だ。そっちに問い合わせたら今日は休みだとさ」
「ずる休みか?」
もしヴィータの言うとおりにずる休みなら仮釈放のルール違反になるかもしれない
そのあたりについて追及して証言を引き出し見るという手が使えるかもしれない
「それはどうかな。会社には風邪をひいたと申告している」
どこまで信用できるかどうかはわからないがとエルガはヴィータに伝えた
確かにそのとおりである。仮釈放者だからと言って人間なのだから風邪をひくときはある
ただし虚偽申告のずる休みという可能性も否定できない。どちらにしても自宅訪問をすればすべてわかる
「それにしても本当に面倒だな。時空管理局の黒い過去を操作するのは苦労する」
なんで俺たちがいつも貧乏くじを引く羽目になるんだろうな
エルガはハイウェイ7号線をかなりのスピードを出して飛ばして走行しているとある大型トラックに目が行った
「ヴィータ。あのトラックの車の車両ナンバーをデータベースで照合しろ」
エルガの支持を受けてヴィータは車載情報端末を慣れない手つきで操作していた
そして車両ナンバーをデータベースで照合するとある企業の所有だった
以前は聖王教会の関係企業だった。
今は聖王教会が株式をすべて証券取引所で売却して民間企業になっていた
その企業はベルカトラック社。保有しているトラックの台数は100台ほど
ベルカ州と近隣州で活動している。クラナガン市内にも支店と拠点が存在している
「念のため調べてみるか」
エルガはワーニングライトとサイレンのスイッチを入れた
そして拡声器用のハンドマイクを使って次のハイウェイの出口で一般道に出るように指示した
了承したことを示すかのようにハザードランプを点灯させた。
そして次の出口でトラックはハイウェイを降りた
エルガも同じようにトラックについていく形でハイウェイから出ると一般道に降りた
「ヴィータ。お前は車で待機だ。念のため、俺に何かあったら無線で応援を呼べ。迷うことはするな」
迷ったら終わりなんだからなとエルガはヴィータに伝えると
一般道に降りると大型トラックは安全な場所で車を路肩に止めた
エルガもその後ろに車を止めると腰のホルスターにある銃に手を伸ばしながらトラックの運転席に接近した
「車から降りて免許証を見せてもらえるか」
エルガがそういうとトラックの運転手である40代と思われる男性はわかったと言って降車した
そして免許証を提示した
「積み荷は何かわかるか?」
「機械部品だ。これが積荷目録」
積荷目録には確かに機械部品と記載されていた
しかし何か違和感を覚えたエルガは積み荷を見せるように指示した
その発言を受けて運転手は少し表情を曇らせたようにエルガは感じた
些細な違和感が何かトラブルを抱えていることを発見することにつながるかもしれない
それを見極めるのがクラナガン捜査局員にとっては最も重要である
「本当に見せないといけないのか?」
「見せられない理由でもあるなら令状を請求するがイメージは悪くなるぞ」
「わかったよ。見せればいいんだろ」
運転手の男性は渋々といった感じで積み荷を見せようと行動した
その瞬間にエルガは自らの銃をホルスターから抜いた。運転手が後ろ腰に手を回したからだ
エルガは瞬時に身柄を押さえつけた。その結果、小型リボルバーが路上に転がった
彼は見事に大当たりのくじを引いたのだ。
「銃の不法所持で現行犯逮捕だ」
エルガは手錠をかけるとトラックの積み荷をチェックすると確かに機械部品を積み込んでいた
それ以外にも危険なものを積み込んでいた。白い粉が詰まった袋がいくつもあった
「麻薬を運んでいるわけか。それは見られたくないはずだ」
1度、荷台から降りると携帯電話を取り出して現場鑑識チームと応援を要請した
これは1人で担当できる事案ではない。麻薬だけでも、もし白い粉がすべて麻薬なら100Kg以上はある
今の末端価格ならかなりの高額で取引することができる
まだ古い体質を持っている連中が会社の背後にいるかもしれないということだ
「麻薬の密輸容疑もついてくるぞ。これ以上抵抗したら三振法で仮釈放なしの終身刑が待っているからな」
だから無駄な抵抗はするなと伝えた
三振法。この法律は軽い罪であっても3度も過去3年以内に連続して行った場合、
最低懲役25年以上。罪状によっては仮釈放なしの終身刑か死刑になるという制度。
これにより刑罰が軽い罪でも重い罪になりうるということを示していた。
「仕事が増えたな」
ちなみに彼が隠し持っていた銃はS&W M686である。装弾数は6発。
小型だが威力はある
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東区中央部 東分署ラボ棟 1階爆弾ラボ
アルシオーネは回収された爆弾から指紋などの犯人につながる証拠がないか調べていた
指紋などは複数採取することができていたので今は照合作業にかけている
他にも別の証拠がないかどうかを徹底的に爆弾を分解して調べていた
すると血痕らしきものが爆弾の起爆装置の基盤に少し付着しているのを見つけた
綿棒を取り出すとそこにこすりつけて血であるかどうかを確認した
確認したところ血液であった。これで犯人のDNAの特定につながるかもしれない
「この採取した血をDNA分析してもらうしかないわね」
彼女はDNAラボに連絡して分析を依頼するために来てもらった
この場所から離れるわけにはいかないので綿棒を取りに来てもらうしかないのだ
「悪いけどこの血痕のDNAをデータベースで照合して」
「わかりました」
DNA分析官はすぐに受け取ると2階のDNAラボに戻っていった
DNA分析で犯歴者のものと一致したら決定打になる
ただし不一致になったらかなり面倒なことになる。指紋だけでも一致してくれたらいいのだが
データベースには膨大な指紋情報が登録されている。
いくら中央パトロールが運用しているスーパーコンピュータを使っても検索には時間が必要である
「早く見つけたいわね」
アルシオーネはそんなことを思いながらさらに爆弾の部品を調べていった
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中央区東部 上空3000m ヘリ
ダイナを乗せたヘリはミッドチルダタイムズの本社に向かっていたが予定を変更することになった
事件関係者であるフィエナ・コーラッドが中央本部で話をすると言ってきたからだ
確かにそのほうが情報を守るには適切ではある。
今は真相解明に手段を選んでいるような暇はない
必要であれば多少の危険な取引をしてでも真実を白日にする
冤罪は許されることではないのだから
「とにかく中央本部に戻ってくれ」
「了解」
「マスコミの記者相手となるといろいろと慎重に事情聴取をしないといけないな」
情報漏れがあってはならないからである。
冤罪捜査の場合は当時の捜査担当者や関係者が情報を聞きつけて証拠を消すことがあるからだ
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中央区南部 クラナガンハイウェイ10号線(南北線) 北行き
カリーとシグナムは中央区中央部にあるルイス地区に向かっていた
緊急走行でワーニングライトとサイレンを鳴らしていた
「銀行強盗で地下共同溝を使われたらとんでもないことになるわね」
「どうしてだ?」
「共同溝に穴をあけられたら地下に埋設されているライフラインに障害が出たら都市機能は大混乱よ」
カリーの言う通りである。
共同溝にある送電線や通信ケーブルに細工されたらとんでもない大混乱に見舞われる
それだけは避けなければならない。もしその可能性があるなら何としても早急な解決が求められる
「シグナム。私のIDで共同溝管理センターにアクセスして」
「何を調べるんだ?」
「銀行強盗周辺に設置されている共同溝の監視カメラ映像を検索して」
共同溝には各所に監視カメラが設置されている。
異変があればすぐに共同溝管理センターに情報が届くはずである
その情報は同時に中央パトロールにも届くようにシステム設計がされている
市内のライフラインは都市機能を守るうえで最も重要な施設であるからだ
シグナムはカリーのIDを使って検索をかけるが異常事態を知らせるセンサーに反応はなかった
となるとどこから銀行に侵入したのかである。それも地下から地上に抜ける道を作り出すことにしたのか
「支店の近隣にある建物がどうなっているのか確認できる?」
支店の近隣にはオフィスビルがあった。そこから穴をあけて貸金庫に侵入した可能性が極めて高い
問題はそれを立証するのは実際に調べてみないとわからないということである
それには裁判所から捜索令状の発行を求める必要がある
もちろんオフィスビルの持ち主が捜査協力をしてくれたら令状の必要はないのだが
裁判で問題にならないようにするためには正式な手続きで動くほうが安全である
「とにかく裁判所に捜索令状を請求しておきましょう」
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中央パトロール本部庁舎 8階捜査部2係オフィススペース
ティアナは鑑識に関する教科書を読んでいた。
相棒であるサイノスはある人物と連絡を取っていた
「それで状況は?」
『強制査察は無事に終わりそうだ。とりあえず、今回の査察では問題はないという判定をもらえるらしい』
聖王教会に対する強制査察は無事に終了したことである程度の問題は解決したことになった
問題はこれからだ。聖王教会にとっては財務状況を何とかする必要がある
そのためには残っている財産の売却をして財務状況の改善が求められる
「聖王教会が保有する不動産物件の売却はどれくらいで認められる?」
『最低でも24時間は必要になる。明日までには次元世界連合安全保障理事会に査察の報告書が提出される』
「聖王教会は不動産物件の売却を一斉に進める可能性はかなり高いと思うのかな?」
『連中は金欠だからな。必死になって売却してくるだろう。次元世界連合が承認したらすぐに動くはずだ』
「ほかに情報が入ってきたら連絡してもらえるかな。いつでもいいから」
わかったというと相手は通話を切った。
「問題は山積していることには変わりはないね」
「1つ質問をしても良いですか?」
「ティアナ。何か疑問でもあるのかな?」
「どうして管轄外のことまで確認するんですか?」
確かに捜査部にとって今の聖王教会については管轄権があるわけではない
にもかかわらず誰もが情報収集に追われている。その理由をティアナは理解していなかった
「常にどんな些細な情報も見逃すことができないのがこの仕事の重要性だからだよ」
ティアナにもわかるよとサイノスに伝えるとパトロールに行こうかと提案した
彼女もデスクワークばかりは退屈のようで大賛成ですと返事をした
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